ペニー・パーカーに幼馴染を生やして曇ったり曇らせたりする話   作:血袋

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 FFHのミステリオは好きだけど嫌いです。対戦よろしくお願いします。


大いなる小悪党には、大いなる醜態が伴う

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 ──夜、ニューヨークはマンハッタン区を走るブロードウェイの34丁目にて。

 倒壊する建造物から市民たちが悲鳴を上げて逃げ惑う中で、ペニー・パーカー操るSP//drは悪と対峙していた。

 

「全く健気だな! そんなボロボロの玩具を駆り出してまで、ボクを止めに来るとは!」

 

 網目模様が入ったダークグリーンのジャンプスーツに、ヒロイックな黄金の鎧と深紅のマントを纏い、水晶玉のようなヘルメットを被った奇抜な悪党は、宙を舞いながら嘲笑を漏らす。

 言われた通り、SP//drの修復状況は万全と程遠かった。

 ベンとメイが急ピッチで修理を仕上げはしたものの、オールグリーンな状態を100とするなら、現在引き出せる性能は40……いや35といったところか。

 

「クイーンズボロ橋で手酷くやられるキミの姿は、偶然ながらボクも観ていてね。まさかヒーローの正体が、キミのような子供だとは思わなかった! 子供は家に帰ってテレビの向こうから、このボク──ミステリオがお送りするスペクタクルショーを眺めているべきだよ!」

 

 ……それでも。勝手気ままに街を破壊し、その様をスペクタクルショーなどと公言して憚らない目の前の犯罪者ミステリオを放置するなど、ペニー・パーカーの選択肢には無い。

 本調子じゃなかろうと、相手に自分の正体を知られていようと、関係ない。何度倒れても、必ずどうにかして、また立ち上がる。それがヒーロー・スパイダー。

 

 

 それを行動で証明してみせる──ハリーのためにも。そうペニーは誓っていた。

 

 

「スペクタクルショーって言う割に、ホ(・)ロ(・)グ(・)ラ(・)ム(・)の姿で登場するマジシャンだなんて随分とシャイなのね? 残念だけど、SP//drのスキャンは誤魔化せないわよ」

 

 だからこそ虚勢を張る。悪に臆さず生意気な台詞を吐く。

 事実、SP//drは見抜いていた。目の前を浮遊する奇抜な悪党の姿は、実物でなく──光学迷彩でカモフラージュされた無数の小型ドローンがホログラフィックプロジェクターで映し出している、虚構のシルエットであると。

 

「子供の観客を前にして顔も見せないのは、サービス精神が足りてないんじゃない? それとも、そんな子供に負けるのが怖かったりしてね……ドローン山の大将さん?」

 

「……っ、トリックを見破ったくらいで調子に乗るんじゃあないぞガキが! これはまだ余興さ、無知蒙昧な大衆が本物と信じ込めば十分だ! なぁスパイダー、今は手品のタネ暴きよりも──」

 

 ペニーからの挑発に語気を荒げたミステリオの背後で、唐突に赤い炎が湧き立つ。

 現れた炎は瞬く間に空中を燃え広がり……それは巨人の姿を成して、拳を振り上げた。

 

「──自分の身を心配するんだな! たとえ幻だと分かっていても、今からキミはその幻で出来た怪物に殺されるんだからさァ!」

 

 炎の巨人が振り下ろす拳と、ミステリオの手から発射されるレーザー光線がSP//drを襲う。

 巨人とミステリオの姿はホログラムだが、放たれる攻撃は本物だ。小型ドローン兵器たちに搭載されたレーザートーチや火炎放射器、衝撃波発生器がホログラムに合わせて火を噴いてくる。

 

 SP//drは付近の建物にクモ糸を伸ばし、スイング移動で攻撃を回避する。

 出力が落ちていても、この程度の波状攻撃をやり過ごすのはペニーにとって難ではない。しかし逃げてばかりじゃいられないのが、この状況の難点で。

 

「あぁもう、被害が大きすぎるっ……!」

 

 炎の巨人、という設定が厄介だ。その虚像が振り回す両腕と共にドローンが放つ火炎と衝撃は、周囲の建造物に火事と倒壊を引き起こす。逃げ遅れた市民の救助をしなければならない。

