ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

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第16話「おかえり、そして行ってらっしゃい」

 

 

 白い天井が見える。

 

 ホシノは、ゆっくりと目を開いた。

 

「……ここは?」

 

「ホシノ先輩!」

 

 真っ先に声を上げたのは、そばにいたセリカだった。

 

「セリカ……?」

 

「よかった……!」

 

 セリカは胸を撫で下ろす。

 

 その声を聞きつけ、部屋にいたシロコ、ノノミ、アヤネ、そして先生も振り向いた。

 

「ホシノ、目が覚めたんだね」

 

「おじさん……?」

 

「うん。ちゃんと帰ってきたよ」

 

 ホシノは周囲を見渡す。

 

 見慣れた顔が並んでいる。

 

 自分を助けに来てくれた仲間たち。

 

 そして――。

 

「……帰ってこれたんだね」

 

 ぽつりと、ホシノが呟いた。

 

「うん」

 

 セリカが答える。

 

「お帰りなさい、ホシノ先輩」

 

「……お帰り」

 

「お帰りなさい、ホシノちゃん」

 

 シロコ、アヤネ、ノノミも続く。

 

 ホシノは少しだけ目を伏せた。

 

 そして、柔らかく笑う。

 

「……ただいま」

 

 その言葉に、部屋の空気が少しだけ和らいだ。

 

 

 それから数日。

 

 ホシノの身体に大きな問題はなかった。

 

 多少の疲労や打撲は残っているものの、医務室で休めば十分に回復できる程度だった。

 

 一方その頃。

 

 アビドスの砂漠では、ゲヘナの生徒たちが巨大な兵器を前にしていた。

 

「これが……アビドスに埋まっていた兵器ね」

 

 ヒナが巨大な機械を見上げる。

 

 そこには、確かにゲヘナの校章が刻まれていた。

 

「間違いなく雷帝の時代に作られたものだと思います」

 

 部下が資料を確認しながら答える。

 

「危険性は?」

 

「調査中ですが、かなり高いでしょう。少なくとも、そのまま放置するのは危険です」

 

「そう」

 

 ヒナは兵器を見る。

 

 その表情は険しい。

 

「なら、解体と封印処理を進めるわ」

 

「了解です!」

 

 兵器は少しずつ分解され、安全な形へと処理されていく。

 

 それを見届けながら、ヒナは呟いた。

 

「……雷帝の遺産、ね」

 

「雷帝……?」

 

 少し離れたところで作業を見ていたカナタが聞き返す。

 

 ヒナの隣にいたマコトはカナタを見る。

 

「知らなくていい。これはゲヘナの問題だ」

 

「……そうですか」

 

 カナタはそれ以上聞かなかった。

 

 だが、その言葉だけは心の片隅に残った。

 

 角獣。

 

 エゴルギア。

 

 カイザー。

 

 ブラックマーケット。

 

 そして――雷帝の遺産。

 

 まだ、すべてが一本の線には繋がっていない。

 

 けれど。

 

 この先、きっとどこかで繋がっていく。

 

 そんな予感だけはあった。

 

 

 さらに数日後。

 

「……よし」

 

 柴関ラーメンの店先。

 

 以前、カイザー側の襲撃によって破壊された店は、少しずつ元の姿を取り戻していた。

 

「これで、ようやく営業再開できるな」

 

 店の前でセリカが腕を組む。

 

「いやー、よかったよかった」

 

 アヤネも安心したように笑う。

 

 そこへ、問題児集団――便利屋68の四人が通りかかった。

 

「あら、もう営業再開したのね!」

 

 アルが嬉しそうに声を上げる。

 

「……まあな」

 

 カヨコが答える。

 

「ん?」

 

 セリカがカヨコを見る。

 

「……何かしたの?」

 

「別に」

 

「絶対何かしたでしょ」

 

 セリカが問い詰めると、ムツキが笑う。

 

「実はね~」

 

「ムツキ」

 

「はいはい」

 

 カヨコがため息をついた。

 

「カイザーから受け取るはずだった依頼料。その一部を使った」

 

「……え?」

 

「店の修理費に回した」

 

