ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

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第28話 鏡奪取作戦

 ミレニアムサイエンススクール。

 

 ヴェリタスの部室には、ゲーム開発部、エンジニア部、そしてカナタと炎角が集まっていた。

 

 壁面モニターには、ミレニアムの管理区域にある施設の見取り図が表示されている。

 

 その中央。

 

 一つの赤いマーカーが点滅していた。

 

「ここが、セミナーの差し押さえ品保管区画」

 

 ハレが説明する。

 

「そして、ここに『鏡』が保管されている」

 

「G.Bibleを開くために必要なツール……」

 

 カナタがモニターを見る。

 

「本当にこれを使えば、G.Bibleの中身が読めるんだな?」

 

「可能性は高いよ」

 

 ハレが頷く。

 

「廃墟から回収したデータは、確かにG.Bibleそのものだと思う。でも、普通の方法じゃ開けない。『鏡』を使えば、暗号化されたデータから必要な情報を取り出せる可能性がある」

 

「つまり、あれを手に入れればいいんだね!」

 

 モモイが拳を握る。

 

「そういうこと」

 

 マキが笑う。

 

「ただし、簡単にはいかないよ」

 

 コタマが続ける。

 

「保管区画はセミナーの管理下。監視カメラ、電子ロック、警備ロボット……それなりの防衛設備があります」

 

「そこで私たちの出番というわけだね」

 

 ウタハが言った。

 

 エンジニア部の三人も、準備を進めている。

 

「警備システムには、こちらから一時的に干渉できるようにしておくよ」

 

「監視カメラの映像も、一部なら誤魔化せます」

 

 ヒビキが機材を確認する。

 

「ただし、完全に無力化するのは無理だからね」

 

 先生が全員を見回す。

 

「目的はあくまで『鏡』の確保。必要以上に騒ぎを大きくしないこと」

 

「分かってるって!」

 

 モモイが胸を張る。

 

「鏡を取ったら、すぐ撤退!」

 

「その通りです」

 

 ユズも小さく頷いた。

 

 カナタは自分の銃を確認する。

 

「俺たちは?」

 

 先生がカナタを見る。

 

「セキュリティロボットが出てきた場合、みんなが鏡を確保するまで足止めを頼みたい」

 

「了解」

 

 カナタは炎角を見る。

 

「炎角」

 

「うむ」

 

「今回は角醒憑依で行こう」

 

「承知した」

 

 炎角が頷く。

 

「角醒そのものでは目立ちすぎるからな」

 

「ああ。施設の中であの大きさになったら、俺たち自身が目立つ」

 

 炎角の身体が赤い光に包まれる。

 

「ならば――」

 

 カナタの手元に炎の力が集まっていく。

 

「【角醒憑依せよ】」

 

 炎角の力がカナタへ流れ込む。

 

 その瞬間。

 

 カナタの身体に炎の力が宿った。

 

「これなら、十分戦える」

 

「うむ」

 

 炎角の力を纏ったカナタが銃を構える。

 

「では、参ろう」

 

「よし」

 

 カナタたちは立ち上がった。

 

「鏡を取って、無事に帰ってくる」

 

 その言葉を合図に、作戦が始まった。

 

     *

 

 管理区域。

 

 カナタたちは慎重に施設内部へ侵入していく。

 

『第一監視区画、突破』

 

 ハレから通信が入る。

 

『監視カメラは今のところ誤魔化せています』

 

「了解」

 

 モモイたちが先を進む。

 

 カナタと炎角は、その後方を警戒していた。

 

「静かすぎるな」

 

 カナタが呟く。

 

「警備が薄いということか?」

 

「いや……」

 

 カナタが足を止めた。

 

「来る」

 

「え?」

 

 ミドリが振り返る。

 

 廊下の奥。

 

 金属音が響いた。

 

 ガシャン。

 

 ガシャン。

 

 次の瞬間。

 

 複数のセキュリティロボットが姿を現した。

 

