ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

11 / 12
第11話 角を追う者

ブラックマーケットで見つけた資料。

 

そこに記されていたのは、カイザー系列の採掘会社が回収した「角状遺物」の記録だった。

 

カナタは、その資料を何度も読み返していた。

 

「回収元はカイザー系の採掘会社……回収物は角状遺物。複数を回収して、ブラックマーケットへ売却……」

 

その隣では、炎角が腕を組んでいる。

 

「そして、その先の売却先は記されていない」

 

「うん」

 

カナタは資料を指で叩く。

 

「でも、俺は実際に見てる」

 

頭に浮かぶのは、これまでの戦いだった。

 

ヘルメット団のリーダーが使っていた、弾角。

 

そして――。

 

「便利屋68のカヨコが使っていた、忍角」

 

炎角が頷く。

 

「どちらもエゴルギアだ」

 

「それだけじゃない」

 

カナタは続ける。

 

「ヘルメット団も便利屋68も、ブラックマーケットと無関係じゃない」

 

ヘルメット団はブラックマーケットから武器を入手していた。

 

便利屋68もまた、ブラックマーケットを活動場所の一つとしている。

 

そして、そこにはカイザー系列の採掘会社から流れてきた「角状遺物」がある。

 

すべてが一本の線で繋がっているように見えた。

 

「……まさか」

 

カナタが呟く。

 

「カイザーが、ヘルメット団や便利屋68にエゴルギアを渡したんじゃないか?」

 

炎角は、すぐには答えなかった。

 

「可能性はある」

 

「やっぱり……」

 

「だが、証拠はない」

 

「分かってる」

 

カナタは資料を見つめる。

 

「カイザー系の会社が角状遺物を回収していることは分かった。でも、それを誰に売ったのかが分からない」

 

「ならば、そこを追えばよい」

 

炎角が静かに言う。

 

「お前が追うべきは、角そのものだけではない」

 

「……角を求める者?」

 

「そうだ」

 

炎角は資料を指差す。

 

「なぜ角を求めるのか。なぜエゴルギアを欲するのか。その意図を知れば、いずれ真実に辿り着く」

 

「意図……」

 

カナタは小さく頷いた。

 

「……そうだな」

 

資料をしまう。

 

「一度、アビドスに戻ろう」

 

「ああ」

 

二人はブラックマーケットを後にした。

 

---

 

その頃。

 

アビドスでは、カナタが知らないところで別の騒動が起きていた。

 

柴関ラーメン。

 

昨日、便利屋68とアビドスのメンバーが食事をした場所。

 

その店が――爆破された。

 

「……柴関ラーメンが!?」

 

セリカは愕然としていた。

 

店の外壁は大きく壊れ、辺りには瓦礫が散らばっている。

 

「どうして……」

 

アビドスのメンバーと先生が現場へ駆けつける。

 

そこには――。

 

便利屋68の姿があった。

 

「私たちじゃないわよ!」

 

アルが叫ぶ。

 

「そんなこと言われても……!」

 

セリカが睨む。

 

「爆発した直後に、あんたたちがここにいたんでしょ!」

 

「だから違うって言ってるでしょ!」

 

「アルちゃん、落ち着いて~」

 

ムツキが笑う。

 

しかし、便利屋68は逃げようとしていなかった。

 

むしろ――。

 

「店主さん!」

 

ハルカが瓦礫をどかしている。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「こっち!」

 

カヨコも店内を確認していた。

 

その様子を見て、ホシノが少し目を細める。

 

「……あれ?」

 

「何?」

 

セリカが聞く。

 

「本当に便利屋68がやったなら、あんなふうに店主さんを助けるかなぁ?」

 

「……」

 

セリカも黙る。

 

その時――。

 

「動くな!」

 

鋭い声が響いた。

 

一斉に振り向く。

 

遠くから武装した少女たちが接近してくる。

 

ゲヘナ学園の風紀委員会だった。

 

「風紀委員会!?」

 

アルが青ざめる。

 

「柴関ラーメン爆破事件の容疑者として、便利屋68を拘束します!」

 

「えぇ!?」

 

