TS転生したし病弱系ヒロインになりてぇ!! なった!!! 作:燕目
ヒロイン。
恋愛物においてある意味で主人公以上に作品の顔となる存在であり、恋愛をテーマにした作品においては内面、外面問わず魅力的なヒロインというのは必要不可欠である。主人公がどれだけ魅力的であろうと、いや魅力的であればあるほどヒロインも魅力的でなければ読者視点では主人公が不憫になってしまい、素直に祝福できない気持ちになってしまうからだ。当たり前といえば当たり前だが、魅力的な主人公そして読者からそんな主人公と幸せになれ!結婚しろ!!!と思われるようなヒロインの存在が名作の条件と言えるだろう。そして、そんな二人のやり取りを眺める壁になりたいというのはラブコメ等々恋愛を主題とした作品のファンならば一度は思うことだろう。少なくとも俺は思った。供給はあればあるだけ良いよね……望み過ぎるのはアレだけど……。
どのようなヒロインが良いかというのはまさに人によって千差万別であり、これが良いというのは火種にしかならないので普通なら言うべきではない。しかし、しかし!俺は敢えて叫びたい!病弱系ヒロインって良いよね!!!と。
俺は普段主人公を含めてたくさんの人に救われている、一見か弱そうな病弱系ヒロインがここぞの場面で芯の強さを見せる展開が好きだ。病弱系ヒロインの一言で主人公が救われる的な展開も好きだ。苦しみを乗り越えて主人公と二人で幸せになる展開も大好きだ。子供とか出来てお母さんやってるシーンとか見れたら泣く。たくさん泣いた。俺は病弱系ヒロインの一挙手一投足が好きだ。俺は病弱系ヒロインを愛している。
あぁ、本当に──病弱系ヒロインってほんっっっっとうに良いよね……。
千陽君が園城寺に来てもうすぐ一年。季節は一巡し、あの自認運命の夜があった冬が再び訪れようとしていた。個人的に舞い散る雪と病弱系ヒロインは儚さという点で抜群の相性を見せるので、冬は好きである。まあ、桜の下で儚げに笑う病弱系ヒロインっていうのも良いし、夏の日差しの中で白ワンピースと麦わら帽子を身に纏って笑うのは言うまでもなくグッドだ。秋に舞い散る落ち葉をアンニュイな表情で眺める病弱系ヒロインとかもマストだよね。参ったな……病弱系ヒロインはオールシーズン最高のパーフェクトヒロインだったかぁ……。
そんな病弱系ヒロインたる千歳ちゃんは今冬も絶好調。今この瞬間も病弱系ヒロイン道を高速移動している。具体的に言うと普通に風邪引いちゃって、千歳ちゃんルームにて絶対安静で治療中なのだった。はっはっは。
まあ、子供が風邪ひくのは仕方のないことだ。健康体だろうとなんだろうと病気になる時はなるし、大人と比べて体力がない子供は更なりと言うわけである。子供がいる人にとってはままあることであり、大抵のご家庭では薬飲んで大人しく寝てな!ですむ話であろう。しかし、千歳ちゃんは曲がりなりにも病弱系ヒロインを名乗る存在である。
普段は陰の気を抑えていることや、先生やお父様、最近だと千陽君からの陽の気の補給のおかげで病弱系ヒロイン(健康体)として過ごせている。なんなら陰の気は意図的に調節することで病弱系ヒロインムーブを助けてくれるという、今世において欠かせない相棒のような存在である。実際、この世界だと病弱系ヒロインとか関係なく陰の気全部なくなったら人間としては終わりだしね!
このように普段なら問題はなく、むしろ頼もしささえ感じる陰の気君なのだが。普通に体調不良の時は話が変わってくる。具体的に言うと体がしんどいせいで気の制御がいつもより難しい。それもあって陰の気が傍から見たら三割増し位で出てると思う。そのせいで体内の機能が凄い勢いで抑制されるため、風邪引いてるのに汗は出ない等々ぜんぜん体が治そうとしてくれないのである。簡単に言うと死ぬほど怠いし、しんどい。この世界の普通の人なら病気になって陰の気が増えてもそれに対抗するように陽の気が増えてバランスを取り、その過程で熱が出たりして治るのだが。
千歳ちゃんの場合、魂のせいで陰の気が濃すぎて少し体内で陽の気が増えようが、焼け石に水状態で体が治る方向に向かってくれないのである。この世界、肉体と魂、気は相互に影響し合う的な考えがあって、それに倣うなら多分千歳ちゃんの体は陰の気耐性バリバリな陰ボディになっていると思うのだが。それでもこうなるのだから、そりゃあ普通の人が生まれつきこんな体質だったら即死するよねというものである。あと、風邪にかかると菖蒲先生の薬湯が更にバージョンアップするのも地味に辛い。それと菖蒲先生の目が笑わなくなるのも怖い。それはそれとしてその表情にはとても興奮する。普段ふにゃっと柔らかく笑う人の真剣な表情って緩急も相まって何とも言えない魅力があるよね。
まあ、多少しんどいが風邪引いたらしんどいのなんて当たり前のことだ。それよりもむしろ、いつもより更に血の気が引いてる肌とかより光がなくなってうるんでる目とかに凄く興奮する。陰の気のせいで血の巡りが悪いのもあって、唇とか諸々青白いんだよね。血管内で酸素が回せてないのか息苦しさもあって、呼吸も荒いし、起き上るのもしんどい。てか、布団が重い。そんな普段の溌剌とした姿とは全然異なる様子を見せてくれる千歳ちゃんに凄く興奮する……!血濡れとかもそうだけど立ち絵とか表情の差分って良いよね……。加えて風邪を引いてる時は皆が普段より更に過保護になるので、なんだかちょっと嬉しい。風邪ひいた時とかに優しくされると嬉しいのは前世でも今世でも変わらないよね。流石に毎日これだとお出かけイベントとかを起こせないから困るけど、ワンシーズンに一回くらいならなっても良いかなとは思う。
