次へ行く前に寄り道感
メタスラの内装?等は3Dムービーを参考?
「武器がいる。 スラッグがあると尚良し」
シャーレ事務所に戻る前、マルコは廃墟で手に入れたスラッグのデータをシッテムの箱に入れると、とある部の端末に一部を送信した。
それは生徒を喜ばす為だけではなく、将来的な投資、備えであった。
アリスは世界の脅威になる兵器であり、それに関連して様々な問題が発生する事が予見された今、武器装備は多いに越した事がない。
そうでなくても、どこか行く度にドンパチが起きるので、日常的な問題である。
が、しかし。
上部組織である連邦生徒会に相談、事態収拾を頼もうにも、彼女達は会長の失踪も関係して多忙、様々な業務に追われる日々であり、確証のない事や厄介事には各自治区の問題、内政干渉の回避を理由に動いてくれない消極的な姿勢だった。
してくれても自衛用の拳銃や小銃、その弾薬の手配止まり。 スラッグなんて機密兵器は期待出来ない。
そこで結局いつも通りの現地調達……と見せかけて、有望な生徒達を頼る事にした。
そう。 エンジニア部だ。
高い技術力を持つ彼女達ならば、設計図があればきっと武器装備、それこそスラッグを製造してくれる筈だと。
「きたか」
間も無くして部長のウタハから連絡が。
メタルスラッグについて色々と評価しつつ、実際に製造するつもりらしかった。
「マルコ先生から送信された事情メールと、その為の兵器データ、見せてもらったよ。 代表となるSV-001メタルスラッグの諸元……話に聞いた通りなんだな。 豆戦車の図体ながら匍匐姿勢がとれて、ジャンプができる。 その為のサスペンション、シリンダー……面白いじゃないか」
「だろ? それでだいぶ活躍してきた。 あると無いのとでは全然違う」
最もゲヘナの風気委員長、ヒナには最強格のスラグガンナーでも駄目だったが。
それでも無いよりマシだ。 きっと。
「そして! そう!」
「ん?」
電話越し、急に興奮するウタハ。
ノイズと鼻息が、マルコの鼓膜を震わした。
「何より! 自爆機能がついている!!」
「そこかよ」
ウタハが興奮しているのはソコだった。
エンジニア部はトンチキな物や機能をつけたがる悪癖があるが、自爆もその1つだ。
それに準ずる機能がメタルスラッグにあると知って、妙に溌剌としたのだった。
「いや大切な機能だよ。 万が一の時、機密保持の為にどうするか。 それは派手に散る事、爆発だ。 スラッグを開発した技術者は分かっている! 製造元らしいSV研究所は就職先として検討しても良いかもな!」
そこまで喜ぶ機能なのだろうか。
いや、マルコとしては助かる機能の1つではあったが。 倫理観や安全性がキヴォトス基準だからこそかも知れない。 お陰で危ないから付けてくれない、という事はなさそうだ。
さても説明してやるマルコ。 自爆は機密保持の側面もあるだろうが、使い方がある。
「最後の手段、メタスラアタックだ。 正式名称、近接最終決戦玉砕男度胸一番心臓発毛攻撃」
「長い! だが良いセンスだ!」
興奮しているせいか、肯定気味のウタハ。
或いはそういうのが好きなのだろう。 変な機能を付ける部活の長だし。
「自爆と言っちゃそうだが。 レバーを引くと車体が前方へ爆走、ぶつかるか暫くすると爆発して目標を破壊ないし損傷させる。 起動させた際、搭乗者は爆発に巻き込まれないように脱出するのが基本だ。 一部スラッグに共通する機能なんだが、必要だから、つけておいて欲しい」
「わかった。 製造する時は忘れずにつけておこう。 他の機能を付けても?」
「……ほどほどにな」
メタスラにBluetooth機能とか、コンビニペイ機能とか付加される程度なら許容範囲か。
メタスラでドライブスルーは出来そうだが、流石に店内は厳しそうだ。 サイズ的にイケてもレジ前に立つのはナンセンスな気がする。
……それかメタスラのデータを盗んだ敵軍が製造していたタイプのように、アームロボット付きにされて、ミサイルを撃てるようになるのだろうか。
