『着せ恋』だと思った? 残念『呪術廻戦』でした!   作:自分のことを五条新菜と信じている(文字数

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マジで全然関係ないんですけど、レゼって変身した方がおっぺぇでかない? えちちちちっ。レゼの幸せな未来が見たかった(アマプラでレぜ編見た民)


第二十一話 領域展開

 

 夜空を覆っていた《茈》の光が、瞬く間に薄れていく。

 その中心から落ちてきた宿儺は、肩口から腕にかけて大きく抉れていた。

 輪郭そのものが欠ける、見るからに大怪我。いや、大怪我なんて言葉では言い表せない欠損。常人なら気を失っても不思議ではないはずなのに、何でもないかのように空中で身体を捻ると、両足から綺麗に着地した。

 砕けた路面に、亀裂が走る。

 顔を上げた宿儺は、まだ笑っていた。

 

「ッ──」

 

 ぞっとする。

 使えるものは、ほとんどぶつけた。そこまでして、ようやくあの傷だ。虎杖の肉体強度を加味したとしても、笑ってしまうくらいに効いていない。

 通常攻撃の気やすさで《茈》を連発する? 無理だ。有効打を与える方法としては間違いない。けど、その運用はさすがに無理だと感じる。呪力量的な話じゃない。処理的なところで、今の俺では『不可能』だと分かる。

 なら、どうする──

 その答えを探すより早く、宿儺の肩から流れていた血が止まる。欠けた肉が盛り上がり、骨が繋がり、皮膚が覆い、失われていた部分が目に見えて戻っていく。

 反転術式。分かっていた。宿儺なら使えて当然だ。

 それでも、必死になって作った傷がものの数秒で消えていく光景は、見ていて気分のいいものじゃない。

 

 その時。

 

 不意に、耳の奥で細い金属音のようなものが鳴った。

 視界が、歪む。宿儺の姿が一瞬、二重に重なった。

 

「ぃッ──!?」

 

 頭の芯が、万力で締めつけられたみたいに痛い。鼻の下にも生温かいものが伝う。息を吸えば、今度は脇腹の奥が鋭く痛んだ。思わず咳き込むと、喉の奥から鉄の味がせり上がる。

 俺も、無傷じゃない。というか、今まで動けていた方がおかしいのかもしれない。

 みんなを守るために、《無限》を広げた。喧嘩をしたこともないのに、宿儺と打ち合った。《赫》を初めて使い、《蒼》をいくつも同時に展開し、呪詞で出力を引き上げ、そのうえ《茈》まで成立させた。

 六眼もない頭で、短時間に処理しすぎた。感覚的に、そう思う。

 焦点の合わない視界の向こうで、宿儺の腕がほとんど元の形に戻った。その光景を見て、ようやく思い至る。

 

 ──俺も、できる。

 

 喜多川さんにも森田君にも使った反転術式。正のエネルギーを傷に流す感覚なら、もう知っている。

 腹の中で生まれた正のエネルギーを、まず頭へ。締めつけていた痛みが少しずつ遠のく。ぶれていた宿儺の形が一つになり、鼻血が止まり、耳鳴りも小さくなる。

 そのまま今度は脇腹へ。熱を持っていた傷が、内側から塞がっていく。呼吸のたびに刺さる痛みが薄れた。

 治った。少なくとも傷は。

 けれど、いざ身体を動かそうとすると、腕も脚も鉛みたいに重い。頭も冴えたはずなのに、意識の底には粘つくような倦怠感が残っていた。

 傷が癒えたことで、逆にはっきりした。

 反転術式で治せるのは、壊れた身体だけ。積み重なった疲労まで元に戻してくれるわけじゃない。

 そして、呪力も。

 いかに《無下限呪術》を使えるといっても、呪力効率は六眼を持つ五条悟には遠く及ばない。身体を酷使したのとは別種の疲れが、それを示していた。

 これが、呪力を消費するという感覚。傷が塞がったからといって、さっきまでの無茶はなかったことにはならなかった。

 それでも、血を吐いた時よりは動ける。

 宿儺が一歩踏み出した。

 俺も腰を落とす──

 

