ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

15 / 16
第15話 砂塵の向こうの決戦

カイザーPMCの実験施設。

 

砂漠の中に建造された巨大な施設を前に、アビドスの生徒たちは息を呑んでいた。

 

施設の周囲には、無数のカイザーPMCが展開している。

 

その中央に立つ先生が、全員を見渡した。

 

「みんな、作戦を確認するよ」

 

先生の声に、全員が耳を傾ける。

 

「目的は一つ。ホシノを救出すること」

 

「うん」

 

シロコが頷く。

 

「絶対に連れて帰る」

 

「そのためにも、まずは施設内部への侵入経路を確保する必要があります」

 

アヤネが端末を操作する。

 

「正面の防衛が一番厚いです。ここを突破できれば、内部への侵入経路を確保できます」

 

「じゃあ、そこは俺がやる」

 

声を上げたのはカナタだった。

 

その隣には、人間の姿をした炎角が立っている。

 

「俺と炎角で正面を開ける」

 

「カナタくん……」

 

ノノミが心配そうに見る。

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫」

 

カナタはオメガホーンを手に取った。

 

「俺には、これがあるから」

 

炎角は正面に広がる敵部隊を見据える。

 

「御前様。数は多いぞ」

 

「分かってる」

 

カナタは施設を見つめる。

 

「だからこそ、ここで時間を使わせる」

 

先生が頷いた。

 

「分かった。カナタくんが作った突破口から、僕たちは内部へ入る」

 

「お願いします」

 

カナタは腰の端末を取り出した。

 

そして――。

 

「ハンタータイムだ!」

 

端末を起動する。

 

次の瞬間。

 

端末からインストールプログラムが展開され、圧縮された光の粒子が噴き出した。

 

粒子がカナタの脚を包み込む。

 

続いて腕。

 

胸部。

 

そして頭部。

 

光の粒子が装甲へと変換され、各部が次々と固定されていく。

 

最後にヘルメットが展開し、頭部へとロックされた。

 

「GOハントスーツ、インストール完了」

 

カナタはオメガホーンを構える。

 

炎角も一歩前へ出た。

 

「行くぞ、炎角!」

 

「承知!」

 

カナタは大きく息を吸い込む。

 

「鼓膜に力を入れろ!」

 

炎角が身構える。

 

「角醒せよ、角獣王・炎角!!」

 

【炎角獣!!】

 

眩い光が走った。

 

炎が吹き荒れ、巨大な角獣へと姿を変えた炎角が現れる。

 

「グオオオオオッ!!」

 

その直後――。

 

空から巨大な機体が飛来した。

 

オメガホーン・ファイター。

 

機体が変形し、巨大な砲身へと姿を変える。

 

そして炎角の背中へと接続された。

 

「――行くぞ!」

 

炎角が咆哮する。

 

背中の砲身から巨大な炎が放たれた。

 

爆炎が施設正面を薙ぎ払い、PMCの部隊が一気に吹き飛ばされる。

 

「今です!」

 

アヤネが叫ぶ。

 

「先生!」

 

「行こう!」

 

先生、シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネが走り出す。

 

カナタは一瞬だけ振り返った。

 

「先生!」

 

「何?」

 

「ホシノ先輩をお願いします!」

 

「任せて!」

 

先生たちは施設の中へと駆け込んでいく。

 

カナタは再び前を向いた。

 

そこには、まだ大量のPMCが残っていた。

 

「……よし」

 

炎角が隣に並ぶ。

 

「御前様」

 

「ああ」

 

二人は同時に敵陣へ向かって走り出した。

 

---

 

――施設内部。

 

先生たちは長い通路を進んでいた。

 

「この先です!」

 

アヤネが端末を確認する。

 

「ホシノ先輩がいると思われる区画は、もっと奥です」

 

「急ごう」

 

シロコが先頭を走る。

 

だが――。

 

「……?」

 

シロコが足を止めた。

 

「どうしたの?」

 

ノノミが尋ねる。

 

シロコは前方を見つめていた。

 

「……変」

 

そこには、砂に半ば埋もれた古い建物があった。

 

壁、教室、黒板、机。

 

そして、古びた下駄箱。

 

施設の内部に存在するには、あまりにも場違いな光景だった。

 

「……これ」

 

アヤネが目を見開く。

 

「学校……?」

 

先生も周囲を見渡す。

 

「ここは……」

 

