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「あわわわ……! 飛行船より凄い!?」
「ブラックマーケットって、あんなのも装備してたんだねぇ。 おじさんびっくりだよぉ」
「デカいだけ。 堕とせば良い」
「間近で飛ばれると迫力が違いますね⭐︎」
「てか何処から飛んできたのよ!?」
「マルコ先生! 何とかできますか?」
「前に堕とした事がある。 またやるだけだ」
現れたはオレワナKP-61ザ・キーシⅡ。
かつてアジラビア砂漠で反乱軍の残党が使用していた大型機である。
先代ko-42hザ・キーシはタンデムローターの輸送ヘリだったが、この機体は推進機にジェットエンジンを使用した輸送機となっており、多数の兵員と大量の爆弾を運搬する事ができる。
大型機でありながら、両翼に備えた4基のエンジンによる垂直離着陸を採用している。 その重量を支える為に、どれだけの推力と燃料を浪費しているのだろうか。
と、かなりの力技をしていそうな機体だが、下方からの攻撃に対する防御は低いようで。
かつてマルコが対峙した時は、地面スレスレを飛行、武装ではなく左右のジェット噴射で攻撃してくる他、兵士や爆弾をばら撒きして攻撃してきた。
なぜ高高度から攻撃しないのか。 スペックが足りないのか。 歩兵を無事降下させる為か。 或いは確実に敵を仕留める為に体当たり同然な行いをしていたのか。
何にせよ銃弾が届く位置だ。 ならやる事は決まっているよね、とマルコはバルカンを上方に撃ちまくる!
「また蜂の巣になりやがれ!」
大きな機体表面、防御板が弾丸でベコベコとへこみ、何発かは抜けていく。
だがキーシもやられっぱなしではない。 真上に飛来、両翼エンジンから下方に向けてジェット噴射、炎の檻に閉じ込めると、爆弾層が開いた!
「やべっ、避けろシロコ!」
「簡単に言う」
ハンドルが切られ、ブレーキによる不快な摩擦音がジェットエンジンに混ざった瞬間。
機体の腹から大量の爆弾が道路に撒かれ、爆発に次ぐ爆発。 スラグモービルを大きく揺らす。
「よく避けた! だが爆弾といい、威力といい俺の知る機体と少し異なるな。 流石に改造されたか?」
「マルコ先生の昔話は分かんないけど、援護するよ。 このままじゃ全員道連れだもんね」
「助かるホシノ! セリカも援護できるか?」
「やるわよ! やらなきゃやられるし!」
「ノノミは背後を見張ってくれ! また追手が来たら、そのミニガンを撃ちまくれ! 射角がとれたら、爆撃機にも撃ってやれ!」
「わかりました!」
「アヤネ! できる範囲で良い、ドローンで周囲を俯瞰、異常があったら即知らせろ!」
「はい!」
ホシノとセリカ、窓を開けて外に銃身を出すと、空に向かって適当に撃つ。
ノノミは背後のガラスを破り、ミニガンを銃座として据えた。
マルコは更に指示を出していく。
「両翼のエンジンに集中砲火!」
「あいよ〜!」「分かってた!」
ホシノとセリカが、翼の下に懸架されるように付いているエンジンを狙う。
先に壊したのはホシノ。 狙われたエンジンは秒と経たず被弾、爆発。 バーナーの火の代わりに黒煙を上げ、機体を持ち上げる力を失った。
命中率の高い散弾銃であること、射手の練度の高さが見て取れる。
「よくやった2人とも!」
「でも飛行機は堕ちないねぇ」
「デカいだけあってタフね!?」
「なら分かってんだろ、次は本体を撃て!」
推力を失い、バランスを崩すキーシの機体。
黒煙を空に撒き散らしながら、飲酒運転のようにフラフラと蛇行し始めた。
それでも両翼の大きさのままに空中を飛び続け、なんとかマルコ達の車を追跡。 バルカン砲の弾幕を受け、剥がれた破片を地上に降らしながらも次なる攻撃を仕掛ける!
