キヴォトスラッグアーカイブ   作:ハヤモ

23 / 55
悪徳カイザーPMC理事に仕返し


マルコ先生、脳筋にあらず。

 

 

「大変です! ブラックマーケットの銀行が襲撃され、現金及び紙媒体による記録書が強奪されました!」

 

「追撃に出た、貴重な爆撃機も失いました!」

 

「サーバーに不正アクセス! 新型コンピュータウィルスによる攻撃も検知! 金融会社のみならず、PMC、インダストリー社、各社口座全て凍結! 数字は全てゼロに!?」

 

「不正取引の証拠流出! クロノス報道部及び連邦生徒会から追及の声が!」

 

 

アビドス生が銀行襲撃後、カイザーコーポレーションは混乱の坩堝へ叩き落とされた。

銀行を物理的に襲われた程度なら、ここまで取り乱さない。 言わずもがな、マルコの仕業だ。 自身が趣味とするコンピュータ、ハッキングで不正を暴き回ったのだ。

特に自作ウィルスをサーバーに注入したのが大きい。 ウィルスは自発的に悪徳大企業が使用するセキュリティ、ファイヤウォールを秒で突破。 続々と不正データをネットの海へ垂れ流し、既に大衆に隠せないレベルにまで達している。

 

 

「おのれおのれおのれぇ!! タイミング的にアビドスか! いやシャーレのマルコ、そうに違いない!!」

 

 

理事は発狂するも、今度はその証拠が無い。

構う余裕も無かった。 溜め込んだ数多の不祥事、不正記録の山、それら流出で起きた濁流が、金も地位も押しつぶす。

 

 

「理事、プレジデントからも責任の所在について追及がきております」

 

「ひいぃ!? 知らん、私は知らんぞ!」

 

「眠れる獅子を起こした責任は大きい、と」

 

「ふざけるなあああ!!」

 

 

アビドスを早期に潰さず、じわじわと痛ぶって楽しんでいたツケが理事に回る。

何かしらボロが出ても、こんなアッサリと足元が崩れる筈が無かったのに。

 

 

「夢だ。 これは悪い夢に決まってる!」

 

 

ところがどっこい、夢じゃない。

カイザーPMC理事は多大な出血を強いられる。

 

取り敢えずカイザー本社の口座は無事だったので、そこから補填して薄皮1枚で繋げつつ、以後、アビドスには手を出さずに本命……砂漠で例のブツの発掘作業に集中しろと本社命令が飛んできた。

同時に連邦捜査部シャーレ、顧問のマルコ先生には要警戒するようにと全社に通達。 事実上、大企業がたかが個人を認知、敵認定した瞬間である。

 

 

「いずれこの借り、返してやるぞマルコォ!」

 

 

復讐にメラメラの理事。

本社命令があるからと、コケにされて黙っていられるほど、地位もプライドも安くなかった。

しかし、その代償はあまりに高くついた事を知るのは、そこそこ未来でのお話である……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マルコ先生! カイザーローンから連絡が!」

 

 

アビドス、廃校対策委員会室。

戻ってきて暫くして、アヤネに1本の電話。

それは前回同様、ローン会社からだった。

 

 

「ほぅ。 なんて言ってる?」

 

「その、計算ミスで借金は返し終わっていたのが判明した、と……返済証明書を発行されました……」

 

「そうか。 良かった、これで解決だ」

 

「あと、基地への攻撃は不問にすると」

 

「おー、暴れた甲斐があったな」

 

 

突然、借金返済終了となり、喜びより困惑が勝つ面々。 マルコはその中で唯一、笑みを浮かべている。

 

 

「何かしたんですか?」

 

「ん? 君達も一緒だったろ? 不正取引の証拠をネットに撒いたお陰さ」

 

 

そう言われるも、腑に落ちない。

お金の流れは勉強不足だから分からない事が多いけど、紙に記載されていた事をネットに流しただけで、こうも上手くいくだろうかと。

そう怪訝な顔を向けられたマルコは、バツが悪そうに頭を掻くとアヤネのノートPC、ネットのトップ画面、ニュース一覧を指差す。

 

 

「お、見てみろ。 大企業カイザーコーポレーションにハッキング、未知のコンピュータウィルスが暴れてるんだってよ。 そんでヤバい不正記録が流出してるんだと。 口座が止まったり、帳簿の上で金が踊って大慌てだとさ。 悪い事をしてきたバチが当たったな?」

 

「……本当に、何も知らないのですね?」

 

「……アヤネ、大人は怖ェんだ。 今後は気をつけな。 まだ1年だろ。 これからのアビドスを、先輩を支えてやれ」

 

 

脅しとも、憐れみとも取れるマルコの言動に、口を結ぶアヤネ。

色々教えて欲しい事はある。 だけど、マルコ先生なりに裏で頑張っていたのだろう事も察する。

まだ大人じゃないけれど。 もう子供のつもりもない。 いや、マルコにとっては子供だろうけど、それでも。

 

 

「マルコ先生」

 

「ん?」

 

「尽力して下さり、ありがとうございました」

 

 

ペコリ、と頭を下げた。

お礼は、ちゃんと言いたかったから。

 

 

「おう」

 

 

そう短く言って、マルコは頭を撫でたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。