セリカが呟いた。

 

「アビドス……?」

 

その時だった。

 

「そうだ」

 

低い声が響いた。

 

全員が振り返る。

 

旧校舎へ続く監視通路の先。

 

そこに、カイザー理事が立っていた。

 

「ここはかつてのアビドス高等学校、本校舎だ」

 

「……!」

 

シロコが銃を構える。

 

「お前……!」

 

理事は古びた校舎を見回した。

 

「この施設は、かつての校舎跡を利用して建造された」

 

「ここにあったものは、土地も、建物も、権利も――」

 

理事は淡々と続ける。

 

「我々は契約を結び、金を貸し、返済を求め、担保を回収した。すべて、正式な手続きに従ってな」

 

セリカが睨みつける。

 

「そんなの……!」

 

「違法ではない」

 

理事は遮る。

 

「少なくとも、我々はそう主張できる」

 

その声に、次第に苛立ちが混じっていく。

 

「それなのに――」

 

理事は拳を握り締めた。

 

「なぜだ!」

 

「なぜ奴らは、まだ学校を続けている!?」

 

「なぜ、あれほど追い詰めても笑っていられる!?」

 

「なぜ……青春などというものを続けられる!?」

 

先生は黙って理事を見つめていた。

 

やがて、シロコが静かに口を開く。

 

「……私たちの学校だから」

 

「何?」

 

「ここで過ごしたから」

 

シロコは銃を握り直す。

 

「ここで、みんなと出会ったから」

 

そして、短く言い切った。

 

「……アビドスだから」

 

理事の顔が歪んだ。

 

その瞬間――。

 

施設の外から、凄まじい爆音が響いた。

 

---

 

――施設外部。

 

「ぐっ……!」

 

カナタは地面を転がった。

 

目の前には巨大な機体。

 

ゴリアテ。

 

その周囲には、複数の量産型ゴリアテが展開していた。

 

「これでもまだ……!」

 

炎角が一体の量産型ゴリアテへ突進する。

 

「グオオオオッ!!」

 

巨大な拳が機体を吹き飛ばす。

 

しかし、別の機体が横から迫ってくる。

 

「御前様!」

 

「分かってる!」

 

カナタは腰からエゴルギアを取り出した。

 

「角醒憑依せよ――猛角!!」

 

【猛角獣!】

 

一気に身体能力が跳ね上がる。

 

カナタは地面を蹴った。

 

「はあああっ!」

 

量産型ゴリアテへ突撃する。

 

一機。

 

二機。

 

三機。

 

次々と敵陣を突破する。

 

しかし、背後から別の機体が迫った。

 

カナタはすぐにエゴルギアを切り替える。

 

「角醒憑依せよ――弾角!!」

 

【弾角獣!】

 

銃口から大量の弾丸が放たれる。

 

迫り来る量産型ゴリアテの進路を塞ぎ、PMCの部隊を押し返す。

 

「まだだ!」

 

その瞬間――。

 

巨大な砲撃が飛んできた。

 

「なっ!?」

 

カナタが身を翻す。

 

地面が爆発する。

 

ゴリアテの砲撃だった。

 

「くっ……!」

 

カナタは重角のエゴルギアを取り出す。

 

「角醒憑依せよ――重角!!」

 

【重角獣!】

 

巨大な力が全身を包み込む。

 

カナタは砲撃を真正面から受け止めた。

 

「ぐっ……!」

 

足が地面にめり込む。

 

それでも倒れない。

 

「この程度……!」

 

カナタは両腕に力を込め、砲撃を押し返す。

 

その時――。

 

空から、一発の砲弾が飛来した。

 

ゴリアテの側面に直撃する。

 

「!?」

 

巨大な爆発が起きる。

 

カナタが空を見上げた。

 

そこには、トリニティから貸与された榴弾砲が配置されていた。

 

そして、そのそばにヒフミの姿がある。

 

『カナタさん! こちらから援護します!』

 

「この声……!」

 

『砲撃の隙を作ります!』

 

「助かる!」

 

カナタが叫ぶ。

 

「アビドスの皆さん、頑張ってください!」

 

ヒフミが再び砲撃を指示する。

 

砲弾が飛び、PMCの戦列を崩していく。

 

その直後――。

 

別方向から大量の銃声が響いた。

 

「PMCを押し込むわよ!」

 

砂丘の向こうから、数人の風紀委員が現れた。

 

