ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター― 作:ガンダムラザーニャ
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「カナタくん! 助けてぇぇぇ!」
「だから俺を巻き込むなって!」
ミレニアムサイエンススクールの廊下を、ゲーム開発部とカナタ、そして炎角が走っていた。
その後ろからはC&C。
先頭を走るネルが、二丁のサブマシンガンを手に追いかけてくる。
「待ちやがれ!」
「待てるわけないでしょ!」
モモイが叫ぶ。
「なんで私たち、ゲームを提出しただけなのに追いかけられてるの!?」
「それはこっちが聞きたい!」
カナタも叫び返す。
「俺、何もしてないぞ!」
「でもカナタくん、ゲーム開発部の友達じゃん!」
「それだけで巻き込むな!」
炎角はそんな二人を見ながら、淡々と走っていた。
「御前様」
「なんだ?」
「この学校では、これが日常なのか?」
「……俺もまだ分からない」
その時。
カナタの前を走っていたアリスが、ふと立ち止まった。
「アリス?」
「……?」
アリスは振り返る。
そこには、こちらへ向かってくるネル。
その後ろにはアスナ、アカネ、カリン。
だが――。
アスナたちはネルとは違い、武器を構えていない。
「……?」
アリスが首を傾げる。
「ネルさん以外は、戦うつもりがないのでしょうか?」
カナタも気づいた。
「確かに……」
ネルが足を止める。
「おい!」
ゲーム開発部へ向けて声を飛ばす。
「逃げんじゃねぇ!」
「だって追いかけてくるじゃん!」
モモイが言い返す。
「だから話を――」
「その言い方で話し合いになると思ってる!?」
ネルが頭を掻く。
「……ったく」
そして、カナタを見る。
「カナタ」
「なんだ?」
「アンタには一つ聞きたいことがある」
「俺に?」
「ああ」
ネルは笑った。
「一週間前のこと、覚えてるだろ?」
「……ああ」
廃墟からの帰還。
その途中で出会ったネル。
そして、鏡を巡る騒動。
あの時は戦いかけたものの、互いに別の事情で中断された。
「アリスのこともそうだ」
ネルの視線がアリスへ移る。
「こいつが何者なのか、あたしはまだ知らねぇ」
「アリスはアリスです!」
「そういう意味じゃねぇよ」
ネルが笑う。
「けど、強ぇってことは分かってる」
そしてカナタを見る。
「アンタもな」
「……」
「だから――」
ネルは二丁のサブマシンガンを構えた。
「一度、ちゃんとやろうぜ」
カナタの表情が変わる。
「ここで?」
「ここじゃ不味いか?」
ネルが周囲を見る。
ミレニアムの廊下。
近くには他の生徒たちもいる。
「……確かに、ここでやったら学校が壊れる」
カナタがため息をつく。
「なら、場所を変える」
ネルが笑った。
「話が早ぇじゃねぇか」
「ただし――」
カナタは銃を構える。
「俺たちを追い回した理由は、あとでちゃんと説明してもらうぞ」
「分かったよ」
ネルが答える。
「それくらいは付き合ってやる」
アスナが手を挙げる。
「じゃあ、場所を移動しよっか~」
カリンも頷く。
「校舎内で戦うわけにはいかないものね」
アカネが続ける。
「では、適当な場所を確保しましょう」
モモイが目を丸くする。
「えっ、やるの!?」
「やるんだろ?」
ネルが笑う。
「少なくとも、あたしはそのつもりだ」
「うわぁ……」
モモイが頭を抱える。
「またゲーム開発部に変なイベントが……」
ミドリが苦笑する。
「もう慣れてきたかも」
ユズは少し震えながらも、カナタを見る。
「カナタさん……大丈夫ですか?」
「大丈夫」
カナタは頷く。
「炎角がいるからな」
炎角が静かに答える。
「我も力を貸そう」
「ありがとう」
こうして、一行は校舎から離れた場所へ移動した。
*
広い場所。
周囲に生徒はいない。
戦闘をしても被害が出にくい場所だった。
アスナたちは少し離れたところに立つ。
「それじゃあ、私たちは見てるね~」
アスナが手を振る。
「今回の戦いは、ネル個人の勝負だから」
カリンも武器を下ろす。
「私たちは介入しないわ」
アカネも頷く。
「了解しました」
モモイが不安そうに先生を見る。
「先生……」
「大丈夫だ」
先生は落ち着いて答えた。
「カナタくんも、アリスも、自分で戦うかどうか決めればいい」
アリスはスーパーノヴァを構えた。