アルが叫ぶ。

 

「だから私たちじゃないって!」

 

カヨコが冷静に周囲を見る。

 

「……爆発直後に私たちが現場にいたから、犯人だと思われた」

 

「そんなぁ!」

 

ハルカが慌てる。

 

「誤解です!」

 

「だったら、取り調べで説明してもらうわ」

 

風紀委員会が迫ってくる。

 

便利屋68は逃げ道を探す。

 

「どうする?」

 

ムツキが楽しそうに笑う。

 

「戦うしかないんじゃない?」

 

「いや、できれば戦いたくない」

 

カヨコが答える。

 

「でも、捕まるわけにもいかない」

 

その時。

 

セリカが銃を構えた。

 

「……待って」

 

全員が振り向く。

 

「セリカちゃん?」

 

「こいつらが犯人だって決まったわけじゃないんでしょ?」

 

セリカは風紀委員会を見る。

 

「だったら、今すぐ引き渡すのは違うんじゃない?」

 

アルが驚く。

 

「え?」

 

セリカはアルを見る。

 

「昨日はあんたたちにラーメン大盛りにしてあげたんだから」

 

「そこなの!?」

 

アルが叫ぶ。

 

「いや、それだけじゃなくて……」

 

セリカは少し言葉に詰まる。

 

「……私、こいつらが本当に店を壊したとは思えない」

 

ホシノが笑う。

 

「おやおや~」

 

「何よ!」

 

「優しいねぇ、セリカちゃん」

 

「うるさい!」

 

風紀委員会が武器を構える。

 

「ならば、あなたたちも抵抗するということですか?」

 

ホシノが盾を構えた。

 

「まあ、そうなるよねぇ」

 

シロコも銃を構える。

 

「便利屋68を渡さない」

 

「ちょっと!」

 

アルが驚く。

 

「どうして私たちを助けるのよ!?」

 

「私たちだって分からないわよ!」

 

セリカが叫ぶ。

 

「でも、今は同じ側なんだから!」

 

「へぇ~」

 

ムツキが嬉しそうに笑う。

 

「昨日まで敵だったのにね」

 

「言わないで!」

 

こうして――。

 

アビドスと便利屋68は、思いがけず同じ側に立つことになった。

 

---

 

戦闘は短時間で終わった。

 

風紀委員会も本気でアビドスと全面戦争をするつもりはなく、柴関ラーメン爆破事件の容疑者である便利屋68を捕まえることを優先していた。

 

しかし、アビドスが便利屋68を庇ったことで、現場は一時的な混戦となった。

 

「撤退するよ!」

 

カヨコが叫ぶ。

 

「了解!」

 

便利屋68はアビドスの援護を受けながら、その場から離れていった。

 

---

 

しばらくして。

 

カナタと炎角がアビドスへ戻ってきた。

 

「ただいま」

 

返事がない。

 

「……?」

 

カナタは首を傾げる。

 

校舎の中を歩いていると、ようやくアヤネと出会った。

 

「アヤネ。みんなは?」

 

「カナタさん、おかえりなさい」

 

アヤネは疲れた様子で答える。

 

「みんななら、今戻ってきたところです」

 

「何かあったの?」

 

アヤネが少し黙る。

 

「……かなり大変なことがありました」

 

「え?」

 

そこへ、セリカがやって来た。

 

「カナタ!」

 

「セリカ? どうしたんだよ、その顔」

 

「聞いてよ!」

 

セリカは怒ったように話し始めた。

 

「柴関ラーメンが爆破されたの!」

 

「…………は?」

 

カナタは固まった。

 

「柴関ラーメンが?」

 

「そう!」

 

「なんで?」

 

「便利屋68が……」

 

「またあいつら!?」

 

カナタは頭を抱える。

 

「俺がいない間に、また何かやったのか!?」

 

「だから、あいつらがやったとは限らないの!」

 

「え?」

 

セリカは説明する。

 

「爆発の直後に便利屋68が現場にいたから、風紀委員会に犯人だと思われたの」

 

「それで?」

 

「私たちも巻き込まれた」

 

「……なんで?」

 

