『着せ恋』だと思った? 残念『呪術廻戦』でした! 作:自分のことを五条新菜と信じている(文字数
原作とリンクするこれがやりたかったんや。
批判もあるとは思うけど、おいはこれがしたかったんや……!!
許せサスケェ!(肩パン腹パン)
羂索は知らない。
自らの計画を狂わせる存在が、かつて自身が見限った実験体、そのひとつであることを。
羂索が見放してなお、ひとつの生としてそれは青い春を謳歌していた。
◆
羂索は過去、天元と星漿体の同化阻止を二度企て、二度とも六眼によって阻まれている。
最初の敗北を受け、二度目は六眼の保有者と星漿体を生後間もなく殺害したが、それでも同化当日には新たな六眼と星漿体が現れた。
個体を排除しても、その役割は別の個体によって補われる。
この二度目の敗北以降、羂索は六眼への実用的な対処を殺害から封印に切り替えた。
六眼は同時に二人存在しない。ならば、現在の保有者を殺さず生かしたまま封じれば、新たな六眼が現れる余地を与えずに済む。そのために求めたのが、《獄門疆》だった。
だが、それと並行して、羂索は別の試みも続けていた。
六眼は、どのような規則によって現れるのか。なぜ、必要な時代には新たな保有者が現れるのか。その発生規則そのものを探る研究である。
手掛かりの一つとなったのが、五条家の血統と《無下限呪術》だった。
六眼と《無下限呪術》は極めて密接に結びついている。ならば、《無下限呪術》の発現条件を人為的に変化させ、その結果を蓄積することで六眼の成立条件を切り分けられる可能性があるのではないか。
確立された術理ではない。検証すべき仮説の一つとして、羂索は有力であろうと判断した。
そして二度目の敗北以降、およそ五百年にわたり羂索はその仮説を繰り返し試行してきた。
五条家の血を引く人間を探し、血統の濃淡を変え、受胎条件を変え、ときには呪霊を介在させた。
結果の大半は、受胎不成立、胎内での死亡、死産、あるいは出生直後の死亡に終わる。それでも、ごく少数ながら生児として安定し、その後も成長した実験体は存在した。
ただし、それらも目的とする術式が刻まれない、別の術式を発現する、あるいは目立った術式の兆候を示さないなど、六眼の発生規則へ繋がる成果は残していない。
人間と呪霊を掛け合わせる受胎研究も、この長期の試行の中で蓄積されていく。
その一系統には、後に加茂憲倫の肉体を用いて行われる呪胎九相図へと通じる知見も含まれていた。
◆
その母体が選ばれたのは、長い研究の末期。
五条家の直系でも、有力な分家でもない。遠い祖先を辿れば五条家へ行き着くものの、その血は著しく薄く、母体本人も五条家の人間として認識される立場にない。
羂索にとって、この条件は好都合だった。
ほとんど薄れた血統からでも、《無下限呪術》の発現を誘導できるか。そして、五条家に察知される危険性が低く、出生した個体が本家の管理下へ置かれる可能性も抑えられる。
羂索は、人為的な受胎操作を施す。
人間の母体、父親となる呪霊、そして当時羂索が使用していた器の血。実験体の成立には、この三者が関与した。
発想そのものは、呪胎九相図へ至った受胎実験と同系統にある。
ただし、今回求めたのは呪物ではない。母体の中で成長し、生児として出生したうえで、五条家の術式を発現し得る肉体を持つ個体である。
幸運なことに、実験体は生きて生まれた。
人間と呪霊双方の性質を受け継ぎながら肉体は安定し、外見上も通常の人間と大きな差異を示さない。
しかし、生児として安定していることそのものは、この段階では特筆すべき成果とならなかった。
六眼も発現しない。だが、すでに五条悟という六眼保有者が存在している以上、それは想定の範囲内。羂索が観察していたのは、《無下限呪術》が表面化するか否かだった。本来であれば、術式を自覚し始める年齢まで観察は続く。
その前提を崩したのが、伏黒甚爾の存在だった。
呪力から完全に脱却し、呪術による因果の外側に立った男。伏黒甚爾は、当時の星漿体を殺害し、天元と星漿体の同化を阻止せしめた。それまで羂索が排除を試みても崩れなかった因果は、羂索とは無関係な場所から現れた一人の人間によって破壊される。
