ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター― 作:ガンダムラザーニャ
「……まずは、アリスの居場所を探そう」
静かな部屋の中で、先生が口を開いた。
カナタたちは、先生の言葉に頷く。
アリスは、リオによって連れ去られた。
しかも、その目的は明らかになっていない。
ただ一つ確かなのは――。
このまま放っておけば、アリスが取り返しのつかないことになるかもしれないということだった。
「でも、どこにいるの?」
モモイが不安そうに尋ねる。
「リオ会長がどこへ行ったのかも分からないし……」
「なら、まずはセミナーに聞いてみるべきだと思います」
カナタが答えた。
「セミナーなら、リオ会長の行動や、ミレニアムの重要施設について何か知っているかもしれません」
「そうだね」
先生はすぐに通信端末を取り出した。
しばらくして、通信が繋がる。
画面に映ったのは、セミナーのユウカとノアだった。
「先生から連絡をもらった時は何事かと思いましたけど……アリスさんの件ですか」
「はい」
先生が事情を説明すると、ユウカの表情が険しくなる。
「リオ会長がアリスさんを連れて行った場所は、私たちにも知らされていません」
「会長は、私たちにも詳しいことを伝えずに動いていましたから」
ノアも静かに続ける。
「ですが、調べることはできます」
「本当ですか?」
ユズが小さな声で尋ねた。
「はい。リオ会長が使用した施設、移動記録、過去に立てていた計画……。そういった情報を照合すれば、ある程度は絞り込めると思います」
「お願いします!」
モモイが身を乗り出した。
「アリスを早く助けないと!」
「もちろんです」
ユウカは頷いた。
「私たちもアリスさんを助けたいと思っています」
それからしばらくの間、セミナーによる調査が行われた。
そして――。
「……ありました」
ノアが画面を見つめながら呟いた。
「ミレニアム郊外に、過去にリオ会長が使用していた大規模施設の記録があります」
「大規模施設?」
カナタが聞き返す。
「はい。通常の研究施設とは規模が違います」
ユウカが続ける。
「しかも、現在は一般のミレニアム生徒には公開されていません」
「それって……」
モモイが息を呑む。
ノアが画面に施設の名称を表示する。
そこに記されていたのは――。
『要塞都市エリドゥ』
「……エリドゥ」
カナタがその名前を口にする。
「ここにアリスがいる可能性が高い、ということですね」
「断定はできません」
ノアは慎重に答えた。
「ですが、リオ会長が大規模な設備を必要とする計画を進めていたこと。そして、その施設が現在も使用可能な状態にあることを考えると……可能性は高いと思います」
「だったら――」
モモイが立ち上がる。
「今すぐ行こう!」
「待ってください、モモイ」
ユウカが止める。
「エリドゥは普通の研究施設ではありません」
「……要塞なんだね」
ミドリが呟く。
「そうです」
ノアが頷いた。
「大量の警備設備や防衛システムが存在する可能性があります。正面から突入すれば、アリスを助ける前にこちらが消耗してしまうでしょう」
「なら、役割を分ける必要がありますね」
カナタが言った。
「みんなが、それぞれ得意なことをすればいい」
その言葉に、周囲の少女たちが頷いた。
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「だったら、私たちも協力するよ!」
声を上げたのはウタハだった。
「エリドゥのような巨大施設なら、設備そのものを利用して侵入経路を作れるかもしれない」
「私は警備システムを調べます!」
コトリも続く。
「内部の構造や警備装置を解析できれば、侵入しやすい場所を見つけられると思います!」
「必要な機械なら、私が作るよ」
ヒビキも頷いた。
「アリスちゃんが使ってたスーパーノヴァも、もともとは私たちが作ったものだしね」
カナタは三人を見て頷く。
「頼りにしています」
「もちろん!」
ウタハが胸を張った。
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「情報面なら、私たちが担当します」
ハレが言った。
「エリドゥのシステムに侵入する必要があるなら、事前にできるだけ情報を集めておきます」
「警備網の穴を見つけるのも得意です」
コタマが続ける。
「通信や監視に関する情報も、可能な限り拾ってみます」
マキは端末を操作しながら笑った。
「つまり、私たちは裏側から道を作るってことね」
「うん」
ユズも小さく頷いた。
「アリスを……迎えに行く」
普段なら、こんな危険な場所へ向かうことを考えるだけでも怖くなる。
それでも、ユズは退かなかった。
「アリスは……私たちの大切な仲間だから」
「ユズ……」
モモイが振り返る。
「うん! 一緒に行こう、ユズ!」
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「正面を担当するなら、私たちの出番だな」
ネルが拳を鳴らした。
「エリドゥの警備を全部相手にする必要はねぇ。私たちが敵の注意を引きつける」
「その間に、別の部隊が内部へ侵入する……という作戦ですね」
アカネが続ける。
「ええ。陽動や撹乱なら、私たちの得意分野です」
アスナも笑顔で頷いた。
「アリスちゃんを助けるためなら、頑張っちゃいますよ~」
カリンも静かに頷く。
「必要なら、遠距離から援護します」
「これなら……」
先生が全員を見渡した。
「かなり現実的な作戦が立てられそうだ」
その言葉を聞き、カナタは人間の姿をした炎角を見る。
「炎角はどうする?」
「無論、御前様と共に行く」
炎角は即答した。
「我が力が必要ならば、前に出よう」
「でも、エリドゥは広い」
カナタは慎重に言う。
「炎角が全部の敵を相手にしたら、それだけで消耗する。だから、必要な場所だけ突破してもらう」
「承知した」
炎角は静かに頷いた。
「御前様の言葉に従おう」
カナタも頷く。
自分たちだけで全てを解決する必要はない。
いや――。
自分たちだけで解決しようとしてはいけない。
今回、救わなければならないのはアリス一人。
そのために必要なのは、誰か一人の力ではなく――。
みんなの力だった。
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「先生は全体の指揮をお願いします」
カナタが言う。
「ヴェリタスは情報とシステム面」
「了解」
「エンジニア部は装備と侵入経路の確保」
「任せて!」
「ゲーム開発部は、アリスの救出を最優先」
モモイ、ミドリ、ユズが頷く。
「C&Cは陽動と戦闘支援」
ネルが笑う。
「任せろ」
「そして俺と炎角は、必要な場所の突破を担当する」
炎角が静かに頷いた。
「御前様の道を切り開こう」
先生は全員を見渡した。
それぞれ違う学校生活を送り、それぞれ違う得意分野を持つ少女たち。
普段なら交わらない者たちが、今は一つの目的のために集まっている。
――アリスを助ける。
それだけだった。
「それじゃあ、作戦を始めよう」
先生が言った。
「目的地は――エリドゥ」
「はい!」
モモイが大きく返事をする。
ミドリも、ユズも、頷く。
ウタハたちも準備を始める。
ヴェリタスは情報を集め、C&Cは装備を確認する。
そしてカナタは、自分の端末を閉じた。
その顔に、迷いはなかった。
「アリスを――」
一度だけ、息を吸う。
「取り戻す」
その言葉とともに、救出作戦が動き始めた。
だが、カナタたちはまだ知らない。
エリドゥの内部で待ち受ける者の中に――。
カナタがまだ一度も出会ったことのない少女がいることを。
その名は――。
飛鳥馬トキ。
そして彼女は、リオの命令を受けて動いていた。
アリスを巡る戦いは、いよいよエリドゥへと舞台を移す。