爆音に次ぐ爆音。
ミレニアムタワーを見上げれば、奔騰する爆炎と銃声、揺れ動く摩天楼。 衝撃で硝子は割れ、雨となって地上へ降り注ぐ。
今、内部では何が起きているのか。 一般生徒達は知る余裕がない。
それよりもと、建物が振動、天井から塵が落ちる中、時として命より大切な研究資料を必死にバックアップ。 材料を鞄に詰めるだけ詰めると、蜘蛛の子を散らすように建物から飛び出し逃げていく。
判るのは、今や此処は戦場だという事のみ。
「至急至急!! 保安部は迎撃に迎え!!」
現場では怒声が木霊し、爆音と銃声で掻き消されるを繰り返す。
「奴です! シャーレのマルコ先生です! ゲーム開発部もいます!」
「目標は保管室の模様!」
長く感じる数十秒の後、漸く状況が見えてくる。
どうやらマルコ先生率いるゲーム開発部が保管室を目指して侵攻してきたらしい。
ヴェリタスやゲーム開発部に不穏な動きがあるとして、セキュリティチェックは入念にしたし、ゲーム部を捕まえたら反省部屋にブチ込み、流れで廃部にし、シャーレに抗議文を送り、ハッキング集団ヴェリタスも共謀の容疑で捕縛するつもりだった。
そんな準備をしていたセミナーの会計、ツインテールのユウカはモニター室で悲鳴に似た怒りを誰にでもなくぶつけた。
「セキュリティは昼寝でもしていたの!?」
「ヴェリタスによるハッキングにより、映像に細工されたようで……それと信じ難い事に、マルコ先生からのハッキングの疑いが……」
「はぁ!? あんなにアグレッシブに暴れて、デジタルな事も出来るって言うの!?」
モニター越し、マルコ先生が先陣を切る。
拳銃を発砲、保安員を昏倒させると、持っていた銃を鹵獲、火力を上げて前進。
時々取手付きの旧式ハンドグレネードを投擲、保安員やドローンが爆音と共に纏めて吹き飛び、隔壁をも破壊した。
あまりにも滅茶苦茶なワンマンアーミー振りに、現場は大混乱、助けを求めるような報告、連絡が銃弾と並んで飛び交った。
「隔離シャッターが次々破壊されています! 抑えきれません!?」
「弾幕を張れ! これ以上進ませるな!!」
「交戦区分の兩号の旨、全保安員に通達せよ! 制限解除、全火器使用自由!!」
「拳銃と鹵獲した銃でここまでできる!?」
「奇襲と侵攻速度の早さに、指揮系統に混乱!」
「課の者と連絡途絶! 係は全滅した模様!」
「だ、だめだ……侵食速度が早過ぎる……!」
「保安部では対応不可! 事態は対人戦闘の枠外と判断! セミナーにかけあいC&Cの緊急出動を要請!」
「あの人達を寄越して下さい! そうです、C&Cです!!」
被害甚大。 尚拡大。
損害額やら後始末やら、頭を抱えるユウカ。
出費を抑える為、部活動の条件を厳しく吊り上げ、いくつもの無駄を潰す筈が、余計な問題を起こす要因になった。
「なんで弱小部活の、生徒の為にここまでするの? マルコ先生……」
なぜ、なぜ、なぜ。
なぜ、こんな事を。 心中問うも答えは無い。
自身が連邦生徒会に抗議しにサンクトゥムタワーに行った時、マルコ先生も同じ場にいた。
一瞥した後、いつの間にかいなくなり、預かり知らぬ所で戦闘、不良集団を単独で制圧、親玉の凶悪犯をも倒し、シャーレオフィスを奪還したと聞いた時、まさかと思ったが。
こうしていざ敵対して分かった。 マルコ先生の強さは本物だ。 外から来たらしいが、その力はキヴォトスでも通用するのだと。
だが止められない程じゃない。
キヴォトスには猛者がゴロゴロといる。 マルコはその中でも中の中か、下かも知れない。
有象無象なモブ相手に無双できても、他の者になった途端、勢いは衰える。
そしてミレニアムの生徒は、キヴォトスでも有数の上澄みな戦闘力保持者が何人もいる。
理系の学校だからと、皆が皆もやし娘ではない。 戦闘のプロがいるのだ。
そう。 それこそC&Cだ。
「でもね! C&Cが来れば、マルコ先生でもきっと降参するわ! その時は覚悟して貰いますからね!」
信頼と実績のC&C。
ミレニアム最強の特殊部隊枠。
最も、その中で最強のダブルオーのコードネームを持つ生徒は、タイミング悪く出払っているのだが。
「その程度じゃ止められないぜ!」
マルコが叫べば、弾倉容量を超えた拳銃弾が前方の保安員をバタバタと昏倒させ。
倒した奴から武器を拝借、火力を上げた。
「サブマシンガンが2丁以上。 なら両方とも貰っちまえば良い!」
ガチャ!!
