キヴォトスラッグアーカイブ   作:ハヤモ

48 / 49
仲正イチカ/倉庫脳筋攻略

校舎の先、いくつかある倉庫の1つ。

その鉄扉の、僅かに空いた隙間からは催涙弾の煙が漏れ出ており、対人の都合、空気の比重より重いガスが地面を伝って広範囲に広がっていっている。

それにより多くの被害が発生。 最前線で対処中だった正実委員モブは涙が止まらなくなって撤退。 マトモに照準が出来ず、戦闘どころではなくなり無力化されてしまった。

しかも煙は罠を隠し、益々向こう有利に。

足を引っ掛ける事で手榴弾のピンが抜けて起爆するワイヤートラップや、パイプなど身近な部品等を組み合わせて作られた簡易爆弾(IED)が巧妙に仕掛けられており、防護対策をしたり、煙が晴れるのを待ったところで迂闊に近寄れない。

 

 

「あー……参ったっすね」

 

 

正実の交渉役、2年の腕章付きの糸目生徒、仲正イチカは苦笑するしかない。

向こうは交渉に応じる気配はないし。

モブ正実の多くは催涙ガスでやられたし。

無事な者も前に出た途端、罠で吹き飛ぶし。

相方の立ち位置な狙撃手、静山マシロに頼むにも中の様子は見えないし。

歩く戦略兵器な先輩方は別件で出払ってるし。

 

 

(いっそ倉庫ごと吹き飛ばせば良いのでは?)

 

 

野蛮な本質が表に出そうになったところで、その精神を代替わりしたようなソレは来た。

 

 

「今日の最前線はここか?」

 

 

キュラキュラと履帯音を奏でながらやって来たは、1台の銀ピカで珍妙な豆戦車。

主砲は頼りなさそうな短小臼砲、被弾面積がデカい大型のライトが砲塔上部に取り付けられている。

そして大型バルカン砲が車体後部の左右に1門ずつ取り付けられているのが目に付いた。

 

 

「また可愛らしい戦車が来たっすね。 でもあんなのウチの装備になかったっすよね? まさか噂のシャーレ?」

 

「おう。 噂のシャーレだ。 そして俺は顧問のマルコで、コイツはメタルスラッグって戦車だ。 以後宜しく頼むぜ」

 

 

マルコは砲塔上部、キューポラから顔を覗かせてイチカに簡単な自己紹介。

イチカは突然の連続に困惑しつつも、臨機応変に対応するは流石場慣れしてるというか。

 

 

「は、はぁ……私は正義実現委員会の仲正イチカっす。 ここの対処に追われてお迎えに上がれず、すみませんマルコ先生」

 

「良いんだ、それより手を貸そう。 あの倉庫ごとゲリラを吹き飛ばせば解決だな!」

 

 

マルコ、そう言ってメタスラの主砲を向けて進もうとするから、イチカは慌てて進路に立ち塞がって静止を求めた。

 

 

「ちょちょちょ!?」

 

「どけイチカ。 ゲリラ潰せない」

 

「もう少し穏便に行きましょう先生! 倉庫が吹き飛んだら後始末が大変なんすよ!」

 

「コラテラルダメージだ。 気にするな」

 

「気にしますって!? それにほら、扉の前に行くにもトラップだらけですし!」

 

「……わかった。 確かにメタスラでも2、3度の被弾が限界だ。 折角持ってきたんだ、序盤で壊したくはねぇ……アロナも乗ってるようなものだしな」

 

 

マルコ、イチカの説得を受けて動きを改める。

マーズピープルの親玉的存在、ルーツマーズ戦、或いは他のボス戦を思い出しての事だ。

苛烈な攻撃を仕掛けてくるボスに対し、メタスラは大いに役立ってきた。

その火力もだが、鬼避けと呼ばれる回避テクが非常に重宝したのだ。 乗り降りする際に限り無敵になるのを活かし、被弾の直前に降車、ノーダメでやり過ごすというものだ。

もしミスっても、メタスラは直ちに壊れる訳ではない。 その限りは火力を持続させる事が出来るのもある(落下、潰される等除く)。

故にそこに辿り着く前にメタスラを失う事は、火力の大幅な減少のみならず、生存率の著しい低下を引き起こし、難易度の上昇を招く事に繋がってきた。

今回の場合、ゲリラもだが、その先のテロリストの拠点、そこに待ち受けているであろうボスに備えなければならない。

 

 

「分かってくれたっすか!」

 

「おう。 慎重に行くぜ!」

 

 

そこでマルコがとった手とは。

 

 

「榴弾で罠ごと地面を割りながら進む!」

 

「分かってなくないっすか!?」

 

 

マルコ、主砲を撃ちながら前進を始めた!

主砲から撃ち出された榴弾は、臼砲の見た目通りに短射程で、重力に引かれるがままに目前で落ちては爆発していく。

その度に進行方向の大地が爆ぜ、捲り上がり、罠を無力化していった。 コストをかけた、随分な荒い爆発物処理方法だった!

 

 

「これで倉庫までの道はできた。 後は向こうが降伏の意思を示さなければ隔壁、もとい鉄扉を破壊し尽くすだけだ!」

 

「噂は本当だったみたいっすね……あー、立て篭もってる人、ええと……白洲アズサ、聞こえるっすか。 もう勝ち目はないっすよ。 降伏しないと戦車が突入する事になりそうっすけど、良いっすか?」

 

 

返事が無い。 ただのゲリラのようだ。

あいや。 白瀬アズサという名があるようだ。

しかし、その正体は如何に。

それを確かめる為には……。

 

 

「突入だオラァ!!」

 

「あぁもう滅茶苦茶っすよ」

 

 

隔壁破壊の如く。

マルコ、メタスラのバルカン斉射。 倉庫の鉄扉をボコボコにし、やがて弾幕の力で吹き飛ばし破壊すると、中へと突入。 イチカも一応後方からついていく。

そして立て籠もり犯と顔を合わせる───。

 

 

「シュコー……シュコー……」

 

 

アサルトライフルで武装し、2眼レンズのガスマスクを装着して息をする生徒が1人。

 

 

「ゲリラかテロリストか、はたまた天使か?」

 

 

白い翼を背中に生やしたトリニティ2年生。

白瀬アズサと出会ったのだった。




後書き
白洲アズサ:2年生。 キヴォトスでは珍しいらしい転校生。 暴力事件を起こした容疑で正実に追われ倉庫を占拠。原作では約3時間籠城戦をした模様
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。