 セリカは目を丸くする。

 

「それって……」

 

「仕事の報酬だから。私たちの金よ」

 

 カヨコは淡々と答える。

 

「……まあ、全部じゃないけどな」

 

 アルが胸を張る。

 

「これぞアウトローの流儀ってやつよ!」

 

「アルちゃん、それ自分で言う?」

 

 ムツキが笑う。

 

「うるさい!」

 

 セリカは呆れながらも、少しだけ表情を緩めた。

 

「……まあ」

 

 そして、小さく呟く。

 

「ありがと」

 

 カヨコは答えない。

 

 ただ、軽く手を上げただけだった。

 

 それで十分だった。

 

 

 そして――。

 

 数日後。

 

 アビドス高等学校の正門。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

 砂漠へ続く道を前に、カナタが振り返る。

 

 その隣には、人間の姿をした炎角が立っている。

 

「御前様。本当に、この地を離れるのですか?」

 

「うん」

 

 カナタは頷く。

 

「炎角に、今のキヴォトスをもっと見せてあげたいから」

 

 炎角は周囲を見渡した。

 

「この地だけでも、我の知らぬものばかりであった」

 

「だったら、もっと見に行こう」

 

 カナタは背負った荷物を整える。

 

「遺跡も探したいし、角獣についてももっと知りたい」

 

「なるほど」

 

 炎角は頷いた。

 

「それが御前様の旅、というわけですな」

 

「うん」

 

 カナタは一度、アビドスの校舎を振り返った。

 

 少し前までの自分なら、この場所をただの「遺跡探索の拠点」くらいに考えていたかもしれない。

 

 ユメ先輩の残した地図を頼りに、遺跡を探して。

 

 見つけたものを売って。

 

 借金を返す。

 

 それだけだった。

 

 けれど――。

 

「……また、ここに帰ってきます」

 

 カナタが言った。

 

「ここは、俺が帰ってくる場所だから」

 

 ホシノが笑う。

 

「うへへ。カナタくんも、すっかりアビドスの生徒だねぇ」

 

「最初から生徒ですけど」

 

「そうだったねぇ」

 

 シロコがカナタを見る。

 

「……私も行く」

 

「シロコ」

 

 ホシノが静かに呼び止める。

 

「今回は、おじさんたちがここに残ろうよ」

 

「……」

 

「カナタくんが帰ってくる場所を、ちゃんと守っておかないとね」

 

 シロコは少し考える。

 

 そして――。

 

「……分かった」

 

 短く頷いた。

 

「じゃあ、カナタ」

 

「うん」

 

「行ってらっしゃい」

 

 ノノミも笑う。

 

「気をつけてくださいね~」

 

「カナタくん、困ったことがあったらすぐ連絡してください」

 

 アヤネも続ける。

 

「……行ってらっしゃい」

 

 セリカも、少し照れながら言った。

 

 最後に、ホシノが手を振る。

 

「行ってらっしゃい、カナタくん」

 

 カナタはみんなを見る。

 

 そして――笑った。

 

「うん」

 

 一歩、砂漠へ踏み出す。

 

「行ってきます」

 

 炎角も、その隣を歩き始める。

 

「では、行きましょうぞ。御前様」

 

「ああ」

 

 二人の姿が、砂塵の向こうへと少しずつ消えていく。

 

 アビドスの少女たちは、その背中を見送っていた。

 

 かつて、遺跡を求めてこの地へやって来た少年。

 

 角獣と出会い。

 

 仲間と出会い。

 

 守りたいと思える場所を得た。

 

 だからこそ、彼は旅に出る。

 

 帰ってくる場所が、ここにあるから。

 

 砂塵の向こうには、まだ知らない世界が広がっている。

 

 新たな遺跡。

 

 新たな学校。

 

 新たな角獣。

 

 そして――まだ誰も知らない、オメガホーンの謎。

 

 カナタの旅は、始まったばかりだった。

 

 ――完。

 第一部・アビドス編 完。

カナタたちが次に行く場所

  • ミレニアム
  • トリニティ(アリウス)
  • 百鬼夜行
  • ゲヘナ
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