「ありがとう! じゃあ早速取り掛かる!」
「待て。 優先して欲しいのが、いや、出来たらで良いんだが」
「なんだい? 面白い武器装備は歓迎さ!」
「これなんだが」
言い淀みながらシッテムの箱……タブレットの大きな画面に、その画像を表示して見せた。
「これはV/TOL機!?」
そこに映っているのは戦闘機と諸元表。
キヴォトスの青空に似合わぬ空飛ぶナメクジ。
型式番号SV-FO7V
垂直離着陸機スラグフライヤーだ。
「まさか航空機なんてね。 理由は?」
「俺の力に限界を感じたからだ」
「今の装備では戦えないと?」
「少し違う」
マルコは語る。
表情はやや暗く、苦虫を噛み潰したような。
「キヴォトスに来て感じたんだが、どうも銃や爆弾を雨霰と食らっても平然としている生徒が少なくない。 火力の問題だけじゃなく、生徒自身の不思議な力に阻まれているというか」
問題は生徒の耐久力だ。
ほぼ全ての生徒はヘイロー、何かしらの神秘の力に守られているようで、歩兵の携行火器による攻撃で死ぬ事は皆無に等しいものの、全く効かないワケではないのは今までの経験で理解している。
攻撃を受け続ければ無傷とはいかず、痛みから動けなくなったり、意識が刈り取られて気絶してしまう展開が多々ある。
が、その効き目には個人差があった。 防弾着や装甲とした装備を抜きにしてもだ。 拳銃弾数発の内に沈む者もいれば、ライフル弾を浴びても動ける者もいた。
空崎ヒナが良い例だ。 陸上スラッグ最強であろうスラグガンナーの攻撃を受けてもビクともしなかった。 アレは怪物だ。
美甘ネルもだが、まだ効いている雰囲気がある分はマシだったかも知れない。
兎に角、そうした者が押し寄せてくると厄介で、マルコだけでは厳しい場面が既にあった。
今後、戦場が過激化していけば追従出来ない可能性が十分考えられる。
だからと高性能な武器装備を使用して解決、とはいかないワケがある事もマルコは唱えた。
「そういった上澄連中には、生徒に戦って貰おうと考え始めている。 目には目を、じゃねぇが……今までは俺が前衛、生徒には後方支援を頼んでいたが、それが逆になる。 その時、空から戦場を俯瞰しつつ、必要な時に援護が出来るのが良いかと思ってな」
というワケらしかった。
女学生を先頭で戦わせるのは抵抗があるが、もうそういう文化圏として割り切るしかない。
それに初めての経験でもない。 情報部の女性隊員フィオとエリの件もある。 いやまぁ彼女達は学生じゃないが、特殊性ならキヴォトス人の方が上だろうし……。
「わかった。 戦車より複雑、時間が掛かるかも知れないが設計図があるし何とかなると思う」
「助かる」
「ただマルコ先生、キヴォトスで航空戦力となれば、ヘリやドローンがメインだ。 あとは飛行船が少しか。 そこにジェット機となると、事は大ごとになるかも知れない。 連邦生徒会と企業、或いはもっと他の、良からぬ組織が絡んで来る可能性もある。 もし乗る事になっても、くれぐれも扱いには気を付けてくれ」
優しく厳しい警告をするウタハ。
航空機、キヴォトスでは脅威となるだろう。 ヘリやドローン、飛行船よりも、きっと。 歩兵兵装がメインの生徒達だ、高度によっては手も足も出ない。
制空権の安易な喪失、青空を穢す行為、軍事バランスも崩れかねない。
目を付けられるのは想像に難く無い。
が、マルコは既に経験したと淡々と。
「知ってる、大ごとだった。 ミレニアムに来る前、巨大なVTOL爆撃機に追い回された。 しつこかったんで鉄屑にしたが、今度は俺の番にならないよう注意するつもりだ」
「なに!? それは是非見てみたかった!」
技術バカというか、なんというか。
話の変わり方、食いつき方が面白くて、マルコはつい笑みが溢れてしまった。
「……ふっ、本当に好きなんだな」
好きこそ物の上手なれ。
ウタハ達の将来が楽しみだ。
そして、それらを守る為にも。
後書き
1ヶ月毎日のように更新してきましたが、そろそろ止まるかも知れません
もうゴールしても、良いよね?(逃