ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター― 作:ガンダムラザーニャ
投稿遅くなりました
放課後。
アビドス高等学校の教室に、対策委員会のメンバーが集まっていた。
「それじゃあ、今日も借金返済について話し合いましょう!」
アヤネが机の上に資料を並べる。
アビドス高等学校が抱えている借金。
その額――9億6235万円。
あまりにも途方もない金額だった。
「何か、現実的な返済方法を思いついた人はいますか?」
アヤネが尋ねる。
すると、シロコが手を挙げた。
「銀行強盗」
「却下です!」
アヤネは即座に却下した。
「じゃあ、バスジャック」
「ホシノ先輩も却下です!」
「えぇ~?」
ホシノは不満そうに頬を膨らませる。
「じゃあ、ノノミ先輩は?」
「私ですか?」
ノノミは少し考え込む。
「うーん……それなら、アイドルになってみるのはどうでしょう?」
「それも却下です!」
アヤネの声が教室中に響いた。
「どうして皆さん、そんな現実離れした案ばっかりなんですか!?」
「だって、9億6235万円だよ~?」
ホシノが机に突っ伏す。
「普通に働いて返すには、ちょっと……いや、かなり大変じゃない?」
「だからって銀行強盗やバスジャックは駄目です!」
「でもアイドルなら、人気が出ればかなり稼げると思いますよ?」
「ノノミさんまで!」
アヤネは頭を抱えた。
「もう……どうすればいいんですか……」
その様子を見ていたセリカが、ため息をつく。
「とりあえず、今日はもういいんじゃない? お腹も空いたし」
「そうだねぇ~」
「では、柴関ラーメンに行きませんか?」
「賛成」
こうして、対策委員会は柴関ラーメンへ向かうことになった。
ただ一人、カナタを除いて。
「カナタくんは?」
アヤネが尋ねる。
「あいつなら、炎角に今のキヴォトスを案内するって言ってたよ~」
ホシノが答える。
「なるほど」
「まあ、あの二人なら大丈夫でしょ」
セリカも頷いた。
「じゃあ、行きましょ」
---
その頃。
「なあ、炎角」
「何だ、カナタ」
アビドスの街を歩きながら、カナタは隣を歩く炎角を見る。
人間の姿になった炎角は、周囲の景色を興味深そうに眺めていた。
「前に、キヴォトスの今の世界を見てみたいって言ってただろ?」
「ああ」
「だったら、今日は俺が案内するよ」
「よいのか?」
「もちろん」
カナタは笑った。
「俺だって全部知ってるわけじゃないけど、見せられるものならいくらでもある」
「ならば、頼もう」
二人はアビドスの街を歩いていく。
「まずはこれ」
カナタが立ち止まったのは、自動販売機だった。
炎角が眉をひそめる。
「……これは何だ?」
「自動販売機。お金を入れると飲み物が出てくる」
「中に人間がいるのか?」
「いないって」
「では、誰が飲み物を渡している?」
「機械が勝手に出してくれるんだよ」
炎角はしばらく自動販売機を見つめた。
「……奇妙な世界だ」
「まあ、慣れれば普通だよ」
そんな会話をしながら、二人は街の中を歩いていく。
古い建物。
新しい建物。
砂漠の中に作られた現代的な街並み。
かつてのアビドスを知る炎角にとって、それは長い時間の流れを感じさせる光景だった。
「……これが、今の人間の世界か」
「どう? 気に入った?」
炎角は少し考えた。
「まだ分からぬ」
そして、ほんの少しだけ笑う。
「だが……悪くはない」
「そっか」
カナタも笑った。
二人はそのまま、街の奥へと歩いていった。
---
一方、柴関ラーメン。
対策委員会のメンバーが店に入ると、そこではセリカがバイトとして働いていた。
「いらっしゃいませ!」
「お疲れ、セリカちゃん」
「お疲れさまです!」
ホシノたちはいつものように席につく。
しばらくして――。
「すみません……!」
店の入口から、申し訳なさそうな声が聞こえた。
セリカが振り向く。
そこにいたのは、便利屋68の四人だった。
「あの……」
ハルカがおずおずとメニューを見る。
「ここで一番安いラーメンは、どれでしょうか……?」
「一番安いのなら、これ」
セリカがメニューを指差す。
「580円よ」
「580円……!」
ハルカの表情がぱっと明るくなった。
「社長! これなら私たちでも食べられます!」
「本当!?」
アルが食いつく。
「それならここにしましょう!」
アルは勢いよく店内を見回す。
「皆、入るわよ!」
「はーい♪」
ムツキが楽しそうに入っていく。
カヨコも後に続く。
その途中。
ふと、カヨコの目が店内の少女たちに向いた。
ホシノ。
ノノミ。
セリカ。
アヤネ。
そしてシロコ。
制服を見れば分かる。
