ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

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第33話 廃墟に眠る機械

――ミレニアム郊外。

 

人の気配がほとんどない、荒れ果てた廃墟の中を四人の少女と一人の角獣が進んでいた。

 

「うわぁ……本当に何もないね」

 

マキが周囲を見回す。

 

「建物そのものはかなり大きいけど……」

 

ハレが古びた壁を確認しながら端末を操作する。

 

「電力はほとんど通っていません。ネットワークも当然、死んでいますね」

 

その隣ではコタマが過去の資料を確認していた。

 

「ですが、記録によれば、この施設はかつてミレニアムの研究施設として使われていたようです」

 

「昔の研究施設か」

 

カナタが周囲を見回す。

 

「ここでは、何を研究してたんだ?」

 

「詳しいことは分かっていません」

 

コタマが答える。

 

「施設そのものに関する資料が少なく、当時の研究内容もほとんど記録が残っていないんです」

 

「それで、私たちが来たわけ」

 

マキが楽しそうに言った。

 

「残ってるものを探して、何を研究してたのか調べる!」

 

「……マキ、今回の目的はそれだけじゃないよ」

 

ハレが苦笑する。

 

「本来は、アリスさんに関する調査です」

 

カナタが振り向く。

 

「アリスの?」

 

「はい」

 

ハレは頷いた。

 

「以前の調査では、アリスさんの出自や記憶に繋がる十分な手掛かりを見つけられませんでした」

 

「だから、もう一度ここを調べるってことか」

 

「そうです」

 

コタマが続ける。

 

「ただ、過去の記録を調べている途中で、この施設の周辺から角獣に関する古い文献が発見されていたことも分かりました」

 

「角獣……」

 

カナタの表情が変わる。

 

「それで俺を呼んだのか」

 

「はい」

 

ハレが頷く。

 

「アリスさんの手掛かりだけでなく、角獣についても何か分かるかもしれませんから」

 

「一石二鳥ってことだね!」

 

マキが笑う。

 

「……まあ、そういうことです」

 

ハレは少し苦笑した。

 

カナタも頷く。

 

今回、彼がこの場所に来た理由はそこにあった。

 

ミレニアムの資料を調べた結果、角獣についてはまだ分からないことが多いことが分かった。

 

だからこそ。

 

過去に角獣関連の記録が見つかった場所を、実際に自分の目で確かめてみたかった。

 

「我も同行してよかったのか?」

 

隣を歩く炎角が尋ねる。

 

「むしろ、炎角がいた方がいいと思う」

 

カナタは答えた。

 

「資料に書いてある角獣と、実際の角獣で違うところがあるかもしれないからな」

 

「ふむ」

 

炎角は廃墟を見渡す。

 

「ならば、我も可能な限り協力しよう」

 

「頼む」

 

五人は、さらに施設の奥へと進んでいった。

 

しばらくして。

 

「……あれ?」

 

マキが足を止めた。

 

「どうした?」

 

カナタが振り返る。

 

「なんか、ここだけ壁の材質が違う」

 

マキが壁の一部分を指差す。

 

ハレとコタマも近づいた。

 

「確かに……」

 

ハレが壁を調べる。

 

「隠し部屋でしょうか?」

 

「ちょっと待って」

 

マキが工具を取り出す。

 

「こういうの、開けていい?」

 

「安全確認をしてからにしてください」

 

ハレが即座に止めた。

 

「分かってるって」

 

マキは笑いながらも、今度は慎重に装置を調べ始める。

 

やがて。

 

――カチッ。

 

小さな作動音が響いた。

 

続いて、

 

――ガコン。

 

壁の一部が横へ動く。

 

「開いた!」

 

マキが声を上げる。

 

その先には、暗い通路が続いていた。

 

「……行ってみよう」

 

カナタが先頭に立つ。

 

炎角がその隣についた。

 

ハレ、コタマ、マキも続く。

 

四人と一体は、慎重に通路を進んでいった。

 

やがて――。

 

開けた空間に出る。

 

そこには、いくつもの古い機械が並んでいた。

 

ほとんどが停止している。

 

錆びつき、表面が腐食しているものも多い。

 

だが――。

 

「……なんだ、これ?」

 

カナタが足を止めた。

 

部屋の中央。

 

そこには、一台の奇妙な機械が置かれていた。

 

円形の本体。

 

その周囲から、何本もの管が伸びている。

 

管は床へと続き、さらに壁の奥へと伸びていた。

 

どこか機械というより、生物の内部構造を思わせるような形状だった。

 

「変な機械……」

 

マキが近づく。

 

「これ、見たことない」

 

ハレも機械の周囲を確認する。

 

「ミレニアムで一般的に使われている研究設備とは、かなり違いますね」

 

コタマが端末を機械へ向けた。

 

「データベースを検索します」

 

しばらくして。

 

「……該当なし」

 

「え?」

 

マキが振り返る。

 

「ミレニアムの登録機器には存在しません」

 

「製造番号は?」

 

