××ちゃんと山田?さん。   作:黒影時空

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第12話「みいちゃんの父親とは。」

「存在していない……?」

 

 山田は受け取った言葉の意味を脳内で反芻し、酷く歪な引っかかりを覚えた。

 歌舞伎町の闇に紛れたこの密室で……まじまじと資料を見る榎本水仙と向かい合いながら、山田は記憶の底を必死に掬い上げる。

 

 中村祐太郎という男。山田は間違いなく宮城で彼に会い、言葉を交わした。しばらく会っていなかったとは口にしていたものの、彼は確かに中村実衣子の父親として彼女のことを深く知っている様子だった。

 だが、目の前にあるモモの調査結果は「そんな人間は戸籍にも、労働をしていた痕跡も存在しない」と無情に突きつけている。

 

 それだけではない。みいちゃんの故郷である宮城で、すぐ近くに暮らしていた水仙も、その娘である睦も、幼少期の中村家に「父親」らしき男の姿など一度として見たことがなかった。

 

「……おかしいよ。私、確かにあの人に会ったんだ。みいちゃんのお父さんだって……」

 

「私や睦があの家を視界に入れていた頃、あそこに居たのは芽衣子と、その母親——つまり実衣子の祖母くらいのものよ。男の影なんて、ただの一度も差し込んだことすら無かったはず」

 

 水仙は吐き捨てるように言い、つるりとした若い肌の額に薄いシワを寄せた。

 

「もしかして……芽衣子さんも、エレボス人だったりするの……?」

 

 山田の脳裏に浮かんだのは、かつて社会から隠蔽された人体実験と改造人間の歴史だった。

 もしやみいちゃんの母親である芽衣子もまた、特殊な背景を持つ存在だからこそ、父親の存在ごと世間の記録から抹消されているのではないか。

 だが、水仙は心底馬鹿にしたように鼻で笑い、即座にそれを否定した。

 

「確かにあの女が『まともな人間』かどうかは怪しいものだけど……エレボス人なんて口が滑っても無理よ。そもそもあそこは表向きはちゃんとした養成学校よ。あの女みたいに最低限の学力すら怪しい人間が、選抜されて入れるような場所じゃないわ」

 

 芽衣子はエレボス人ではない。そして、みいちゃんは間違いなく男女の生殖によって産み落とされた、れっきとした人間のはずだった。

 しかし——みいちゃんという存在そのものにも、人間としてはあまりに妙な部分が多すぎた。

 山田はかつて祐太郎の口から語られた言葉を思い出しながら、疑問を投げかける。

 

「ねえ……ムウちゃんは、2歳くらいになった時にはもう喋れた?」

 

「2歳くらいになれば、普通は自我の目芽えどころか、自分の足で歩行も可能になってくる時期よ。睦だって成長に偏りはあったけれど、その頃には言葉を解していたわ。それでもまだ普通の赤子とは違う成長速度だったけれどね」

 

 水仙の言葉に、山田の胸の奥で冷たい違和感が肥大化していく。

 

「でも……祐太郎さんが言っていたの。みいちゃんは2歳になっても赤子のままだったって……」

 

「……は?」

 

 水仙の動きが止まった。

 ネグレクトや劣悪な家庭環境による発達の遅れ、といった言葉だけでは到底説明がつかない。改造人間という異質な存在ですら、成長の段階を踏むという共通認識があるのだ。それなのに、2歳になっても全く姿形が変わらずほぼ赤子のままだったという事実。

 それは環境のせいなどではない。遺伝子そのものに深刻な問題があったとしか思えない異常事態だった。

 

「遺伝子の異常……? そんなの……普通に男女が結婚して、子供を産む過程で起きるようなレベルじゃない……」

 

 水仙の声から余裕が消えていく。

 

「じゃあ……『普通』に結婚していなかったとしたら? 中村祐太郎とじゃなくて、もっと別の……決して交わってはいけない相手とだったら……?」

 