「アリスは戦います!」
カナタもオメガホーンを腰から取り出す。
「俺もだ」
ネルが笑う。
「いい顔するじゃねぇか」
二丁のサブマシンガンを構える。
「それじゃあ――」
一瞬。
静寂が訪れる。
「始めようぜ!」
ネルが駆け出した。
「速い!」
アリスが反応する。
銃撃。
カナタが横へ飛ぶ。
アリスも反対側へ移動する。
ネルは二人の間を一気に駆け抜けた。
「まずはこいつだ!」
ネルがアリスへ銃口を向ける。
「アリス!」
カナタが援護射撃を行う。
ネルは身を捻ってかわす。
「甘ぇ!」
鎖で繋がれた二丁のサブマシンガンを振り回す。
銃そのものを近接武器のように使いながら、アリスへ迫る。
「わっ!」
アリスが後退する。
「この距離なら!」
スーパーノヴァを振るう。
光の刃が走る。
ネルはそれを紙一重でかわした。
「へぇ!」
ネルの目が輝く。
「その剣、面白ぇな!」
「これは銃です!」
「どう見ても剣だろ!」
「でも銃です!」
「どっちでもいい!」
ネルが笑いながら再び攻撃する。
カナタが割り込む。
銃撃。
ネルが回避。
そのままカナタへ接近。
「今度はアンタだ!」
「来い!」
二人の銃撃が交差する。
カナタはネルの動きを追いながら、少しずつ後退する。
「……強い」
以前にも感じた。
ネルは角獣の力に頼っているわけではない。
C&Cの一員として積み重ねてきた技術。
銃の扱い。
身体能力。
判断力。
すべてが高い。
そこへ角獣の力を組み合わせようとしている。
「……やっぱり、あたしの予想通りだ」
ネルが笑う。
「アンタ、まだ本気じゃねぇだろ?」
「……!」
カナタの目が細くなる。
「そっちもだろ」
「当然だ!」
ネルがレプリカ・オメガホーンを取り出した。
鎖角のエゴルギアを装填する。
「こいつを使う!」
炎角がカナタへ声をかける。
「御前様」
「ああ」
カナタもオメガホーンを構える。
炎角のエゴルギアを装填。
「炎角、力を借りるぞ」
「承知した」
カナタが叫ぶ。
「角醒憑依せよ――炎角!」
炎の力がカナタに宿る。
同時にネルも叫んだ。
「角醒憑依せよ――鎖角!」
ネルの身体を鎖のようなエネルギーが包む。
そして――。
巨大なモーニングスターがネルの手に現れた。
「来い!」
ネルが笑う。
「ここからが本番だ!」
カナタが走る。
ネルも走る。
炎と鎖がぶつかる。
――轟音。
モーニングスターが床を砕く。
カナタは間一髪で回避する。
炎の力を纏った銃撃を放つ。
ネルは鎖を使って身体を引き寄せ、攻撃をかわす。
「まだまだ!」
ネルがモーニングスターを振り回す。
「カナタさん!」
アリスも参戦する。
「私も行きます!」
光の刃がネルへ迫る。
「二人まとめてか!」
ネルは笑う。
「あたしを舐めるなよ!」
ネルが鎖を振る。
モーニングスターがアリスを狙う。
カナタが割り込む。
「アリス!」
「ありがとうございます!」
しかし、その隙にネルがカナタへ迫る。
「もらった!」
モーニングスターが振り下ろされる。
「ぐっ!」
カナタが受け流す。
だが、その衝撃で後方へ吹き飛ばされる。
「カナタさん!」
アリスが叫ぶ。
「大丈夫だ!」
カナタは立ち上がる。
炎角の力がまだ残っている。
ネルも笑っている。
「あたしは、角獣の力を手に入れたから強くなったんじゃねぇ」
モーニングスターを肩に担ぐ。
「強いあたしが、鎖角の力を手に入れただけだ」
その言葉に、カナタは頷く。
「……そういうことか」
ネルは笑う。
「分かったか?」
「ああ」
カナタは銃を構え直す。
「なら、俺も負けるつもりはない」
アリスもスーパーノヴァを構える。
「アリスもです!」
ネルが笑った。
「来い!」
再び三人がぶつかる。
*
戦いは激しさを増していた。
ネルの鎖が空を切る。
カナタの銃撃が炎を纏って飛ぶ。
アリスのスーパーノヴァが光を放つ。
三つの力が入り乱れる。
だが――。
戦闘の余波で、周囲の床には亀裂が増えていた。
アリスがそれに気づく。
「……」
視線を落とす。
「……これなら」
アリスはスーパーノヴァを見る。
「アリス?」
カナタが気づいた。
「カナタさん」
アリスが叫ぶ。
「少し離れてください!」
「何をする気だ?」
「撤退します!」
「え?」
アリスは床へ向かってスーパーノヴァを構えた。
「アリス、まさか――」
「えいっ!」
――ドゴォォォン!!
