ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

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第21話 ミレニアムの学び舎

 ミレニアムサイエンススクールへ戻ったカナタたちは、ゲーム開発部の部室へと案内されていた。

 

 扉を開けた瞬間。

 

「うわ……」

 

 カナタは思わず声を漏らした。

 

 部屋の中には、何台ものパソコン。

 

 ゲーム機。

 

 モニター。

 

 工具。

 

 そして、用途の分からない機材まで所狭しと並べられている。

 

 アビドスの校舎とは、あまりにも違う。

 

「すごいだろ!」

 

 モモイが胸を張る。

 

「ここが私たちのゲーム開発部!」

 

「ゲーム開発部って、本当にゲームを作ってるんだな」

 

「そうだよ!」

 

「でも、ミレニアムって科学とか技術の研究をする学校なんだろ?」

 

「ゲームだって立派な技術だよ!」

 

 モモイは得意げに指を立てる。

 

「プログラムを作ったり、絵を描いたり、音楽を作ったり、ストーリーを考えたり!」

 

「一つのゲームを作るだけで、いろんな技術が必要なんですね」

 

 ミドリが補足する。

 

「だから、ゲーム開発も立派な開発なんです」

 

「なるほど……」

 

 カナタは部屋を見回した。

 

「遺跡から見つけたものを調べたり、使えるようにしたりするのと、少し似てるのかもしれないな」

 

「そうかもしれませんね」

 

 ミドリが微笑んだ。

 

「未知のものを調べて、形にするという意味では」

 

「うん」

 

 カナタは頷いた。

 

 そのときだった。

 

「……ゲーム」

 

 小さな声が聞こえた。

 

 カナタが振り返る。

 

 そこには、モニターをじっと見つめる少女がいた。

 

「アリス?」

 

 モモイが声を掛ける。

 

「どうしたの?」

 

「この画面に映っているものは、ゲームですか?」

 

「うん!」

 

「ゲームとは、どのようなものですか?」

 

「え?」

 

 モモイが目を丸くする。

 

「アリス、ゲーム知らないの?」

 

「はい」

 

 アリスは素直に頷いた。

 

「私には、まだ知らないことがたくさんあります」

 

「そっか……」

 

 モモイは少し考え――。

 

「じゃあ、やってみる?」

 

「よいのですか?」

 

「もちろん!」

 

 モモイは嬉しそうにゲーム機を起動した。

 

「せっかくだから、私たちが作ったゲームをやってみよう!」

 

「私たちが作った……」

 

「そう!」

 

 画面にタイトルが表示される。

 

 カナタも覗き込む。

 

「RPGか」

 

「そうそう!」

 

 モモイが説明する。

 

「剣と魔法の世界を冒険するゲーム!」

 

 炎角も画面を見る。

 

「これは戦の道具か?」

 

「違うって!」

 

 モモイが笑う。

 

「遊ぶためのもの!」

 

「遊ぶために戦うのか?」

 

「ゲームの中ではね!」

 

「……奇妙だな」

 

 炎角は首を傾げた。

 

「まあ、俺も少し分かる気がする」

 

「カナタまで!?」

 

「いや、俺もゲームは詳しくないから」

 

「じゃあ、みんな初心者ってことで!」

 

 モモイは笑いながらアリスにコントローラーを渡した。

 

「まずは移動!」

 

「はい」

 

「こっちが攻撃!」

 

「はい」

 

「この人が主人公!」

 

「この人物が?」

 

「そう!」

 

「目的は?」

 

「世界を救うこと!」

 

「……世界を」

 

 アリスは画面を見つめる。

 

 そして、しばらく操作を続けた。

 

「……」

 

「どう?」

 

 モモイが尋ねる。

 

「理解しました」

 

「おっ!」

 

「この人物が敵を倒し、経験を積み、最終的に世界を救うのですね」

 

「そうそう!」

 

「では、この人物は強くならなければなりません」

 

「うん!」

 

「ならば、敵を倒します」

 

「そう!」

 

 アリスは淡々と敵を倒していく。

 

 しばらくすると――。

 

「……?」

 

 アリスが画面を見つめた。

 

「どうしたの?」

 

「先ほどまで敵だった人物が、仲間になりました」

 

「ああ、そういう展開だね」

 

「なぜですか?」

 

「えっと……」

 

 モモイが少し考える。

 

「いろいろあって、仲間になったんだよ!」

 

「いろいろ、とは?」

 

「いろいろは、いろいろ!」

 

「……」

 

 アリスは真剣に考え込む。

 

「ゲームとは、難しいものなのですね」

 

「そこ!?」

 

 モモイが叫ぶ。

 

 ミドリが苦笑する。

 

「まあ、ゲームには現実とは違うルールもありますから」

 

「なるほど」

 

 アリスは頷いた。

 

「現実とは異なる法則を持つ世界」

 

「そうそう!」

 

「興味深いです」

 

 アリスの目が少し輝く。

 

「もう一度、最初からやってもいいですか?」

 

「もちろん!」

 

 モモイが笑う。

 

「気に入った?」

 

「はい」

 

 アリスは頷く。

 