 そして、根本の対処。どこかでドローンを操りイリュージョンを映している、ミステリオ本体を見つけて叩く。そのためには反撃して敵のドローンを一機でも鹵獲し、指令の発信源を逆探知する必要があるだろう。……ただし、市民の救助よりも優先できるのなら。

 

 敵は倒す、市民も守る。両方やらなくちゃならないのがヒーローの辛いところだ。

 覚悟は良い、幾らでも出来ている。ただ純粋に──手が足りない。

 

「……っ!」

 

 だからこそ、手を止めてはいられない。今もまた、火煙に巻かれる建物の中で取り残されている幼児の姿が見えた。

 逡巡する間も無く建物へと飛び込み、SP//drのアームで幼児を抱え持ち、クモ糸を伸ばして脱出する。……その無防備な背後を、ミステリオの放つレーザーが狙っていることは承知の上で。

 

 泣き喚く幼児を抱きしめて、ペニーは機体を走る衝撃に備えた──

 

 

「──うおおおお、間に合ったァ!」

 

 

 その時だった。

 横合いから大きな鉄の蝙蝠が飛来し、その上に乗った緑の人影がSP//drを抱え上げ、レーザーを躱して離脱していったのは。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

『覚悟してください、炎を打ち込まれますッ』

 

「平気だよ、オズコープ社製の装備は耐火性だって抜群さ!」

 

 茶化してくる脳内のゴブリンに返事をしつつ巨人の追撃を躱して、悪党タッグから十分な距離が稼げた地点でグライダーを着陸させる。

 持ち上げていたロボットを地面に降ろせば、そのアームに抱えられていたチビッ子は駆け出し、その先にいた警官に抱きついた。後は警察が安全地帯まで保護してくれるだろう。

 

 

 ……問題なのは僕の方だ。

 市民を守るため身を挺するところだったペニーを、勢い任せに助け出したまでは良い。

 けれど、そもそも今朝ペニーをボコボコに痛め付けた悪党は、他でもない僕だ。どの面下げて、と言われれば返す言葉も無い。

 

 それでも、僕はこの場に駆け付けてしまった。ペニーに心から謝りたい。犯してしまった過ちを償いたい。それが今の僕の、偽らざる想いだ。

 その想いは、恥を忍んで言葉を尽くし、ペニーへと伝えなくちゃならない。僕は悪鬼のマスクを顔から取り外して、話を切り出した。

 

「……ペニー、僕だよ。ハリーだ。信じてもらえないかもしれないけど、僕は正気に戻っ──」

 

「──ハリーッ!!」

 

 ただ、言葉は早々に打ち切られた。唐突に開いたロボットのコックピットハッチから飛び出してきたペニーに、勢いよく抱き付かれたことで。

 金属の鎧を脱いだ彼女の体は細く小さく、スーツ越しでも儚い柔らかさが伝わってくるようで、僕は当惑しながら抱きしめ返すことしかできなかった。

 

 

「……ハリーがここに来たのは……やっぱり、私がヒーローとして頼りないから?」

 

 

 僕の胸元に顔を埋めたまま、絞り出したような涙声でペニーが問い掛けてくる。

 その声には根深い不安の色が滲んでいて、あの時の僕の言葉がどれほど彼女を傷付けてしまったのか、自分で自分を殴りたい気持ちに駆られる。

 

 僕がここに来たのは、決してペニーが頼りないからじゃない。ヒーローを愚弄したがるゴブリンなら悪意を以てそういう言い方をするのかもしれないけれど、断じてそれだけじゃない。

 

 そもそも僕は、ヒーローって言えばもっと屈強な大人が務めているもんだと思っていた。凡人にとっちゃ羨ましいくらい完全無欠で、妬ましいくらい非の打ち所が無くて、嫌味なくらい特別で。だからこそ、そんな僕の悪感情の化身であるゴブリンもあれほどに醜く荒れ狂った訳で。

 

 ところがロボットの蓋を開けてみれば、そんなヒーローの正体はペニーだった。

 そりゃあペニーは大人顔負けの天才だ。特別な女の子だ。その力は世のため人のために使われるんだろうとは思っちゃいたさ。その邪魔にはなりたくないとも思っちゃいたさ。

 だけどさ、幾ら何でもヒーローってのはナシだろう。街を襲う悪党と命懸けで戦っていたなんてのはウソだろう。彼女はまだ14歳だぞ。本来なら大人に、それこそヒーローに守ってもらう側じゃないか。か弱い女の子じゃないか。

