思いついたまま短編集   作:戯れ

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チャドの出番も盛られるだろうなと思ってたら全然そんなことなさそうだったので


BLEACH Diablo Fist

 

「むっ……」

 

 真世界城(ヴァールヴェルト)にて。

 

 一護と織姫が通り過ぎていった通路にて、岩鷲と共に石像兵の相手をし続けていたが、突如その石像兵達の動きが止まり、塵となって崩れ落ちる。

 

「な、なんだぁ……?ようやくコイツらを動かしてる力でも尽きたか?」

 

「いや……」

 

 そうではない。いくらこの石像兵達を倒しても、何かが減っているような素振りは見られないし……なにより、目の前から感じるプレッシャーはむしろ増加しているように感じる。

 

 戦闘の構えを解かないまま目の前に積もった塵の山を睨みつけていると、徐々にその塵は一つ所に集まり、巨大な石像兵ではなく、通常の人間サイズのものへと変化した。

 

「……おい、チャド」

 

「あぁ、分かっている」

 

 見た目だけで言えば、先程の巨大な石像兵の方が威圧的だっただろう。

 だか感じる脅威は、今の石像兵の姿のほうが桁違いに強い。

 恐らく、物量と質量でゴリ押しするだけでは討ち取れないと、向こう側が判断したのだろう。

 

 瞬間、石像兵が瞬く間に岩鷲の眼前に迫っていた。

 

「岩鷲!!」

 

(今のは瞬歩!?いや、滅却師の力が元になっているなら飛廉脚か!?)

 

「へっ、態々近づいてくれるってんならありがたいぜ!砂になぁれっ石波!!」

 

 今までもそうしていたように、岩鷲は例の石を粉末にする鬼道(なのだろうか?)を石像兵に対して行使する。

 だが、石像兵は今までのように崩れることはなく、僅かに動きを止めただけでーーそのまま、腕を振りかぶった。

 

「っ、巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)……!」

 

 岩鷲との間に体を割り込ませる形で飛び込み、防御の力が宿った右腕を敵の攻撃の前に晒す。

 

 ガァン!!

 

「むっ……!!」

 

 酷く硬質な音が響くとともに、右腕に強い衝撃が来る。

 それに逆らわずに岩鷲を突き飛ばす形で後ろへと飛び退った。

 

「……っはぁ!助かったぜぇ、チャド!……お前は大丈夫か?」

 

「む、問題ない」

 

 二人で共に体勢を整えるとともに、様子の一変した石像兵を睨み据える。

 落ち着いてよく見れば、大きさ以外にも見た目に変化した部分が見て取れる。

 元の表面は石像と呼ぶに相応しい白色をしていたが、暗くて分かりづらくはあるが今の石像兵には光沢が宿っているのが見て取れる。何よりーー

 

「……『I』?」

 

 顔の部分に大きく『I』の模様が刻まれているのが見えた。

 

(英数字の1?……いや、あの硬質で重い感触……Iron()?)

 

 思考に時間を割けたのはそこまでだった。

 

「っ、コッチ来たぞ!」

 

「オレが前に出る!」

 

 アレを生身で受けるのは厳しいだろう。

 右腕に宿した盾の力で以て石像兵……否、鉄像兵の拳を受け止める。

 

「むっ……!」

 

 二度、三度と打ち込まれる拳に対して、幾度となく防御を重ねていく。

 

 鉄のごとき硬さと重さを手に入れた向こうの力は大したものだ、しかしーー

 

「体の頑丈さには、オレも自信がある……!」

 

 この程度の攻撃ならば、百発受けても倒れはしない。

 

「ぬんっ!!」

 

 鉄像兵の攻撃に合わせて体を押し込み、体勢を崩させる。

 すかさず、真っ白な肌に血のような赤いラインの走った、己の左腕を振りかぶる。

 

悪魔の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)ーー魔人の一撃(ラ・ムエルテ)!!」

 

 ボディに向けて、完璧な形で拳が突き刺さる。

 が、

 