その先頭にいるのはヒナだった。

 

「……遅れたわね」

 

ヒナは淡々と言う。

 

「でも、まだ間に合う」

 

風紀委員たちが一斉に攻撃を開始する。

 

PMCの戦力が急速に削られていく。

 

「ヒナ……!」

 

カナタが驚く。

 

『大規模な部隊は動かせないけど』

 

ヒナが通信越しに答える。

 

『これくらいなら問題ないわ』

 

その直後。

 

「おーっと!」

 

場違いな声が響いた。

 

「便利屋68、参上よ!」

 

「……は?」

 

カナタが目を丸くする。

 

そこにはアル、カヨコ、ムツキ、ハルカ。

 

便利屋68が立っていた。

 

「お前ら……なんでここに?」

 

アルが銃を構える。

 

「細かいことはいいのよ!」

 

カヨコがため息をつく。

 

「社長……」

 

「何よ!」

 

「別に正式に作戦へ呼ばれたわけじゃないでしょ」

 

「……」

 

アルが少しだけ黙る。

 

「……助けに来たわけじゃないわよ!」

 

「はいはい」

 

ムツキが笑う。

 

「じゃあ、さっさと行こうか」

 

「ええ!」

 

便利屋68も戦闘へ加わる。

 

アビドス。

 

トリニティ。

 

ゲヘナ。

 

そして便利屋68。

 

それぞれの攻撃が重なり、カイザーPMCの戦線が完全に崩れ始めた。

 

「馬鹿な……!」

 

ゴリアテのコックピット。

 

カイザー理事は操縦桿を握り締めていた。

 

「なぜだ!」

 

正面にはカナタ。

 

周囲には、これまでアビドスと関わってきた者たち。

 

「なぜ、これほどまでに……!」

 

理事は歯を食いしばる。

 

「ならば――!」

 

巨大なゴリアテが動き出した。

 

同時に、残存する量産型ゴリアテも一斉に展開する。

 

その操縦士たちには、レプリカとエゴルギアが装備されていた。

 

「これで終わりだ!」

 

PMC兵たちが角醒憑依によって身体能力を強化する。

 

カナタは炎角を見る。

 

炎角も巨大な身体を起こした。

 

「グオオオオオッ!!」

 

カナタはオメガホーンを握り直す。

 

「炎角!」

 

炎角が咆哮する。

 

カナタは炎角の力を自らの身体へ重ねる。

 

「角醒憑依せよ――角獣王・炎角!!」

 

【炎角獣!】

 

炎がカナタの全身を包む。

 

炎角の力が身体へ流れ込んでいく。

 

カナタはゴリアテを見上げた。

 

「行くぞ!」

 

炎を纏ったカナタが駆ける。

 

ゴリアテの拳と激突する。

 

「ぐっ……!」

 

地面が砕ける。

 

カナタは押し返されながらも踏みとどまる。

 

その時――。

 

「カナタ!」

 

シロコの声が響いた。

 

「今!」

 

トリニティの砲撃がゴリアテの肩部へ直撃する。

 

「そこ!」

 

ノノミの銃撃が装甲の亀裂へ集中する。

 

「こっちも!」

 

セリカが周囲のPMCを撃ち抜く。

 

そして、ヒナがゴリアテの側面へ回り込む。

 

「動きを止める」

 

ヒナの攻撃がゴリアテの脚部を狙う。

 

「今ならいける!」

 

先生の声が通信から響く。

 

「カナタくん!」

 

カナタは拳を握り締めた。

 

「分かった!」

 

そして、理事へ通信を繋ぐ。

 

「もう諦めろ、カイザー理事」

 

「黙れ!」

 

「何を焦っている」

 

「……!」

 

カナタは冷静に言葉を続ける。

 

「アビドスには、色んなものが眠ってる」

 

「俺は探索してるから、それを知ってる」

 

「でも――」

 

端末に保存された画像を表示する。

 

そこに映っていたのは、砂に埋まった巨大な兵器。

 

そして、その機体に刻まれたゲヘナの校章。

 

「これについては、もう遅い」

 

「……!」

 

理事の表情が変わる。

 

「前に見つけた兵器だ」

 

「俺は使うつもりもない」

 

「所有するつもりもない」

 

「だから、ゲヘナに渡した」

 

カナタは言い切る。

 

「もうゲヘナ側で封鎖と処理が進んでいる」

 