 山田の思考が加速する。頭痛と共に、失われていたはずの過去の断片が、恐ろしい精度で組み合わさっていく。

 みいちゃんがどうやって生まれ、どうやってあの家で育ち、東京へと流れ着いたのか。かつて歌舞伎町の片隅で、無邪気な笑みを浮かべたみいちゃんが口にしていた昔話。

 祐太郎が家にいたとされるのは、みいちゃんが5歳くらいになるまでのほんの僅かな期間。

 そして、あの中村家に居たのは、母と祖母だけではなかった。地元の人間であり、芽衣子の周囲を知る水仙なら、もっと早く気づくべきだったのかもしれない。

 

「確か……みいちゃんから……ううん、祐太郎さんからも聞いたことがある……」

 

 山田は乾いた唇を開き、絞り出すようにその名を口にした。

 

「芽衣子さんには……お兄さんが、いたんだよね……?」

 

「う"……ッ、気持ち悪っ……!?」

 

 水仙が突然、激しい吐き気に襲われたように胸を押さえ、口元を覆った。若返ったはずの顔面から血の気が引いていく。

 禁忌——血族同士の濃密すぎる交わり。遺伝子の崩壊。

 みいちゃんの身体に刻まれていた数々の歪みと、2歳になっても赤子のままだったという異様な成長遅延の正体。

 山田の脳裏に、かつて東京の彼女の自室で、無垢な瞳を輝かせていたみいちゃんの姿が鮮烈に蘇る。己の出自にどんなおぞましい罪が隠されているのか、何一つ理解していなかった彼女の言葉が。

 

『好きな人同士が結婚するのの、何がいけないの?』

 

 あの時、山田はそのあまりに純粋で狂おしい問いに対して、何一つ言葉を返すことができなかった。

 世界の理倫も、生物としての禁忌も知らないみいちゃんにとって、それはただの「大好きな人たちの物語」でしかなかったのだから。

 

(ダメだ……いま、この泥沼に引きずり込まれちゃいけない……!)

 

 山田は強く首を振り、湧き上がる戦慄を強引に押し殺した。

 どれほど過酷で忌まわしい事実があろうと、今の自分たちにはまだ確定的な証拠がない。山田も水仙も、その「みいちゃんの本当の父親」とされる男の姿を直接確認したわけではないのだ。すべては推測の域を出ない。

 今、最大の謎として立ちふさがっているのは、そこではない。

 中村祐太郎という存在しない男。

 戸籍も、過去も、労働の記録すら一切存在しない男が——

 なぜ『中村実衣子の父親』を名乗り、山田の前に姿を現したのか。

 その偽りの父親が語った言葉の中に、一体どれほどの真実と、どれほどのおぞましい嘘が混ざり込んでいたのか。

 歌舞伎町の密室に、重苦しく狂おしい沈黙が降り積もっていった。

 

 

 ——

 

 数分後……また扉が開いた、今度覗き込んできたのは……今度はココロだった、眼しか見えないがその形からは憎悪や怒りの形相が見て取れる。

 水仙がここに来るまでにココロにやってきたことを思えば当然の反応ではあるので山田は水仙を見る。

 

「私があそこに行ったとして殴られて済むと思う? 顔面とか」

 

「……いや、というかなんで真っ先にココロちゃん狙っちゃったんです、みいちゃんに関係しているとはいえココロちゃんからすればそこまでされる覚えはないというか……」

 

「実衣子と一緒に働いているって」

 

「キャバクラのほうね」

 

「自分から特別地区から逃げ出そうとする人間にろくなやつはいないし」

 

「偏見が酷い」

 

「あと貴方を殺そうとした所を見られたというところもある」

 

「それ以上言うなら私もボコボコにするよ」

 

 

「はいはい、ココロちゃんも睨まないでー、後は二人で拳でも交えながら語り合いなよ」

 