「コホッ……コホッ……」
しかし、如何せん暇である。うつさないようにと咲良ちゃんには常に側に控えなくて良いって言ってあるし、今日は菖蒲先生も来ないしなぁ。兄様は……兄様だから、見舞いにこられたら逆に千歳ちゃん的にしんどいんだよねぇ。あの人とてもいい人なんだけど、距離感測るの下手というか絶妙にコミュ障なんだよなぁ。実際、一回見舞いに来た時は千歳ちゃんにひたすら話しかけてくるものだから、最終的には菖蒲先生とお母様にしばかれて引きずられていったし。ん?なんか足音が近づいてきてるような。薬の時間はまだ先のはずだし、誰だろう。
◇◇◇
園城寺家。冬となり日没が早まったこともあり、その屋敷は既に宵闇に包まれている。降り積もる雪も相まってその一帯は静けさに包まれ、静寂がシーンという音として聞こえるような気さえする。そんな冬の夜である。
「コホッ……コホッ……」
そんな静かな夜に乾いた咳の音が響く。白い少女──園城寺千歳は独り、その自室にて病床に臥せっていた。平生から血色が悪い肌はより悪く、部屋の外でシンシンと降り積もる雪より白いのではないかという有様。呼吸も荒く、寝返り一つ打つのにも苦悶の声をあげる。常の少女を知る者であれば、口を覆いたくなるような状態であった。そんな少女の部屋の戸が開く。驚く少女の目に映ったのは少年──千陽であった。
「千陽?どうかしたの?駄目よ、風邪がうつってしまうわ」
少年を心配する少女の言葉を無視し、少年はそのままズンズンと少女の布団へと近づいていく。そしておもむろにその青白い手を握ると、その瞬間に少年の体から途轍もない程の陽の気が溢れ出す。
「千陽?」
「!」
少女の体を包み込む陰の気と少年から溢れ出す陽の気が混ざり合い、つり合い、調和していく。あの夜と同じく二人一対による和合、二人で一つの太極。それは一年前の再現か、ただ違うのは少年と少女の立場が逆ということだろう。少女の表情が和らいでいく、肌の色も呼吸も平生のそれへと近づきつつあった。
「ありがとう千陽。ふふっ、助けてもらっちゃったわね」
依然として苦しそうではあったが、峠は越えたのだろう。少年がよく知るあの笑顔を浮かべながら、少年が大好きな手で少女は少年の頭を撫でつける。
「けれど、駄目よ?あんな風に気を使ったら、また千陽の体がしんどくなってしまうかもしれないの。だから、次からは大丈夫。私は薬を飲んでいれば治るもの」
「や!」
「……そんなこと言わないで?私は千陽が大切なの。だから」
「ちとせ!おなじ!」
「……えっと千陽も私が大切ってこと?」
そうだと言わんばかりに首が取れるような勢いで少年の首が縦に振られる。一年たってようやく話せるようになり始めた、たどたどしい言葉を必死に使いながら少年は表現する。その思いを。この一年で積み重なった少女への思い、そこから発露した感情を。足りない言葉は多く、少年自身にも何と言えばいいか分からないものばかりの穴だらけの会話。それでも届いたものは確かにあった。だって今、白い少女は輝くように笑っているのだから。
「……風邪の時ってね、まるでこの世に一人ぼっちになったような気分になる時があるの。だけど、今回は違うわね。ありがとう千陽。心も体も助けられちゃった」
褒められたことは理解したのだろう、少年はエッヘンと言わんばかりに胸を張って少女を見た。少女は吹き出すように笑うと穏やかな声で少年への思いを告げる。
「千陽と出会ってからずっと楽しいことばっかりだわ。千陽、私とこうして出会ってくれて、生まれてきてくれてありがとう」
「───」
その言葉を、その声を、少年はきっと怪異に成り果てようとも忘れまい。そう、あの日の夜に見たあの笑顔と同じように──少年は何があっても忘れまい。
これは冬の記憶。大切な大切な少年の二度目の冬の記憶。
かくて季節は廻り行く。その中で太陽たる少年と太陰たる少女は星のごとく、陰陽のごとく、互いを求め、惹かれ、そして反発し、それでもきっと共にある。これはそんな物語。どこにだってある少年少女の恋のお話。
(ンほぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~!今の流れしゅごいのぉぉぉぉぉ!!!)
……………………かくて季節は廻り行く!その中で太陽たる少年と太陰たる少女は星のごとく、陰陽のごとく、互いを求め、惹かれ、そして反発し、それでもきっと共にある!これはそんな物語!!どこにだってある少年少女の恋のお話!!!
はい!ここら辺でええ感じのオープニングムービーがドーン!!!
以上 幼年期兼出会い編?第一章?…………なんか分からんないけどとりあえず序盤はカン!
シルバーウイークのうちにキリの良いところまでいきたかったので駆け抜けましたが、なんとかなったのでヨシ!
いやぁここからどんなラブコメをするのか楽しみですね!それでは私はそろそろ失礼する。