『着せ恋』だと思った? 残念『呪術廻戦』でした! 作:自分のことを五条新菜と信じている(文字数
あと、五条悟の無限については感想でご指摘の通りなんですけど、……すまねぇ、失念してたぜ。あの描写で許してくれぇ……!許せ!(豹変)
反射的に両腕を身体の前に押し広げた。
瞬間、ずしりと《無限》全体に重い抵抗が生じた。何か一つを受け止めているんじゃない。前も横も背後も上も、俺たちを囲うあらゆる場所へ同時に何かが食い込んでいる。
その一つ一つに意識を引かれ、全部を同時に捉え続けるだけで頭の奥がきつく張り詰める。
ほんの一箇所でも緩めれば、そこを起点に均衡が一気に崩れる。そう直感した。
「ぐぅぅッ────!!!!」
張り詰めた感覚を押し流すように、激痛が全身へ雪崩れ込んだ。
着ぐるみ越しに掌が裂け、手の甲、腕、肩と迫るように熱が走り、脇腹、脚へと立て続けに鋭い痛みが突き抜ける。斬撃は確かに俺の身体まで届いている。
それ以上の勢いで、着ぐるみの形が崩れていった。布地には幾つも切れ目が生まれ、千切れた破片が次々と裂けた袖や腹から剥がれ落ちる。それに比べれば、身体に刻まれた傷は不自然なほどに少ない。
本来なら、《無限》は領域展開の壁足り得ない。
《無限》が止めるのは、距離のあるもの。けれど領域に付与された術式は、対象への命中が保証される。近づき、距離を詰め、《無限》に阻まれる。その過程を、必中は必要としない。
だから《伏魔御厨子》の斬撃は、《無限》の手前で止まることなく、そのまま俺の身体を、それどころかみんなを刻むはずだった。
なのに、そうなっていない。
必中は俺まで届いている。それでも、身体へ食い込むところで勢いを失っている。
でも、その負担はそこで頭打ちにならなかった。斬撃が重なるたび、受け止めているものの密度が増していく。最初から限界に近かった感覚が、さらに内側から押し潰されそうなほど膨れ上がっていた。
理由を探っている余裕なんてない。呪力を注ぐ。
楽にはならない。むしろ時間が経つほど、維持するために必要なものが増えているように感じた。
周囲では破砕音が絶えず響き、何もかもが容赦なく刻まれていく。その中で、俺たちのいる場所だけが辛うじて形を残していた。
「五条君……!」
喜多川さんの声がした。
掠れてはいる。でも、痛みに上げた悲鳴じゃない。背後から聞こえるみんなの息も乱れているだけで、誰かが斬られた声は上がっていなかった。
届いていない。少なくとも、まだ喜多川さんたちには。
そう確かめた途端、右腕の傷がさらに深く開いた。
「ィ゛ッ────!!!!」
歯を食いしばり悲鳴を堪える。
さっきまでは皮膚の上を熱がなぞるようだったのに、今度は違う。肉の奥へ刃を差し込まれたような鋭さが残り、流れ出した血が腕を伝っていく。頬から落ちる滴も、もう一つ二つじゃない。額から流れる血は、容赦なく視界を赤く染めていた。
《伏魔御厨子》の斬撃は、確実に深くなっている。
「五条、血……!」
森田君の声が震え、その横で誰かの息を呑む気配がした。
大丈夫と返そうとして息を吸った、その瞬間だった。
脇腹が裂ける。
声にならない息が喉から漏れた。
──守る。
考えるより先に、その言葉だけが頭に残った。
痛む場所を確かめる暇もない。腕から血が落ちる間にも、別の場所へ新しい痛みが刻まれていく。
指が飛ぶ。肉が削げる。骨が覗く。
──守る……!
耳が熱い。片目が潰れ、視界が欠ける。
俺の傷なんてどうでもいい。
後ろから、まだみんなの声が聞こえている。
なら、それでいい。
──守る!!
頬が剥がれ、息が漏れる。千切れた腕が塵に変わる。
誰一人、斬らせない。
みんなだけは、斬らせはしない。
「五条君……!!」
喜多川さんの悲鳴が、耳に届いた。
その声で、すぐ後ろにいる存在が嫌でも鮮明になる。
俺がここで耐えられなくなれば、この斬撃が次に触れるのは誰か。
それだけは、絶対に──
「──嫌だ!!」
手足の感覚はほとんどない。痛みももうわからなくなるほどに満身創痍だ。
だけど。
それでも。
「俺がッ! 死んでも!! みんなをッ守る────!!!!」
叫ぶのとほとんど同時に、呪力が跳ね上がった。
息を吐く暇もない。
俺は両腕を広げたまま、その場に踏みとどまった。
◆
五条若菜の認識は正しい。
通常、《無限》は、領域に付与された術式効果を防ぐことができない。それは、領域内では必中効果によって術式の命中そのものが確定され、《無限》の作用し得る距離が存在しないためである。
それにも関わらず、喜多川海凛を含む六名には斬撃が届かなかった。
それだけでなく、これまで別々の現象として現れてきた五条若菜を巡る異常は、いずれも一つの起点に集約される。
五条若菜の肉体には、
前回後書の書き方が悪かったので、補足です。
ナナミンがやらかしたわけじゃねぇんだ!わかってくれ!
五条悟に連絡したのは、第十話の時だけの想定で、一般人を閉じ込める帳の影響や地下という環境故に電波が入らないので、連絡がとれず、第十話の電話越し以上の情報を得られていない形です。
第十話以降の五条悟の動きとしては、
渋谷に原作時刻で到着 → 帳に即突入 → 駅にも突入 → 地下五階で戦闘 → 獄門疆による封印回避 → 自身を閉じ込める帳の基を破壊 → 羂索を追って明治神宮前駅に続くトンネルを移動 → 着いた時にはもぬけの殻で地上に(この時くらいに一般人を閉じ込める帳が上がる) → 宿儺と接触,
なので、第十話で描写した電話でのやり取りだけが、現時点で五条悟の知り得る情報になります。
若菜としては、五条悟が封印されないことに重きを置いていたのと、たとえ宿儺とやり合うことがあったとしても、渋谷事変時点の宿儺相手に五条悟が負けると思っていないため(領域を破られたとしても、反転術式フル回転でフルスペック宿儺の領域展開に耐えられるという原作知識から)、宿儺のあれこれについては、ナナミンにしか話せていません。
ナナミンについても、仮に五条悟の現在地を正確に把握できたとしても、連絡が取れる時間というのが、五条悟が明治神宮前駅から上がってきて宿儺と接触する数分の間だけなので、現実的に連絡の取りようがなかったという整理です。