「やあ……1年生のヒビキだよ。 良ければ私が、何か良いものを見繕ってあげる」
マルコがウタハと話している時。
犬耳と尻尾が生えた、大人しめだけど網タイツのヒビキがアリスを案内してあげていた。
「見た感じ、多分だけど……これまでに戦闘経験は無いはず……」
「その言葉は否定します。 アリスは人類を27回救い、魔王軍との46回に渡る戦闘を行い、3桁を超えるダンジョン探索を行ってきました。 経験値はそれなりに豊富です」
「それは、凄いね……とにかく、銃器を使用した経験は……あまり無さそう。 そういう人にはやっぱり拳銃が良い……これはプラスチック製だから軽いし、反動も少ない……そういう意味でも、色々と初心者に優しいはず……それに、何より……この銃にはミレニアム史上、今まで存在しなかった機能が搭載されている」
意味深な発言に、モモイとミドリは尋ねた。
数多最新技術が集うミレニアムにおいても、他に無い能力とは。
「な、何それ?」
「何か聞く前から凄そう。 いったいどんな機能なの?」
「それはね、Bluetooth機能だよ。 音楽鑑賞やファイルの転送まで可能な拳銃」
なんか雲行きが怪しくなった。
「調べた限り、そんなものは存在しなかった。 もちろん、スモモ機能も搭載。 乗り場のICパネルにタッチして、交通機関を利用する事も出来る。 それにNFC機能も付いているから、コンビニペイだって使えちゃう」
「凄い気がするけど、店員の人がびっくりしちゃうよ!」
「強盗と間違われても仕方ないんじゃ?」
思わずツッコミを入れる双子。
それ、スマホで良くないか。 いくら超銃社会キヴォトスでも過剰な試みだった。
「そういえばアリスちゃんはどこに?」
「あっ。 あそこ。 大砲を見てる?」
一方、アリスは何やら大きな長方形の箱、大砲らしき武器に興味を持っていた。
そこに眼鏡をかけた部員、ネクパイなコトリがやってきて、得意気に声をかける。 電気屋さんの店員かな?
「ふっふっふっ、お客さん、お目が高いですね。 説明が必要なら、いつでもどこでも答えをご提供! エンジニア部のマイスター、コトリです! あなたがアリスですね。 ゲーム開発部、4人目のメンバー!」
「あ、コトリちゃん久しぶり。 ところでアリスちゃんが見てるこの大きいのは何? まるで大砲、みたいだけど」
「良い質問ですねミドリ。 これはエンジニア部の下半期の予算、その内の約70%近くをかけて作られたエンジニア部の野心作、宇宙戦艦搭載用レールガンです! 大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器! これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」
「宇宙戦艦!?」
「す、凄い……!」
どうやら近未来的な兵器、レールガンらしい。
火薬の代わりに電気の力で砲弾を発射する装置なのだが、コンデンサや砲身など、電力確保や耐久性等の問題で実用化に難があるとされる。
しかしエンジニア部はそれらを解決したのか、或いは試作モックアップなのか、砲身を艦砲サイズではなく、ギリ携行可能と言えなくもない重火砲サイズに収めていた。 射程や口径、威力は不明だが、かなり凄い技術力なのではないだろうか。
……モモイとミドリは宇宙戦艦の方に興味を抱いているが。
「それはいつ見れるの?」
「予算が尽きて、とても造れず!」
「駄目じゃん! 計画の段階で分かるでしょ!」
「浪漫を分からないなんて、これだからモモイは」
「バカだ! 頭良いのにバカの集団がいる!」
モモイに頭の良いバカ扱いをされるエンジニア部。 合理性より浪漫、それがミレニアムのトップクラス集団であった。
そんな生徒達の漫才に目もくれず、アリスは未だ独特の口調のままに大砲を所望した。
「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ」
ところが、そこにウタハがやってきて断ってしまう。 マルコは傍で話を聞きながらレールガンを観察。
「すまないが、ソレはあげれない」
「えー! 何でも良いって言ったじゃん!」
「約140キロはある。 だから撃つどころか持ち上げる事すら……クレーンもなしに持ち上げた!?」
アリス、唐突にレールガンを持ち上げて見せる。
「嘘……信じられない……」
驚く面々。
アリスは砲口を上にして操作を続け───。