床が大きく崩れた。
「なっ!?」
ネルが飛び退く。
カナタも炎角とともに後退する。
「今です!」
アリスが叫ぶ。
「逃げましょう!」
「……そうだな!」
カナタが頷く。
「炎角!」
「うむ!」
カナタと炎角はゲーム開発部、そして先生とともに撤退する。
「待て!」
ネルが追おうとする。
しかし、崩れた床と瓦礫が行く手を阻む。
「チッ……!」
ネルは足を止める。
やがて、遠ざかっていくカナタたちを見つめる。
「……ハッ」
そして笑った。
「逃げやがったか」
アスナが近づいてくる。
「ネルちゃん、楽しかった?」
「ああ」
ネルは即答した。
「すっげぇ楽しかった」
カリンが尋ねる。
「実力はどうだった?」
ネルは少し考える。
「アリスはまだまだ伸びる」
そしてカナタを見る。
「カナタもな」
「炎角の力を借りてるってのに、まだ全部使いこなせてねぇ」
ネルは笑う。
「でも――」
二丁のサブマシンガンを肩に担ぐ。
「だから面白ぇ」
アカネが微笑む。
「また戦うおつもりですか?」
「当然だろ」
ネルは答える。
「あたしはまだ、あいつらのことを何も知らねぇんだからな」
*
その頃。
ゲーム開発部と先生、そしてカナタと炎角は、校舎から離れた場所まで逃げていた。
「はぁ……」
モモイが息を切らす。
「なんだったの、あれ……」
ミドリも息を整える。
「ネルさん……強かったね」
「はい」
アリスが頷く。
「とても強かったです」
ユズがカナタを見る。
「カナタさんも……大丈夫ですか?」
「ああ」
カナタは頷く。
「なんとかね」
炎角が静かに口を開く。
「御前様」
「なんだ?」
「先ほどの女……」
「ああ」
カナタもネルのいた方向を見る。
「強かったな」
「我も同意する」
炎角は頷く。
「鎖角の力だけではない」
「俺もそう思う」
カナタは自分のオメガホーンを見る。
「俺たちも、もっと強くならないとな」
アリスが隣に立つ。
「アリスも強くなります!」
「……うん」
カナタは笑った。
ゲーム開発部が見つけたG.Bible。
そこに書かれていた言葉。
『ゲームを愛しなさい』
その意味は、まだ完全には分からない。
けれど――。
ゲームを好きだからこそ、ゲームを作る。
好きだからこそ、もっと上手くなりたいと思う。
そして。
好きだからこそ、仲間と一緒に前へ進みたいと思う。
それは、ゲームだけの話ではないのかもしれない。
カナタは、そんなことを少しだけ考えていた。
「……さて」
モモイが立ち上がる。
「帰ろう!」
「帰ったら、ゲームの続きをしないとね」
ミドリが笑う。
「ミレニアムプライスの結果も気になります」
ユズも頷く。
「アリスも楽しみです!」
四人が歩き始める。
カナタと炎角もその後に続く。
その先に何が待っているのか。
まだ、誰にも分からない。
ただ――。
ゲーム開発部は、もう一度ゲームを作り始めた。
そしてカナタもまた。
新しい仲間たちとの日々の中で、少しずつ前へ進み始めていた。