トリニティ総合学園2年生、白瀬アズサ。
転校生であり、学校が国相当のキヴォトスにおいては珍しい経歴。 ただし元の学校名は不明。
転校の理由も不明で、そのリスクはマルコの持ち合わせる常識より上をいく。
キヴォトスでは学力や人間関係のみならず、政治も生徒が担う為、スパイ問題は常に付き纏う。 故に転校生とは政治的リスクから受け入れ前後問わず忌避される代表ともいえる。
特に素性が不明となれば尚更の筈で、有無を言わさず門前払いをされておかしくない。
ところがアズサの場合、生徒会ティーパーティ、その3頭政治の1頭、パテル派首長の聖園ミカが後見人をした事で編入が可能となった特例的経緯がある。
何故、数多いる中で1生徒の為に動いたのかは謎だ。 別に成績が良い訳でもなく、このように問題を起こしている。 それもゲリラ戦を得意とする様子といい、彼女や周囲には不審な点が多い。
「───と、分かるのはここまでです」
そんな情報をアロナから齎される中、マルコとアズサは対峙。 レンズとスリット越しに睨み合う。
睨み合いながら、マルコは考察した。 というより誰でも思うような事を脳内で羅列した。
(元の学校が不明の転校生。 ガスマスク装備にブービートラップと手慣れた動き。 少数で多数を相手取るゲリラ戦法。 後見人は政治中枢にいる1人。 怪し過ぎるだろ常識的に考えて)
マルコ、彼女に主砲と副砲を向けたまま、投降を呼びかけた。
確かめるには、アズサに尋問するしかない。
「元は? ゲリラ戦の授業をしていたのか?」
反応が無い。 喋りも逃げもしない。
つまるところ情報を吐かない。
若くして、よく訓練されたゲリラのようだ。
マルコ、もう少し踏み込んでみる。 互いの名前を言ったりと、交渉役のイチカからすれば指摘面もあるだろうが、ここまで来ると後方腕組みで成り行きを見守るばかり。
「アズサといったな。 俺は連邦捜査部シャーレの顧問マルコだ。 話を聞きたい、どうしてこんな事をしたのか。 それから前の学校についてだ」
「…………(勘付かれた!?)」
前の学校。
言葉の刹那、発砲するアズサ。
バースト射撃による2、3発のライフル弾がメタスラの装甲表面に当たり、カンカンカンッ、と小気味良い金属音。
内部ではその音が乱反響、外から聞く以上に喧しく響き渡る。
「ざけんな!? おいアロナ大丈夫か?」
被弾したメタスラ、驚いたように砲塔がビョォンと上に飛び上がり、直ぐに車体と繋がるシリンダーによってガシャンと元の場所に引き戻される。
「あばばばば……」
アロナはというと、シッテムの箱内の空間で目をグルグルと回していた。 メタスラのCPUと連動していた弊害だ。
一方、後方のイチカはそんな状況を知りもせず、覇気なくツッコミを入れた。
「ビヨヨ〜ンって。 面白い戦車っすねー……」
「見せ物じゃねぇぞメタスラは! てか交渉役だろ、仕事はどうした!?」
「ここまで来ても聞く耳持たずですし。 喋りもしないし会話の余地なしっすよ」
「なら万国共通、肉体言語と往こうぜ! やられたらやり返す、倍返しだオラァ!!」
マルコの口とメタスラの主砲から火が噴けば、榴弾により倉庫が爆発。
ドゴォンッ!!
内側から外側へと破片が飛び散り、備品の全てが吹き飛んだ!
密室だ、逃げ場は無い。 爆炎に沈むアズサとメタスラ。 俯瞰して見れば自爆である。
安全圏にいたイチカは予想していたとはいえ、マルコ先生ならばと何処か期待していた分、自己嫌悪に陥ってしまった。
ああ、噂通りの暴れん坊でしたかと。 そこに理性や抑止は微塵も無い。
「やっぱこうなるっすね。 知ってたっすけど」
暴力! 暴力が全てを解決する!
そんな衝動のみが、そこにあった。
同時にイチカの心の底の何処か、もう1人の自分が糸目を開眼させて暗黒微笑してもいた。
自身が毎日のように抑えている黒い欲望を代わりに体現してくれるマルコ先生に、ゾクゾクとした背徳感が湧いている。
(先生が悪いっすよ)
それは後始末の件か、己の黒い欲望か。
一方メタスラ、爆発に巻き込まれた筈が小銃による被弾以外、無傷の姿を維持しているから驚きだ。
搭乗員のマルコもアロナも無事らしく、平然と余裕そうに会話、互いの無事を確かめ合った。
「あー、くそ。 新品同然だったのによ。 アロナの方は無事か?」
「はい。 撃たれた時の衝撃に驚きましたけど、痺れや痛みとかは感じません。 CPUの方も無事、駆動系も平気です、大丈夫です」
「問題ないな。 ヨシ!」
「ヨシじゃありませんけど」
歩兵銃の攻撃が効くクソ雑魚金属ナメクジの癖に、自身の爆風なら平然と耐えて、爆心地に佇むメタルスラッグ。
差し込んだ太陽の光を浴びて、銀色に光る姿は見様によっては格好良いが、現場はそれどころではない。
「あっ、やべ、アズサは無事か!?」
「床で伸びてますが平気です、大丈夫です」
アロナがどこをどうやってか、周囲見回して床で気絶中のアズサを確認。
今までの生徒の例に漏れず、彼女もまた丈夫な存在であった。
「その丈夫さ、流石はキヴォトス人だと褒めてやりたいところだ。 不幸中の災害って奴だな!」
「「幸いです、先生」」
生徒に間違いを指摘される先生の図を描きながらも、マルコは降車。
拳銃を抜いて警戒しつつ、テロリストへの手掛かりとして、アズサを捕縛するのであった。