「まだ分からないことが多いので」

 

「……」

 

 カナタはその言葉を聞いて、少し笑った。

 

「それ、俺と同じだな」

 

「カナタさんも?」

 

「ああ」

 

 カナタは自分の腰にあるオメガホーンを見る。

 

「俺も、分からないものを見ると調べたくなる」

 

「では、カナタさんもゲームを研究するのですか?」

 

「……それは少し違うかな」

 

「なぜですか?」

 

「ゲームは、俺が思ってたより難しい」

 

「なるほど」

 

 アリスは真剣に頷いた。

 

「では、私が理解したら教えます」

 

「……ありがとう」

 

 カナタは苦笑した。

 

「よろしく頼むよ」

 

 その様子を見ていた先生が笑う。

 

「二人とも、似たところがあるのかもしれないね」

 

「そうなのかな」

 

 カナタは少し照れくさそうに頭を掻いた。

 

 ◆

 

 しばらくして。

 

「ちょっと校舎を見て回ってもいいですか?」

 

 カナタが先生に尋ねた。

 

「もちろん」

 

「炎角と一緒に行ってきます」

 

「気をつけてね」

 

「分かりました」

 

 カナタは炎角を見る。

 

「行こう」

 

「うむ」

 

 炎角も立ち上がった。

 

「この学び舎を見て回るのも、旅の一部というわけだな」

 

「そういうこと」

 

「なるほど」

 

 二人はゲーム開発部を後にした。

 

 ◆

 

 廊下には多くの生徒が行き交っている。

 

 教室からは授業の声が聞こえる。

 

 その一方で、別の部屋では生徒たちが実験を行っていた。

 

 小型のロボットが廊下を走っている。

 

 大型モニターには数式やデータが表示されている。

 

「……すごいな」

 

 カナタが呟いた。

 

「何がだ?」

 

「学校なのに、研究施設みたいだ」

 

「しかし、生徒たちは学んでいる」

 

「うん」

 

 カナタは教室を覗く。

 

 そこでは生徒たちが端末を操作しながら授業を受けていた。

 

「ちゃんと学校なんだな」

 

「研究だけをしている場所ではない、ということか」

 

「そうだな」

 

 カナタは少し笑った。

 

「アビドスとは、全然違う」

 

「御前様の学校は?」

 

「アビドスは……」

 

 カナタは少し考える。

 

「学校を守ること自体が大変だからな」

 

「そうか」

 

 炎角は静かに頷いた。

 

「同じ時代でも、置かれている場所によって随分と違うものだな」

 

「ああ」

 

 二人はさらに歩いていく。

 

 すると、掲示板に貼られた研究発表が目に入った。

 

「古代遺物……」

 

 カナタが足を止める。

 

 未解明の現象。

 

 古代文明。

 

 未知の機械。

 

 様々な研究テーマが並んでいた。

 

「ミレニアムって、本当に色んなことを研究してるんだな」

 

「角獣についてもか?」

 

「ああ」

 

 カナタは頷いた。

 

「この前、研究員に聞いたんだ」

 

「何を?」

 

「角獣は、ミレニアムでもまだ分からないことが多いらしい」

 

「それが『千年難題』か」

 

「うん」

 

 カナタは掲示板を見る。

 

「エゴルギアやレプリカについても調べてるみたいだ」

 

「ならば、ここに来た意味はあったな」

 

「ああ」

 

 そのとき。

 

「……あれ?」

 

 近くを通った生徒が掲示板を見て足を止めた。

 

「これ、まだ調査してるんだ」

 

 カナタが振り返る。

 

「何のことですか?」

 

「え?」

 

 生徒は掲示板を指差す。

 

「昔、ミレニアム郊外の研究施設から見つかった資料のこと」

 

「研究施設……?」

 

「うん」

 

 カナタの表情が変わる。

 

「角獣に関係する資料なんですか?」

 

「そうだったはずだよ」

 

「場所は分かりますか?」

 

「郊外の古い施設だったと思う。今は使われてないはず」

 

 カナタは炎角を見る。

 

 炎角も静かに頷いた。

 

「御前様」

 

「ああ」

 

 カナタはしばらく考える。

 

「……行ってみたい」

 

「だろうな」

 

「でも」

 

 カナタは周囲を見る。

 

 ここはミレニアムだ。

 

 自分の知らない場所。

 

 自分の知らない技術。

 

 そして、自分の知らない人々がいる。

 

「まずは先生に相談しよう」

 

「それがよい」

 

 カナタは歩き出した。

 

「急いで勝手に行く必要はない」

 

 だが、その表情には明らかな好奇心が浮かんでいた。

 

 角獣とは何なのか。

 

 エゴルギアとは何なのか。

 

 なぜレプリカが作られたのか。

 

 そして――。

 

 あの研究施設には、何が残されているのか。

 

 答えはまだ分からない。

 

 だからこそ。

 

 カナタは知りたかった。

 

 知らないものを知る。

 

 それが、探索者としての自分の旅なのだから。

 

 そして、ミレニアムという新しい学び舎で。

 

 砂原カナタの探索は、次の段階へ進もうとしていた。

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