「やっぱり!」

 

 モモイが銃を構える。

 

「先に行け!」

 

 カナタが叫んだ。

 

「ここは俺たちがやる!」

 

「分かった!」

 

 モモイたちは走り出す。

 

 その直後――。

 

「来い!」

 

 カナタが銃を構えた。

 

 ロボットの銃撃が飛んでくる。

 

 カナタは身を翻しながら撃ち返した。

 

 正確な射撃がロボットの関節を撃ち抜く。

 

 動きが止まったところへ――。

 

「炎角!」

 

「承知!」

 

 炎角の力を纏ったカナタが一気に踏み込む。

 

 炎を纏った拳が、ロボットを吹き飛ばした。

 

「まだいる!」

 

 さらに複数のロボットが現れる。

 

「数が多いな……!」

 

「ならば、押し通るのみ!」

 

 カナタは炎角の力を使いながら、次々と敵を撃破していく。

 

 炎の力によって身体能力が強化されている。

 

 銃撃。

 

 回避。

 

 接近。

 

 打撃。

 

 その全てを組み合わせながら、カナタはロボットたちを押し返していった。

 

『カナタ!』

 

 モモイから通信が入る。

 

「どうした?」

 

『こっちは保管区画に着いた!』

 

「よし。そのまま鏡を探せ!」

 

『了解!』

 

 カナタは通信を切る。

 

「……なら、俺たちも急いで終わらせるぞ!」

 

「うむ!」

 

 炎角の力を纏った拳が、最後のロボットを吹き飛ばした。

 

「これで……!」

 

 だが。

 

 廊下の先から、さらに機械音が響く。

 

「……まだ来るのか」

 

「御前様」

 

「ああ」

 

 カナタは銃を構え直した。

 

「ここは俺たちの仕事だ」

 

     *

 

 一方、保管区画。

 

「ここだよ!」

 

 モモイが扉を見つけた。

 

「ハレ、開けられる?」

 

『今やるよ』

 

 電子ロックが解除される。

 

 ガチャリ。

 

「開いた!」

 

 モモイたちが中へ入る。

 

 そこには大量の差し押さえ品が保管されていた。

 

「これ……全部セミナーが回収したもの?」

 

 ミドリが目を丸くする。

 

「すごい数……」

 

 ユズも周囲を見る。

 

「でも、今は鏡を探そう」

 

 アリスが言った。

 

「はい」

 

 アリスも一緒に棚を確認する。

 

「『鏡』……『鏡』……」

 

 モモイが探し続ける。

 

「これじゃない!」

 

「それは普通の鏡だよ、お姉ちゃん」

 

「分かってるって!」

 

 その時。

 

「ありました」

 

 アリスが指を差した。

 

「え?」

 

 棚の奥。

 

 一つのケースが置かれている。

 

 その表面には、簡素な管理番号と――。

 

『鏡』

 

 という文字。

 

「これだ!」

 

 モモイが駆け寄る。

 

 しかし、その瞬間。

 

「侵入者を確認」

 

 無機質な声が響いた。

 

「えっ?」

 

 保管区画の入口。

 

 そこに、一人の少女が立っていた。

 

 白い髪。

 

 黒い服。

 

 そして、冷静な目。

 

「……C&C」

 

 コタマの通信が入る。

 

『モモイさん、気をつけて!』

 

『そこにいるのはC&Cのメンバー!』

 

「C&C!?」

 

 モモイが銃を構える。

 

 少女――アカネは静かに銃を構えた。

 

「申し訳ありませんが、そこから先へは行かせません」

 

「でも、こっちは鏡を取りに来ただけなんだけど!」

 

「それが問題なんです」

 

 アカネが一歩進む。

 

「それはセミナーの管理物ですから」

 

「じゃあ、話し合いを――」

 

 ミドリが言いかけた瞬間。

 

「侵入者なら、排除するよ!」

 