 モモの軽口が聞こえると、目も扉から離れていき……水仙も手が自由になったので堂々と扉を開けて出ていった直後に血生臭くて鈍い音が響き渡った。

 更には清純で就活をちょっと前に済ませたものとは思えない女性のこの世とは思えない罵倒が飛んでいるが、やられたことを考えると当然なので山田は止めない、多分めしべとか引っこ抜かれていそうだなと考えながら真相に迫ろうと祐太郎について考えていると、開きっぱなしの戸からモモが入ってきて隣のベッドに腰掛ける。

 

「私達を何処かに売るの? それとも実験とか」

 

「え~? こんな面白いの他所に送るわけないじゃん、大体失敗作なんて向こうも期待されてないし、完成した方だって……ま、それは山田さんには関係ないか」

 

 モモも分かっているのか本題に入る、みいちゃんの真相以上に気になるのが自分の記憶喪失になった事。

 そして自分の出自の事。

 

「検査結果知りたい~? まあ、人体が凄いことになっていたっていうのはあのおばさんから聞いた通り」

 

 まず前提として、本来は全体的に肉体が変化することはない。

 男性ホルモンを劇的に増幅させることで女性でありながら男性的な要素を兼ね備えた存在になるはずだが、失敗作はそもそもが少しだけある男性ホルモンが突然変異のように変化して増幅するという。

 水仙の例で言えば、彼女は体に植物細胞が増殖して変異した事で土や日光で栄養を採れる花に近い生態系になったというわけだ。

 では山田の場合は? おそるおそるカルテを確認するとそこには……確かにただの人間ではない結果がそこに記されていた。

 

「か……体を構成する要素の75%がドーパミン!?」

 

 ドーパミンとは脳内で作られる神経伝達物質の一つで、やる気、集中力、快感などを引き出すものだが、それが全身から発せられていたことで自律神経などが損傷して常に変な汗が出たり頭痛が起こり、脳にも異変が起きたという。

 脳からの分泌なら健康に支障が出ても不思議ではないが、全身からドーパミンが出続けているとなればそりゃ異変が起きても当然。

 ようやく自分が異常であることや突然倒れていたことに対して納得がいったが……。

 

「あの……全身ドーパミンってどんな感じなの?」

 

「言ってしまえば爆薬? 体中がちょっとした事で脳内物質バチバチして一度ハマったものにはのめり込むような感じ、思い出しかけた時にみいちゃんに性欲を感じているのもそれが理由じゃないの? ドーパミンってそういう時にも溢れるからね〜」

 

「でもそんな体だったら、記憶を失う前から様子がおかしいってわかるものじゃないの」

 

「それが例のママさんの教育のせいでねぇ」

 

 モモが言うには記憶喪失前に発覚しなかったのは、喪失前の山田が勉学一筋のみで狂ったように束縛された生活を送ったことで全てにおいてやる気を失ったダウナー系になったことでドーパミンの勢いが落ちていたことにあるらしい。

 しかしそこで出会ったのが自分の人生を肯定してくれる唯一の友人、みいちゃんだった。

 彼女との出会いが文字通り時計の針を動かし、頭どころか胸や手足からもドーパミンを溢れさせて少しずつ気持ちを昂ぶらせていったという。

 しかし何十年も反応が淡かったところから急激に活動したことで脳が限界を超え、記憶喪失に繋がったのではないのか? というところだ。

 

「でも……まだわからない、どうして記憶を失った時に身分を表せるものが何一つ無くなっていたのか……」

 

「……まだわからない? 絶対にわからないんじゃないの?」

 

「え?」

 

「せっかくだから見てみる?」

 

 モモがスマホを取り出して動画を再生する……そこには、Ephemereで働いていた頃のみいちゃんの姿だ。

 やはり仕事でも失敗ばかりで……周囲になんとかフォローされながらも一生懸命頑張っている……とはならなかった。

 

 

「よく見なよ、現実を」

 

 ——

 

 山田、人体に存在するうちの女性ホルモンの半分がドーパミンで構成された、エレボス人の失敗作の子供。

 喜ぶことがあると全身から快楽物質を放出する彼女は、その一方で刺激を愛する性質にある。

 しかし反面的に言えば、それは自分にとって不都合な存在を自然に遮断してしまう傾向にある。

 

