もう少しでアビドス編終了
借金は曖昧にして帳消しの流れに持っていき、ホシノが拉致られる展開は潰せても黒幕の黒服の存在がね……
カイザーが所有するビル、その一室。
扉正面に向く形で置かれたデスク、その席には黒いビジネススーツを着た真っ黒な人、いや人影そのものが鎮座していた。
「クックックッ、お待ちしておりました先生」
影は不気味に笑い、人の言葉を語る。
顔の部分には、裂けるように白い光が漏れ出ており、それが目と口を形成しているように見えた。
何にせよ普通の人ではないのは、確かだ。
「メールを寄越したのはアンタか。 来る前にホシノから存在の話は聞いていたが、本当にいたとはな」
だが先生と呼ばれた者、マルコ先生は臆する事なく、淡々と対峙。
人間以外にも相手にしてきた歴戦の戦士だ。恐怖心が無い訳では無いが、常人よりは耐性がある。
「新手の宇宙人か、都市伝説の類か。 どちらにせよ、カイザーPMCの裏で糸を引いてたのが異形の怪物とは……またこのパターンかってところだ」
「おやおや、手厳しい方ですね」
「生憎とこの手は経験済みでね。 それに俺はアンタを知らないし、カイザーに良い感情は無いのもある」
紳士的な装いと口調をする異形の怪物。
その癖、合理性と詐欺師の香りを漂わせる。 マルコの肘が曲がり、いつでも拳銃のホルスターに手が出せる状態を維持する。
「では改めて自己紹介を。 私は黒服。 あなたと同じくキヴォトスの外から来ました」
黒服。 そのままの名乗りだが分かりやすい。
最も名付け親は接触し面識のあるホシノなのだが、本人が気に入ってそのまま使っている。
「ただ同じ世界ではないでしょう。 此方側の礼儀作法には不慣れでして、どうか御容赦を」
「俺みたいに呼ばれたのか? で、先生か何か、役割を押し付けられたと?」
「私はマルコ先生の事情とは異なり、自らの意志で来た者。 目的はこの地に住まう生徒達が内包している神秘の探究、そして崇高の観測。 その為に同志と共に日々研鑽をしております」
「何言ってんのか分からんが、他にも仲間がいるのか。 学園都市宜しくサークルごっこか?」
「詳細は省きますが、ゲマトリアと名乗り活動しております。 以後お見知り置きを」
敵となる組織は他にもいる気配。
不遜な態度で様子見するも、向こうは大企業とつるんでるからか、ゲマトリアとやらが秘密結社なノリで権力がデカいのか、余裕の態度は崩れない。
どんどん厄介になっていくな、とマルコは内心辟易しながらも、対話は続ける。
「で、自己紹介の為だけじゃないだろ?」
「ええ。 アビドス高校の問題を1つ、手荒とはいえ解決に導いたマルコ先生の手腕には、目を見張るものがありまして」
「勧誘ならお断りだ」
「クックックッ、手厳しい。 では質問なのですが、何故リスクを負ってまで、アビドス高校に肩入れを? 先生の役割からやや逸脱しているように感じました。 なぜ他者の為にそこまでするのか。 なぜ、なぜ、なぜ……と。 理由がどうしても分からず、こうして直接聞ければと思った次第です」
「悪い奴が絡んでいて気分が悪かったから、そのしがらみを解いた。 それだけだ。 仕事ついでの私事だよ」
「ふむ。 あくまでも先生の領分とは別枠での行為だったと。 個人的な理由で大企業を攻撃するとは、過去の経験から成せる技という事ですか」
マルコの戦歴を知ってか知らずか、思わせぶりな言動で様子を見てくる黒服。
だが付き合うつもりはない。 今度はマルコ側が尋ねる番だ。
「俺の昔話を話す気はない。 それより黒服、アンタの目的はなんだ。 こっちは話したんだ、今度はそっちの事情を聞こうか……なぜカイザーと裏でつるみ、アビドスに、ホシノにちょっかいをかけた?」
マルコ、単刀直入に聞く。
ここに来る前にホシノから聞いた限り、黒服は正体不明な異形だが、カイザーという表の力を借りて、執拗にホシノを取り入れようとしていた。
まさかそういう趣味とは思えないが。 火星野郎共のように、強い奴を確保してクローンでも作ろうというのか。
そしてそれは当たらずも遠からずだった。
「暁のホルス、いえホシノさんはキヴォトスにおいて最高の神秘をお持ちの方。 その力、是非見たいと考えておりました。 しかしその力を前に強制的に捕縛する事は困難。 ですのでカイザーの力を借りました。 私からはアビドス砂漠に眠るオーパーツの情報を提供する代わりに、ホシノさんの所属する高校を追い詰めて貰い、自発的に言う事を聞く状態に持ち込もうとした訳です」
ホシノに内包する神秘を確保する為、カイザーの立場を利用していたらしい。
もしマルコが基地や企業へのサーバー攻撃で借金を帳消しにしていなかったら、ホシノは後輩を守る為だなんだと自発的に捕まりに行っていたかも知れない。
「そうか、だが残念だったな。 その代償に基地は半壊、サーバーはガタガタ。 そして仮にも俺は先生で彼女達は生徒。 俺の許可なく、勝手な退部や移籍は許されない」
「ええ、それがキヴォトスのルールという事でしたら、私もそれ以上干渉はできないと手を引きました」
「てっきり強硬手段を取るかと思ったが」
「キヴォトスのルールに大きく違反すれば、求める物が手に入らないどころか、痛いしっぺ返しを受けると考えていますので」
妙な所で律儀な奴だった。
これがカイザーPMC理事のような、好戦的な奴だったら分かりやすいのだが……肘を曲げるのをやめるマルコ。 どうもやり難い相手だ。
「なら、もう俺の生徒に手を出すな」
「クックックッ。 ええ、マルコ先生の気が変わらない限りは」
「言ってろ。 だがもし、気に入らない事をしてくるようなら黒服、お前らも敵だ」
そう言って、部屋を後にするマルコ。
その背中を、黒服は莞爾として見送る。
「またお会いしましょう、先生」
そこにあるのは、あくまで黒い敬意だった。
mission:2 COMPLETE!
後書き
次回からミレニアムサイエンススクールにしようかなと。マルコのデジタル面の話、メタスラなどメカ要素を入れたい気持ちもあり
しかし上手く落とし込めるかは不明……
3Dのメタスラだと、マルコ達の喋り方を確認できるのですが、それを参考にすれば良かったなと後悔もあり……