ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

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第9話 恩を仇で返す者たち

放課後。

 

アビドス高等学校の教室。

 

昨日の柴関ラーメンでの出来事を、カナタ、炎角、先生を交えて話していた。

 

「――というわけで、セリカが4人分のラーメンを大盛りにしてあげたんです」

 

アヤネが説明する。

 

「へぇ~。セリカちゃん、優しいねぇ」

 

ホシノが笑う。

 

「別に……」

 

セリカは少し気まずそうに腕を組む。

 

「困ってるみたいだったから、ちょっと手を貸しただけよ」

 

「でも、セリカさん。4人分の大盛りですよ?」

 

ノノミが微笑む。

 

「結構な出費だったんじゃないですか?」

 

「うっ……」

 

セリカの表情が固まる。

 

「そ、それは……」

 

「まあまあ」

 

先生が苦笑する。

 

「セリカらしいと思うよ」

 

「先生まで……!」

 

その隣では、炎角が腕を組んでいた。

 

「しかし、奇妙な話だな」

 

「何が?」

 

カナタが聞く。

 

「金に困っていた者たちに、セリカが食事を与えたのだろう?」

 

「そうだけど」

 

「ならば、なぜ我らが警戒せねばならぬ?」

 

「……それがね」

 

セリカがため息をつく。

 

「カヨコって子が、あの子たちはアビドスだって気づいたらしいのよ」

 

「それだけなら、まだいいんだけどな」

 

先生が答える。

 

「便利屋68が何の依頼を受けているのか、まだ分かっていない」

 

「依頼……」

 

カナタが呟く。

 

第8話で見かけた便利屋68。

 

彼女たちがアビドス周辺で何かを探していたことを、カナタはまだ知らなかった。

 

その瞬間だった。

 

――ドンッ!!

 

遠くから爆発音が響いた。

 

「!?」

 

全員が立ち上がる。

 

「今の音……!」

 

アヤネが窓の外を見る。

 

砂煙が上がっていた。

 

「アビドス地区の南側です!」

 

「まさか……」

 

カナタが立ち上がる。

 

炎角も、すでに窓の外を見ていた。

 

「行くぞ、カナタ」

 

「ああ!」

 

先生も頷く。

 

「みんな、行こう!」

 

---

 

アビドス地区。

 

砂煙の向こう側には、武装した少女たちが大勢集まっていた。

 

銃を構えた者。

 

大型の武器を持った者。

 

軽装で素早く動く者。

 

全員、便利屋68が今回の依頼のために雇った傭兵だった。

 

「これだけいれば、さすがに大丈夫よね!」

 

アルが胸を張る。

 

「はい!」

 

ハルカが頷く。

 

「今回の依頼では、傭兵の雇用費も依頼主から支給されています!」

 

「へぇ~。ずいぶん太っ腹な依頼主だね~」

 

ムツキが笑う。

 

「それだけ、アビドスを手に入れたいってことでしょ」

 

カヨコが依頼書を見る。

 

今回の依頼内容は単純だった。

 

アビドス高等学校、および周辺区域の確保。

 

アビドス高等学校は巨額の借金を抱えている。

 

そのため、依頼主はその土地と学校を手に入れようとしていた。

 

そして――。

 

「それと、もう一つ」

 

カヨコが依頼書の下部を見る。

 

そこには別の指示が記されていた。

 

『指定区域内に存在する角獣関連遺物を発見した場合、併せて回収せよ』

 

「……これね」

 

カヨコが呟く。

 

「古代遺物の回収?」

 

ムツキが覗き込む。

 

「そう。学校を確保した後、指定区域を調査することになってる」

 

「なんだか宝探しみたいで楽しそう!」

 

「遊びじゃないわよ」

 

カヨコが淡々と答える。

 

「依頼主は、本気であの土地を欲しがってる」

 

アルが胸を張る。

 

「つまり、私たちがアビドスを確保すれば依頼達成!」

 

「そういうこと」

 

「それじゃあ――」

 

アルが指を前へ向ける。

 

「便利屋68、出撃よ!」

 

「おー!」

 

傭兵たちが一斉に走り出した。

 

---

 

「来た!」

 

シロコが銃を構える。

 

「数が多い……!」

 

ノノミが驚く。

 

「これだけの人数を雇ったんですか!?」

 

アヤネも慌てて指示を出す。

 