「えっとボタンは、これでしょうか?」
「ま、待って……!」
トリガーが引かれた刹那。
轟音と共に、天へと青白い雷撃が放たれた。
屋根が砕け、大穴から青空が溢れ出る。
「あああ!? 部室の天井が!?」
思わぬ被害に、ウタハ達が悲鳴を上げるも。
「実弾込めとくなよ……いや、空砲でこの威力なのか? スラッグの武装にできるか?」
マルコ、漸く口にしたのはツッコミだった。
コトリとヒビキ達は構わず続ける。
「いやー……まさかアリスが力持ちだなんて。 驚きましたよ」
「……握力は1トン以上、発射時の反動に耐える体躯……」
「アリスは何者なんだ……何にせよ、これなら使えそうだね。 コトリ、ヒビキ、調整とスリングを取り付けてあげて」
「わかりました!」「うん」
「良かったねアリス! 武器が手に入ったよ!」
「ぱんぱかぱーん。 アリスは光の剣:スーパーノヴァを手に入れた」
「銃というには余りにも大きいけど、これで非武装という理由で注目される事はないね。 逆に目立ってる気もするけど」
「エンジニア部としても、運用データが収集できる。 作った事が無駄にならずに済みそうだから助かるよ」
取り敢えず武器の問題は解決した。
後は本題、ゲーム開発部の実績を作り、廃部を免れる事にある。
「それじゃマルコ先生、面白い武器やスラッグとやらを持ち帰れたら、是非持ち込んでくれ」
「おう。 その時は世話になる」
個人的な用事、寄り道を済まし、任務へと戻るマルコ一行だが───。
「ヴェリアスから連絡があったけど、G.bibleにはまだ壊れて見れないデータがあるみたい。 でも復旧するには押収されたソフトか何かが必要なんだって」
「───俺も確認した。 確かに不明なフォルダ、観閲できない領域がある。 あるが……期待して良いのか?」
部室に戻るや、モモイが皆に告げた。
どうもbibleの話には続きがありそうだ。 精神論な文面を記しているデータに何を期待すれば良いのか分からないが、このままではモヤモヤするし、本当に有益な情報が手に入るかも知れない。
「溺れる者は藁をも引き千切るんだよ!」
「お姉ちゃん、それを言うなら掴むだよ」
「わかった、わかった。 元からそうだしな」
現状、ゲーム開発部の独力では、僅かな時間で成果を出すのは難しいだろうし。
だがここでも問題があった。 それは───。
「メイド部が守ってる差押品保管所に侵入するの? 無謀だよ!?」
またも盗みを働かないといけないという事だ。
しかも今度はメイド部ことC&Cという組織が守る場所らしい。 なんだかマーケットガードより強そうだ。
「そうなんだよ。 勝てる筈がない。 もう駄目だお終いだぁ」
「なんだ。 そんなに強い相手なのか」
「あの、何故モモイとミドリは嘆いているのでしょうか。 ヴェリタスの言っていたC&Cとは、そんなに強いのですか?」
「強いも強い! それがクリーニング&クリアリング、略してC&C。 ミレニアム最強の実働部隊だよ。 最後は痕跡も残さず消されちゃうんだ」
「最強、ね」
どんなものか見てみたい。
勿論、任務の延長線上で。 今までも散々強敵を相手にしてきたマルコだがキヴォトスには人間離れした猛者がゴロゴロいるのが知れてきた。
今後の糧になるなら、大義名分の有無に関わらず交戦しても良い気がしてくる。
……アロナ的には、生徒とドンパチは勘弁して欲しいだろうけど。 死ぬかも分からんし。
「ヴァリタスのハッキングとエンジニア部の援護があるといっても、リスクがあり過ぎる。 廃部と天秤に掛けても……」
「俺も付き合う。 戦闘だけじゃなくハッキング面でも多少は役立てる」
「マルコ先生……」
「アリス、仲間を信じます!」
「アリス……うん、そうだね! このまま緩やかに廃部するくらいなら足掻いた方が良いもん! それにゲーム開発部は、もうただのゲームをやる場所じゃない! ユズの、私たちの居場所だもん!」
「そうだね、行こう! 目的の物を取って、素早く逃げよう!」
「露払いもシンガリも任せな。 往くぞ!」
任務の為なら、多少の無茶苦茶の1つや2つ。
ミレニアム最強の部隊相手に、ゲーム開発部は、マルコはどこまで戦えるのだろうか。
エンジニア部で武器装備、スラッグを調達したりする話をすると長引くかなと。 C&Cとの戦闘の流れへ。
リアルがツライさん。日曜もで、出ますよ(予定
天気も悪い中。 どこまで執筆できるか……