ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター― 作:ガンダムラザーニャ
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ミレニアムサイエンススクールへ戻ったカナタたちは、ゲーム開発部の部室へと案内されていた。
扉を開けた瞬間。
「うわ……」
カナタは思わず声を漏らした。
部屋の中には、何台ものパソコン。
ゲーム機。
モニター。
工具。
そして、用途の分からない機材まで所狭しと並べられている。
アビドスの校舎とは、あまりにも違う。
「すごいだろ!」
モモイが胸を張る。
「ここが私たちのゲーム開発部!」
「ゲーム開発部って、本当にゲームを作ってるんだな」
「そうだよ!」
「でも、ミレニアムって科学とか技術の研究をする学校なんだろ?」
「ゲームだって立派な技術だよ!」
モモイは得意げに指を立てる。
「プログラムを作ったり、絵を描いたり、音楽を作ったり、ストーリーを考えたり!」
「一つのゲームを作るだけで、いろんな技術が必要なんですね」
ミドリが補足する。
「だから、ゲーム開発も立派な開発なんです」
「なるほど……」
カナタは部屋を見回した。
「遺跡から見つけたものを調べたり、使えるようにしたりするのと、少し似てるのかもしれないな」
「そうかもしれませんね」
ミドリが微笑んだ。
「未知のものを調べて、形にするという意味では」
「うん」
カナタは頷いた。
そのときだった。
「……ゲーム」
小さな声が聞こえた。
カナタが振り返る。
そこには、モニターをじっと見つめる少女がいた。
「アリス?」
モモイが声を掛ける。
「どうしたの?」
「この画面に映っているものは、ゲームですか?」
「うん!」
「ゲームとは、どのようなものですか?」
「え?」
モモイが目を丸くする。
「アリス、ゲーム知らないの?」
「はい」
アリスは素直に頷いた。
「私には、まだ知らないことがたくさんあります」
「そっか……」
モモイは少し考え――。
「じゃあ、やってみる?」
「よいのですか?」
「もちろん!」
モモイは嬉しそうにゲーム機を起動した。
「せっかくだから、私たちが作ったゲームをやってみよう!」
「私たちが作った……」
「そう!」
画面にタイトルが表示される。
カナタも覗き込む。
「RPGか」
「そうそう!」
モモイが説明する。
「剣と魔法の世界を冒険するゲーム!」
炎角も画面を見る。
「これは戦の道具か?」
「違うって!」
モモイが笑う。
「遊ぶためのもの!」
「遊ぶために戦うのか?」
「ゲームの中ではね!」
「……奇妙だな」
炎角は首を傾げた。
「まあ、俺も少し分かる気がする」
「カナタまで!?」
「いや、俺もゲームは詳しくないから」
「じゃあ、みんな初心者ってことで!」
モモイは笑いながらアリスにコントローラーを渡した。
「まずは移動!」
「はい」
「こっちが攻撃!」
「はい」
「この人が主人公!」
「この人物が?」
「そう!」
「目的は?」
「世界を救うこと!」
「……世界を」
アリスは画面を見つめる。
そして、しばらく操作を続けた。
「……」
「どう?」
モモイが尋ねる。
「理解しました」
「おっ!」
「この人物が敵を倒し、経験を積み、最終的に世界を救うのですね」
「そうそう!」
「では、この人物は強くならなければなりません」
「うん!」
「ならば、敵を倒します」
「そう!」
アリスは淡々と敵を倒していく。
しばらくすると――。
「……?」
アリスが画面を見つめた。
「どうしたの?」
「先ほどまで敵だった人物が、仲間になりました」
「ああ、そういう展開だね」
「なぜですか?」
「えっと……」
モモイが少し考える。
「いろいろあって、仲間になったんだよ!」
「いろいろ、とは?」
「いろいろは、いろいろ!」
「……」
アリスは真剣に考え込む。
「ゲームとは、難しいものなのですね」
「そこ!?」
モモイが叫ぶ。
ミドリが苦笑する。
「まあ、ゲームには現実とは違うルールもありますから」
「なるほど」
アリスは頷いた。
「現実とは異なる法則を持つ世界」
「そうそう!」
「興味深いです」
アリスの目が少し輝く。
「もう一度、最初からやってもいいですか?」
