ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター― 作:ガンダムラザーニャ
白い天井が見える。
ホシノは、ゆっくりと目を開いた。
「……ここは?」
「ホシノ先輩!」
真っ先に声を上げたのは、そばにいたセリカだった。
「セリカ……?」
「よかった……!」
セリカは胸を撫で下ろす。
その声を聞きつけ、部屋にいたシロコ、ノノミ、アヤネ、そして先生も振り向いた。
「ホシノ、目が覚めたんだね」
「おじさん……?」
「うん。ちゃんと帰ってきたよ」
ホシノは周囲を見渡す。
見慣れた顔が並んでいる。
自分を助けに来てくれた仲間たち。
そして――。
「……帰ってこれたんだね」
ぽつりと、ホシノが呟いた。
「うん」
セリカが答える。
「お帰りなさい、ホシノ先輩」
「……お帰り」
「お帰りなさい、ホシノちゃん」
シロコ、アヤネ、ノノミも続く。
ホシノは少しだけ目を伏せた。
そして、柔らかく笑う。
「……ただいま」
その言葉に、部屋の空気が少しだけ和らいだ。
◆
それから数日。
ホシノの身体に大きな問題はなかった。
多少の疲労や打撲は残っているものの、医務室で休めば十分に回復できる程度だった。
一方その頃。
アビドスの砂漠では、ゲヘナの生徒たちが巨大な兵器を前にしていた。
「これが……アビドスに埋まっていた兵器ね」
ヒナが巨大な機械を見上げる。
そこには、確かにゲヘナの校章が刻まれていた。
「間違いなく雷帝の時代に作られたものだと思います」
部下が資料を確認しながら答える。
「危険性は?」
「調査中ですが、かなり高いでしょう。少なくとも、そのまま放置するのは危険です」
「そう」
ヒナは兵器を見る。
その表情は険しい。
「なら、解体と封印処理を進めるわ」
「了解です!」
兵器は少しずつ分解され、安全な形へと処理されていく。
それを見届けながら、ヒナは呟いた。
「……雷帝の遺産、ね」
「雷帝……?」
少し離れたところで作業を見ていたカナタが聞き返す。
ヒナの隣にいたマコトはカナタを見る。
「知らなくていい。これはゲヘナの問題だ」
「……そうですか」
カナタはそれ以上聞かなかった。
だが、その言葉だけは心の片隅に残った。
角獣。
エゴルギア。
カイザー。
ブラックマーケット。
そして――雷帝の遺産。
まだ、すべてが一本の線には繋がっていない。
けれど。
この先、きっとどこかで繋がっていく。
そんな予感だけはあった。
◆
さらに数日後。
「……よし」
柴関ラーメンの店先。
以前、カイザー側の襲撃によって破壊された店は、少しずつ元の姿を取り戻していた。
「これで、ようやく営業再開できるな」
店の前でセリカが腕を組む。
「いやー、よかったよかった」
アヤネも安心したように笑う。
そこへ、問題児集団――便利屋68の四人が通りかかった。
「あら、もう営業再開したのね!」
アルが嬉しそうに声を上げる。
「……まあな」
カヨコが答える。
「ん?」
セリカがカヨコを見る。
「……何かしたの?」
「別に」
「絶対何かしたでしょ」
セリカが問い詰めると、ムツキが笑う。
「実はね~」
「ムツキ」
「はいはい」
カヨコがため息をついた。
「カイザーから受け取るはずだった依頼料。その一部を使った」
「……え?」
「店の修理費に回した」
セリカは目を丸くする。
「それって……」
「仕事の報酬だから。私たちの金よ」
カヨコは淡々と答える。
「……まあ、全部じゃないけどな」
アルが胸を張る。
「これぞアウトローの流儀ってやつよ!」
「アルちゃん、それ自分で言う?」
ムツキが笑う。
「うるさい!」
セリカは呆れながらも、少しだけ表情を緩めた。
「……まあ」
そして、小さく呟く。
「ありがと」
カヨコは答えない。
ただ、軽く手を上げただけだった。
それで十分だった。
◆
そして――。
数日後。
アビドス高等学校の正門。
「じゃあ、行ってくる」
砂漠へ続く道を前に、カナタが振り返る。
その隣には、人間の姿をした炎角が立っている。
「御前様。本当に、この地を離れるのですか?」
「うん」
カナタは頷く。
「炎角に、今のキヴォトスをもっと見せてあげたいから」
炎角は周囲を見渡した。
「この地だけでも、我の知らぬものばかりであった」
「だったら、もっと見に行こう」
カナタは背負った荷物を整える。
「遺跡も探したいし、角獣についてももっと知りたい」
「なるほど」
炎角は頷いた。
「それが御前様の旅、というわけですな」
「うん」
カナタは一度、アビドスの校舎を振り返った。
少し前までの自分なら、この場所をただの「遺跡探索の拠点」くらいに考えていたかもしれない。
ユメ先輩の残した地図を頼りに、遺跡を探して。
見つけたものを売って。
借金を返す。
それだけだった。
けれど――。
「……また、ここに帰ってきます」
カナタが言った。
「ここは、俺が帰ってくる場所だから」
ホシノが笑う。
「うへへ。カナタくんも、すっかりアビドスの生徒だねぇ」
「最初から生徒ですけど」
「そうだったねぇ」
シロコがカナタを見る。
「……私も行く」
「シロコ」
ホシノが静かに呼び止める。
「今回は、おじさんたちがここに残ろうよ」
「……」
「カナタくんが帰ってくる場所を、ちゃんと守っておかないとね」
シロコは少し考える。
そして――。
「……分かった」
短く頷いた。
「じゃあ、カナタ」
「うん」
「行ってらっしゃい」
ノノミも笑う。
「気をつけてくださいね~」
「カナタくん、困ったことがあったらすぐ連絡してください」
アヤネも続ける。
「……行ってらっしゃい」
セリカも、少し照れながら言った。
最後に、ホシノが手を振る。
「行ってらっしゃい、カナタくん」
カナタはみんなを見る。
そして――笑った。
「うん」
一歩、砂漠へ踏み出す。
「行ってきます」
炎角も、その隣を歩き始める。
「では、行きましょうぞ。御前様」
「ああ」
二人の姿が、砂塵の向こうへと少しずつ消えていく。
アビドスの少女たちは、その背中を見送っていた。
かつて、遺跡を求めてこの地へやって来た少年。
角獣と出会い。
仲間と出会い。
守りたいと思える場所を得た。
だからこそ、彼は旅に出る。
帰ってくる場所が、ここにあるから。
砂塵の向こうには、まだ知らない世界が広がっている。
新たな遺跡。
新たな学校。
新たな角獣。
そして――まだ誰も知らない、オメガホーンの謎。
カナタの旅は、始まったばかりだった。
――完。
第一部・アビドス編 完。
カナタたちが次に行く場所
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ミレニアム
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トリニティ(アリウス)
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百鬼夜行
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ゲヘナ