「まずは楽にしてくれ」
「はっ」
NPCであるアルベドが自我を有しているという事に対し、もはや疑う気持ちは無い。ただ疑問なのは、その性格がどう形成されたのかという事だ。
モモンガが真っ先に思い浮かべたのは、設定として書き込まれたフレーバーテキスト。
アルベドの場合、創造主であるタブラ・スマラグディナが設定魔であったため、文字数限界まで書き込まれている。
(確かナザリックの最高位NPCで、傾城傾国の美女。女性的な作業が得意で、裁縫とかや
ってるとかなんとか……。あとは───)
『モモンガを愛している。』
フレーバーテキストについて考えたモモンガは、自らが犯した過ち思い出し、胸にチクリとした痛みを覚えた。
彼の心の奥底には、憤りとまではいかないものの、仲間に対する負の感情が未だに燻り続けている。
だからといって、仲間が作成したNPCを汚してしまったという事実に罪悪感が湧かないほど、神経が図太いわけではないのだ。当然、申し訳ないと思う気持ちはある。
ただしそれは、あくまでもタブラに対して抱く感情であり、NPCに対しては別だ。
────自分は、つい先ほどまでマネキンと大差なかったNPCに本気で配慮をするような素直な人間ではない。
これが、現在モモンガがNPCに抱く率直な意見である。
多少の言葉を交わしたとはいえ、未だにNPCという存在が何なのか把握しきれていないのだ。そういった思いを抱くのも仕方がないと言える。
この様な状況下において、NPCを無条件で信用する者が居たとすれば、そいつは単なる馬鹿。愚かの極みである。
そんな内心ををおくびにも出さず、モモンガはアルベドへ問いかけた。
「アルベド」
「はっ」
「お前は確か、内政──ナザリックの管理が得意だったな?」
「はい。他の知恵者であるデミウルゴスやパンドラズ・アクターよりも上手く組織運営ができると自負しております」
アルベドのその返答に、モモンガは思わず固まってしまう。その内容にではなく、固有名詞に衝撃を受けたのだ。
(そうだった! NPCが自我を持つって事は、アイツもじゃん!)
自身が生み出した
脳内で敬礼するソレを隅に追いやり、モモンガは質問を続ける。一刻も早く話題を変えたかったのだ。
「頼もしいな。では、仕事以外で何か得意なものはあるのか?」
「仕事以外ですと、裁縫などが得意でございます」
彼女のフレーバーテキストには、『女性的な作業が得意』と書かれており、裁縫について言及されていた。
それを鑑みるに、やはりフレーバーテキストが性格の下地になっていると見て間違いなさそうだ。
モモンガがNPCの考察をする一方で、アルベドはというと────
(この質問はムード作りの一環かしら! 相互理解を深めてから、という流れよね! 淫魔の私としては3秒で合体でも構わないのだけれど、初夜はイチャラブとろ甘エッチというのも乙なものだわ! あぁ、モモンガさまぁ……♡)
───ピンク色の妄想でいっぱいであった。
それも仕方がない。
敬愛する主人から「私を愛せ」と命ぜられた後にこのような会話が展開されれば、そういう解釈をしてもおかしくはないだろう。彼女は
脳内がピンク一色になるのは当然と言える。
そんなアルベドの内心を知らないモモンガは、彼女のフレーバーテキストを思い出しながら、それに関する話題を投げる。
「『傾城傾国』……か。まるでお前の為にあるかのような言葉だな」
「!」
モモンガはしみじみと呟く。
あの長いフレーバーテキストの中から覚えている部分をなぞっただけであるが、この部分はモモンガも心の底から同意するところだ。
最愛の主人から掛けられたその言葉に、アルベドの瞳がギラリと光り、縦に割れた瞳孔が見開かれた。
これから主人と初夜を過ごすと思い込んでいる彼女からすれば、その発言は次のステップへ進む合図なのだ。
「勿体無いお言葉」
内に湧き上がる獣欲を微笑みの仮面で隠したアルベドは、不敬な態度にならないように気をつけながら、自分からも行動を起こす。
「モモンガ様がお望みでしたら、色々とお見せ致しますわ」
(モモンガ様は
「そ、そうか。せっかくだから見せて貰おうか」
「くふふ」
アルベドは主人のその返答に微笑むと、金色に輝く蜘蛛の巣のような形状をしたネックレスを外し、アイテムボックスに仕舞い込む。
そして、左腕で豊満な胸を包むように隠しながら、右手でドレスの胸元を一気にずり下げた。
(なっ!? デッッッ───ふぅ)
乳頭を隠す腕からはみ出した部分がその柔らかさ強調しており、より扇情的だ。
非常に品のあるエロス。正に『傾城傾国の美女』である。
モモンガとしては、NPCはどこまで命令に従うのか検証をしたいという狙いがあった。あわよくば、18禁の確認も。
