ヴァルキューレ警察学校、取り調べ室。
牢屋のような冷たく狭い空間に、机と椅子と照明という、大凡想像する通りの家具が置かれた、息が詰まる場所。
そこに1人ずつ別々に詰め込まれては、それぞれに調べる者がつけられた。
強情そうなサキには、狂犬と恐れられるカンナが担当。
モエとミユには生活安全局がつけられ。
ミヤコはマルコが担当になった。
サキは最初、カンナの高圧的な尋問にモノともしない様子を見せていたが、弾薬をモエと共に浪費、不必要な量を使用していた件にツッコミを入れられると敢えなく"落ちた"。
モエは最初、飴をくれないかと尋ねるなど太々しい態度だったが、派手な兵器をブッパできるならSRTに拘る理由は無いと嬉々として話し始め、危険な思想をチラチラ見せてしまう。
ミユは陰気で目立たない自分を変える為にSRTに入ったが、その学園が無くなるなんてと話し、ヴァルキューレ警察学校で自身を変えるにも、人付き合いが多い仕事は無理と即リタイアした。
そしてミヤコを相手にするマルコは───。
「汚い大人と話す事はありません」
拒否、黙秘権の行使……!
相手が突然やってきて、キヴォトスでは一般的ではない武器装備と権限の力で、苦労して構築した陣地を滅茶苦茶にしてきた奴だからというのが大きいだろう。
マルコに言わせれば、そんな理不尽、現場では幾らでもあるんだ甘ったれるなという話であるが、流石に子供相手には酷だろう。
だから此処は真面目に話す事にする。
「ならテメェは汚い泥ウサギだ。 学園の武器庫から勝手に武器装備を持ち出して、公共施設を不法占拠、武装蜂起。 守るべき筈の市民を怯えさせ、上に抗議するにも武力行使じゃ正当性を主張するにはキツい冗談だぜ。 上はこういう暴走を懸念して廃校にしたがってるのに、これじゃ益々悪化するだけだぞ」
「取れる手段は取りました。 最後に行き着いたのが、あの砦だったんです」
「秒で崩れたがな。 そんなもんだ、やり方や相手が悪いってんだよ」
「次はもっと上手くやります」
「次なんて本来は無ぇんだ。 もっと上手くやる、の方法に銃を無闇矢鱈に振り回す以外の方法がとれるようになりな。 俺もほんの少しなら手伝ってやるから」
「結構です」
話こそ出来たが、平行線。
反省の色、なし……!
このままでは全員矯正局送りだ。 そうなればSRTの看板に泥を塗る事になる。
ミヤコの気持ちが分かるだけに、マルコは珍しく同情的で、最悪の事態は回避させてあげたかった。
だが上手い説得の仕方が分からない。 それで口に出るは、大人だからこそ語れる過去の経験談。 歳を取るのも悪い事ばかりではない。
「信じてくれねぇだろうが、俺も特殊部隊の隊長をしている。 その部隊の名前にも君ら同様動物の名が入っていてな。 "ファルコン"だ、さっきの戦いみたいだろ? ウサギは恰好の獲物だったワケだ」
「本当に信じられませんね。 同じ立場を主張して、同情を誘う作戦が透けています」
「まぁ聞け。 それで俺や仲間達は、秩序を乱す敵を倒してきた。 その中にはゲリラやテロリストもいた。 中には君らみたいな"エリート"もいたかに思う」
「……だからなんですか。 私達もそうした敵だと言いたいんですか」
「そうだな。 おおよそ共通して世界征服を企むような、発想が貧弱な連中といえる。 だが中には切実な理由も含まれていた……と思う」
モーデン元帥とか。
反乱を起こすだけの理由があったような気がする……が、奴は世界規模で迷惑だったのでマルコ達は鎮圧を繰り返した。
「だが人の迷惑になる真似をすれば、支持は無いし正義なんて名乗れない。 こんな真似をしても既にヴァルキューレ警察に転校する気の生徒や、創設者の連邦生徒会長、君らの先輩が泣くんじゃないのか。 違うか?」
「それでも、それでもSRT特殊学園は私達の母校なんです。 無くなるなんて、認められないんです」
分かる。 マルコだって、国や故郷、家が無くなるとなれば抵抗するだろう。
だが望む形にするにはどうするべきか。 銃だけ持って振り回すだけで解決しない問題がここにあった。
「そればかりだな……取り敢えず君らの処分は保留にして貰うよう公安に掛け合う。 続いて君らSRTの上部組織、防衛室だ」
「廃校の撤廃を?」
「期待はするな。 シャーレに権限があるからといっても、所詮は連邦生徒会の下部組織。 門前払いだってあり得る」
席を立ち、取り調べ室を後にするマルコ。
その背中はどこか、大きく見えた。
「あの」
ミヤコは初めて、しおらしくなった。
「助けて、くれるんですよね……?」
言葉には本音と疑問が混ざっている。
不安をマルコの背中にぶつけると、彼は背を向けたまま片手を上げて答えた。
「言ったろ。 ほんの少しなら手伝うって」
互いに元気は無い。
それでも少しだけ、希望が見えた気がした。