キヴォトスラッグアーカイブ   作:ハヤモ

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風呂の問題

後日。

未だデブのマルコだったが、RABBIT小隊の様子を見に、子ウサギ公園を訪れた。

すると何やらモエとサキが言い争いをしている。 その影に隠れるようにミユも加わっていた。 廃棄弁当の内容を巡り、喧嘩中らしい。

 

 

「私が貰ったんだから、私の物でしょ!」

 

「モエは昨日、生姜焼き弁当を食べただろ! 今日は大人しく、もやし弁当でも食ってろ!」

 

「じゃ、じゃあ……私はソーセージ弁当を……」

 

「「それも駄目!」」

 

「うぅ……」

 

 

食い物に4の5の言える余裕があるとは。

取り敢えず食糧問題は解決したと見たマルコは、元気な子兎達に声をかけた。

 

 

「おっ元気だな(デブ声)」

 

「げっ、先生……」「このタイミングで……」

 

「飯を巡って争いたぁ、余裕じゃねぇか」

 

「別に喧嘩なんかしてないぞ。 もしそう見えたなら目を洗った方が良い」

 

「そのぉ……これは争ってる訳ではなく……」

 

「そそ。 私らは協議してるだけだから」

 

「おっそうか。 銃をブッ放つのが日常のキヴォトスじゃ、話し合いによる平和と尊さは貴重だぜ。 という訳でもっと欲張れ、もっと欲しがれ」

 

 

マルコ、一応これで感心している。

些細な喧嘩でも撃ち合うのが文化な部分もあるキヴォトスなので、それと比較すれば随分と平和だと。

ただ、その文化圏にいるミヤコ達にとっては嫌味にしか聞こえない。 それでも理性が働き、SRTとしての誇示を出す。

 

 

「モエ、サキ。 SRTが弁当を巡って争うなんてみっともないですよ」

 

「それじゃあミヤコは何を選ぶんだ」

 

「……焼肉弁当を」

 

「1番高い奴じゃないか!?」

 

 

争いは今後も続きそうだ。

それでも飯があれば生きていく事は出来る。 偏った食生活で健康や衛生面は悪いだろうが、直ちに影響は出ない筈だ……そういえばサキ達の顔色が悪い気がする。

 

 

「……なんかお前ら、顔色悪くねぇか?」

 

「へ? いや待て先生、近付くな!」

 

 

刹那、BANG! と銃声。

マルコの足元で砂が跳ね上がる。

撃ったのはミヤコだ。 ドラムマガジンの白黒ライフルを向けている。

……やはり此処はキヴォトスだった。

 

 

「それ以上私達に近付いたら撃ちますよ」

 

「飯のありかを教えて人の心配してやってるのに、この仕打ちはねぇだろ」

 

「……廃棄弁当で心を折ろうとしても無駄ですよ。 その魂胆は見えています」

 

「そこまで考えてねぇよ……で、近付くのが駄目なのはなんだよ。 病気してんのか?」

 

「えと、その……」

 

 

急に歯切れが悪くなるミヤコ。

サキやモエ、ミユも気まずそうにし始めた。

 

 

「……私達、何日も風呂に入ってないし」

 

「……川に飛び込んだら風邪引きそうですし」

 

「……トイレの浄化槽を爆破する?」

 

「余計に汚れるんじゃ……」

 

 

どうやら体の汚れ、臭いの問題らしい。

汗や泥で大なり小なり汚れるものだ。 それは仕方ない。 衛生面も放置すれば病気になったりして、作戦行動にも支障が出る。

食糧不足より深刻じゃなさそうだが、塹壕などで長期に渡って活動していると、汗や雨水で手足がふやけたり水虫になったりと良い事なんて無い。

マルコ達からすれば、数日程度で根を上げるなんてお嬢様に見えるだろうが、完全に無視して良い訳ではないのも何となく理解しているつもりだ。

なので、ここでも善意を向けるのだが。

 

 

「ああ、シャワーならシャーレにあるぞ。 使って良いぜ」

 

「度し難いです」「は?」「信じられない」

「私達を無防備にして何をする気……!?」

「もしかしてナマより残滓が好み?」

 

「……は〜……面倒臭ェなテメェらマジで」

 

 

別の臭さに、マルコが先に参ってしまった。

とりま、食糧と同じように、直接施しを受けるのをヨシとは思っていないらしい。

逆に、また何かの見返りや廃墟物の利用などをする分には良いのかも知れない。

 

 

「ならよ、ここにバスタブを用意すれば良い。 水ならあるんだろ、火を焚いて沸かして入れ」

 

「バスタブ……風呂ですか」

 

「ドラム缶風呂とか?」

 

「古臭い考え方だな……だが以前、似たような物を百鬼夜行学園で見た気がする」

 

 

百鬼夜行学園、古き時代の日本っぽい文化と妖怪風の生徒がいる学校である。

FOX小隊の先輩は此処の自治区が地元とされるが、今はさておく。

 

 

「フロ……バスタブ代わりにドラム缶? エリなら詳しいか? まぁ上手い事やってくれ」

 

「そうさせて頂きます。 モエ、物資管理データにアクセスして、ドラム缶を扱っている場所を調べて下さい」

 

「あいよ」

 

「貰いに行くのか?」

 

「港あたりに破棄されるドラム缶がある筈です。 それを隠密に回収します」

 

 

つまり泥棒するらしい。

何が彼女達にとってアリでナシなのか、その線引きが未だ掴めず、マルコは頭を抱える。

 

 

「名付けてニンジン作戦です!」

 

「まぁ面白そうだし見学くらいはしてやるよ」

 

 

素直に「ください」と言わず、こっそり手に入れようとする。 それは「アリ」らしい。

兎に角、そうして風呂を手に入れる為にドラム缶泥棒になるミヤコ達なのであった……。

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