「便利屋68を引き渡さなかったから」

 

カナタは目を丸くする。

 

「えぇ……」

 

「昨日の今日で、敵と一緒に風紀委員会と戦うことになるなんてねぇ」

 

ホシノが苦笑する。

 

「まったく、キヴォトスってすごいところだな……」

 

カナタはため息をつく。

 

「でも、便利屋68が犯人じゃないなら、誰が柴関ラーメンを爆破したんだ?」

 

「それが分からないの」

 

アヤネが答える。

 

「爆発物の出所も不明です」

 

「……また誰かが動いてるのか」

 

カナタが呟く。

 

---

 

「ところで、カナタくんは何を調べてきたの?」

 

ホシノが尋ねる。

 

「エゴルギアについて」

 

カナタは懐から資料を取り出した。

 

「俺のほうも、少し分かったことがある」

 

アヤネが資料を受け取る。

 

「カイザー系の採掘会社が、角状の古代遺物を回収していた……?」

 

「そう」

 

カナタは頷く。

 

「それがブラックマーケットに流れてた」

 

「それって……」

 

セリカが目を見開く。

 

「弾角や忍角と関係あるんじゃない?」

 

「俺もそう考えてる」

 

カナタは答える。

 

「ヘルメット団も便利屋68も、エゴルギアを持っていた。しかも、どっちもブラックマーケットと関わりがある」

 

炎角が口を開く。

 

「ゆえに、角状遺物がエゴルギアへと繋がっている可能性は高い」

 

「ただし」

 

カナタが続ける。

 

「カイザーが直接エゴルギアを渡しているとは、まだ言えない」

 

先生が頷く。

 

「売却先が分からないからね」

 

「うん」

 

カナタは資料の最後を見る。

 

「ここが空白なんだ」

 

売却先:非公開

 

「カイザーが採掘している」

 

カナタが指を折る。

 

「ブラックマーケットに流れる」

 

もう一本、指を折る。

 

「そこから誰かが手に入れる」

 

そして――。

 

「その誰かが、エゴルギアを使っている」

 

「つまり」

 

先生が答える。

 

「カイザーとエゴルギアの間には、まだ一つか二つ、見えていない段階がある」

 

「そういうこと」

 

カナタは頷く。

 

「だから、そこを調べる」

 

「カナタさん……」

 

アヤネが尋ねる。

 

「それにしても、エゴルギアを使う人たちを、どう呼ぶんですか?」

 

カナタは少し考える。

 

「……ハンター」

 

「ハンター?」

 

「うん」

 

カナタはオメガホーンを見る。

 

「エゴルギアを使って、角獣の力を引き出す者を、俺たちはハンターと呼んでる」

 

「じゃあ……」

 

セリカが言う。

 

「カヨコもハンターなの?」

 

「そうなる」

 

カナタは頷く。

 

「あいつは忍角の力を使ってた」

 

炎角が静かに続ける。

 

「そして、御前様もまたハンターだ」

 

「俺だけじゃなかったんだな……」

 

カナタは呟く。

 

今まで、自分だけがオメガホーンを使える存在だと思っていた。

 

しかし――。

 

キヴォトスの裏側には、すでに角獣の力を扱う者たちがいる。

 

そして、その力を生み出すエゴルギアは、どこかから流れてきている。

 

「……一体、誰が何のために集めてるんだろうな」

 

カナタは窓の外を見る。

 

カイザー。

 

ブラックマーケット。

 

角状遺物。

 

エゴルギア。

 

そして――。

 

複数のハンター。

 

まだ、それぞれの線は一本には繋がっていない。

 

だが、確実に同じ場所へ向かっている。

 

「……絶対に見つけてやる」

 

カナタは静かに呟いた。

 

その隣で、炎角が頷く。

 

「ならば、進むぞ。御前様」

 

「ああ」

 

こうしてカナタは、再び角を追い始めた。

 

その一方で――。

 

柴関ラーメンを襲った何者かの正体は、まだ分からない。

 

そして、カイザー系採掘会社からブラックマーケットへ流れた角状遺物の行方も――。

 

未だ、闇の中だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。