エデン条約を飛ばしSRT、カルバノグの兎編
時系列など前後感はありつつ
特殊な気配
トリニティでの騒動は収まった。
アリウス区は統治者が消えた事で指揮系統が混乱するも、正義実現委員会が残党を制圧、負傷者はミネ団長率いる救護騎士団により救助され、ナギサを臨時ホストとするティーパーティにより平定する方向へ相なった。
まだ問題は多いが、正式な分校、学校として認可して貰えるよう連邦生徒会に掛け合う方向となる。
ミカはアリウスと共謀し、セイア含めトリニティ全体を危険に晒した罪を問われるも、連邦捜査部シャーレの顧問、マルコ先生とナギサの嘆願書もあって退学処分にならず、ただし当面ティーパーティからは除名、監視と反省の意味も含め、お嬢様な生活を取り上げられて古い宿舎の屋根裏部屋住まいとなった。
皆が凋落具合に満足し話は綺麗に終わり……とは流石にならず、同じパテル分派や首長を危険に晒されたサンクトゥス分派、単純に罪の大きさに対して処遇が甘いとか人道的見地、感情的な問題もあってフィリウス分派や一部一般生徒は未だ憤慨、抗議している。
とはいえ、大半の政治に興味が無い生徒は関わり合いなく各々の青春を謳歌していくだろう。
時間が経てば、怒りも下火になる筈だ。 完全には無くならないだろうが……過去や罪は背負っていくしかない。
対してアズサは殆ど蚊帳の外だ。
元アリウスでスクワッドメンバー、セイア襲撃に関わったり、日常の中では倉庫に立て篭もり正実と交戦したりと罪が無い訳ではないが、命を奪う行為を忌避した事でセイアは助かったといえる。
また、ミカと異なり政治中枢に関わる者ではなく現場側で、あくまで指示を受けて行動する立場だった事、アリウス事情についての情報提供者、今後の架橋のキッカケとし、放逐せずトリニティの一般生徒として過ごして良いとした。
……最も、正実相手にドンパチした罪やら、単純に成績不順な為に補習授業部に入れられる事になるが。
古聖堂を会場としたエデン条約締結も間近に迫り、トリニティは多忙となる。
長年敵対してきたゲヘナ学園が来訪、事実上の平和条約を結ぶにあたり、アリウスや個人の生徒にばかり構っていられず、警備の強化や政治的な調整など、やる事は多い。
阻止した筈のテロが起きたり、呼ばれでもしなければ、マルコがこれ以上首を突っ込む分野ではないかも知れない。
このまま別件の仕事をするのみである。
尚、エデン条約を提案したとされる連邦生徒会長は今なお行方不明だ。
リン行政官を代行とした現連邦生徒会は、条約についてはトリニティとゲヘナそれぞれに任せるとした。 世間からすれば提案しておきながら、下手な介入は内政干渉とし、厄介ごとを丸投げた形である。
……現連邦生徒会の求心力が低下しているのは、こうしたところが一因だろう。
だからとシャーレが良い訳もなく。 マルコ先生は乱暴な手段で問題を乱雑に解決して(つもりになって)いるので、生徒からの評価は分かれている。
それでも何もしない上より、雑でも動いてくれる下部組織のシャーレの方がマシ、といった評価だった。
そんな訳で。
広大な学園都市キヴォトスのあちこちから依頼や相談が舞い込むシャーレオフィスだが。
ヴァルキューレ警察学校の公安局と、廃校寸前というSRT特殊学園から依頼が入っていた。
治安維持組織という意味で共通する故に興味が湧いたが、それぞれは1つの事に相対するもので、片方しか選べないようなものだ。
「連邦生徒会長により創設されたSRT特殊学園。 特殊部隊を育成、ヴァルキューレ警察学校が対応できない事案に対処させる生徒が所属する学校……その一部が武装蜂起。 公安局が手を焼いていると。
面白そうだが、廃校寸前ってのはなんだ。 アロナ、分かるか?」
尋ねるマルコ。
連邦生徒会お抱えの武力でありながら、無くなりそうとはこれ如何にと。
アロナは答える。
「はい。 連邦生徒会長さんが行方不明になり、学園の責任者がいない状態になったのが原因です。
万が一、SRTの生徒さんが暴走した場合、それを止める者がいない事、責任の所在はどこになるのか、廃校するべきか存続するべきか議論が続いていました。
既に多くの実績があるのと、治安維持の為の人手不足から存続するべきという意見、万が一のリスクから廃校するべきという意見。
当初は拮抗していましたが、廃校の情報を掴んだと思われるSRTの生徒さんが存続反対派の議員を襲撃する事件が発生。
廃校にするべきという意見が多数派になりつつあり、今いるSRTの生徒さんはヴァルキューレに転校させる形をとっています。 連動するようにSRTの生徒さんの反発も強くなっているようです」
「暴力で解決しようとしたら、自分自身の首を絞める事になった訳だ。 治安維持組織が一転してテロリストとはな。
やったらこうなると分かりそうなものだが、キヴォトスクオリティなら仕方ないか」
自分自身を棚に上げるも、分岐ルートに悩むマルコ。
公安局ともSRTとも明確に敵対はしたくない。
片方に肩入れしても、事態が丸く収まるとも思えない。 正義があるとしたら公安側だが、SRTが無くなる事で治安悪化が著しくなっても困る。
この手は連邦生徒会の防衛室、不知火カヤと相談するべきかもだが、話し合いで解決していたら苦労はしていない。
「とにかく現場に向かうぞアロナァ!」
「そしてドンパチですよね。 アロナちゃんは詳しいんです」
アロナの諦め声に耳を貸さず、ガチャガチャと戦闘の準備を始めるマルコ。
が、手を止めて「おっそうだ(唐突)」と大きな軍用無線機をどこからともなく取り出し、ミレニアムと連絡を取る。 相手はエンジニア部だ。
「シャーレのマルコだ。 例のVTOLはできているか……わかった、取りに行く。 そうだ、今からだ!」
「知ってました」
波乱の予感に、アロナの諦観。
予測可能。 回避不能。 暴走しているのはマルコ先生もだろう。
間も無く特殊部隊vs特殊部隊員の戦闘が始まろうとしていたが、同じ土俵で殴り合わなきゃいけないルールなんて、そこにはないのであった……。
後書き
どこまで書けるか…