「来たか……」

 

 俺が構えるより先に、宿儺が呟いた。

 直後、別の呪力が知覚範囲に飛び込んできた。気を抜けば全てを失いかねない状況に全神経を持っていかれていて、近づかれるまで気づかなかった。

 目の前の存在とは、違う。あの触れただけで本能が逃げろと叫ぶような禍々しさはない。

 けど、でかい。まだ姿も見えないのに、はっきりと分かる。意識を向けずにはいられない引力のようなものを感じる。そんな巨大な呪力が、すぐそこまで迫っている。

 俺へ向いていた宿儺の視線が、逸れる。

 崩れた建物の向こうから影が跳んだ。

 

「……悠仁の姿で、随分好き勝手やってるね」

 

 姿を見せたのは、長身の男だった。

 白い髪。剥き出しになった青い瞳。

 誤りようのない特徴。

 

 五条悟。

 

 息が止まった。

 原作なら、《獄門疆》の中にいるはずの人物が、ここにいる。

 五条悟は、まず宿儺を見た。

 そして、その青い目が一度だけ周囲を滑る。

 断たれた道路。崩落したビル。形を失った人だったもの。まだ逃げ切れていない一般人。

 最後に、俺で止まった。

 

「そこの君。周り連れて離れて」

 

 五条悟はそれだけ言うと、宿儺へ向き直った。

 

「こいつは、僕がやる」

 

 封印されていない。あの時、電話越しに五条悟本人にまで届けた警告が、ちゃんと未来を変えてくれた。

 これで、羂索は原作どおりに動けない。

 死滅回游に必要不可欠な真人の成長は、虎杖がここにいる以上実現しない。それに、五条悟が自由なままなら、悠長にそこまで待っていられるはずがない。俺の知っている死滅回游は、もう起こらない。

 そして、五条悟さえいれば、不完全な宿儺に負けるわけがない。虎杖もいずれ、主導権を取り返すだろう。

 もう、原作の先を辿って、次に起こる惨劇を探さなくていい。ようやく。ようやくだ。喜多川さんたちは、日常へ帰れる。

 

「ご、五条君……あの人……」

 

 掠れた声に振り向けば、喜多川さんは青ざめた顔で俺を見ていた。何かを聞きたいはずなのに、その先が出てこない。すぐそばでは、菅谷さんが口元を押さえ、山内さんは震える手で八尋さんの腕を掴んでいる。

 

「……大丈夫です。あの人が来たなら」

 

 自分に言い聞かせるように答えて、宿儺へ視線を戻す。

 立ち止まっている暇はない。

 五条悟は、周りも連れて行くように言った。喜多川さんたちだけじゃない。俺たちの近くには、さっきの斬撃から幸運にも逃れた人たちがまだいる。

 宿儺から目を離さないまま、俺は声を張った。

 

「走れる人は、あっちへ!」

 

 五条悟が来た方角を示す。すぐには、誰も動かなかった。

 無理もない。さっきまで人だったものが、そこら中に転がっている。理解ができず立ち尽くしている人もいる。

 でも、ここで動かないと巻き込まれかねない。

 

「早く! ここにいたら死にます!」

 

 その声で、ようやく何人かが弾かれたように走り出した。

 五条悟が通ってきた方向なら、今選べる中では最も安全なはずだ。何より、宿儺との間にこれ以上ない壁ができる。

 

「喜多川さん、みんなも! 行きます!」

「……お、おう」

 

 柏木君の返事は喉に引っかかるようだった。それでも動き出したのをきっかけに、みんなも続く。

 足元には、見ない方がいいものがいくらでも転がっている。短い悲鳴が上がり、誰かの足が止まりかけた。

 

「見ないで! 前だけ見て!」

 