「必要なら、破壊される」

 

「カイザーの手には渡らない」

 

「そんな……!」

 

理事が声を荒らげる。

 

「これ以上は、戦力と時間の無駄だ」

 

カナタは拳を握る。

 

「それでもアビドスに干渉するなら――」

 

炎が拳へ集まる。

 

「お前たちがここへ来る理由そのものを、俺が潰す」

 

「ふざけるなぁぁぁ!!」

 

ゴリアテが突進する。

 

カナタも真正面から迎え撃つ。

 

「これで――終わりだ!」

 

炎を纏った拳がゴリアテへ叩き込まれる。

 

巨大な機体が大きく揺れる。

 

「ぐ……!」

 

装甲が砕ける。

 

カナタはさらに踏み込む。

 

「はああああっ!!」

 

最後の一撃。

 

ゴリアテが大きく後退し、その巨体が崩れ落ちた。

 

巨大な機体が地面へ倒れる。

 

「やった……!」

 

遠くでセリカの声が聞こえる。

 

しかし――。

 

「……?」

 

カナタは違和感を覚えた。

 

コックピット。

 

そこにいるはずの理事の姿がない。

 

破壊されたゴリアテのコックピット横には、脱出用ハッチが開いていた。

 

「……逃げたのか?」

 

返事はない。

 

その直後――。

 

施設全体から警告音が鳴り響いた。

 

『警告』

 

『施設自爆システムを起動します』

 

「……何?」

 

カナタが顔を上げる。

 

『残り時間――』

 

数字が減っていく。

 

「自爆……!?」

 

通信が入る。

 

『カナタくん!』

 

先生だった。

 

『ホシノを見つけた!』

 

「!」

 

『まだ意識はない。でも、医療班と合流している。ホシノはもう施設の外へ運び出せる!』

 

「分かりました!」

 

カナタは施設を見る。

 

「じゃあ、俺も――」

 

オメガホーンを構える。

 

「炎角を――」

 

その腕を、人間の姿に戻った炎角が掴んだ。

 

「御前様」

 

「炎角?」

 

「もうよい」

 

「でも、この施設が――」

 

「皆は既に脱出している」

 

炎角は静かに言う。

 

「ここに残る理由はない」

 

カナタは施設を見る。

 

警告音が鳴り続けている。

 

そして、タイマーの数字がさらに減っていく。

 

「……分かった」

 

カナタは頷いた。

 

「戻ろう」

 

「うむ」

 

二人は走り出した。

 

---

 

施設の外。

 

すでにアビドスの仲間たちも、ヒフミも、ヒナたちも、安全な距離まで退避していた。

 

その中心には、先生。

 

そして――。

 

「ホシノ先輩!」

 

カナタが駆け寄る。

 

眠ったままのホシノが、担架に乗せられている。

 

「大丈夫。命に別状はない」

 

先生が告げる。

 

「今は意識がないけど、連れて帰れる」

 

カナタは安堵の息を吐いた。

 

「……よかった」

 

その直後――。

 

背後から凄まじい轟音が響いた。

 

「!」

 

全員が振り返る。

 

巨大な爆発。

 

炎。

 

大量の砂塵。

 

カイザーの実験施設が、砂漠の中へと崩れ落ちていく。

 

「……」

 

誰も、その中へ戻ろうとはしなかった。

 

ただ一人。

 

カナタだけが、燃え上がる施設を見つめていた。

 

「……終わったのか」

 

隣に立つ炎角が、爆炎の向こうを見る。

 

「否」

 

「え?」

 

炎角は静かに答えた。

 

「戦いは終わった」

 

「だが、旅はまだ始まっておらぬ」

 

カナタは少しだけ笑った。

 

「……そうだな」

 

視線を仲間たちへ戻す。

 

そこには、眠ったままのホシノと、彼女を囲むアビドスの仲間たち。

 

そして、今回の戦いに駆けつけてくれた仲間たちがいる。

 

カナタは歩き出した。

 

炎角もその隣を歩く。

 

砂塵の向こうには――。

 

ホシノを待つ、アビドスの仲間たちがいる。

 

そしてその先には、まだ誰も知らない角獣と遺物の謎が眠っている。

 

砂塵の向こうへ。

 

二人は歩き続けた。

カナタたちが次に行く場所

  • ミレニアム
  • トリニティ(アリウス)
  • 百鬼夜行
  • ゲヘナ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。