「気をつけろ! 乗組員が直接来る!」
爆弾槽や空いた穴から、ロボット兵が銃口を覗かせて、ライフルで直接攻撃。
大型機の最後の抵抗、意地と見れば、憐れで美しく。 しかしモービルの周囲で砂塵が舞い、被弾して火花を散らされる側はやられてやる道理はない。
「満身創痍なのに、よくやるねぇ。 まっ、やっちゃうけど」
ホシノ、顔を出す兵士に容赦なく散弾を浴びせ、黙らせた。
被弾して気を失ったロボットは、バランスを崩して地上に落下。 地面に叩きつけられると、後方へと流れていき見えなくなる。
「いい加減に堕ちろやデカブツが!!」
攻撃手段をアッサリ失い、ボロボロになって尚も飛び続ける鉄屑も、遂に終わりが来た。
マルコのバルカンを翼の根本一点に受け続けたキーシは、とうとう付け根が折れて、もげた。
「墜落します!?」
「シロコ、アクセル全開! 巻き込まれるな!」
「わかってる!」
機体は大きく傾倒。 斜めになり、惜しむように片翼を空へ上げながら、側面から地面に墜落。
大きな砂埃と火花の道を描き切る前に、機体本体は大爆発、炎上。 爆音と衝撃波が空気を揺らし、そして漸く物言わぬ鉄屑の山と成り果て……終わった。
「よし……ノノミ、追撃は?」
「今のところ大丈夫です」
「アヤネ、問題なしか?」
「敵影、確認できません」
「みんな、よくやった。 帰るぞ。 帰るまでが任務だ」
戦闘が終わった。
まさか爆撃機が来るとは……基地でも薄ら感じていたが、キヴォトスでもこの手があるようだ。 今後も十分あり得るだろうと息を吐く。
「帰ったら、証拠を元手にしつつカイザーを揺する。 なに、デジタル面は先生に任せとけ」
「何をするんですか?」
「なに、陽の目を見せてやろうってだけさ」
皆を乗せたスラグモービルは、安全そうな市街地の隅に停車。 とりまゲストとなったファウストならぬヒフミを先に返した。
「巻き込んで悪かったなヒフミ。 まぁ、もうあんな所を1人で彷徨くなよ」
「あはは……そうですね。 目当ての物も見つからなかったですし、飛行機に襲われて、しかもソレを撃墜までしちゃって……今日は一刻も早く帰ります……ですが、助けてくれたご恩、感謝致します。 いつか必ずお返しします!」
「真面目だな。 趣味に走って危険に走る短所はあるが、それは俺もか」
背中を見送ると、今度は戦利品の証拠書類と、共に入っていた札束の扱いを話し合う。
特に後者は副次的な物で扱いに困った。
「さ、札束まで盗んでたの!? これじゃあ本当に銀行強盗じゃない!」
「受付がパニくるがままに入れてきたんだよ。 でもよ、法外な利子を思えば、この金はお前らの金って事でも良さそうだが」
セリカが興奮し、マルコは報酬に数えた。
だが先輩のホシノは諌める。
「駄目だよセリカちゃん」
「どうしてですかホシノ先輩! これだけあれば、借金を一気に返済できます! そもそも、これは私達が汗水垂らして働いて稼いだお金で、それを不当に搾取されていたんですよ!」
「例えそうでも、今この場にあるのは悪い方法で手に入れたお金だよ。 これを手にしちゃったら、私達も奴らと同じになっちゃうよ」
「じゃあ、このお金はどうするんです?」
セリカは困惑し、マルコはホシノの正義感、というか線引きに感心して頷く。
つい迂闊な事を言った己を恥じつつ、ホシノが場に流されるだけの先輩ではない事を認める。
やはり過去に何かあったのかも知れないな、と思っていた時。 人影が足元に差した事で緊張が走る。
「ッ! 誰だ?」
「ま、待って! 待って頂戴!」
拳銃を抜きつつ振り返った先。
そこにいたのは、何と便利屋68のアル達だ。
「お前達は!?」
驚き、銃口を外すマルコ。
ここにきて便利屋に再会するとは。 直ぐに捕縛して、店の件を追及しようと考えるも、アルは此方の正体に気付かないまま、何やら自論というか、推しに会ったファンのように興奮して語り出す。
「さっきはその、凄かったわ! とても感動したの! 颯爽と現れて、堂々と去る姿がアウトローのソレというか、格好良かったというか!」
「はぁ?」
「ええと、あと追われている時だって! 大きな飛行機すら撃墜するとか、もう強くて絵になったわ!」
「……そうか」
覆面をつけたままだから、先生とアビドス生ではなく名も知らぬ強盗団と思われている。
背後の部下達は気付いている様子だが、アルの無邪気な笑顔に配慮して何も言わないでいるらしい。
マルコ達も察して、合わせる事にした。 ここでバレてドンパチになったら面倒だ。
「あなた達の名前はあるの? 是非聞かせて欲しいわ!」
「あー……俺たちは……」
「覆面水着団です⭐︎」
ノノミが陽気に出まかせを言った!
ここは若い子に任せて、適当にズラかろう。
「ん、リーダーは紙袋のファウスト」
「覆面水着団! ファウスト! 今日の事、きっと忘れないわ!」
シロコが隙あらば罪を外部に被せるが、アルは憧れが止まらないらしい。 水着要素が無いのに、何の疑いもなく受け入れる。
「……お前ら、適当なとこで行くぞ」
「はぁい。 じゃあね、えーと、キミタチは?」
「便利屋68よ!」
「便利屋さん、応援ありがとです⭐︎」
「それじゃあね〜、バイバイ〜!」
よし。 上手い事誤魔化した。
マルコ達は最後に謎の疲労感を味わいつつ、証拠書類を学校へ持ち帰るのに成功するのだった。
「あら。 覆面水着団がバッグを忘れていってるわ。 中身は……大量の札束!?」
そしてホシノ、どさくさに紛れて金を置いて便利屋に押し付けていた。 ワルに変わりない。
「プレゼントじゃない? 貰っちゃえばアルちゃん!」
「だ、駄目よ! ええと、警察に、そんな事したら私達が捕まっちゃいそう……ええと、そうよ!」
扱いに困ったアルは、柴関ラーメンの店主、柴大将の元へ謝罪として送金。
突然の大金に柴大将は驚愕するも、アル達にも事情があったんだろうと怒っていなかった。
そして大金を前にしても人格者、決して驕る事なく基本貯金とする。
そして自らの元の貯金を崩して、店を建て直し……ではなく、屋台でラーメン屋を再開する事となるのであった。
「社長、まだ気付いてないみたいだから言うけど、あの人たちアビドスの生徒だよ」
「な、な、なんですってー!!?」
そしてアルは、いつも通りであった……。
マンネリ化、失速感が否めず……