『着せ恋』だと思った? 残念『呪術廻戦』でした! 作:自分のことを五条新菜と信じている(文字数
誤字報告もありがとうございます。
あの後、森田君も軽傷を負っていたため、反転術式による治療を施した。その時に「ケアル」と言われたのには、不覚にもクスリとしてしまった。
森田君としては場を和ませるつもりだったのかもしれないけれど、一方で彼のことだから何も考えず見たままを口にした可能性も高いように思う。
だけど、その一言で不思議と視界が開けたのは間違いなかった。
『回復魔法』があるという認識。いざとなれば治せるという安心感。二度の反転術式の行使で掴んだ感触は、みんなを守るという使命感を見事に補強せしめていた。
それと、反転術式を使ったことで、もう一つ分かったことがある。
呪力だ。
さっきまでは、あるらしいとしか分からなかったものが、今は自分の中を流れるものとして感じ取れる。
意識を向けてみれば、喜多川さんたちからもごく微かに同じものを感じた。けれど、俺の中にある呪力は、それとは比べ物にならないほどに大きい。
しかも、その一部が身体の外へ絶えず滲み出していた。今まで呪力の存在すら自覚していなかったのだから、抑え方なんて知るはずもないけれど、さっきの改造人間はこの呪力を感知していたのかもしれない。
もしそうなら、こんな状態の俺は相当目立っていたはずだ。
本当はどうなのか、なんてことは考えても答えは出ない。でも、抑えておくに越したことはない。
喜多川さんたちから感じる程度を目安に、外へ漏出する呪力を身体の内側へ押し留める。反転術式で呪力を動かした時の感覚を思い出しながら意識すると、外へ滲んでいたものが少しずつ薄くなっていった。
これならば、そう目立つこともないだろう。
それに、五条悟を最強足らしめる《無下限呪術》という最硬の盾もある。
少なくとも、さっきまでのような手探りではない。守るために使える手札がある。
その事実が、確かな自信になっていた。
もちろん、それは楽観とは違う。慢心でも、気の緩みでもない。ただ、何ができるのかが少しずつ見えてきた。それだけでも、さっきまでとは大きく違う。
改めてみんなを見回す。喜多川さんも、森田君も、ほかのみんなも、大きな怪我はない。ひとまず、全員無事だ。
なら、次はここからどう動くか。
この場に留まり続けるのは危険だろう。また改造人間が現れないとも限らない。
俺たちはそのまま高架下を抜け、七海さんたちが待機しているであろう十三番出口近辺の交差点へ向かった。
◆
高架下を抜けた先には交差点が見えた。その脇では大規模な工事が進んでいて、歩道沿いに高い仮囲いが続いている。
高架下での騒ぎが伝わったのか、周囲の人影はさっきまでより明らかに減っていた。それでも、交差点の方には足早に離れていく人や、遠巻きに様子を窺う人がちらほら残っている。
俺たちは、交差点と高架下の両方へ目を配れる場所を選んで、ひとまず足を止めた。《帳》の境界も近い。何かあっても、すぐ動ける。
ここなら、周囲を警戒しながら状況を整理するくらいはできそうだった。
立ち止まってからも、喜多川さんは俺のすぐ隣にいた。いつもより、明らかに近い。肩が触れそう、などではなく、肩が触れる距離。
普段なら意識せずにはいられない近さなのに、今は離れずにいてくれることの方がありがたかった。
喜多川さんも、平気なわけじゃないのだろう。時折、高架下の方を気にするように振り返っている。
血で汚れた手を拭き、縁石に腰を下ろして喜多川さんの大きく裂けた衣装だけ、持っていた裁縫道具で簡単に補修する。ちゃんと直すのは帰ってからだ。
絶対に、帰ってから直す。
作業している間も、喜多川さんはそこから離れなかった。俺の手元を見ているだけで、いつものような軽口も出てこない。
「……ごじょー君」
「はい」
「さっきのって……何だったの?」
問いかけながら、喜多川さんの視線がまた高架下へ向いた。
何を聞かれているのかは分かった。
「……呪いに、関係するものだと思います」
「呪い?」
「はい。『呪霊』って呼ばれるものがいるんです。人の負の感情から生まれる、普通の人には見えない化け物みたいなもので……」
少なくとも、あれが元は人間だったなんてことまで、教える必要はない。
俺を見る目が変わるかもしれない。そんな恐れがあるのは確かだけど、不安を煽るだけの真実は、今この時には必要ない。
「ちょっといい?」
山内さんが片手を上げた。
「五条くん、さっきから知ってるみたいに喋ってない?」
「それは……」
当然の指摘だった。
俺は転生者で、ここはおそらく『呪術廻戦』というマンガの世界です。だから、物語の終わりまでなら、ある程度わかります。
ちなみに、皆さんも別のマンガの登場人物によく似ています。
──なんて、言えるわけがない。
「俺も全部分かってるわけじゃないです。ただ、こういうものがあるってことは知ってました」
「どこで?」
「それは……今は、ちょっと説明しづらくて」
我ながら怪しい。
けれど、嘘を重ねるよりはまだマシだ。
「じゃあ、さっき五条が使ったのは?」
柏木君が聞く。
「たぶん、《無下限呪術》って力」
「たぶん?」
「知識としては、名前も存在も知ってた。でも、自分が使えるとは今日まで知らなかった」
「……じゃあ、さっき初めて使ったってこと?」
「うん」
「そっか」
柏木君はまだ何か聞きたそうだったが、ひとまずそこで口を閉じた。
スマートフォンを見る。十九時も半ばをもう過ぎていた。
《帳》が降りてから、思っていた以上に時間が経っている。逆に言えば、これからが本番だ。
五条悟が渋谷へ来る。
そして、地下へ降りる。
真人たちも動く。
原作どおりなら、かなり確度の高い予想だろう。
俺たちはその場から、交差点と《帳》の境界を時々確認しながら、あるかもしれない七海さんの到着を待った。喜多川さんは、その間も俺のすぐそばを離れなかった。
呪力を若菜が把握したので、設定開示。
若菜が無防備に呪力垂れ流し状態だったため、改造人間に襲われた、という整理です。喜多川さんたちが巻き込まれたのは、改造人間のお手手が長かったがための不幸な事故でした。
また、八尋さんたちには《無限》が挟まっていたのに対し、喜多川さんたちに挟まっていなかったのは、術式の防御機構として明確に若菜に危機が迫って術式がオンになったため。
また、真人としては、保険として追い立て役で改造人間を各所に何体か放っていたけど、改造人間としては、若菜とかいう極上スイーツがテクテク歩いて手元に来たため、我慢できずに襲っちゃった⭐︎、という感じ。
他の渋谷駅北側周辺の改造人間は、スリープ状態で待機中。一定数以上の一般人の通過で起動とかそんな感じ。
という独自設定。