ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

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すみません

投稿遅くなりました


第8話 すれ違う者たち

放課後。

 

アビドス高等学校の教室に、対策委員会のメンバーが集まっていた。

 

「それじゃあ、今日も借金返済について話し合いましょう!」

 

アヤネが机の上に資料を並べる。

 

アビドス高等学校が抱えている借金。

 

その額――9億6235万円。

 

あまりにも途方もない金額だった。

 

「何か、現実的な返済方法を思いついた人はいますか?」

 

アヤネが尋ねる。

 

すると、シロコが手を挙げた。

 

「銀行強盗」

 

「却下です!」

 

アヤネは即座に却下した。

 

「じゃあ、バスジャック」

 

「ホシノ先輩も却下です!」

 

「えぇ~?」

 

ホシノは不満そうに頬を膨らませる。

 

「じゃあ、ノノミ先輩は?」

 

「私ですか?」

 

ノノミは少し考え込む。

 

「うーん……それなら、アイドルになってみるのはどうでしょう?」

 

「それも却下です!」

 

アヤネの声が教室中に響いた。

 

「どうして皆さん、そんな現実離れした案ばっかりなんですか!?」

 

「だって、9億6235万円だよ~?」

 

ホシノが机に突っ伏す。

 

「普通に働いて返すには、ちょっと……いや、かなり大変じゃない?」

 

「だからって銀行強盗やバスジャックは駄目です!」

 

「でもアイドルなら、人気が出ればかなり稼げると思いますよ?」

 

「ノノミさんまで!」

 

アヤネは頭を抱えた。

 

「もう……どうすればいいんですか……」

 

その様子を見ていたセリカが、ため息をつく。

 

「とりあえず、今日はもういいんじゃない? お腹も空いたし」

 

「そうだねぇ~」

 

「では、柴関ラーメンに行きませんか?」

 

「賛成」

 

こうして、対策委員会は柴関ラーメンへ向かうことになった。

 

ただ一人、カナタを除いて。

 

「カナタくんは?」

 

アヤネが尋ねる。

 

「あいつなら、炎角に今のキヴォトスを案内するって言ってたよ~」

 

ホシノが答える。

 

「なるほど」

 

「まあ、あの二人なら大丈夫でしょ」

 

セリカも頷いた。

 

「じゃあ、行きましょ」

 

---

 

その頃。

 

「なあ、炎角」

 

「何だ、カナタ」

 

アビドスの街を歩きながら、カナタは隣を歩く炎角を見る。

 

人間の姿になった炎角は、周囲の景色を興味深そうに眺めていた。

 

「前に、キヴォトスの今の世界を見てみたいって言ってただろ?」

 

「ああ」

 

「だったら、今日は俺が案内するよ」

 

「よいのか?」

 

「もちろん」

 

カナタは笑った。

 

「俺だって全部知ってるわけじゃないけど、見せられるものならいくらでもある」

 

「ならば、頼もう」

 

二人はアビドスの街を歩いていく。

 

「まずはこれ」

 

カナタが立ち止まったのは、自動販売機だった。

 

炎角が眉をひそめる。

 

「……これは何だ?」

 

「自動販売機。お金を入れると飲み物が出てくる」

 

「中に人間がいるのか?」

 

「いないって」

 

「では、誰が飲み物を渡している?」

 

「機械が勝手に出してくれるんだよ」

 

炎角はしばらく自動販売機を見つめた。

 

「……奇妙な世界だ」

 

「まあ、慣れれば普通だよ」

 

そんな会話をしながら、二人は街の中を歩いていく。

 

古い建物。

 

新しい建物。

 

砂漠の中に作られた現代的な街並み。

 

かつてのアビドスを知る炎角にとって、それは長い時間の流れを感じさせる光景だった。

 

「……これが、今の人間の世界か」

 

「どう? 気に入った?」

 

炎角は少し考えた。

 

「まだ分からぬ」

 

そして、ほんの少しだけ笑う。

 

「だが……悪くはない」

 

「そっか」

 

カナタも笑った。

 

二人はそのまま、街の奥へと歩いていった。

 

---

 

一方、柴関ラーメン。

 

対策委員会のメンバーが店に入ると、そこではセリカがバイトとして働いていた。

 

「いらっしゃいませ!」

 

「お疲れ、セリカちゃん」

 

「お疲れさまです!」

 

ホシノたちはいつものように席につく。

 

しばらくして――。

 

「すみません……!」

 

店の入口から、申し訳なさそうな声が聞こえた。

 

セリカが振り向く。

 

そこにいたのは、便利屋68の四人だった。

 

「あの……」

 

ハルカがおずおずとメニューを見る。

 

「ここで一番安いラーメンは、どれでしょうか……?」

 

「一番安いのなら、これ」

 

セリカがメニューを指差す。

 

「580円よ」

 

「580円……!」

 

ハルカの表情がぱっと明るくなった。

 

「社長! これなら私たちでも食べられます!」

 

「本当!?」

 

アルが食いつく。

 

「それならここにしましょう!」

 

アルは勢いよく店内を見回す。

 

「皆、入るわよ!」

 

「はーい♪」

 

ムツキが楽しそうに入っていく。

 

カヨコも後に続く。

 

その途中。

 

ふと、カヨコの目が店内の少女たちに向いた。

 

ホシノ。

 

ノノミ。

 

セリカ。

 

アヤネ。

 

そしてシロコ。

 

制服を見れば分かる。

 

「……アビドス」

 

カヨコが小さく呟いた。

 