 別の少女が飛び込んできた。

 

「うわっ!」

 

 モモイが慌てて避ける。

 

 アスナだった。

 

「ごめんねー! でもお仕事だから!」

 

「アスナさんまで!?」

 

 ユズが驚く。

 

 さらに。

 

「そこから動かないで」

 

 遠距離から銃口が向けられる。

 

 カリンだった。

 

「三人とも……!」

 

 ミドリが息を呑む。

 

 C&C。

 

 アカネ。

 

 アスナ。

 

 そしてカリン。

 

 ネルを除く三人が、保管区画を守るために集まっていた。

 

「モモイ!」

 

 ミドリが叫ぶ。

 

「分かってる!」

 

 モモイが銃を構える。

 

「みんな、鏡を確保して!」

 

「でも……!」

 

「私が時間を稼ぐ!」

 

 モモイが飛び出す。

 

「アリス、ユズ、ミドリ!」

 

「はい!」

 

 アリスがスーパーノヴァを構える。

 

 光が室内を照らした。

 

「おおっ!?」

 

 アスナが驚いて飛び退く。

 

「アリスちゃん、すごい武器持ってるね!」

 

「これは勇者の剣です!」

 

「勇者!?」

 

 アスナが目を輝かせる。

 

「なんだか楽しそう!」

 

「アスナ、油断しないで」

 

 カリンが注意する。

 

「分かってるよー!」

 

 銃撃が飛び交う。

 

 ミドリが正確に反撃し、ユズも必死に援護する。

 

 アカネは冷静に位置を変えながら、三人を追い詰めていく。

 

「さすがに強い……!」

 

 モモイが歯を食いしばる。

 

「でも!」

 

 アリスがスーパーノヴァを構える。

 

「ここは、退きません!」

 

「わあっ!」

 

 アスナが慌てて飛び退く。

 

 光線が床を走り、アカネたちの進路を塞いだ。

 

「今です!」

 

 アリスが叫ぶ。

 

「鏡を!」

 

「分かった!」

 

 モモイが保管ケースへ走る。

 

 ケースを開け――。

 

「確保!」

 

 鏡を手に取る。

 

「取ったよ!」

 

『モモイさん!』

 

 ハレから通信が入る。

 

『急いで撤退して! 警備システムが復旧し始めてる!』

 

「了解!」

 

 モモイが叫ぶ。

 

「みんな、逃げるよ!」

 

 ゲーム開発部は一斉に撤退を開始する。

 

「待って!」

 

 カリンが追う。

 

「逃がさない!」

 

 アカネも続く。

 

 アスナも笑いながら追いかける。

 

「待ってよー!」

 

「待つわけないでしょ!」

 

 モモイたちは全力で走った。

 

     *

 

 その頃。

 

「これで最後だ!」

 

 カナタが最後のセキュリティロボットを撃ち抜いた。

 

 炎角の力が徐々に薄れていく。

 

「……終わったか」

 

「どうやらな」

 

 カナタは息を整える。

 

 その時。

 

『カナター! 鏡、取ったよ!』

 

 モモイの通信が入った。

 

「よし!」

 

 カナタは走り出す。

 

「炎角、撤退するぞ!」

 

「うむ!」

 

 二人が廊下を駆ける。

 

 角を曲がった先。

 

「カナタ!」

 

 モモイたちが走ってくる。

 

「鏡は?」

 

「ここ!」

 

 モモイが鏡を見せる。

 

「よくやった!」

 

 カナタが笑う。

 

「でも、後ろからC&Cが来てる!」

 

「……分かった」

 

 カナタが振り返る。

 

「なら、急ぐぞ!」

 

 全員が出口へ向かう。

 

 そして――。

 

「……あ?」

 

 別の通路から声が聞こえた。

 

 一人の少女が歩いてくる。

 

 赤い髪。

 

 鋭い目。

 

 両手には二丁のサブマシンガン。

 

