バイクのヘルメット等を揃って被る不良集団は、ヘルメット団と呼ばれる愚連隊。
構成員は元生徒。 何かしらの理由で学校に通わず、或いは辞めた者達だ。
他の不良と縄張り争いをしたり、生徒や市民を銃で脅してカツアゲしたり、反社会的な奴らに雇われて人を襲ったりと、市井に迷惑を掛けている事が多い。
そしてアビドス高校を襲うにも、何かしらの理由があった。
金目のものがない、砂に塗れた校舎をわざわざ欲しがるのも変な話だ。 十中八九、誰かに雇われたんだろうとマルコは当たりをつける。
つけるが……先ずは殲滅だ。
「な、なんだテメェ! ラクダにバルカン砲なんか付けて、ふざけてんのか!?」
「これでもマトモな方だぞ」
不良にも常識があって、ツッコミを入れられるマルコだが。 マルコに言わせたら、四つん這いのゾンビロボみたいな乗り物とか、様々に理解に苦しむ存在がある。
それらと比較したら、動物にバルカン砲がついているくらい、ワケないのだ。
「馬鹿にしやがって! 大人相手でも容赦しねぇ、先ずはお前からシメてやるよ!」
隊長格が吼えると、マルコに集中砲火。
一応ラクダを避けているあたり、慈悲はあるらしい。 知らんけど。
「俺も、ガキだからって容赦しねぇぞ」
一方、マルコ。 敵は倒す慈悲は無い。
ましてや相手はキヴォトス人。 銃火器を振り回してきて、撃たれても「痛い」で済ませられる奴らに遠慮は要らない。
「スラッグのバルカンを舐めてると、痛い目見るってのを教えてやる」
手綱でラクダを操り、校庭を走り回って射線を避けながら、何処をどうやってかバルカンを撃ちまくった。
乗り物の多くに共通する武装であり、それだけ分かりやすく幾度と活躍し、悩む事が無い。
その迷いの無さのままに、不良が弾幕の雨に押し流される。 ワカモのようなフィジカルさが無ければ、後はただのカカシである。
「うぎゃっ!?」「ぐはっ!」「ぎゃあ!」
モーデン兵のように、悲鳴をあげて次々と倒れる不良。 あっという間に数を減らし、残るは僅かとなった。
「マジかよ……ふざけてる。 本当に……!」
ふざけた乗り物にやられる屈辱。
それ以上に、得体の知れない存在に蹂躙された事実に畏怖する生存者。
「お、お前ら! 今日は引き上げるぞ!」
「えっ! でもクライアントには何て……」
「この状況で粘る方がオカシイんだよ!」
「アビドスの連中、覚えてろよぉ!」
戦意が一気に喪失したヘルメット団。
気絶した者達を背負って撤退する辺り、仲間意識はあるようだ。 マルコはそれに免じて発砲を止めた。 いや、敢えて泳がせた。
「アロナ、連中を調べられるか?」
何処かに拠点があるのなら、案内させて纏めて潰すか脅そうかと。
尋ねられたアロナは察してか、曖昧な返答で場を濁す。
「うーん……キヴォトスには生徒さんがゴマンといますから。 ヘルメットで顔も見えませんでしたし、今の短い戦闘だけで割り出すのは時間が掛かるかなって」
嘘では無いが、言葉の節々に「酷い事は反対」と聞こえる言い方。
それをマルコは察するも指摘しない。 別のアプローチをするのみ。
「まぁ良いさ。 また来るようなら叩き潰すだけだ。 それより連中、こっちの弾薬が切れてるのを知ってたな。 節約した撃ち方を見て察する方法もあるだろうが……対して奴らの補給事情はどうなってる。 武器も良さそうなモンだったし、結構無遠慮に撃って来やがったぞ。 キヴォトスで武器弾薬を手に入れるのはそんなに簡単なのか?」
「コンビニなんかでも買えますからね。 ですが当然、お金が掛かります。 値段は色々ですが、それでも安くは無い筈です」
「学業もせず、バイトもせずに金やら銃弾を手に入れるってなりゃ、人から奪うか、やっぱ仕事をするか。 クライアントがどうこうと言ってやがったな。 裏がありそうだ、調べてやろう」
ひとまずラクダを乗り捨て、校舎に戻るマルコ。
正面玄関には、対策委員会の面々が銃を持ちながらも唖然としていたり、感心していたりと様々な反応である。
特にホシノは、眠そうだった目が開いている。 オッドアイだ。 それでいて品定めをする猛者の目でもある。
「うへぇ、マルコ先生ってとっても強いんだねぇ。 ラクダで戦うのは驚いたけど、おじさんの出番が無かったよぉ」
「ホシノも強そうじゃないか」
調べた限りでは……と言いかけて、やめた。
深入りされて嬉しい人は多くはない。
「装備の仕方的に軍人さんなのかなぁ?」
「そういうホシノは何者だ?」
「おじさんは、おじさんだよぉ?」
「そうかい。 若い頃の武勇伝がありそうで」
先に手を出されて、反撃するのは正当と言い訳はしつつ。
互いに軽くメンチを切って牽制し合うが、後輩が空気を読んでか読まずか、ぶった斬るように腰を折る。
「え、ええと、本当に凄かったわ! なんでラクダにバルカン砲があるのとか、気になる点は多いけど!」
「ん。 ラクダ、ジャンプまでしてた」
「考えたら負けかなと思いました」
「終わり良ければ全てヨシですね〜⭐︎」
三者三様、いずれもポジティブ。
マルコの異端さを認め、受け入れる面々。
そんな様子にホシノは。
「みんな、早速先生にゾッコン〜!? おじさんのハーレムが無くなっちゃうよぉ」
「もう! いつも昼寝してるじゃない!」
「ん、大丈夫。 ホシノ先輩にも、マルコ先生にも、私は負けない」
「シロコ先輩は対抗心、いえ、向上心があって良いですね」
「とにかくお疲れ様でした先生〜⭐︎」
場は爽やかに、しかし濁りつつ。
マルコは信頼されてねぇな、と寂しそうな目で青い天を仰いだのだった。