「ん? どうしたの、カヨコちゃん?」

 

ムツキが尋ねる。

 

「……あの子たち、アビドスの生徒」

 

「ああ~、なるほど」

 

ムツキもアビドス組を見る。

 

「でも、どうする?」

 

「別に」

 

カヨコは肩をすくめる。

 

「今回の依頼とは関係ないかもしれない」

 

今回の依頼で指定されているのは、アビドス周辺での仕事。

 

しかし、詳しい事情までは知らされていない。

 

依頼主から聞かされているのは、あくまで目的と報酬。

 

誰がその裏で何を企んでいるのかまでは、便利屋68には知らされていなかった。

 

だからこそ――。

 

カヨコはアルにも何も言わなかった。

 

アルも当然、気づいていると思ったからだ。

 

「ここ、座りましょう!」

 

ハルカが空いている席を見つける。

 

「そうね!」

 

アルもその席へ向かう。

 

結果。

 

便利屋68は、対策委員会と同じ店内で、何食わぬ顔で席についた。

 

対策委員会は、便利屋68を知らない。

 

便利屋68も、対策委員会を詳しくは知らない。

 

ただの客同士。

 

それだけだった。

 

「ご注文は?」

 

セリカが尋ねる。

 

ハルカがメニューを見る。

 

「えっと……これを四つでお願いします」

 

「分かったわ」

 

セリカが注文を取る。

 

しかし、ハルカは財布を開いた瞬間、申し訳なさそうな顔をした。

 

「……」

 

そして、深々と頭を下げる。

 

「すみません……!」

 

「え?」

 

「私たち、これしかお金がなくて……」

 

セリカはハルカを見る。

 

必死に謝る姿。

 

その姿を見ていると、他人事には思えなかった。

 

自分だって、アビドスの借金を返すためにバイトをしている。

 

お金がない苦しさは知っている。

 

だから――。

 

「……店長!」

 

セリカが厨房へ声をかけた。

 

「この四人、大盛りでお願い!」

 

「えっ!?」

 

ハルカが顔を上げる。

 

「大盛り……ですか?」

 

「そうよ」

 

「でも、お金が……」

 

「いいから」

 

セリカはぶっきらぼうに言った。

 

「ちゃんと食べなさい」

 

「……ありがとうございます!」

 

ハルカの顔がぱっと明るくなる。

 

「ありがとうございます、店員さん!」

 

「別に。気にしなくていいわよ」

 

「やったー!」

 

ムツキが嬉しそうに笑う。

 

「アルちゃん、今日は大盛りだって!」

 

「ええ! これはありがたいわ!」

 

アルも嬉しそうに笑う。

 

カヨコはその様子を静かに眺めていた。

 

「……優しいね、セリカちゃん」

 

ムツキが小さく呟く。

 

「うっさい」

 

セリカは照れ隠しのように顔を背けた。

 

こうして、何も知らない二組は同じ店でラーメンを食べた。

 

---

 

しばらくして。

 

便利屋68は柴関ラーメンを出た。

 

「いやぁ~、美味しかった!」

 

ムツキが満足そうに伸びをする。

 

「本当に助かったわね!」

 

アルも上機嫌だった。

 

「580円であんなに食べられるなんて、素晴らしい店だったわ!」

 

「大盛りまでいただいてしまいました……」

 

ハルカも嬉しそうだった。

 

そのとき。

 

カヨコがアルに声をかける。

 

「……社長」

 

「何よ?」

 

「さっきの子たちの制服、見てた?」

 

「制服?」

 

アルは首を傾げる。

 

「何か変わった制服だった?」

 

「そういうことじゃない」

 

カヨコがため息をつく。

 

「……アビドスだよ」

 

「…………」

 

アルの動きが止まった。

 

「……え?」

 

「アビドス高等学校」

 

カヨコが続ける。

 

「あの制服、間違いないと思う」

 

アルは先ほどの店内を思い出す。

 

ホシノ。

 

シロコ。

 

ノノミ。

 

アヤネ。

 

そして――セリカ。

 

「……え?」

 

アルの顔が徐々に青ざめる。

 

「ま、待って……」

 

「どうしたの?」

 

ムツキが尋ねる。

 

「さっきの子たちって……」

 

アルが震える指で柴関ラーメンを指差す。

 

「……アビドスなの!?」

 

「うん」

 

「ななななななななな、なんですってぇーーーーーー!?」

 

砂漠の街に、アルの絶叫が響き渡った。

 

「ちょっと、社長! 声大きいって~!」

 

「だって! だってあの子たちがアビドス!?」

 

「うん♪」

 

「なんで先に言わないのよ!?」

 

カヨコは淡々と答える。

 

「社長も気づいてると思ってた」

 

「私もです……」

 

ハルカまで申し訳なさそうに頷く。

 

「ハルカまで!?」

 

ムツキは腹を抱えて笑い始めた。

 

「あははははっ! アルちゃん、全然気づいてなかったんだ!」

 

「ムツキ! あなたも気づいてたの!?」

 

「うん♪」

 

「じゃあなんで誰も教えてくれなかったのよぉぉぉぉ!!」

 

便利屋68の声が、夕暮れのアビドスに響き渡る。

 

だが――。

 

その時点では、まだ誰も知らなかった。

 

先ほど柴関ラーメンで一緒に食事をした少女たちと、近いうちに銃を向け合うことになるなど。

 

そして、その再会が――。

 

戦場での再会になることも。

 

さらにその裏で。

 

便利屋68に依頼を出した何者かが、静かに次の指示を待っていた。

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