 そして、その二丁を繋ぐ一本の鎖。

 

「ネル……?」

 

 アカネが呟く。

 

「なんでここに?」

 

 ネルは面倒そうに答えた。

 

「別任務が終わったんだよ」

 

 そして、カナタを見る。

 

「……あ?」

 

 カナタも足を止める。

 

「お前は……」

 

 ネルの口元が吊り上がる。

 

「昨日の角獣連れじゃねぇか」

 

 炎角が警戒する。

 

「御前様」

 

「ああ」

 

 ネルは二丁のサブマシンガンを構えた。

 

 鎖がジャラリと鳴る。

 

「ちょうどいい」

 

 ネルが笑う。

 

「今度こそ遊べそうだな」

 

 カナタも銃を構える。

 

「……そうだな」

 

 だが。

 

「カナタ!」

 

 モモイが叫ぶ。

 

「早く!」

 

 カナタは一瞬だけネルを見る。

 

 そして銃を下ろした。

 

「今日は戦うために来たんじゃない」

 

「は?」

 

「また今度だ」

 

 ネルが目を細める。

 

「……逃げんのか?」

 

「目的は果たしたからな」

 

 カナタは炎角を見る。

 

「行くぞ!」

 

「承知!」

 

 カナタたちは走り出す。

 

「チッ……」

 

 ネルは追おうとする。

 

 しかし、アカネが制した。

 

「ネル、深追いは不要です」

 

「分かってるよ」

 

 ネルは銃を下ろす。

 

 そして去っていくカナタたちを見ながら、笑った。

 

「……カナタ、か」

 

「次は逃がさねぇぞ」

 

     *

 

 施設の外。

 

「はぁ……」

 

 モモイが膝に手をつく。

 

「なんとか逃げ切った……」

 

「本当にギリギリでしたね」

 

 ミドリも息を整える。

 

 ユズは鏡を確認する。

 

「……壊れてません」

 

「よかった……」

 

 モモイが胸を撫で下ろす。

 

 アリスも鏡を見る。

 

「これでG.Bibleを読むことができますか?」

 

 カナタが頷く。

 

「たぶんな」

 

 炎角も静かに鏡を見る。

 

「しかし、これほど多くの者に守られているとはな」

 

「それだけ重要なものってことだろ」

 

 カナタは鏡を見つめる。

 

 これで、G.Bibleを読むための準備は整った。

 

 ゲーム開発部を救うための手掛かり。

 

 そして――。

 

 アリスの正体へ繋がる可能性。

 

 さらに、角獣の謎にも関係するかもしれない。

 

「……戻ろう」

 

 カナタが言った。

 

「ヴェリタスで、この鏡を使ってG.Bibleを開いてもらおう」

 

「うん!」

 

 モモイが元気よく答える。

 

「今度こそ、G.Bibleの中身を見るんだ!」

 

「はい!」

 

 アリスも頷いた。

 

 その一方で。

 

 遠くからカナタたちを見送る少女がいた。

 

 ネル。

 

 彼女は鎖で繋がれた二丁のサブマシンガンを肩に担ぐ。

 

「……角獣を連れた銃使い、ねぇ」

 

 口元に笑みを浮かべる。

 

「次に会った時は、ちゃんと遊べるといいな」

 

 こうして――。

 

 鏡奪取作戦は成功した。

 

 ゲーム開発部は、G.Bibleを開くための鍵を手に入れた。

 

 カナタと炎角は、C&Cというミレニアム屈指の実戦部隊と接触した。

 

 そして、ネルという少女にも目をつけられることになった。

 

 だが――。

 

 彼らはまだ知らない。

 

 G.Bibleに記された情報が、ゲーム開発部だけでなく。

 

 アリスの正体。

 

 そして、ミレニアムが追い続けてきた「何か」へと繋がっていることを。

 

 次に彼らが開くのは――。

 

 一冊の伝説ではなく。

 

 ミレニアムの過去そのものだった。

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