 これまでみいちゃんを実際に見てきた周囲の人間から散々言われてきたことだが、山田は頑なに認めなかった、みいちゃんという人間と良い思い出しか見ていないということに。

 みいちゃんという人間にも非があり、何か問題があったからこそ、今回のことにも繋がったのに。

 

 画面の中で再生される映像は、山田がこれまで脳内で都合よく加工し、美しい思い出として保存してきた「みいちゃん」の像を、あまりにも無慈悲に粉々に砕いていくものだった。

 キャバクラ『Ephemere』のバックヤード。客とのトラブル、周囲のスタッフへのお座なりな態度、自分を優位に見せるための浅はかな嘘の数々。一生懸命に頑張ろうとして空回りしていた可哀想な女の子の姿など、そこには影も形も存在しなかった。

 

「うわ面白〜い、まだみいちゃんがそれで本当に良くなったと思ってるのが」

 

 モモの愉悦を孕んだ声が、耳奥で嫌な不快感となって響く。

 映像の中から、隠されていた「現実」が雪崩のように押し寄せてくる。画面に映るみいちゃんの顔が、一瞬、山田の目にはあまりにグロテスクで劇画的な歪みを持って映し出された。

 見たくなかった。忘れたかった。脳が、全身のうち半分を占める変質した女性ホルモンから分泌されるドーパミンの過剰分泌によって、不都合な記憶や刺激を自然と遮断し、自分を護るために生み出していた「聖域」が、外側から無理やりこじ開けられていく。

 

「やめて……やめて、見たくない!! みいちゃんは私にとって大事な人で……関係を結んで……」

 

 山田は頭を抱え、必死に声を張り上げた。だが、モモは端末の画面を突きつけたまま、冷淡に事実を過不足なく並べていく。

 

「自分のやってきた事を否定されたくないかもしれないけど結果はこれなんだよ。お前がみいちゃんと同棲したのは、異端者だったみいちゃんを住まわせることで過干渉の母親を避けさせる程度の物だったし、みいちゃんは結局パン屋を一ヶ月も経たずクビになった」

 

「それは……みいちゃんの人生に分が悪いことも多くて……」

 

「それは否定しないよ、ここでクズの管理してる私から見てもみいちゃんの地元はイカれてたからね〜。でも、全部みいちゃんが悪くないってのはないんじゃない?」

 

 モモの言葉は、山田の心の一番柔らかい部分を正確に削り取っていく。

 掘り下げてみればみるほど現れるのは、あまりにも救いのない事実だ。

 エゴとプライドが強く、己の保身のためなら平然と虚言を吐き、思い通りにならなければ癇癪を起こす。頭の回転は鈍くても、利己的な打算だけは一人前に働く。

 それが、中村実衣子という人間の真実だった。

 

 そしてそんな彼女に対し、特別な感情を向けているからと「自分だけは理解者だ」と思い込み、手を出して導けば更生させられると信じて疑わなかった甘い人間——それが「山田」だったのだ。

 

「やめて……あれは違う! こんなものが本当にあるわけが……」

 

「みいちゃんから見た山田さんへの好意っていうのはね、自分を貶さない都合の良い人だからこそ成立したの」

 

 モモの言葉が楔となって、忘却の底に沈んでいた同棲時代の「本当の記憶」を急速に引き揚げていく。

 あの日、どうして二人で住んでいた部屋を出ることになったのか。

 山田は過去の記憶を頼りに、みいちゃんに色んな事を教えようとした。まっとうな社会で生きていけるようにと、手を差し伸べ続けた。

 だが、報われたことなど一度もなかった。

 

『ねぇ……前から思ってたんだけどさ』

 

 回想の中のみいちゃんが、不機嫌そうに口を尖らせる。

『みいちゃんって何のために生まれてきたの?』

 

『なんで生きてんの?』

 

『こんなことするために生きてんの?』

 