 

 それでも現実として、ペニーはヒーローだ。今まで一人で戦い続け、ニューヨーク市民たちから愛される存在にまでなっていた。その重みと大変さの一端は、今日一日だけでも身に染みた。

 だから僕は今ここに飛んできた。要するに、僕が言いたいのは、だ──

 

 

「──皆を守るヒーローが弱ってる時、そのヒーローのことは誰が守るんだって話だよ」

 

「えっ?」

 

「責任を果たしたいんだ。君を傷付けてしまった分も……君を助けるために、この力を使いたい」

 

 

 顔を上げたペニーと目を合わせて、今度こそ迷いなく言い切れた。

 今の僕には力がある。手に入れた動機は低俗だし、第一歩は大失敗もいいところだったけど……ペニーを助けるための力があるんだって。

 

 本当はもっと言いたいことがあるし、ペニーの方に訊きたいこともあるけど、今はそうも言っていられない。あのヘンテコ魔術師と炎の巨人が、段々とこっちに近付いてきていた。

 

「ペニー、君は人命救助に集中してくれ。あのファンタジー野郎どもは僕がどうにかする」

 

「……度胸あるね。怖くない?」

 

「君のロボットと殴り合える程度にはタフだぞ、信頼してくれ。せっかく二人になったんだから、分業しないとだろ? 人助けはヒーローの専売特許だけど……その邪魔者をブッ倒すぐらいなら、ヒーローじゃなくてもいいだろうさ」

 

 抱えたペニーをロボットのコックピットへと戻し、方針を伝える。

 実際、スパイダーの能力は救助に適している。僕はその露払いに専念すれば良い。

 

「それならハリー、今見えてる奴らの姿はドローンが映してるホログラムなの。だから、ドローンを一機でも鹵獲できたら私に渡して。すぐに本体の居場所を特定するから」

 

「なるほど、流石にファンタジー過ぎると思ったら単なる手品か。OK、やってみるよ」

 

「あっ、待ってハリー!」

 

 早速グライダーで飛び立とうとしたところに、ペニーから待ったが掛かる。

 まだ何か伝達忘れがあっただろうか、と振り返れば……彼女はこちらに身を乗り出してきて。

 

 

「……いつものアレ、お願い。そうしたら私、もうへこたれない。自分を信じられるから」

 

 

 ……ああ、そうか。そうだった。申し訳ない、すっかり忘れていた。

 僕はペニーの頭に触れて、優しく撫でる。

 

 

「──君はヒーローだよ、ペニー。それを信じて飛ぶんだ。……僕も、その勇気を貰うから」

 

「──うん」

 

 

 今度こそ、互いに覚悟は固まった。僕は悪鬼のマスクを被り直し、ペニーもコックピットハッチを閉じて再びロボットを操る。

 炎が燃え広がる建物の方へ向かう赤い機体を見送り──僕のグライダーは敵の眼前へ躍り出た。

 

「んん? キミは確か、グリーンゴブリンとか言ったっけ? 動画はボクも観たよ。もしかして、ボクの華々しいデビューの祝い金を渡しに来てくれたのかな?」

 

「動画観てくれてたんだ、ありがとね。でも残念、5000万ドルのキャンペーンは終了したんだ。わかったら、そっちのデカくて暑苦しいペットは片付けてくれないかい? 君のヘルメットの中に棲んでるお魚さんたちが苦しんでると思うよ、ミスター金魚鉢?」

 

「金魚ばッ──いいか、二度とそのセンス皆無な渾名でボクを呼ぶなよ! ボクはミステリオ! ここでスパイダー諸共にキミを殺せば、迷惑動画配信者よりは有名になるはずだからね!」

 

「ハハッ、謎の男(ミステリオ)かぁ! 聞いて損したよ、憶える価値も無いネーミングだね! だって今から、その正体は僕たちに暴かれるんだし!」

 

 早々に煽りを交わし、繰り出された巨人の拳とレーザー光線を飛び回って避ける。

 ……しかし、どんな事情があって街で暴れているのかと思えば、目立ちたがりの売名行為とは。そんなことのために街が破壊され、市民が命を脅かされ、ペニーが戦わされているとは。

 ああ、全くもって──

 

 