"トゥーマスィンガン‼︎"
脳筋発言後、サブマシンガン左右2丁持ち。
弾の限り撃ちまくり、2丁分の火力が前方へとばら撒かれ、道を塞ぐ保安要員の群れが薙ぎ倒され、警備ドローンは蜂の巣にされ爆発四散していった。
「オラオラオラァ! どうしたこの程度かァ!」
かつてマルコもやっていたやり方だ。
リコイルコントロールとかリロードとか照準とかどうなってるのか、呼び方はトゥーよりダブルの方が良いのではとかツッコミはナシだ。
奇しくも、C&C最強のチビメイド様も同じスタイルである。 馬鹿にしてはいけない。
「時間はかけられねぇ! 増援が来る前に一気に畳み掛けるぞ! モモイ、ミドリ! 援護を頼む!」
「た、頼もしい!?」「う、うん……」
後続の才羽姉妹には感嘆ともドン引きとも取れる反応をされながら、突き進むマルコ。
けたたましい警報と回転灯の点滅と共に、隔壁が降りてマルコ達を区画に閉じ込めようとするも。
「隔壁如きなんだってんだ! こちとら異星人の物だろうと何枚も開けてきたんだ、邪魔するなオラァ!!」
経験から臆する事なく、そのままトゥーマシンガンの残弾を叩き込んで表面をボッコボコにし、弾が切れるや銃を放ってグレネードを放り、乱暴に爆破して吹き飛ばす。
気迫あるままに無理矢理こじ開けて、できたての穴を潜り抜けていく。 獰猛な猛獣が食い破るかのよう。
その先にいたは、戦々恐々とする子羊ならぬ戦意喪失気味にビビり倒す保安員。
「ウッソォ!?」「隔壁が壊されたぁ!?」
「より強いチタン製シャッターすら破壊されるなんて!? なんで壊せるのよ、あり得ないでしょ!?」
「なっとるやろがい!」「撃て! 撃てェ!」
「C&Cが来るまで時間を稼ぐんだ!?」
「やられてぇ奴だけかかってこいやァ!!」
拳銃を撃ち、生身相手か機械相手か問わず、片っ端から銃声で黙らすマルコ無双。
その迫力に、味方である筈のモモイとミドリもビビりつつ、やはりC&Cが脅威だと警戒した。
「マルコ先生! ヴェリタスからの情報だと、最強のネル先輩はいないって!」
「ですが他の人達がいます! いつ来てもおかしくありません!」
そうか、ならもっと急ぐか。
窓際の通路に差し掛かり、言おうとした刹那。
「ッ!? 伏せろ!!」
窓の向こう、ビルの屋上がピカッと光る。
マルコが叫んだ刹那。
ドゴォン!!
轟音と共に窓硝子が粉々に砕け、1発の大口径弾が、伏せたマルコ達の頭上を通過。
的を外した弾丸、否、砲弾は後方の壁へと着弾。 弾痕を残すどころか、壁一面を粉々にしてしまった。
「スナイパー! しかも大口径かよ!」
「対物狙撃用の49mm弾!?」
「C&Cだ! この距離から一方的に撃たれる!」
どうやら狙撃手が出待ちしていたようだ。
距離からして一方的に狙撃され、しかも大口径弾で潰しにきている。 掠るだけでもエグい事になりそうだ。
それに、狙撃手にビビって動かずにいればタイムオーバー、他のC&Cもやってきて袋叩きに遭うだろう。
マルコは皆の戦力を把握したいが、纏めて相手にしたい訳ではない。 戦車2両1組のボスを超越する面倒は勘弁である。
「チッ、バックアップのヴェリタスとやらや、部外者のエンジニア部に頼る訳にもいかない。 自力で何とかしねぇと」
「長射程の武器があれば良いのですが」
「どうするのさ! ロケットランチャーとか、専門のスナイパーライフルなんて、そんな"都合良く"あるワケが」
「あったぞ」
ガチャ!!
"スナイパァライフル‼︎"
壊れた壁の中にあった狙撃銃を装備するマルコ。
それらしく長身、スコープ付き。 ボルトアクション式ではなくオートマチック式。
調整はいらない。 済んでる……全て……!
「なんであるのおおお!!?」
「保管室が近いからじゃないのか?」
「だとしても管理体制がオカシイよ!?」
謎のご都合主義にツッコミを入れる姉妹だが、マルコ的には"よくある事"で済ませる。
あるのがいけない! あるのがいけない!
「まぁSRは久し振りに使うが」
短いマガジンを抜いて残弾確認後、元の場所に叩き直し、薬室に弾を込める。
最後に使ったのはいつか。 南極で古代人とドンパチした時以来か。
「えっ!?」「大丈夫ですか?」
「なぁに何とでもなるし、何とかなる」
マルコは構えた。
スコープ越し、視線が交差する。
「じゃなきゃ俺がやられるだけだ」
引金が、引かれた。
明日日曜他、投稿出来るか不明…