 自分が否定され、追い詰められたと感じた瞬間、みいちゃんは本能的に相手が最も傷つく行動を選ぶ。

 部屋の机に置かれていた、山田にとって大切な液晶タブレット。みいちゃんはそれを無造作に持ち上げると、山田の目の前で力任せに床へと叩き落とした。

 激しい破損音。画面に走る亀裂。

 

(あ……)

 

 視界が不気味に揺らぎ、意識の輪郭が歪んでいく。

 夢の中以外で、あの幻覚のみいちゃんに会うのはこれで2度目だ。

 けれど——初めに見た、儚げで愛らしく、守ってあげたくなるような空想の少女の姿はどこにもなかった。

 目の前に現れたのは、随分と体型が崩れて小太りになり、薄汚れた服を身に纏い、濁った瞳で山田を見下ろす女の姿。

 そう、これこそが、映像の中の姿であり、山田が脳の防衛本能で頑なに認識を拒絶し続けてきた「現実の中村実衣子」だった。

『みいちゃん、悪くないもん!』

 映像の中の音声と、目の前の幻覚のみいちゃんの汚い叫びが、重なり合って脳内に重くこだました。

 その瞬間、山田の中で張り詰めていた「何か」が、限界を迎えてパチンと弾けた。

 身体中の細胞から、逃避と拒絶のための快楽物質——過剰なドーパミンがシュワシュワと炭酸のように急速に駆け巡り、脳髄を激しく麻痺させていく。

 自分を肯定してくれる聖女だったはずの存在。

 自分が買い被り、都合よく美化し、愛していた幻影。

 その化けの皮が剥がれ落ち、生々しい現実の泥に塗れたバケモノが目の前に立っている。

 山田の口から、掠れた低い声が漏れ出た。

 

「違う」

 

 頭痛と激しい過剰分泌の不快感に耐えながら、山田は濁った瞳で幻覚の女を睨みつけた。

 

「お前は……『みいちゃん』じゃない」

 

 

 その中で、気がつけば幻覚の中で右手に包丁を握っていた。

 それを幻覚に目掛けて振り上げ……。

 

「みいちゃんはそんなことしない、みいちゃんは謝れるし、人の言うことは読み取れるし、私にも誰にも迷惑はかけないんだ、お前は間違っている」

 

 包丁を打ち込むたびに記憶が潰れていく。

 本当は今、全部思い出しかけている……しかしそれを否定する。

 みいちゃんがやってきた事、他者への振る舞い……それを間近で見てきた、面倒なところのほうが多かった。

 だが今の山田はドーパミンが止まらず『理解』より、『刺激』を求めた。

 自分好みのみいちゃんじゃないリアルみいちゃんを何から何まで否定していき、どんどんアレは違うという感覚を増やしていく。

 薄れていた頃、楽しい思い出だけ真っ先に思い出したのも当然のことだった、あの頃から山田はみいちゃんを都合よく見ていた。

 

 そうして幻覚のみいちゃんを作り直した山田はそれを抱き抱えて……まだ奥に誰かいる。

 

「やめて……殺さないで!」

 

「お前はみいちゃんを見下していた、だから死んでもらう……だってお前、結局みいちゃんに本当の名前は教えたの?」

 

 ようやく気付いた、自分は記憶が消えていたのではない。

 作り直されようとしていた段階だった、ドーパミン人間の能力……それは記憶の改竄、そして人格の再構築。

 ずっと山田はそこにいた、しかし現在の『山田』からすれば汚いみいちゃんとずっと相手して耐えられなくなって、見捨てたような自分にとって不要な存在。

 

 

「まあ気にしないで、みいちゃんと一緒に居る『山田』は今日から私になるから」

 

「待って、私はまだみいちゃんを……」

 

 

 

「……ああー、まあこうなるか」

 

 ショック療法のつもりだったが、山田はそれを受けきれず、理想を作って消えていった。

 そうして新しい人格を作り、窓から飛び出してモモの前から姿を消した。

 

「いやここ、6階なんだけどな……」

 

 そうして、山田とみいちゃんの思い出を巡るお話はこれでおしまい。

 

 

 かに思われていたが……。

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