「アツコ!」
瀕死に思えたアツコが目を覚ました。
マルコが背嚢から状態異常を回復させる救急箱やら聖水やらを都合良く使い、これまた都合良く効いたのだ。
……メタスラ概念に今更ツッコんではいけない。
「サッちゃん……?」
「良かった。 本当に、良かった……!」
「……うん。 私はここにいるよ」
「良かった! 良かったですアツコちゃん!」
「マルコ先生のトンチキに助けられたね」
三者三様、喜ぶ面々。
スクワッドが己の支配者に叛逆してでもアツコを助け、マルコとしてはその支配者を倒し当面の任務は達成した。
後は戦後処理だ。 残党狩りなら兎も角、政治や再建に関しては門外漢なマルコだが、正義実現委員会に引継ぎを手配済みなので問題無い。
……歴史的、政治的な摩擦は大きいだろうが、それでも歩み寄らせねばならない時もある。 ただ目の前の哀れな子羊達には、一応聞いてみる事にする。
「これからトリニティが来る。 支配者がいなくなったアリウスだ、瞬く間に占領されるだろう。 少なくともテロに加担していた分、無罪放免とはならない筈だ」
「そうだろうな。 今直ぐにも逃げるべきかも知れない……」
悩むサオリ。
正史(?)ではエデン条約の乗っ取りに失敗し、その責任追及から逃れる為に逃避行。
アツコが生贄になる際、こうして一時的に帰還しベアトリーチェ……マダムを倒すもアリウスには戻らず、警察の手から逃れながら、暫く自分探しの旅を続ける事になる。
だが今回、エデン条約の会場を襲撃する前にマルコに襲撃され、それに焦ったマダムが儀式を敢行。 ロイヤルブラッドなる高潔な血(?)を持つアツコを生贄に。
アツコを救うべくマダムに叛逆したスクワッドに対処するべく化物へ変貌。 続けてマルコも参戦した事でマダムは消えた。
違うのはエデン条約の乗っ取り云々の部分くらいだ。 細かい余罪や、セイア襲撃は変わらない。
「俺としてはアリウスに残り、残された生徒達を纏めて欲しいところだが」
マルコは背後を一瞥。
白い外套に身を包んだ生徒達が、不安そうに此方を覗いていた。 その中にはマイアに支えられた、ボロボロのスバルの姿もあった。
何を言うでも、銃を向けるでもない。 ただ自分達が畏怖し、信じてきたマダムが消えてしまったのだと、これからどうなるのかという不安、その責任を求める視線が突き刺さる。
マルコはソレに叱咤する事は無い。
生徒同士の問題に、先生がどこまでも首を突っ込んでは根本的な解決にはならない。
教え導くのが先生の役目だとしても、最後は自らが選択する事。 それが大切だ。
「わかった」
サオリは重々しく言った。
「残ろう。 だがトリニティやヴァルキューレ警察、矯正局へと連行されるというなら、全ての責任は私にある」
「わかった。 だがその前に聞きたい事がある」
「なんだ?」
「セイアの件だ。 本当に殺したのか?」
重々しい沈黙のち、サオリは口を開いた。
「……まだ生きている筈だ」
「隠遁してると?」
「襲撃にはアズサも関わったが、その時に渡したヘイロー破壊爆弾をアイツは使用していない。 恐らく、きっと……一線を越えるのを避け生かした筈だ」
曖昧な供述。 希望的観測。
ヘイロー破壊爆弾なる謎兵器の名が出たが、そんな事は今はどうでも良い。 重要じゃ無い。
今は希望に縋る他ない。 この場は後続に任せて、再びアズサか、何かを知っていそうな別の首長……ナギサに聞くべきか。
「了解した。 お前達は為すべき事をした、俺もそうする」
そういい、背を向けて歩き出すマルコ。
アリウスが落ち着いた今、もう逃げ隠れし怯え住む必要は無い。
ならばセイアも姿を現す筈だ。 後は時間が解決してくれると信じて前を向く。
「来たか」
その視線の先には正実の群れと、看護婦らしき集団……救護騎士団の姿。
そして後方より護衛されて来るは、ティーパーティの首長、桐藤ナギサの姿も。
「探す手間が省けたな」
そう言いつつ、拳銃のマグチェンジをし、スライドを手動で後退させるマルコ。
それは警戒、残心、常在戦場の構えにて。
この地、未だ戦場也。
……マルコの所為ではあるが。