最後は対立する立場になるとはいえ、家族を売るとは思えないかもですが…
「従順になるまで調教してやるからな」
マルコはシャーレの権限を行使、アズサを直ぐ正実に引き渡さず、空き教室に連れ込んで面談もとい尋問を行う事にした。
だがアズサの表情は氷のように冷たく、背中に生えた白い翼も微動だにせず、感情の起伏を感じられない。
マルコに椅子に縛られて拳銃とナイフをチラチラされても尚の事。 が、やっと口を開くところまでは漕ぎ着けたのは進歩である。
「好きにすれば良い。 だが拷問に耐える訓練は受けている。 簡単に吐くと思わない事だ」
敵に捕まった事で気が大きくなったか。
無自覚か、挑発発言をするアズサ。 しかしその時点で情報を吐いてしまっている。
このまま敵拠点まで到達するべく、マルコは対話を試みた。
「拷問に耐える訓練ねぇ、やっぱ前の所は普通の学校じゃねぇな?」
「知らない。 分からない」
「隠す必要がある学校って訳だ。 そんで、その学校はエデン条約の締結会場を襲撃する計画を立てている。 そういうタレコミがあった」
「ッ、知らない。 私じゃ、ない……」
襲撃と聞いて、翼がピクリと動いた。
言葉こそ1点張りで、痛みに耐える訓練はしていても、精神的な軋轢による揺らぎはあるらしい。
反応通りに受けて良いなら、アズサはメールの送り主ではないし、襲撃の事も本当に知らない。
恐らく、アズサは末端の諜報員か何かであり、本隊の計画はリスク回避の為に知らされていない。
或いはこの反応からしてテロには賛同しておらず、もしやると聞けば裏切る可能性がある為か。 尋問するマルコとしては好都合だが。
メールの送り主の正体や内容への疑いは未だ残るが、テロリストの存在は本当そうだ。
マルコ、タブレットを操作しながら続ける。
「襲撃する理由があるとしたら、トリニティとゲヘナに相当怨みがあるか"特典"目当てか」
「根拠の無い妄想だ」
「そうでもないんだなソレが。 今調べたが、トリニティってのは、3つの派閥が合体して出来たそうじゃないか。 だから名前が総合学園。 生徒会長に相当する人物、首長が3人もいる。 ローテーションを組んでティーパーティって訳だ」
「だからなんだ」
「だが主要な派閥は3つが全てじゃなく、かつては他にもあった。 今よりずっと大昔、統合する際の事だ。
紛争回避の為に統合する方針になったが、それに反発した派閥があった。 他の派閥からすれば邪魔だったんだろう、ただ1派に他が譲歩する訳にもいかない。 つけ込まれて隷属させられるかも知れないからな。
だから最後は徒党を組んだ3つの派閥に迫害され、今の派閥だけが残り、今の校章の形になった。
その派閥は全滅する前に何処かへ逃れたらしい。 その名は……アリウス」
「ッ!」
「今も存続していたのなら、トリニティへの怨みは相当溜まっていてもおかしくねぇよなぁ?」
「昔話だ。 当時の世代はいない筈だ、今いる生徒は関係ない」
「当事者でなくても、その悪感情や教えは親から子へ、先輩から後輩へと引き継いでいても変じゃない。 それに下々を纏めるのに歴史や他者を利用するなんて良くある事だ。 必要なら認識を歪めるまである。 アズサ、お前は良くても集団は止まらない。 そして偉い連中や家族に良いように扱われ続けるんだ」
「知った口を聞くな!」
ここにきて激昂するアズサ。
家族を馬鹿にされたと感じたからか。
さても、ここまでで1番感情らしい感情だ。
漸く人間らしい反応が見られた事に、口角が上がるマルコ。 話を畳みに入る。
「皆を暗闇から救いたかったら俺に協力しろ。 俺の噂や、さっきの戦いで分かるだろ。 自分で言うのもなんだが俺は強い。 訓練を受けた軍隊相手に何度も大立ち回りをしてきた。 テロリストともな。 今回もその1つに過ぎない。 大丈夫だ、俺は役に立つ」
俯くアズサ。
翼は力なく重力に従うように萎れていく。
しかし、家族や仲間を売る真似はしたくない。 だけどこのままじゃ未来が無い。
マルコ先生は強いがアリウスも強い。
天秤。 瀉血する決断。 その葛藤が、心中を渦巻き、感情を揺さぶり苦しめる。
「……考えさせてくれ」
絞り出した言葉は、あまりに弱々しかった。
だがここでも殴る蹴るといった暴力に訴えるほど、マルコは外道ではない。
そもそも尋問は専門ではない。 この先はその手の者達、正義実現委員会に委ねよう。
縄をナイフで斬り拘束を解くと、廊下で待機していたイチカに声をかけた。
「イチカ、連行してくれ」
「なんだか大変な事になってきたっすね。 ツルギ先輩とハスミ先輩に報告しなきゃいけないヤバい事案っす」
「そっちは任せる。 俺としては今直ぐ得られる情報は得た。 後は時間の問題だ。 俺は次に行く」
「どちらへ?」
「ティーパーティ」
「いきなり!?」
マルコの立て続けの唐突行動に、イチカは気が気ではない。 側にいただけで責任追及されそうな身にもなって欲しい。 今日はなんて日だ。
「いや門前払いを受けるんじゃないすかね、政治中枢にいる人と会うなんて、ホイホイできるものじゃありませんって」
マルコ、廊下のメタスラに乗り込んだ。
匍匐姿勢だった砲塔がガションと車体上部に載り、キュラキュラと履帯が動き始める中、彼は言った。
「火力! 火力が全てを解決する!」
「やめてくださいっす!?」
イチカの静止を聞かず、メタスラは今日を往く。
次なる目標はティーパーティ。
何かを知っていそうな聖園ミカへの尋問だ!
後書き
メタスラ要素やドンパチが無いかも…代わりに非常識に振る舞い、サクサクと進める展開?