「戦闘突入。 極力早く始末する」
ギュンッ! ドドドドドドドドッッ!!
ヒナの構えた紫色の機関銃、終末デストロイヤーの銃口が光れば、轟音と共に無数の弾丸がマルコのスラグガンナーに向かう。
バルカンやヘビーマシンガン以上の迫力に、ヒナは間違いなく猛者であると認めたマルコは、全力を尽くさねばミンチより酷い事になりそうだと内心ビビった。
だが今まで数多の修羅場を潜り抜けた身。 これくらいで終わらせてやる気はない。
「弾幕勝負でもするか!?」
戦車形態になり、車高を低くして被弾率を下げつつ、バルカンで全力フルオート。
互いの弾丸が交差し、ぶつかり、弾道が逸れ、或いは対消滅し、空中で火花が散る。
衝撃が、流れ弾が、四方八方に飛び散って、ビルのガラスや壁を無差別に破壊し回った。
「主砲もな、吹っ飛べ!」
マルコ、隙を見てキャノンを発射。
顔面臼砲から放たれた低初速の榴弾が、情けなくも弾幕を避けるように放物線を描き、ヒナの足元へ落下するも。
「無駄よ」
蝙蝠の翼を広げ、後方へと飛び退けるヒナ。
刹那、ヒナがいた所に着弾、爆発。 アスファルトの大地が爆ぜた。
「変なロボット、いえ戦車かしら。 どっちでも良いけど」
「スラグガンナーを前に余裕綽々かよ、流石は委員長ってか! 気に入らねぇぜ!」
ガチャンと人型形態になり、ブースターを蒸して飛び上がるマルコ。
さっきしたように、有利な高い位置からバルカンを撃ち下ろす。
アスファルトにヒビが入り、砂塵が舞い、砂と鉄の暴風の中にヒナを閉じ込める。
「どうだ! なに!?」
「飛び上がれるのね。 面白いわ」
淡々と感想を言いながら、表情1つ変えずに銃撃を受けるヒナ。
多少煤汚れのようなのがついていくので、全く効いていない訳ではなさそうだが、それにしてもよろけもしないとは。 小さく華奢な体のどこに、それだけの耐久力があるのか。
「マジかよ! どんだけタフなんだお前!?」
「そういうあなたは、どれくらい耐えられるか見ものね」
「あぁクソッ!?」
自由落下を始めたガンナーに、情け容赦無く弾幕を浴びせるヒナ。
マルコは苦し紛れにバルカンを乱射、キャノンを弾幕に撃って爆発、爆風で防御を試みるも、今度ばかりは相殺できずに被弾。 ガチャァンと甲高い金属音が響けば、仰け反り地面に落下する。
「ぐっ、痛ってぇなチクショウ!?」
「まだやる?」
「たかが1発……!」
「そう。 じゃ、動けなくしてあげる」
ドドドドッ! と容赦なく撃つヒナ。
ガンナーはまだ体勢が整っていない。 どうする事もできないまま、銃弾がガンナーの装甲をズタズタに食い破り、蜂の巣になっていき、爆発するというその瞬間。
「まだだ!」
爆炎噴き上がるキューポラからマルコが飛び出すと、手には単発式に見える擲弾銃……グレネードランチャー、スーパーグレネードが。
ガチャ!!
“スゥパッグレネェド‼︎“
飛び出たがままに構え、トリガーを引く!
「くらっとけ!!」
ポンポンポンポンッ!
マルコはその大きな砲口から榴弾を飛び出させ、直線的な軌道でヒナに向かわせた。 刹那。
ドカンドカンドカンドカンッ!
接触、信管作動。
爆発に次ぐ爆発。 爆炎がヒナと一帯を抱擁。
無慈悲な爆音と暴力が静寂を齎す───。
「面倒かけないで」
「嘘だろマジかよ!!?」
驚愕の先に、陽炎の中から揺らめく人影。
爆煙を破って現れるは、煤塗れになるも、ほぼ無傷のヒナだった。
なぜ生きている!?
歴戦のマルコも驚愕だ。
一応、アレン曹長とかモーデン元帥みたいな人外級のタフガイと対峙してきた経験があるとはいえ。 目の前にいるのは小柄で華奢な少女なのだ。 見た目からの印象の差がデカ過ぎる。
(チッ、次はどうする!?)
弾切れの擲弾銃を横に投げ捨て考える。
己のセオリー通りなら、倒れぬなら倒れるまで撃てば良いが……。
(倒れるまで拳銃を撃ち続けるか、グレネードを投げまくるか。 弾が切れたらナイフで……なんてのは、やりたくねぇが)
モブ生徒とは比較にならない耐久力と機動力、そして攻撃力だ。 嫌でもそう認識させられる強さがある。
ヤバい奴に手を出してしまったと若干後悔するマルコ。 しかし啖呵を切って喧嘩をした手前、引っ込みが効かないのも事実。
小娘相手に頭を下げて赦しを乞うなんて、プライド的に許せる筈もない。
恥を忍んでアビドス生に助けを求めるか。 冷や汗を垂らしながら、何とか突破口を模索していると。
「マルコ先生、助太刀が必要かな?」
「ホシノ!」
ホシノが居並んだ。
その目は、今までにないマジの目つきで、左手にはいつの間にか折り畳み式の盾……アイアンホルスを構えている。
「あなたは暁の……」
そして、急に反応を示し銃口を外すヒナ。
マルコとホシノは怪訝な顔をするも、何やら戦意を喪失したらしい。
「2年前、情報部でマークしてたけど。 変わったわね。 やっぱり、あんな事があったからかしら。 それとも後輩の存在か。 何にせよ強いのね」
「なんだ知り合いか?」
「おじさんのファンかな〜?」
「なんでもない……じゃ、私は行くわ。 仕事に戻らなきゃならないもの」
「おい!?」
ヒナは静止を聞かず行ってしまった。
仮に止めたところで、どうする事もできなかったかも知れないが、便利屋や店の件といい、聞きたい事はあった故に。
「どうすんだよ後始末。 後でゲヘナの風紀委員会に請求書や抗議文を送れば良いのか?」
「先生が壊した分もあるけどねぇ?」
「言うな。 コラテラルダメージだよ。 あとこういう時は、相手に全部の責任を投げちまえば良い」
「うへぇ。 マルコ先生、やっぱワルだねぇ」
「言ってろ。 はぁ、本題に戻るぞ」
何とか山場は超えたか。
しかし本題、カイザー関連が残っている。
便利屋は後回しにし、マルコ達はブラックマーケットへ足をのばすのであった……。