「ありません」

 

「メーカーは?」

 

「不明です」

 

「製造年代は?」

 

「……推定不能です」

 

マキの表情から笑みが消えた。

 

「……なんだこれ」

 

カナタは機械をじっと見つめる。

 

円形の本体。

 

そこから伸びる複数の管。

 

何かを収容するための装置にも見える。

 

だが、用途は分からない。

 

「……つまり、出どころ不明ってことか」

 

「少なくとも、現在のミレニアムの記録からは確認できません」

 

コタマが答える。

 

「この施設で使われていた装置なのか。それとも、別の場所から持ち込まれたものなのかも不明です」

 

「まるで……」

 

ハレが言葉を止める。

 

カナタが振り向く。

 

「どうした?」

 

「いえ……」

 

ハレは少し考えてから、機械を見つめた。

 

「アリスさんの時と、少し似ていると思って」

 

「……!」

 

カナタも機械を見る。

 

アリス。

 

彼女が最初に見つかった時にも、出どころや用途の分からない謎の装置が存在していた。

 

誰が作ったのか。

 

何のために存在していたのか。

 

なぜ、そこにあったのか。

 

そして――。

 

アリス自身も、自分が何者なのかを知らなかった。

 

「確かに……」

 

マキが腕を組む。

 

「場所は違うけど、どっちも正体不明の機械なんだね」

 

「ただし、類似しているというだけで関連性があるとは断定できません」

 

コタマが慎重に言う。

 

「ですが、無視する理由もありません」

 

「だよな」

 

カナタが頷く。

 

「アリスに関係があるかもしれないなら、調べる価値はある」

 

「でも、どうやって調べる?」

 

マキが機械を見上げる。

 

「これ一台だけじゃ、分かることも限られてるよ」

 

「だったら――」

 

カナタが周囲を見回した。

 

「他にもないか探そう」

 

一同は部屋の中を調べ始めた。

 

しばらくして。

 

「あった!」

 

ハレが声を上げた。

 

壁際に、似た形状の機械が置かれている。

 

「こっちにもあるよ!」

 

マキも別の場所から声を上げる。

 

「……複数あるのか」

 

カナタが驚く。

 

どれも完全に同じではない。

 

しかし、円形の本体と、そこから伸びる管の構造には明らかな共通点があった。

 

コタマが一台ずつ調べていく。

 

「構造に共通点があります」

 

「同じ種類なのか?」

 

「断定はできません。ただ、少なくとも何らかの共通した技術体系によって作られた可能性はあります」

 

「それなら――」

 

マキが目を輝かせる。

 

「一台、持って帰って調べよう!」

 

「全部は無理でしょう」

 

ハレが苦笑する。

 

「それに、未知の装置です。不用意に動かすのは危険です」

 

「じゃあ、一番状態のいいやつを一台だけ!」

 

「安全確認をしてからですよ」

 

「分かってるって!」

 

マキが胸を張る。

 

ハレとコタマが慎重に装置を確認する。

 

電源は入っていない。

 

内部にも明らかな作動反応はない。

 

周囲の配線も切断されている。

 

それでも完全に安全とは言えないため、搬送用の装備を用意し、状態の良い一台だけを慎重に運び出すことになった。

 

カナタも運搬を手伝う。

 

炎角は、その様子を静かに見守っていた。

 

やがて。

 

搬送の準備が整う。

 

マキが機械を眺めながら言った。

 

「これ、ちゃんと調べれば何か出てくるかもね」

 

「そうだな」

 

カナタも頷く。

 

しかし、その時だった。

 

ハレが機械を見つめながら口を開く。

 

「……やっぱり、アリスさんにも見てもらった方がいいんじゃないかな」

 

カナタが顔を上げる。

 

「アリスに?」

 

「はい」

 

ハレは静かに頷く。

 

「アリスさんには、まだ自分自身について分からないことが多いです」

 

「……」

 

「だからこそ、この機械を見た時に何か感じる可能性はあると思います」

 

マキも頷いた。

 

「本人にしか分からないこともあるかもしれないしね」

 

コタマも端末を閉じる。

 

「先生にも確認してもらった方がいいでしょう」

 

「……そうだな」

 

カナタは搬送される機械を振り返った。

 

アリスが発見された時に存在していた、謎の装置。

 

そして今、廃研究施設から見つかった、出どころの分からない複数の機械。

 

二つが本当に繋がっているのかは、まだ分からない。

 

角獣との関係も。

 

古代文明との関係も。

 

そしてアリスとの関係も。

 

何一つ確定していない。

 

それでも――。

 

確かめる価値はある。

 

カナタは端末を取り出した。

 

「じゃあ、アリスと先生を呼ぼう」

 

マキたちも頷く。

 

こうして彼らは、二人を呼ぶために連絡を取ろうとした。

 

その時はまだ、誰も知らなかった。

 

この機械が――。

 

アリスの失われた記憶へと繋がる、最初の手掛かりになることを。

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