装飾を付けた白衣のドレスと純白の大きな翼。
天使と言われて思い描くシルエット。 そんな聖園ミカの得物は大戦時代に使用されていたような短機関銃で、弾倉が横に付くタイプだった。
片手でフルオートしても反動を制御してよろけもせず、全弾命中コースにできている辺り、流石はキヴォトス人だと褒めてやりたいところだ。
だがしかし。 ここまで倒して来た正実モブらの自動小銃と比較すれば、火力も防御も無い温室育ちに思えた。
「シンガリが装弾数の少ないサブマシンガン1丁のみとはな!」
「そういう先生は、短小の面白戦車に乗ってるのに全然じゃんね⭐︎ サーカスにでも来たのかな?」
マルコ、メタスラを匍匐姿勢にしてミカの弾幕を回避するとハッチ越しに手榴弾を連続投擲。 ミカの周囲を爆撃しつつ、バルカンをフルオート。 ミカよりも濃厚な弾幕を浴びせまくる。
が、あまり効いている様子がない。 またこのパターンかよとマルコは舌打ちした。
(コイツも翼が生えてるとはいえ、空は飛ばない。 いや飛べないのか。 一応は人の形と体重だろうし飾り羽根か。 アズサの翼もだったが、飛ぶにしては邪魔そうな装飾を付けてるしな。 航空障害灯のようなものでもあるまい……しかしバルカンを鱈腹喰らって怯まねぇたぁな。 キヴォトス人、その上位者共のタフさは不気味だぜ。 いい加減に攻略法を見つけねぇと、ソロはマジでキツイぞ)
ワカモやネルのように動くでもなく、なんなら堂々と棒立ちしている。 そこにメタスラのバルカンを雨霰と浴びせているのに、服が破けもしないとは。
だがソレは予想の範疇。 今までも丈夫な生徒を見てきた。 政治中枢にいてシンガリだと迎え撃ってきたミカも、その手である事は容易に想像できた事だ。
問題は、空からやって来た。
マルコは失念していた。 キヴォトス人はただ頑丈ではない事を。 身体的な特徴ばかり気を取られ、個々が持つ神秘の力を忘れていたのだ。
(チッ、雲で影ったか。 気が散るぜ)
突如、メタスラに影が差す。
しかし段々と大きくなる。 雲にしては不自然だと勘が告げるがまま、撃ちながら一瞥すれば───。
「嘘だろマジかよ!?」
隕石が降ってきていた!
宇宙からか。 空気圧縮、摩擦熱で燃えて迫る!
それも寸分狂わず、メタスラの頭上にピンポイント落石。 偶然にしては出来過ぎだ!
(既視感があるなオイ!)
かつて、ゾンビ塗れの地の先で邂逅したモノアイ?な地球外生命体とのドンパチを思い出す。
あの時も後半、空から石板……モノリスが謎に何枚も落下してきたものであるが……いやそうじゃない。
宇宙空間で進路を邪魔してきた大岩と言った方が良いか。 であれば。
「破壊し尽くすだけだオラァッ!!」
メタスラのバルカンを上に向け、隕石に向かって撃ちまくる!
間も無くして岩は真っ二つに割れ、その割れ目にメタスラが入り込む事で圧死を逃れた!
その光景はアストロスラッグに搭乗していた時のよう。 2連ミサイルは無いが。
「……わーお」
ミカ、思わず感嘆の声が漏れる。
まさかこんな力技で防ぐとは。
「マルコ先生って面白いね!」
「ミカもな! まさか隕石を落とせるとは驚いたぜ!」
「……もっと違う形で会いたかったなぁ」
「今からでも遅くねぇ。 お近付きの印に情報を恵んでくれよ、金持ちのお嬢様そうだしケチケチすんなよ」
「やだよーだ。 それにね、もう遅いの。 だってセイアちゃんは……」
セイアの名を挙げ、憂を帯びるミカ。
セイア。 ティーパーティの1人。 今は学園にいないようだが。
戦闘行動を中断、事情を探るマルコ。
「成程。 入院中っては、ミカ絡みか」
「どうかな。 元々体が弱いから」
「なぁミカ。 互いに罪と向かい合って背負っていかなきゃならない時もある。 消えないからと自暴自棄になるな。 放置も駄目だ、更に最悪な事態になるぞ。 苦しむ生徒が大勢出ても良いのか?」
「なにそれ自己紹介? ここまで散々暴れた先生に言われると説得力が違うなぁ」
口は笑っても、目が笑ってないミカ。
会ったばかりのマルコを信じられないのもあるが、自身の犯した罪が取り返しのつかないものだと自覚しているのもある。
その罪とは向かい合えず、償わず。
こうなったら堕ちるところまで堕ちるしかないよね、という破滅的な思考に陥っている。
この心境を変えるのは至難の業。 故にか、知ってか知らずか、マルコは自身の過去を交えながら語り始める。
「もう少し教えてやる。 俺は大勢の人を殺した事がある」
「ッ!」
驚愕の事実に、ミカは動揺。
銃撃戦が日常のキヴォトスだが、それは神秘に守られている都合。 殺人に対する忌避感は普通に強いのだ。
「戦争だったが、殺した事に変わりない。 向こうにも家族や友人がいただろうが立ち止まる訳にはいかなかった。 俺も仲間をやられたし、何より世界の危機だったからな」
一方敵兵側は、マルコが被弾してやれると笑ってウザい反応をしたが今はさておく。
「そして今ここ、トリニティでもそうなっちまう可能性がある。 俺やミカの、しでかし以上の被害が出るって事だ。 それを止められるのは俺とミカだけだ。 これ以上罪を重ねるな。 後の罪は、俺1人に被せれば良い」
「そんな事を言われても、どうすれば……」
「お前の話を聞かせてくれ。 頼む」
そういって、マルコは聞き齧った日本式の頼み方「頭を下げる」を繰り出した!
ただしメタスラの匍匐姿勢で! 見方によってはスゴイ・シツレイ!
「……うん。 わかったよ」
しかしミカには通じたらしい。 銃口を外し、落ち着きを払う。
やったねマルコ! 情報を得られるよ!
「私も、罪を認めるね」
こうして、また1つアリウスへの手掛かりへ繋がっていく。
この先、どうなるのか……。