ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

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炎竜騎士さんからのリクエストで、鎖角を出しました。

皆様のリクエストをお待ちしております。


第30話 鎖角のネル

「カナタくん! 助けてぇぇぇ!」

 

「だから俺を巻き込むなって!」

 

 ミレニアムサイエンススクールの廊下を、ゲーム開発部とカナタ、そして炎角が走っていた。

 

 その後ろからはC&C。

 

 先頭を走るネルが、二丁のサブマシンガンを手に追いかけてくる。

 

「待ちやがれ!」

 

「待てるわけないでしょ!」

 

 モモイが叫ぶ。

 

「なんで私たち、ゲームを提出しただけなのに追いかけられてるの!?」

 

「それはこっちが聞きたい!」

 

 カナタも叫び返す。

 

「俺、何もしてないぞ!」

 

「でもカナタくん、ゲーム開発部の友達じゃん!」

 

「それだけで巻き込むな!」

 

 炎角はそんな二人を見ながら、淡々と走っていた。

 

「御前様」

 

「なんだ?」

 

「この学校では、これが日常なのか?」

 

「……俺もまだ分からない」

 

 その時。

 

 カナタの前を走っていたアリスが、ふと立ち止まった。

 

「アリス?」

 

「……?」

 

 アリスは振り返る。

 

 そこには、こちらへ向かってくるネル。

 

 その後ろにはアスナ、アカネ、カリン。

 

 だが――。

 

 アスナたちはネルとは違い、武器を構えていない。

 

「……?」

 

 アリスが首を傾げる。

 

「ネルさん以外は、戦うつもりがないのでしょうか?」

 

 カナタも気づいた。

 

「確かに……」

 

 ネルが足を止める。

 

「おい!」

 

 ゲーム開発部へ向けて声を飛ばす。

 

「逃げんじゃねぇ!」

 

「だって追いかけてくるじゃん!」

 

 モモイが言い返す。

 

「だから話を――」

 

「その言い方で話し合いになると思ってる!?」

 

 ネルが頭を掻く。

 

「……ったく」

 

 そして、カナタを見る。

 

「カナタ」

 

「なんだ?」

 

「アンタには一つ聞きたいことがある」

 

「俺に?」

 

「ああ」

 

 ネルは笑った。

 

「一週間前のこと、覚えてるだろ?」

 

「……ああ」

 

 廃墟からの帰還。

 

 その途中で出会ったネル。

 

 そして、鏡を巡る騒動。

 

 あの時は戦いかけたものの、互いに別の事情で中断された。

 

「アリスのこともそうだ」

 

 ネルの視線がアリスへ移る。

 

「こいつが何者なのか、あたしはまだ知らねぇ」

 

「アリスはアリスです!」

 

「そういう意味じゃねぇよ」

 

 ネルが笑う。

 

「けど、強ぇってことは分かってる」

 

 そしてカナタを見る。

 

「アンタもな」

 

「……」

 

「だから――」

 

 ネルは二丁のサブマシンガンを構えた。

 

「一度、ちゃんとやろうぜ」

 

 カナタの表情が変わる。

 

「ここで?」

 

「ここじゃ不味いか?」

 

 ネルが周囲を見る。

 

 ミレニアムの廊下。

 

 近くには他の生徒たちもいる。

 

「……確かに、ここでやったら学校が壊れる」

 

 カナタがため息をつく。

 

「なら、場所を変える」

 

 ネルが笑った。

 

「話が早ぇじゃねぇか」

 

「ただし――」

 

 カナタは銃を構える。

 

「俺たちを追い回した理由は、あとでちゃんと説明してもらうぞ」

 

「分かったよ」

 

 ネルが答える。

 

「それくらいは付き合ってやる」

 

 アスナが手を挙げる。

 

「じゃあ、場所を移動しよっか~」

 

 カリンも頷く。

 

「校舎内で戦うわけにはいかないものね」

 

 アカネが続ける。

 

「では、適当な場所を確保しましょう」

 

 モモイが目を丸くする。

 

「えっ、やるの!?」

 

「やるんだろ?」

 

 ネルが笑う。

 

「少なくとも、あたしはそのつもりだ」

 

「うわぁ……」

 

 モモイが頭を抱える。

 

「またゲーム開発部に変なイベントが……」

 

 ミドリが苦笑する。

 

「もう慣れてきたかも」

 

 ユズは少し震えながらも、カナタを見る。

 

「カナタさん……大丈夫ですか?」

 

「大丈夫」

 

 カナタは頷く。

 

「炎角がいるからな」

 

 炎角が静かに答える。

 

「我も力を貸そう」

 

「ありがとう」

 

 こうして、一行は校舎から離れた場所へ移動した。

 

     *

 

 広い場所。

 

 周囲に生徒はいない。

 

 戦闘をしても被害が出にくい場所だった。

 

 アスナたちは少し離れたところに立つ。

 

「それじゃあ、私たちは見てるね~」

 

 アスナが手を振る。

 

「今回の戦いは、ネル個人の勝負だから」

 

 カリンも武器を下ろす。

 

「私たちは介入しないわ」

 

