マルコの悲鳴と共に、足元に転がったもの。
それは取手付きの手榴弾だった。
「ッ!?」
今度はサオリが間に合わない。
本能的に背を向けた瞬間、爆発。 至近距離で起きた爆風が背中を押し飛ばし、アツコの近くへ転がされる。
駆け寄るアツコ。 手話で無事かを尋ねる。
「ゲホッゲホ……あぁ大丈夫だ。 マルコ先生、姑息な真似をする。 だが結果は……」
答えるサオリ。 彼女もまたキヴォトス人。 歩兵の通常兵器程度なら命に別状は無いらしい。
だが建物は大丈夫じゃない。 倒壊寸前だったが、爆発がトドメを刺す形となった。
ガラガラと音を立てて天井が崩れ始め、このままでは仲良く圧死だ。
「脱出だ。 急げ!」
サオリは叫び、アツコと共に窓際まで疾走。
飛び込むように硝子の無い枠を潜り抜け、崩れゆく建物を後にしたのだった……。
「サオリ姉さんも姫ちゃんも無事で何よりです」
建物が崩れ切る前に脱出、外にいたヒヨリとミサキと合流し生きてフルメンに。
サオリは手に残る殺人の感触に心中穏やかでは無いが任務を優先、状況を伝達する。
「ああ。 マルコ先生は……私が殺した」
「……建物も随分と派手に崩れたしね。 狙撃を避けたのはともかく、これで生きてたら不思議だよ」
「先生が最後に放った手榴弾が足元で爆発もした。 この大ごとだ。 トリニティが来る前に瓦礫に埋もれた死体を確認、回収する暇は無いが、任務は達成したと見る」
「……遺品代わりに外に停めてあった豆戦車は。 動きそうだけど」
「自走できるなら持ち帰ろう」
そうしてアリウスにお持ち帰りされるメタルスラッグ。 敵に奪われるなんてのは、過去にもあったから今更だ。
それよりサオリ達は失念していた。 殺人の衝撃、動揺でミスを犯していた。
いや、こればかりは仕方ないかも知れないが。
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「上手くいったな、ヨシ!」
「ヨシじゃないです!?」
マルコ、瓦礫の山の上にテレポートするように突如と起立、溌剌と復活!
ツッコミを入れるオーパーツのシッテムの箱、そのOS、秘書のアロナ!
「どれだけアロナちゃんがハラハラしたと思ってるんですか! バリアは使うなよ、1回わざと死ぬからとか、聞かされた時はどうしようと思いましたよ! その後、首をやられたり、手榴弾を足元で爆発させたり、建物の下敷きになったり、踏んだり蹴ったりでもう本当に駄目かと思ったんですからね!?」
「"ノーミスプレイ"にならなかっただけだろ、良くある事だ。 それにそれだけの事が起きても1デスで済んだぶん、マシな方だ。 拳銃1丁になるデメリットはあるが気持ちを切り替えていこうぜ。 "残機"はある」
「先生は何を言っているんです!?」
「"ソースを読め!"」
「訳が分かりませんよ!?」
なんか一瞬点滅していたが気の所為だろう。
色々ツッコミはあるが、あまり細かい事を気にしてはいけない。
「それよりアロナァ! パクられたメタスラの動きは追えてるな!?」
「バッチリです! 不慣れな乗り物の所為か、ちょっとぎこちないですけど。 その位置情報は常に記録し、ルートを把握しました!」
仕事モード(?)に切り替え意気揚々のアロナ。
そう。 これこそマルコの妙案である!
目の前で明らかに死んで見せ、オマケに爆発を起こして瓦礫の下敷きになって確実に死んだと思わせる。
あいや斬られた時点で死んではいるのだが、復活や遺体を見られないようにする手間をかけた訳だ。
その甲斐あって、サオリ達は殺害を達成した感触のままに撤収。 その時に証拠兼戦利品として屋外に停めておいたメタスラを回収させた。
そして、そのメタスラのCPUはアロナが動かせるもの。 同時に位置情報等を把握でき、これを解析、繋ぎ合わせる事でカタコンベのルートをゲットだ!
「……まぁ正直、ここまで上手くいくとは思わなかった。 最悪、アリウス自治区へのカチコミは諦めて、エデン条約の締結会場をひたすら守るのも考えた」
「でも上手く行ったから良かったじゃないですか。 でも死ぬ事前提の作戦は2度と立てないでくださいね!」
「状況による」
「状況に関係なくです!」
「善処する……で、アリウスへのルートが判明次第、突入する訳だが。 その情報をトリニティにも共有させてくれ。 後続はあった方が良い」
「大丈夫でしょうか。 政治的な軋轢などの問題が予想されますが」
「アズサやミカが絡んでおいて今更なんだ。 長年溜めてきた腹の内を、互いに吐き出させ合うキッカケを作るんだ。 じゃねぇと、この先も今回みたいな事が起きるぞ」
「分かりました。 それが先生なりの解決方法なんですね。 アロナちゃんは信じて実行するのみです!」
こうして事態は、トリニティの歴史は大きく動こうとしていた!
その切掛を生んだシャーレのマルコ先生は、評価が分かれる人物となるものの、概ねいつまでも足踏みをし続けるよりはマシだったとされるようになる……。