「……頑丈だな」

 

 石像兵のように一撃で砕け散るようなことはなかった。

 殴った感触からして、向こうも向こうでこちらの一撃を百発でも耐えるくらいの耐久力はあるだろう。

 

 

 

「っふー……」

 

 肺の中に溜まった空気を吐き出し、全身を適度に脱力させる。

 踵を上げ、下半身を柔らかく保ち、相手に対して半身の状態で、防御の右腕を前に、攻撃の左腕を後ろへと回す。

 

「だが、人間大になってくれたのはありがたい」

 

 とん、とん、とリズミカルに爪先で床を叩きーー一瞬で間合いを詰める。

 

「シッ!」

 

 打ち出すのは、左右でのワンツー。ボクシングにおいて、最も基本と言っていい(スタイル)である。

 霊力を噴出させて加速させた速度の右で以て相手の体勢を崩し、霊力を込めることで威力を上げた左を顔面に叩きこむ。

 

 鉄像兵も負けじと拳を打ち返してくるが、素早いステップワークを駆使して避け、避けきれない攻撃は右腕で受けることで防ぐ。

 相手の体が拳を殴り抜いた拍子に流れた一瞬の隙を見逃さず、右の一撃目で体勢を崩し、そこに左の一撃を叩き込む。

 

 互いの身体能力に大きな差は無い。

 だが、素人目に見ても分かるほどに、そこには歴然とした技術の差があった。

 

「生まれ持った力に任せた雑な戦い方……まるで、昔のオレを見ているようだ」

 

 しかし、それが有効であることも確かだった。

 何度も左による一撃を叩き込み、それがダメージとなっており、注視すればその顔面に僅かに罅が入っているのが見て取れる。

 だが、このペースでは相手が倒れるまでいつまでかかるか分からない。

 

「……あんまりのんびりしていると、一護が帰ってきてしまうかもしれないな」

 

 前ばかり向いている親友が、安心して帰ってこられるように。

 帰り道に立ちはだかる障害は、さっさと取り除いてやらねばならない。

 

 『I』の文字のまま変わらず殴りかかってくる鉄像兵に対して、此方もまた構えを維持したまま突っ込む。

 先程までと変わらない雑な連撃に対して、しかし反撃は行わず、じっとその瞬間を待つ。

 そして、こちらが見せた隙に対して、鉄像兵は左の大振りを放ってしまった。

 

「っ、らぁ!!」

 

 相手の左をこちらの右でガードし、ガラ空きになったボディに向けて、渾身の左をアッパー気味に叩き込む。

 リバーブロー。

 本来、人間に向ければ悶絶必至のフィニッシュ・ブロー足りうる一撃。

 しかし相手は人間ならぬ霊力で動く人擬きの兵士。内蔵などないだろう相手は、打たれた部位に僅かに罅が入る程度で、深いダメージが入った様子はない。

 だから、狙っていたのはこの構図。

 支えるもののない空中に相手をかち上げ、こちらが『溜め』を作るための一瞬の隙が欲しかった。

 

「これで、決めさせてもらう……!」

 

 自らの右腕で、左腕を力の限り掴む。

 防御の右腕と、攻撃の左腕。

 しかしどちらも己の体の一部。本来、分けて考える必要などないのだ。

 右腕に集約している力を、左腕に注ぎ込み、自身の中にある全ての力を左腕ーーその先端、指先へと集中させる。

 次元に歪みが生まれるほどの霊力の収束。奇しくもそれは、破面……その中の上位のごく一部が行使するとある奥義を放つ姿に酷似していた。

 

 

 

 

 

王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)

 

 

 

 

 

 

 極光が放たれ、城を守護していた名も無き兵は、跡形もなく消え去った。

 

「……一護達は、まだ帰ってこないか」

 

 ならば、迎えに行くとしよう。

 アイツの背中を守ってやることが、オレにとっての喜びなのだから。

 

 

 




岩鷲「……オレの出番は?」

どうしてもチャドに王虚の閃光撃たせたかったのでカットです。
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