「……アビドス」
カヨコが小さく呟いた。
「ん? どうしたの、カヨコちゃん?」
ムツキが尋ねる。
「……あの子たち、アビドスの生徒」
「ああ~、なるほど」
ムツキもアビドス組を見る。
「でも、どうする?」
「別に」
カヨコは肩をすくめる。
「今回の依頼とは関係ないかもしれない」
今回の依頼で指定されているのは、アビドス周辺での仕事。
しかし、詳しい事情までは知らされていない。
依頼主から聞かされているのは、あくまで目的と報酬。
誰がその裏で何を企んでいるのかまでは、便利屋68には知らされていなかった。
だからこそ――。
カヨコはアルにも何も言わなかった。
アルも当然、気づいていると思ったからだ。
「ここ、座りましょう!」
ハルカが空いている席を見つける。
「そうね!」
アルもその席へ向かう。
結果。
便利屋68は、対策委員会と同じ店内で、何食わぬ顔で席についた。
対策委員会は、便利屋68を知らない。
便利屋68も、対策委員会を詳しくは知らない。
ただの客同士。
それだけだった。
「ご注文は?」
セリカが尋ねる。
ハルカがメニューを見る。
「えっと……これを四つでお願いします」
「分かったわ」
セリカが注文を取る。
しかし、ハルカは財布を開いた瞬間、申し訳なさそうな顔をした。
「……」
そして、深々と頭を下げる。
「すみません……!」
「え?」
「私たち、これしかお金がなくて……」
セリカはハルカを見る。
必死に謝る姿。
その姿を見ていると、他人事には思えなかった。
自分だって、アビドスの借金を返すためにバイトをしている。
お金がない苦しさは知っている。
だから――。
「……店長!」
セリカが厨房へ声をかけた。
「この四人、大盛りでお願い!」
「えっ!?」
ハルカが顔を上げる。
「大盛り……ですか?」
「そうよ」
「でも、お金が……」
「いいから」
セリカはぶっきらぼうに言った。
「ちゃんと食べなさい」
「……ありがとうございます!」
ハルカの顔がぱっと明るくなる。
「ありがとうございます、店員さん!」
「別に。気にしなくていいわよ」
「やったー!」
ムツキが嬉しそうに笑う。
「アルちゃん、今日は大盛りだって!」
「ええ! これはありがたいわ!」
アルも嬉しそうに笑う。
カヨコはその様子を静かに眺めていた。
「……優しいね、セリカちゃん」
ムツキが小さく呟く。
「うっさい」
セリカは照れ隠しのように顔を背けた。
こうして、何も知らない二組は同じ店でラーメンを食べた。
---
しばらくして。
便利屋68は柴関ラーメンを出た。
「いやぁ~、美味しかった!」
ムツキが満足そうに伸びをする。
「本当に助かったわね!」
アルも上機嫌だった。
「580円であんなに食べられるなんて、素晴らしい店だったわ!」
「大盛りまでいただいてしまいました……」
ハルカも嬉しそうだった。
そのとき。
カヨコがアルに声をかける。
「……社長」
「何よ?」
「さっきの子たちの制服、見てた?」
「制服?」
アルは首を傾げる。
「何か変わった制服だった?」
「そういうことじゃない」
カヨコがため息をつく。
「……アビドスだよ」
「…………」
アルの動きが止まった。
「……え?」
「アビドス高等学校」
カヨコが続ける。
「あの制服、間違いないと思う」
アルは先ほどの店内を思い出す。
ホシノ。
シロコ。
ノノミ。
アヤネ。
そして――セリカ。
「……え?」
アルの顔が徐々に青ざめる。
「ま、待って……」
「どうしたの?」
ムツキが尋ねる。
「さっきの子たちって……」
アルが震える指で柴関ラーメンを指差す。
「……アビドスなの!?」
「うん」
「ななななななななな、なんですってぇーーーーーー!?」
砂漠の街に、アルの絶叫が響き渡った。
「ちょっと、社長! 声大きいって~!」
「だって! だってあの子たちがアビドス!?」
「うん♪」
「なんで先に言わないのよ!?」
カヨコは淡々と答える。
「社長も気づいてると思ってた」
「私もです……」
ハルカまで申し訳なさそうに頷く。
「ハルカまで!?」
ムツキは腹を抱えて笑い始めた。
「あははははっ! アルちゃん、全然気づいてなかったんだ!」
「ムツキ! あなたも気づいてたの!?」
「うん♪」
「じゃあなんで誰も教えてくれなかったのよぉぉぉぉ!!」
便利屋68の声が、夕暮れのアビドスに響き渡る。
だが――。
その時点では、まだ誰も知らなかった。
先ほど柴関ラーメンで一緒に食事をした少女たちと、近いうちに銃を向け合うことになるなど。
そして、その再会が――。
戦場での再会になることも。
さらにその裏で。
便利屋68に依頼を出した何者かが、静かに次の指示を待っていた。