「『──ふざけんなよボケが』」

 

 

 瞬間、脳内のゴブリンと意識がシンクロしたような感覚に陥った。

 自分でも驚くほど流れるような手つきで、スーツに格納していたガジェットが取り出される。

 蝙蝠の翼を模した鋭い刃を持つそれを四機、勢いよく投げ放った。

 

 

「『しゃあっ、レイザーバット!!』」

 

 

 その銘はレイザーバット、日本風(ジャパニーズ)で言う手裏剣だ。動体を追尾する機能を有した蝙蝠型の刃が、巨人の炎を切り裂いて飛び──その奥に潜むドローン兵器を数機、両断した。

 ホログラムが乱れた巨人の腕から墜落してきた残骸を一機、手早くキャッチする。

 

「どれどれ、最新のホログラフィックプロジェクターに、大口径のレーザートーチと火炎放射器、おまけに衝撃波発生器まで……随分と過積載だなぁ。コレどこで買った粗悪品だい? クエスト・エアロスペースとか? 見る目が無いね、オズコープならもっと品質の良い物を提供できたのに」

 

 言いながら、その残骸を背後に放り投げれば、飛来したクモ糸がキャッチして回収する。

 まったく手際が良い。指令の発信源を突き止めるまで大した時間は掛からないだろう。

 

「クソッ……たかだか数機を墜としたところで、ボクのイリュージョンは止まらないぞ!」

 

「そうなの? 悪いんだけど、タネがバレてる手品ショーをいつまでも見続けるほど暇じゃない。代わりに僕が派手なフィナーレを飾ってあげるよ!」

 

 ミステリオの苦し紛れな言葉とレーザーは適当に躱し、炎の巨人に目掛けて突貫した。

 先端部のドローンが放つ炎と衝撃さえ掻い潜れば、ホログラムの巨人なんて、ドン・キホーテが立ち向かった風車の巨人より可愛いもので。思った通り、巨人の腹の中はドローンたちが飛び交うだけの空間だった。

 

「さてミステリオ、君も僕の動画を観てくれていたんだったね。そして君は、見事にスパイダーと僕を呼び寄せた。キャンペーンは終わったと言っても、こりゃあ賞品を出さなくちゃだ」

 

 そこで僕がスーツから取り出すのは第二のガジェット、メタリックオレンジの外装と緑色の発光が特徴の手投弾たち。さあ、ゴブリンも乗り気だ。ショーの締めらしく大盤振る舞いで行こう。

 

 

「『君に5000万ドルをプレゼントするよ! ただし、現金じゃなく──5000万ドル分のカ(・)ボ(・)チ(・)ャ(・)でね!』」

 

 

 僕の手からバラ撒かれていく、ジャック・オー・ランタンを模した爆弾。とても可愛いそれは、ドローンと接触した瞬間に可愛くない大火力を吐き出し、敵機を呑み込む。

 炎の巨人は、その内側から本物の炎に喰い尽くされ、数瞬の内に掻き消えていった。

 

「物足りないハロウィンパーティーだったね。まだ5000ドル分も使ってないんだけどなぁ」

 

「……何なんだ」

 

 唯一取り残されたミステリオ自身のホログラムを揶揄ってやれば、ポツリと呟きが聞こえた。

 ホログラムを映しているドローンのスピーカーから、いよいよ怨嗟の声が漏れ出る。

 

 

「オマエは! 何なんだ! グリーンゴブリンッ!!」

 

「『デケェ声出さなくても聞こえてるよォ! ミステリオッ!!』」

 

 

 激昂と共に発射されたレーザーを避け、お返しに抜き放ったレイザーバットが最後のドローンを両断し、ミステリオを映すホログラムは掻き消えた。

 盛大なヴィランデビューを台無しにされて怒ったのかもしれないけれど、そんな小悪党のためにボロボロの幼馴染が駆り出されることになった僕の怒りは……そして、こんな程度の三下の相手をさせられたゴ(・)ブ(・)リ(・)ン(・)の(・)怒(・)り(・)は、それ以上だ。舐めてもらっちゃ困る。

 

「──ハリー聴こえる? ミステリオ本体の居場所がわかったわ! エンパイア・ステート・ビルの上層、おそらくは102階の展望デッキ! 先に向かってて!」

 

「了解(コピー)!」

 