同化を失った天元は、そのまま進化へ向かう。
それにより因果そのものが消失したのか。それとも、別の形へ変質しただけなのか。その時点で答えはない。
ただ、五百年にわたって前提としてきた状況が、大きく変わったことだけは確かだった。
血統を操作し、六眼の成立条件を解明し、そこから因果へ干渉する。そのために積み上げてきた出生実験は、もはや以前と同じ優先度を持ち得ない。
加えて、六眼そのものならば、すでにこの時代に存在する。新たな六眼の発生規則を追うよりも、現存する六眼を確実に封じることの方がより直接的な課題となった。
さらに、同じ時代には《呪霊操術》を持つ夏油傑も存在した。
この時点で、羂索が夏油傑を次の器と定めていたわけではない。だが、伏黒甚爾による因果の破壊を境に、見極めるべきものが増えたのも事実だった。
当時、実験体は三歳前後。《無下限呪術》が表面化していないことに異常はなく、将来発現する可能性も残されていた。
しかし、その時点で確認できる特異な成果もない。研究そのものの価値が低下し、《獄門疆》の確保をはじめ優先すべき事柄が増えた以上、追跡を続ける理由は乏しかった。
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それから数年。
羂索の観察から外れた実験体は、何事もなく成長を続け、そして事故に遭う。
母体は死亡。呪霊はそれ以前に姿を消し、以降現在に至るまでその所在は不明なまま。
対して、実験体は無傷だった。生命の危機に頻し、無意識のうちに発現した《無下限呪術》。しかし、六眼もなければ異常な演算処理を担う脳も未成熟。その代償は、その魂が肩代わりする。
羂索が待つことをやめた術式は、羂索のあずかり知らなぬ場所で開花した。しかし、当人に術式を発動した記憶はなく、羂索もまた、この事故を把握していない。
したがって、過去に下された評価が覆されることもなく、羂索の認識は過去で止まったままとなった。
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事故後、実験体の意識には前世の記憶が表出する。
一方で、事故以前の記憶は曖昧で、事故そのものについても不明瞭。当然、自身が術式を発現したことも知らなかった。
己が呪い溢れる世界に生まれたと考えるための材料は、その認識の中には存在しない。
対して、自らの環境は別の結論を強く示しているように見えていた。
交通事故の後、祖父のもとへ引き取られる。祖父が営むのは人形店。祖父は人形師。雛人形に囲まれた生活。少女との確執。そして、自分の名前。
やがて人形を作り、学校に通い、友人たちと出会うにつれ、既知の物語との共通点はさらに増えた。それらは幸福な物語の続きを生きているという認識を補強する、確固たる証拠となるように感じられた。
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かつて、羂索が五百年に及ぶ研究の末、結果を見届けることなく観察対象から外した一個体があった。
その実験体には、名前がある。
それを、『五条若菜』。
五百年に及ぶ試行の果て、羂索の想定を外れて生じた、六眼に依存しない《無下限呪術》の使い手。
かつて見限られたその存在こそが、今、羂索の計画を狂わせている。
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あるいは、捉え方によれば。
羂索の息子。
その人である。
羂索のアプローチとして、原作『着せ恋』とのリンクもさほど壊さずいけるやろ?しろ!ってことで当初から温めていたものがようやく出せました。余は満足である。
なお、『着せ恋』原作では両親事故死ですが、こっちでは母親だけです。呪霊パパは蒸発してます。羂索は血を混ぜているだけなので、親なのかどうかは意見が分かれるところ。
なお、呪霊パパはハーフアンドハーフ若菜君錬成のための材料でしかないので、祓われたのか、生きているのかなどは固めていません。とりあえず受肉はしている。(今のところのプロットでは今後出てくる予定は)ないです。