「もちろん!」
モモイが笑う。
「気に入った?」
「はい」
アリスは頷く。
「まだ分からないことが多いので」
「……」
カナタはその言葉を聞いて、少し笑った。
「それ、俺と同じだな」
「カナタさんも?」
「ああ」
カナタは自分の腰にあるオメガホーンを見る。
「俺も、分からないものを見ると調べたくなる」
「では、カナタさんもゲームを研究するのですか?」
「……それは少し違うかな」
「なぜですか?」
「ゲームは、俺が思ってたより難しい」
「なるほど」
アリスは真剣に頷いた。
「では、私が理解したら教えます」
「……ありがとう」
カナタは苦笑した。
「よろしく頼むよ」
その様子を見ていた先生が笑う。
「二人とも、似たところがあるのかもしれないね」
「そうなのかな」
カナタは少し照れくさそうに頭を掻いた。
◆
しばらくして。
「ちょっと校舎を見て回ってもいいですか?」
カナタが先生に尋ねた。
「もちろん」
「炎角と一緒に行ってきます」
「気をつけてね」
「分かりました」
カナタは炎角を見る。
「行こう」
「うむ」
炎角も立ち上がった。
「この学び舎を見て回るのも、旅の一部というわけだな」
「そういうこと」
「なるほど」
二人はゲーム開発部を後にした。
◆
廊下には多くの生徒が行き交っている。
教室からは授業の声が聞こえる。
その一方で、別の部屋では生徒たちが実験を行っていた。
小型のロボットが廊下を走っている。
大型モニターには数式やデータが表示されている。
「……すごいな」
カナタが呟いた。
「何がだ?」
「学校なのに、研究施設みたいだ」
「しかし、生徒たちは学んでいる」
「うん」
カナタは教室を覗く。
そこでは生徒たちが端末を操作しながら授業を受けていた。
「ちゃんと学校なんだな」
「研究だけをしている場所ではない、ということか」
「そうだな」
カナタは少し笑った。
「アビドスとは、全然違う」
「御前様の学校は?」
「アビドスは……」
カナタは少し考える。
「学校を守ること自体が大変だからな」
「そうか」
炎角は静かに頷いた。
「同じ時代でも、置かれている場所によって随分と違うものだな」
「ああ」
二人はさらに歩いていく。
すると、掲示板に貼られた研究発表が目に入った。
「古代遺物……」
カナタが足を止める。
未解明の現象。
古代文明。
未知の機械。
様々な研究テーマが並んでいた。
「ミレニアムって、本当に色んなことを研究してるんだな」
「角獣についてもか?」
「ああ」
カナタは頷いた。
「この前、研究員に聞いたんだ」
「何を?」
「角獣は、ミレニアムでもまだ分からないことが多いらしい」
「それが『千年難題』か」
「うん」
カナタは掲示板を見る。
「エゴルギアやレプリカについても調べてるみたいだ」
「ならば、ここに来た意味はあったな」
「ああ」
そのとき。
「……あれ?」
近くを通った生徒が掲示板を見て足を止めた。
「これ、まだ調査してるんだ」
カナタが振り返る。
「何のことですか?」
「え?」
生徒は掲示板を指差す。
「昔、ミレニアム郊外の研究施設から見つかった資料のこと」
「研究施設……?」
「うん」
カナタの表情が変わる。
「角獣に関係する資料なんですか?」
「そうだったはずだよ」
「場所は分かりますか?」
「郊外の古い施設だったと思う。今は使われてないはず」
カナタは炎角を見る。
炎角も静かに頷いた。
「御前様」
「ああ」
カナタはしばらく考える。
「……行ってみたい」
「だろうな」
「でも」
カナタは周囲を見る。
ここはミレニアムだ。
自分の知らない場所。
自分の知らない技術。
そして、自分の知らない人々がいる。
「まずは先生に相談しよう」
「それがよい」
カナタは歩き出した。
「急いで勝手に行く必要はない」
だが、その表情には明らかな好奇心が浮かんでいた。
角獣とは何なのか。
エゴルギアとは何なのか。
なぜレプリカが作られたのか。
そして――。
あの研究施設には、何が残されているのか。
答えはまだ分からない。
だからこそ。
カナタは知りたかった。
知らないものを知る。
それが、探索者としての自分の旅なのだから。
そして、ミレニアムという新しい学び舎で。
砂原カナタの探索は、次の段階へ進もうとしていた。