 アカネも頷く。

 

「了解しました」

 

 モモイが不安そうに先生を見る。

 

「先生……」

 

「大丈夫だ」

 

 先生は落ち着いて答えた。

 

「カナタくんも、アリスも、自分で戦うかどうか決めればいい」

 

 アリスはスーパーノヴァを構えた。

 

「アリスは戦います!」

 

 カナタもオメガホーンを腰から取り出す。

 

「俺もだ」

 

 ネルが笑う。

 

「いい顔するじゃねぇか」

 

 二丁のサブマシンガンを構える。

 

「それじゃあ――」

 

 一瞬。

 

 静寂が訪れる。

 

「始めようぜ!」

 

 ネルが駆け出した。

 

「速い!」

 

 アリスが反応する。

 

 銃撃。

 

 カナタが横へ飛ぶ。

 

 アリスも反対側へ移動する。

 

 ネルは二人の間を一気に駆け抜けた。

 

「まずはこいつだ!」

 

 ネルがアリスへ銃口を向ける。

 

「アリス!」

 

 カナタが援護射撃を行う。

 

 ネルは身を捻ってかわす。

 

「甘ぇ!」

 

 鎖で繋がれた二丁のサブマシンガンを振り回す。

 

 銃そのものを近接武器のように使いながら、アリスへ迫る。

 

「わっ!」

 

 アリスが後退する。

 

「この距離なら!」

 

 スーパーノヴァを振るう。

 

 光の刃が走る。

 

 ネルはそれを紙一重でかわした。

 

「へぇ!」

 

 ネルの目が輝く。

 

「その剣、面白ぇな!」

 

「これは銃です!」

 

「どう見ても剣だろ!」

 

「でも銃です!」

 

「どっちでもいい!」

 

 ネルが笑いながら再び攻撃する。

 

 カナタが割り込む。

 

 銃撃。

 

 ネルが回避。

 

 そのままカナタへ接近。

 

「今度はアンタだ!」

 

「来い!」

 

 二人の銃撃が交差する。

 

 カナタはネルの動きを追いながら、少しずつ後退する。

 

「……強い」

 

 以前にも感じた。

 

 ネルは角獣の力に頼っているわけではない。

 

 C&Cの一員として積み重ねてきた技術。

 

 銃の扱い。

 

 身体能力。

 

 判断力。

 

 すべてが高い。

 

 そこへ角獣の力を組み合わせようとしている。

 

「……やっぱり、あたしの予想通りだ」

 

 ネルが笑う。

 

「アンタ、まだ本気じゃねぇだろ?」

 

「……!」

 

 カナタの目が細くなる。

 

「そっちもだろ」

 

「当然だ!」

 

 ネルがレプリカ・オメガホーンを取り出した。

 

 鎖角のエゴルギアを装填する。

 

「こいつを使う!」

 

 炎角がカナタへ声をかける。

 

「御前様」

 

「ああ」

 

 カナタもオメガホーンを構える。

 

 炎角のエゴルギアを装填。

 

「炎角、力を借りるぞ」

 

「承知した」

 

 カナタが叫ぶ。

 

「角醒憑依せよ――炎角!」

 

 炎の力がカナタに宿る。

 

 同時にネルも叫んだ。

 

「角醒憑依せよ――鎖角!」

 

 ネルの身体を鎖のようなエネルギーが包む。

 

 そして――。

 

 巨大なモーニングスターがネルの手に現れた。

 

「来い!」

 

 ネルが笑う。

 

「ここからが本番だ!」

 

 カナタが走る。

 

 ネルも走る。

 

 炎と鎖がぶつかる。

 

 ――轟音。

 

 モーニングスターが床を砕く。

 

 カナタは間一髪で回避する。

 

 炎の力を纏った銃撃を放つ。

 

 ネルは鎖を使って身体を引き寄せ、攻撃をかわす。

 

「まだまだ!」

 

 ネルがモーニングスターを振り回す。

 

「カナタさん!」

 

 アリスも参戦する。

 

「私も行きます!」

 

 光の刃がネルへ迫る。

 

「二人まとめてか!」

 

 ネルは笑う。

 

「あたしを舐めるなよ!」

 

 ネルが鎖を振る。

 

 モーニングスターがアリスを狙う。

 

 カナタが割り込む。

 

「アリス!」

 

「ありがとうございます!」

 

 しかし、その隙にネルがカナタへ迫る。

 

「もらった!」

 

 モーニングスターが振り下ろされる。

 

「ぐっ!」

 

 カナタが受け流す。

 

 だが、その衝撃で後方へ吹き飛ばされる。

 

「カナタさん!」

 

 アリスが叫ぶ。

 

「大丈夫だ!」

 

 カナタは立ち上がる。

 

 炎角の力がまだ残っている。

 

 ネルも笑っている。

 

「あたしは、角獣の力を手に入れたから強くなったんじゃねぇ」

 

 モーニングスターを肩に担ぐ。

 

「強いあたしが、鎖角の力を手に入れただけだ」

 

 その言葉に、カナタは頷く。

 

「……そういうことか」

 