ただ、実際にそれをやられると驚いてしまう。
「ア、アルベド!? 一体何を……」
「くふふ❤︎」
モモンガは慌てたような声を出すも、視線は彼女の豊満な胸部に釘付けである。
そんな初々しい反応を見せる主人に、アルベドの心臓と下腹部がキュンとなり、背筋にはゾクゾクとした興奮が駆け巡る。
(ああ、なんてお可愛らしいのかしら……❤︎)
主人の意外な一面を見た彼女は、不敬だと自覚しつつも、そんな感情を抱いてしまう。もっと見たいという欲求が溢れて止まらない。
目の前の主人に魅せるために、左右の手で乳頭を隠す所謂手ブラの状態を作り、ゆっくりと、そしてじっくりとこねくり始めた。
ふにふにと揉んでみたり、ふにょりと寄せてみたり、むにょんと上げてみたり、たぷたぷと揺らしてみたり。
突如として始まったアルベドによるストリップに、モモンガの精神は鎮静化を繰り返す。
(うわ、エッッッ────ふぅ)
(めっちゃ柔らかそ────ふぅ)
(あ、見えそ────ふぅ)
一度視線を逸らす事で鎮静化のループから抜け出し、幾分か冷静になった思考で考える。
(18禁行為が見逃されている? いや、脱いだのがNPCだからBANのしようがないだけか? それともニップレスか何かが貼られていて、ギリギリ18禁に該当していない? やはり直接見ないと判断できないな。しかし、どう切り出せば)
脳内で言い訳を並べつつ、隠された部分をどうやって見るかを画策するモモンガ。しかし、年齢=童貞の彼には、自然な事の運び方が全く分からない。
もう直球で行く事にした。
(ええい、ままよ!)
「アルベド、触るぞ」
「はい♪」
特に渋る様子も無くあっさりと承諾したアルベドは、乳頭を隠していた手を離す。両手から解放された彼女の胸は、ばるんッと揺れながら元の形に戻った。
(あっピンク)
そして、触りやすい様にする為か、豊満な胸部を眼前に突き出した。
アルベドの体が動くたびにぷるんぷるんと揺れるそれは、先端が薄桃色をした非常に美しいものであった。
無くなった筈の心臓が素早く脈打つ様な錯覚を覚える。
(ここまで来たら接触も試すか)
いつか見た、大人向けビデオに出演していた男優の動きを思い出しつつ、彼女の身体に手を伸ばす。
確か、脇腹や腹部を撫でまわしてから、徐々に胸部へと手を近づけていた気がする。いきなり胸を揉んではいなかった筈だ。
かつて見た動きをトレースするように、アルベドの瑞々しい柔肌を軽く撫でると、彼女は僅かに苦悶の表情を浮かべながら大きく身体を逸らした。
「ッ……!」
「す、すまない! 痛かったか?」
「いえ、モモンガ様が謝罪なさる必要は御座いません。モモンガ様から賜る痛みでしたら、私にとってはご褒美です!」
アルベドの様子に、モモンガは我に返る。しかし、その後に彼女が放った言葉に面食らってしまう。
(えぇ……ご褒美って……。アルベドってMだったの? いやそれより、痛いということ自体は否定していなかったな。もしかして
破瓜の痛みがどうのこうのと言う彼女を無視し、モモンガは慌てて自身が持つ能力の中から該当しそうなものを探る。
大して時間もかからずにそれを見つける事が出来た。
そしてもう一つ、能力値ダメージIV。触った相手の肉体能力にダメージを与え、弱体化させる能力。
痛みといえば恐らく前者だろうが、これらも間違いなく『同化』によって強化されている筈だ。
アルベドの反応を見るに、タンク職である彼女にも、それなりのダメージが入ってしまったかもしれない。
(コンソールが出ないのに、どうやってオンオフを切り替えれば────あれ、出来た)
脳内で念じただけで、特殊技能を切る事が出来た。なんて便利なのだろうか。
「すまない、アルベド。接触型の特殊技能が発動していたようだ」
「先程も申し上げました通り、モモンガ様が謝罪なさる必要は無いのです。どうかお好きなようになさって下さい」
アルベドはそう言いつつ、大きく形の良い胸を下から持ち上げ、再びモモンガの前に突き出した。
開き直ったモモンガは、心ゆくまで堪能した。
*
「あぁんッ!」
「おっと!」
一際大きな声をあげ、くたりと凭れ掛かってきたアルベドを、モモンガは咄嗟に抱き止める。
その身体は熱を帯び、呼吸は荒く、激しく脈打つ鼓動がこちらまで伝わってくる。
香水なのか、それとも彼女の体臭なのか、フローラル系の甘い香りが鼻腔いっぱいに広がった。
「はぁッ……はぁッ……。モモンガひゃま……」
(もう確定だな)
彼女の体温、呼吸や脈拍、甘い香り、そして18禁行為。
もはや認める他ない。
────この世界は紛れもない現実であり、彼女はれっきとした生物である。
モモンガはそう結論づけた。
話が進まん