 そこでグライダーからペニーの声が聞こえてきた。ドローンの逆探知が終わったようだ。

 場所はエンパイア・ステート・ビルの展望デッキ。なるほど、このブロードウェイを支配者気分で観察するのにはピッタリのセレクトか。

 通信に感謝し、早速グライダーを吹かして急行する。オズコープ社が誇る最新のグライダーにはビルの102階だって目と鼻の先も同然だ。

 

 

「──お邪魔しまぁすッ!」

 

 

 ビル102階の展望デッキを囲むガラスを体当たりで粉砕し、屋内へと突入する。風が冷たいかもだけれど悪党を捕らえるためだ、コラテラルダメージと思って許してほしい。

 辺りを見回すまでもなく、標的は見つかった。モーションキャプチャー用のスーツを身に纏い、金魚鉢みたいなヘルメットを被っている男性なんて、一人しかいなかったからだ。

 

「やあ、ミステリオさん。……いや、もう謎の男(ミステリオ)じゃなくなったし、ただの犯罪者さんで良いか。一応訊くけど、僕が今見ている君はホログラムじゃあないよね? そこまで往生際が悪かったりはしないよね?」

 

「……グリーンゴブリン。ボクと手を組まないか?」

 

「あー……この期に及んで、そういうこと言っちゃうタイプかぁ」

 

 グライダーから降りて、ミステリオに歩み寄る。

 僕を見た他の客が蜘蛛の子を散らすように離れていくけど、それが今はちょうどいい。

 

「なあゴブリン、悪い話じゃないはずだ。ボクはキミがスパイダーを一方的に痛めつけてたところも観ていたよ。そんなキミの実力とボクの技術が合わされば、もっとデカいショーを起こせる……そうは思わないか?」

 

「そうだね、僕もそう思う。今回は僕たちが勝ったけど、君が映像技術や特殊効果のエキスパートだってのは間違いないよ。映画の撮影スタッフとかなら引く手数多だろうね。だから──」

 

 

 ──僕は右腕を伸ばし、虚空を掴んで捻り上げる。

 一瞬を置いて銃声が鳴り響き……そこには光学迷彩で隠れていたミステリオの、正真正銘の本体が立っていた。

 あらぬ方向を撃ち抜いた銃弾にガラスが砕かれるのと同時、さっきまで僕が見ていたホログラムのミステリオは消失する。

 

「だから残念だよ。小悪党なのは僕も同じなんだ……君の考えそうなことぐらい、予測できる」

 

「が、あぁッ……!」

 

「ミステリオですらなくなった、小悪党。君は、その大いなる力の使い方を……誤った」

 

 掴まれた腕を捻られ、拳銃を取りこぼしたミステリオが苦悶の声を上げた。

 これが、万策尽きた小悪党の醜態。なんと小さく、哀れで、みすぼらしいことか。

 

 

『ヒャハハハ、こいつの悪足掻きメチャクチャ見苦しいでエ!』

 

 

 頭の中でゴブリンが大笑いしている。だけど、今はそれを鬱陶しいと思わない。思えない。

 だって、僕も同じ気持ちだ。腹の底で、ミステリオの無様を嘲笑っている。

 

 ようやく腑に落ちた。ゴブリンは紛れもなく、もう一人の僕だ。

 僕の中にある、大いなる力ってヤツへのコンプレックス。そこからゴブリンは生まれたんだ。

 

 だから、グリーンゴブリンは愚弄する。

 大いなる力を持たない、脆弱な凡人を愚弄する。

 大いなる力に恵まれた、生意気なヒーローを愚弄する。

 そして何より……大いなる力の使い方を間違えた、愚かな悪党を心の底から愚弄する。

 

 

 ああ、観念した。仕方がない、認めてやるよ。僕は──

 

 

「ク、ソォ……オマエは、本当に何なんだよ……!」

 

「『──僕たちはゴブリンだ("We" are Goblin)』」

 

 

 こうして、ヴィラン・ミステリオとの戦いは決着し。

 悪を嗤い愚弄する怪物(ゴブリン)が、ここに改めて誕生した。

 




ミステリオ(クエンティン・ベック)
▪やってることはFFHと同じ。ただしこの世界では単独犯なのでクソ雑魚。
▪映像技術に関しちゃ紛れもなく天才なのに……やっぱり怖いスね自己顕示欲は。
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