二本の閃光が、渋谷の空を彩っている。
一つは、呪術界御三家が一つ禪院家の当主である男、禪院扇。
もう一つは、呪霊の中でも最高位である自然への畏怖が形を得た存在、漏瑚。
「疾ッ!!」
「カァ!!」
両足から炎熱を噴射し空へと飛び上がった両者は、阻むものの何もない空において、完全に自由な三次元起動という複雑な動きの中で、互いの命を摘むべく殺意をぶつけ合っている。
禪院扇は握った刀の峰から炎熱を噴射し、それに引っ張られる動きを基礎としつつ、肩や足、腰や背から細かく炎熱の噴射を追加することで、中空で縦横無尽に回転しながらその刃を呪霊・漏瑚に届かせんと迫る。
漏瑚は自らの呪力量と呪力出力を遺憾無く発揮し、両手両足から炎熱の噴射による高速移動を駆使して禪院扇へと迫り、振り下ろされる刃を避けて自らの間合いへと禪院扇が入った瞬間に、あるときは肘から炎熱を噴射することで加速した拳を、またあるときは踵から炎熱を噴射することで加速した爪先を禪院扇へと向ける。
禪院扇の振るう刃による鋭い一撃はもちろんのこと、呪霊・漏瑚が向ける一撃もまた下手に防げばその守りごと破壊する威力を内包していた。
互いが互いに一撃必殺。皮膚をかすって通り抜ける相手の一撃に冷や汗を流しながら、寸の差で相手の攻撃を回避しつつ、『殺される前に殺すのだ』という決意を胸に、臆して攻め手を緩めるようなことはしない。
むしろ眼前を相手を前に自らの命を守ろうなどと思って半端に守りに入れば、その心の隙を突かれ殺されると確認するまでもなく理解していた。
「喝ッ!!!」
「ガッ……!」
絶妙な膠着状態の中、天秤を先に崩したのは禪院扇であった。
脳天に向けて突き入れられた刃を避けるべく仰け反った漏瑚へ向けて、刀から離した片手の平を向け、術式反転によって生まれた氷結をもって漏瑚を拘束しに掛かる。
「このまま祓わせてもらうッ!」
「この程度で止まるものか!!」
即座に呪力を全開にした漏瑚の炎によって、一瞬にして体の動きを阻害していた氷は溶け落ちる。
「まだだ、畳み掛けるーー術式反転『大紅蓮氷輪丸』!!」
振るわれた刃から列車並の巨大さを持ち、龍を象った氷結が放たれる。
「撃ち合いなら望むところよ!!」
手首を合わせ、両手のひらを氷龍へと向けた漏瑚から、莫大な炎熱が照射される。
炎熱を食い尽くすべく顎を開き前へと進まんとする氷龍と、それを阻む炎熱が拮抗し……。
爆発する。
「ハァ、ハァ!……しぶといな……ッ」
「はぁ、はぁ!……こちらの……台詞だっ」
炎熱を超えることの叶わなかった氷龍は溶け落ち水蒸気となって大気に溶け、しかし炎熱もまた氷龍を溶かすだけで繰り手を燃やし尽くすには至らなかった。
戦いは、まだ終わらない
今回で終わらせるつもりだったけど長くなっちまったのでここまで