特殊部隊アリウススクワッド。
戦闘に秀で、特にゲリラ戦に特化するという。
敵対視するトリニティとゲヘナに工作、攻撃を加えるのを主とし、今はエデン条約の"乗っ取り"の為に活動している。
そんな部隊がマルコを奇襲する理由。
彼が作戦遂行の邪魔になるどころか、アリウスの脅威になると「上」が判断したからだ。
その上である"大人"の生徒会長の教え、命令には従順でなければならない。
疑念を抱かず、ただ言われた事をすれば良い。
「かかれ」
サオリの短く、無慈悲な指示が鳴る。
襲撃地点は彼が拠点にしていた廃墟。
ひと気もなく、派手に暴れても人目に触れる事は無い。
先ずは挨拶。
屋外でヒヨリの対物ライフルが轟音を奏で、大口径弾がマルコの胴体に迫るも。
「ッ!」
咄嗟に伏せられ、弾丸は彼の頭上を通過。
そのまま後方の壁に衝突、ドカンと爆音が響いては、古い建物を揺るがすに留まる。
ヒヨリは獲物を仕留め損ねたと、恐る恐る報告。
「すみません、外しました……」
「想定内だ。 次」
サオリは感情を出さず指示を出す。
だが心中では僅かな驚きと共に疑念が渦巻く。
……撃たれたのを知覚してから回避。
そんな馬鹿な話があるか。 人間技じゃない。
「……了解」
ミサキ、手筈通り指示を受けると、誘導弾発射装置……歩兵携行式の地対空ミサイルを構える。
ただしソレは外見だけ。 中身は対地攻撃ができるようになっていて、それも弾頭が分裂、子弾をばら撒き、広範囲への攻撃かつ、その特性により命中率が高い収束ミサイルを発射可能。
電子機器を操作、信管設定。 スコープを覗き建物の上部にマニュアル照準。
間も無くしてトリガーが引かれた。
バシュゥという発射音。 筒の中から白煙の尾を引きながらミサイルが飛翔。
射手の望み通り、マルコのいる建物の上部で弾頭が炸裂。 子弾が雨のように建物の屋根に雨霰と降り注ぐ。
花火のようでもあり、しかし起きるは屋根に突き刺さった小型弾頭による炸裂に次ぐ炸裂。
元からボロだった建物は更にボロボロになり、大量の砂塵を内部に篩い落とし、中で伏せて隠れるマルコを埃まみれに。
プレッシャーを与え、これで慌てて飛び出して来たところを射殺しようとサオリは考えたが……出てこなかった。
「リーダー、目標が出てこない」
「次。 姫は援護を」
なら仕方ないと、サオリが打って出た。
直接建物に侵入、撃ち合いで倒す。 姫と呼ばれたアツコはコクリと頷き、共に移動する。
「こうも出てこないと罠の可能性がある。 中に誘い込むつもりか。 だがそうだとしても予想通りに過ぎない。 ヒヨリとミサキは外を見張れ」
「わかりました」「わかった」
「相手は1人だ、確実に始末する」
サオリとアツコ、未だ砂塵が舞う廃墟内へ。
埃と暗さで視界が悪くとも、2人はマスク装備。 フィルター機能で息苦しさというものは無い。
「油断するな。 最悪は私を置いて脱出しろ」
サオリはアツコを異様に気にかけるも、当人は黙って銃口を構え続けるのみであった。
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「おいでなすったか!」
刺客を誘い込むべく、わざとひと気の無い廃墟に移動したところ、派手な攻撃が始まった。
運良く大口径弾を避け、ミサイル攻撃を耐える事暫く。 直接手を出しに2名が侵入してきたのを察知。 砂埃の向こう、揺らめく2つの人影を見た。
帽子とフード。 サオリとアツコだ。
ヒヨリとミサキは外で見張り兼援護らしい。
マルコは狙撃を警戒して窓際を避ける。 ミサイル持ちは味方がいる状態では撃ってはこない。 なら2人に集中すれば良い。
マルコ、身を屈ませて床近くを流れる砂塵に身を隠し、フレイムガンを発射。 空気の膨張音と共に火炎弾が前方に浴びせられる!
「ッ!」
サオリ、咄嗟にアツコを庇うようにして、共々壁の裏へと隠れた。
火炎弾はそのまま別の目標、入口近くに置いてあった燃料タンクに飛翔……着火、引火。 中規模の爆発が起き、衝撃で壁や天井が崩れた。 入口は塞がった。
「刺客とはな。 トリニティの手先か?」
マルコは敢えてアリウスを知らない雰囲気を出しつつ、怨敵の名を出した。
これで激昂するなり、そうでなくても会話の糸口になればと思ったが上手くいかない。
「だんまりは肯定と見做すぜ!」
「……マルコ先生、噂通り面白い人だ」
漸く口を聞いたと思えば、言葉と裏腹に殺気や怒気を感じる。
何かしらの事情で大切にしているアツコが危険に晒されたからか、入口を塞いだからか。 それとも火炎放射器なんて物騒だからか。
だが同時にマルコ同様に情報を抜こうと考えてもいるようだ。 マルコとしては何であれ、対話が出来た時点で大きな収穫である。
「コッチはソッチを知らねぇが。 まぁトリニティの校舎を一部とはいえ滅茶苦茶にしちまったし、それ以外の場所でも派手にやってきた。 多くの生徒から怨みを買っていてもおかしくはねぇか」
「自覚はあるようだ。 なら殺されても受け入れられるな?」
空気が変わった。
それは殺害予告でもあると同時に。 殺人という大罪を犯すにあたり、己に正当性を見出し、フットワークを軽くしようとしているようでもあった。
「警察に引き渡すじゃなく私(死)刑かよ。 そうかそうか、お前はそういう奴なんだな」
「"虚しい。 全てはただ虚しいだけだ"」
刹那、角から飛び出してくるサオリ。
アサルトライフルを撃ちながら、マルコが撃ちずらいように姿勢を低くジグザグに走り迫る。
それに気を取られたところを、アツコに撃たれそうになるので、先に角に向かってボムを2連投擲。 爆破して黙らせる。
タイマンとなる頃には、サオリに懐に入られた。 火炎放射器を持つ相手に肉薄するとは、大した練度、いや度胸。 あいや狂気だ。
「くそっ!?」
次のボムに手を掛ける余力も、火炎放射器を構える時間も無い。
目の前に迫る、髑髏のエンブレム……アリウス印の戦闘ナイフ。
そして───。
「終わりだ」
「NOOO!」
マルコは喉元を掻っ切られ。
異国の悲鳴はボコボコと泡立つ音に変わったのだった……。
今更ネタバレもナニも無いかもですが……