 ネルは笑う。

 

「分かったか?」

 

「ああ」

 

 カナタは銃を構え直す。

 

「なら、俺も負けるつもりはない」

 

 アリスもスーパーノヴァを構える。

 

「アリスもです!」

 

 ネルが笑った。

 

「来い!」

 

 再び三人がぶつかる。

 

     *

 

 戦いは激しさを増していた。

 

 ネルの鎖が空を切る。

 

 カナタの銃撃が炎を纏って飛ぶ。

 

 アリスのスーパーノヴァが光を放つ。

 

 三つの力が入り乱れる。

 

 だが――。

 

 戦闘の余波で、周囲の床には亀裂が増えていた。

 

 アリスがそれに気づく。

 

「……」

 

 視線を落とす。

 

「……これなら」

 

 アリスはスーパーノヴァを見る。

 

「アリス?」

 

 カナタが気づいた。

 

「カナタさん」

 

 アリスが叫ぶ。

 

「少し離れてください!」

 

「何をする気だ?」

 

「撤退します!」

 

「え?」

 

 アリスは床へ向かってスーパーノヴァを構えた。

 

「アリス、まさか――」

 

「えいっ!」

 

 ――ドゴォォォン!!

 

 床が大きく崩れた。

 

「なっ!?」

 

 ネルが飛び退く。

 

 カナタも炎角とともに後退する。

 

「今です!」

 

 アリスが叫ぶ。

 

「逃げましょう!」

 

「……そうだな!」

 

 カナタが頷く。

 

「炎角!」

 

「うむ!」

 

 カナタと炎角はゲーム開発部、そして先生とともに撤退する。

 

「待て!」

 

 ネルが追おうとする。

 

 しかし、崩れた床と瓦礫が行く手を阻む。

 

「チッ……!」

 

 ネルは足を止める。

 

 やがて、遠ざかっていくカナタたちを見つめる。

 

「……ハッ」

 

 そして笑った。

 

「逃げやがったか」

 

 アスナが近づいてくる。

 

「ネルちゃん、楽しかった?」

 

「ああ」

 

 ネルは即答した。

 

「すっげぇ楽しかった」

 

 カリンが尋ねる。

 

「実力はどうだった?」

 

 ネルは少し考える。

 

「アリスはまだまだ伸びる」

 

 そしてカナタを見る。

 

「カナタもな」

 

「炎角の力を借りてるってのに、まだ全部使いこなせてねぇ」

 

 ネルは笑う。

 

「でも――」

 

 二丁のサブマシンガンを肩に担ぐ。

 

「だから面白ぇ」

 

 アカネが微笑む。

 

「また戦うおつもりですか?」

 

「当然だろ」

 

 ネルは答える。

 

「あたしはまだ、あいつらのことを何も知らねぇんだからな」

 

     *

 

 その頃。

 

 ゲーム開発部と先生、そしてカナタと炎角は、校舎から離れた場所まで逃げていた。

 

「はぁ……」

 

 モモイが息を切らす。

 

「なんだったの、あれ……」

 

 ミドリも息を整える。

 

「ネルさん……強かったね」

 

「はい」

 

 アリスが頷く。

 

「とても強かったです」

 

 ユズがカナタを見る。

 

「カナタさんも……大丈夫ですか?」

 

「ああ」

 

 カナタは頷く。

 

「なんとかね」

 

 炎角が静かに口を開く。

 

「御前様」

 

「なんだ?」

 

「先ほどの女……」

 

「ああ」

 

 カナタもネルのいた方向を見る。

 

「強かったな」

 

「我も同意する」

 

 炎角は頷く。

 

「鎖角の力だけではない」

 

「俺もそう思う」

 

 カナタは自分のオメガホーンを見る。

 

「俺たちも、もっと強くならないとな」

 

 アリスが隣に立つ。

 

「アリスも強くなります!」

 

「……うん」

 

 カナタは笑った。

 

 ゲーム開発部が見つけたG.Bible。

 

 そこに書かれていた言葉。

 

『ゲームを愛しなさい』

 

 その意味は、まだ完全には分からない。

 

 けれど――。

 

 ゲームを好きだからこそ、ゲームを作る。

 

 好きだからこそ、もっと上手くなりたいと思う。

 

 そして。

 

 好きだからこそ、仲間と一緒に前へ進みたいと思う。

 

 それは、ゲームだけの話ではないのかもしれない。

 

 カナタは、そんなことを少しだけ考えていた。

 

「……さて」

 

 モモイが立ち上がる。

 

「帰ろう!」

 

「帰ったら、ゲームの続きをしないとね」

 

 ミドリが笑う。

 

「ミレニアムプライスの結果も気になります」

 

 ユズも頷く。

 

「アリスも楽しみです!」

 

 四人が歩き始める。

 

 カナタと炎角もその後に続く。

 

 その先に何が待っているのか。

 

 まだ、誰にも分からない。

 

 ただ――。

 

 ゲーム開発部は、もう一度ゲームを作り始めた。

 

 そしてカナタもまた。

 

 新しい仲間たちとの日々の中で、少しずつ前へ進み始めていた。

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