屋外にて、ネルとマルコが対峙する。
早くも再戦の気配に、心が躍る。
連戦の末、空中戦で負けた相手だが、それを言い訳にはしない。 ビークルを使っていた分はマルコが有利だったのもある。
だが今回、安定した地面の上。 邪魔もない。
これで負けたら、やはりネルは強いというだけの話だ。 怪我が完治してないからと言い訳はするまい。
兎に角、己の運命に決着をつけたい。 今後の任務の為にも、ここで撃ち合い、屈託を晴らす。
「モモイ達は、他に邪魔してくる奴がいたら食い止めろ。 ネルは俺がやる」
「アリスは……」
「悪いが見学だ。 先生として格好つけさせてくれ、個人的な決着もある」
「へぇ、あくまでタイマンか。 ならこっちも他の連中には手を出させねぇ。 アリス、テメェはその後だ」
「ひぃ!?」
「させねぇよ。 負ける気がしねぇ」
「良いね、その威勢。 けどな、自分の生徒の前で大恥かいても文句言うなよ!」
「お前もなぁ!!」
撃ち合いが始まった!
互いにほぼ同時、射線を回避するサイドステップをしながらフルオート。
ネルのダブルマシンガン、金の龍がペイントされた厨二病なツインドラゴンが火を噴き、マルコのヘビィマシンガンと言いつつ拾った何の思い入れも無い他人のアサルトライフルも火を噴き荒らす。 弾幕同士がぶつかり閃光が散る。
「オラオラオラァ!!」
「負けるワケねぇだろオラァ!」
烈火、跳弾、咆哮。
空気が震え、地面が爆ぜ、気迫暴風が殴り合う。
ネルは高速で蛇行、予備動作無しのスライディングからの宙返り、多少の被弾による衝撃や出血をものともせず、全弾命中コースをとるフルオートを続ける超人な動きを息切れ1つなく繰り返し。
マルコは素早く動けない代わりに、ヘビィマシンガンを撃って撃って撃ちまくり、威力と弾数にモノを言わせて拳銃弾を叩き落とす。
「まさか弾を叩き落としてんのか!? 偶然じゃねぇ、適当に撃ってるように見せかけてとんでもねぇ曲芸だなオイ!」
「たまたまだ!」
「喧しいわ!?」
会話する余裕すら見せながら、激しく撃ち合う2人だが。
ネルが威力で打ち負け始め、しかも弾切れによる一瞬の隙を出した。
「チッ!」
「勝機! 撃ち流す!!」
「普通の弾倉に見せかけて、どんだけ撃ってんだよ!? 銃身が赤熱してねぇし、リロード無しで何百発って撃ってねぇかソレ!?」
「考えるな感じろ! そう言ったダルォ!?」
「だってオカシイだろ!? って、うお!?」
マルコ、好機のままに撃ち続け、ネルを弾幕の濁流で押し流す!
その勢いのまま、ネルは校舎の玄関から中へと吹き飛ばされ、砂塵の嵐へと沈んで見えなくなった。
「まだだ! まだ終わってねぇ!!」
だがこの程度で堕ちる相手なら苦労しない。 マルコ、いつもの取手付きグレネードを構え、投げに投げる!
「コレは才羽姉妹の分! コレはユズの分! そしてコレがアリスの分!」
全てのグレネードを投擲、爆発に次ぐ爆発!
玄関の大口が火を吹き、黒煙が空へ上がる中、マルコはトドメとばかりにライフルを構え直す!
「そしてコレが!」
ガチャ!!
"ヘビィマシンガン‼︎"
「俺の分だアアァァ!!」
ドドドドドッッ!!!
情け容赦無い、怒りと魂のフルオート!
黒煙を突き破り、その先にいるであろうネルに雨霰と全弾を叩き込んだ!
やがてカチッ、と弾切れの音。 建物の壁や備品が抉れ、白い、大量の埃と硝煙臭い砂塵が外へと漂う。
「はぁはぁ……やったか!?」
マルコ、出し切ったように息が絶え絶え。
ライフルを投げ捨て、拳銃を握りながらも思わず出した言葉に、開発部メンバーがツッコミを入れる。
「ああ!?」「先生ソレ言っちゃ!?」
「ンァーッ!? フラグが立ちましたぁ!」
刹那、ガラリと瓦礫が崩れる音が校舎から聞こえたと思ったら。
「けっ、今のは効いたぜマルコ先生……!」
煙から、ぬらりと出て来るネルの姿が。
不敵な笑みを浮かべ、2挺のサブマシンガンをガンスピンリロード。 器用に装填、余裕を見せた。
そんなネルだが、そのメイド服と、羽織っていたジャケットはあちこち切れて、煤汚れでボロボロ。 ネルの額や頬には擦り傷、僅かに赤い鮮血が流れているのが見える。
ダメージはそれなりに入ったらしい。 が、それでも尚動けるネルは、フィジカルキヴォトス人の代表例と言えるだろう。
「なん……だと……?」
目を見開き驚くマルコ。
爆風よりも眠気が吹き飛ぶ衝撃だった。
……キヴォトスにて、一応の教育者たるマルコ先生が、生徒と暴力を振るいあう過度な干渉自体今更だし、銃撃戦は文化的な所があるから容認出来る部分はあるとしても、女子供関係なく怪我するまでやっちゃうのは度し難い。
いや、これすらも、なのだろうが。 そんな事を言っていては、この先とても戦えないし、遠慮したらマルコの残機が無限でも足りなくなる、たぶん。
「なぜ生きている!?」
立場を忘れて、こんな事すら言ってるが。
職業柄もあるとはいえ……。
「先生がビルから落ちた時、あたしらも思ったがな……ああ、さて。 続きと行こうか。 つっても、得物は拳銃1挺になっちまったみてぇだが」
「上等! 本番はここからだろ!」
「へへ、益々気に入った───」
続くかと思われたその時、ネルの携帯が鳴る。
興が削がれ、ダルそうな顔になるネル。
「ンだよ、楽しんでる時に電話する奴はよォ」
「出て良いぞ、待ってやる」
息を整える為にも、促すマルコ。
遠慮なく電話に出るネル。
「……アカネか、なんだ。 は? もう十分だと? 任務終了? これ以上は校舎の修繕費がヤバいから直ぐ引き上げろって? なんだよそりゃ、リオとヒマリが決めた事だって言われてもよ、こちとら良い所……はぁ分かったよ」
携帯をしまい、銃を下げるネル。
マルコ、怪訝な顔をして尋ねた。
「なんだ。 トラブルか」
「……あぁ、悪ィなマルコ先生。 無視すると後が面倒なんだわ。 この勝負、またいずれな」
「消化不良かよ。 だが仕方ない、お互い仕事中だからな、一応」
「そんなワケでよ、大丈夫な時に頼むわ。 その時はお互いオフの日、組織じゃなく個人的にな」
「おう。 俺もその時は武器装備を揃えておくぜ」
そう言って、互いに別れた。
なんか微妙な幕引きとなってしまったが、仕事中である。 仲間に咎められては仕方ない。
「マルコ先生、デートの約束ですか?」
「そういう趣味が!?」
「そうなんですか?」
「もしかしてロリコ……」
「違うだろォ!?」
勘違いには断固抗議するとしても。