思いついたまま短編集 作:戯れ
多くの人々に見送られ、余りに短い、だが後悔はない生涯を終えた竈門炭治郎。
目を覚まし、見覚えのない家屋の立ち並ぶ中で、炭治郎は異形の怪物に襲われていた。
「なんだ、この化物は……!?」
鬼ではない。
竈門炭治郎はそう直感する。
人を喰った鬼特有の、あの鼻の奥を突く錆びた鉄のような匂いがしない。
(けど、それならこいつはなんなんだ……!?)
通常の人間に倍するほどの体躯、骨のように真白な仮面、胸の中心に空いた孔。
どれをとっても自分の知る通常の生き物のどれにも当てはまらない異形としか言いようのない姿。
『ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!』
「くっ……」
吠え声?を上げながら拳を振り上げ向かってくる異形。
それが何なのかは判断がつかない。
(けれど、襲ってくるというのなら!)
こちらとしても無抵抗でいる理由などない。
火が燃え上がるような、異常な風切り音が鳴り響く。
異形には分からない、その音が、一人の人間から発せられる『呼吸音』であることなど。
ヒノカミ神楽ーー陽華突
無手によるヒノカミ神楽の使用。
常人ならざる威力によって放たれる拳に、異形の怪物も倒れ伏す。
が、そこまで。
(傷一つ入っていない!)
怒りの形相で立ち上がる怪物。
戦う姿勢を崩さないながらも、炭治郎は思わずには居られない。
(せめて……日輪刀があれば……!)
如何にしてこの窮地を脱するか、出口の見えない中で額を一筋の冷や汗が流れーー
(えっ?)
とある匂いが鼻腔をくすぐる。
もう二度と会えることはないと思っていた。
だが、『自分がどうしてここに来たのか』を思い出し、『もしかしたら』という可能性が頭を過る。
「下がれ!竈門少年!!」
言われるがままに、怪物に背を向けて走り出す。
その脇を、炎そのもののような鮮やかな髪色の人物が走り抜けていった。
炎の呼吸・弐ノ型ーー昇り炎天
繰り出された斬撃が怪物の仮面を斬り裂いた。
『ヲ"ヲ"ヲ"ヲ"ヲ"ヲ"……』
断末魔を上げて、塵となって崩れ落ちる異形の怪物。
だが炭治郎の視線はそれよりも、自らを守るべく刀を振るった……ひどく懐かしい匂いのする、一人の剣士へと注がれていた。
「君がこうも若くしてこちらに来てしまったことを考えれば、喜ぶべきか否かは迷うところではあるが……」
「いや!しかし!それはそれ、これはこれだ!」
「またこうして会えたこと、話す機会を得られたことは、素直に嬉しい!」
「久しぶりだな!竈門少年!!」
「煉獄さん!!」
予期せぬ再会に、溢れてくる涙を堪えることが出来ず。
炭治郎は、人目も憚らず泣き崩れた。
BLEACH側は丁度百年前の浦原事変(冤罪)直後の隊長格スカスカ時分を想定