 森田君は青い顔のまま視線を上げ、山内さんは八尋さんの腕を掴んだまま走り出す。乱れた足音と荒い息が重なった。俺も宿儺を視界に残したまま、みんなを追って下がる。

 次の瞬間、二人が同時に踏み込んだ。遅れて路面が爆ぜ、一瞬で間合いが消える。

 《領域展延》を纏った宿儺の拳が伸びる。五条悟は僅かに頭をずらし、拳が頬を掠めると同時に掌底を返す。宿儺が腕で受けた。

 鈍い衝撃。

 そこから二度、三度、拳と蹴りが交差する。

 速い。

 でも、それだけじゃない。体術と《無下限呪術》が、途切れず一つの攻防になっている。五条悟が手を振るたび、宿儺の身体が引かれ、あるいは押し流される。崩れた体勢に打撃が入り、宿儺もまた《領域展延》で応じる。

 宿儺がこちらへ抜けようと身体を流す。けれど、その進路も潰された。拳と蹴りがまた交差する。

 背後では、喜多川さんたちの乱れた呼吸がまだ続いている。五条悟が押し留めている間に、着実に宿儺との距離は開いていた。

 何度か衝撃音が続く。そのうちの一つを境に、二人の間に距離が開いた。

 その五条悟の向こうで、宿儺がこちらを見る。

 目が合った。嫌な予感がした。

 攻防の中で引き戻された両腕が、そのまま胸の前で重なる。指が組み替わり、五条悟の手もほとんど同時に動いた。

 

『──領域展開』

 

 二つの声が重なった。

 

「《伏魔御厨子》」

「《無量空処》」

 

 五条悟と宿儺だけを呑み込むように、黒い結界が閉じる。俺たちも一般人も、その外側。普通なら、それで安全に避難できる。

 けれど、対宿儺に限れば、結界の外側がそのまま安全圏になるわけじゃない。《伏魔御厨子》は、空間を区切らない。記憶にあるとおり、黒い球体の外側にまで《解》と《捌》の入り乱れた斬撃が広がっていた。

 金属同士を擦り合わせたような不快な音が、交差点中央から響き渡る。閉じた領域を中心に、その外円が急速に崩れ始めた。そこから外へ、破壊が一気に走る。路面が削れ、死体が刻まれ、落としたウサギ頭まで切り裂かれていく。

 五条悟が稼いでくれたはずの距離が、瞬く間に食い潰されていた。

 

「クソッ──!!」

 

 簡易領域。真っ先に思い浮かんだ。

 みんなを包む《無限》に、そのままもう一つを重ねる。

 そうしようとして──

 

「ッ、何で……!?」

 

 無理だと分かった。同時にはできない。

 なら、《無限》を切って──

 

「消えない……!」

 

 喜多川さんたちを包む《無限》が、切り替えられない。

 前はできた。高架下を抜けてすぐ、出して、消して、ちゃんと自分で切り替えられたはずだった。

 

 ──クソッ、なんでだ!? 俺の術式だろ!

 

 考えている時間はなかった。

 《無量空処》。領域には、領域を。頭に浮かべた瞬間、今度はどうすればいいのか理解できた。組み上げられる。

 

「領域展か──」

 

 けど、遅かった。

 無傷で残っていた景色がみるみる消えていく。さっきまで交差点中央にあった破壊が、もう足元まで食い込んでいた。あらゆるものが、悲鳴も上げられないまま塵となる。

 すぐ後ろから、息を呑む音がした。

 無数の斬撃が、駆け抜けた。

 

 




説明は次話で! とりあえず、ノーリスクで使えていたわけではない。

原作から変わったこと
①五条悟vs両面宿儺勃発。
 なお、宿儺の領域が閉じないことは、五条悟には伝えられていない。一般人を閉じ込める帳の影響と地下にいた影響で電波がほぼ通らないので、仕方ないかなと。

それぞれの領域展開の設定としては、以下の範囲で展開してる想定。
 五条悟は、宿儺と五条悟の二人を閉じ込めるという条件。
 宿儺は、半径何メールという条件。
閉じない領域であることを五条が知らないから、素直に領域勝負に移った形。領域勝負になれば、宿儺も外部には手出しできないよね?ってこの時点の五条は考えてるはず。
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