「みんな、無理に前に出ないでください!」

 

「先生!」

 

先生が周囲を見る。

 

「シロコ、左!」

 

「了解」

 

「ホシノは中央で防御!」

 

「おじさんに任せて~」

 

「ノノミは後方支援!」

 

「はい!」

 

「アヤネは全体の状況を見て!」

 

「分かりました!」

 

指示が飛ぶ。

 

アビドス組は一斉に動き出した。

 

「そこ!」

 

シロコが敵の隙を突く。

 

「まとめていきますよ!」

 

ノノミの銃撃が敵の動きを止める。

 

ホシノが盾を構え、仲間への攻撃を受け止める。

 

「今です!」

 

アヤネの指示に合わせ、全員が反撃する。

 

しかし――。

 

「まだまだ!」

 

敵の数は多い。

 

一人を倒しても、すぐ別の傭兵が前に出てくる。

 

「数が多すぎる!」

 

セリカが叫ぶ。

 

「このっ!」

 

銃撃で一人を退ける。

 

しかし、別の方向から攻撃が飛んでくる。

 

「セリカ!」

 

カナタが前に出て、銃撃をかわす。

 

「助かった……!」

 

「こいつら、ただのチンピラじゃない!」

 

カナタが周囲を見る。

 

「傭兵だ。ちゃんと訓練されてる!」

 

「だったら――」

 

セリカが銃を構える。

 

「こっちだって負けない!」

 

---

 

「社長!」

 

ハルカが叫ぶ。

 

「このままなら押し切れます!」

 

「当然よ!」

 

アルが得意げに笑う。

 

「これだけの人数がいれば、アビドスの学校を確保するのも――」

 

「……いや」

 

カヨコが静かに口を挟む。

 

「まだ分からない」

 

「え?」

 

「相手には先生がいる」

 

カヨコは戦場を見る。

 

「指揮を取っている人間がいる限り、人数差だけでは押し切れない」

 

「先生……?」

 

アルが首を傾げる。

 

その時。

 

カナタと目が合った。

 

カヨコの表情が変わる。

 

「……あの子」

 

「どうしたの?」

 

ムツキが聞く。

 

「昨日のラーメン屋にはいなかった」

 

「うん?」

 

「でも、あの子もアビドス側」

 

カヨコはカナタを見つめる。

 

「……何か持ってる」

 

カナタの腰にある、見慣れない装置。

 

そして――。

 

その隣にいる炎角。

 

「……あれは?」

 

カヨコが目を細める。

 

「妙な二人組だねぇ~」

 

ムツキも興味深そうに見る。

 

---

 

戦況が変わり始めた。

 

先生の指揮によって、アビドス組が少しずつ敵を分断していく。

 

「シロコ、右!」

 

「了解!」

 

「ノノミ、今!」

 

「はい!」

 

「ホシノ、前をお願いします!」

 

「任せて~」

 

一人。

 

また一人。

 

傭兵たちが倒れていく。

 

「押し返してる!」

 

セリカが叫ぶ。

 

「先生の指揮、すごい……!」

 

カナタも驚いていた。

 

「これが先生の指揮か……」

 

炎角が頷く。

 

「一人一人の力ではなく、全体を一つの力として扱っている」

 

「なるほど……」

 

カナタが前を見る。

 

「じゃあ、俺も――」

 

その瞬間。

 

「カナタ」

 

炎角が呼び止めた。

 

「……あの女を見ろ」

 

カナタが振り向く。

 

カヨコが立っていた。

 

その手には、見慣れないエゴルギア。

 

そして、それを装填するためのレプリカ。

 

「……エゴルギア?」

 

カナタが目を見開く。

 

「どうして、あの子が……?」

 

カヨコは静かにエゴルギアをレプリカへ装填する。

 

「……角醒憑依」

 

レプリカが反応する。

 

「忍角」

 

角獣の力が、カヨコの身体へ宿る。

 

次の瞬間――。

 

カヨコの姿が視界から消えた。

 

「!?」

 

カナタが周囲を見回す。

 

「消えた!?」

 

「忍角」

 

炎角が答える。

 

「隠密を得意とする角獣だ」

 

「じゃあ、あいつは――!」

 

背後。

 

カナタが振り向く。

 

しかし、誰もいない。

 

「……そこ!」

 

銃撃。

 

カナタが咄嗟に飛び退く。

 

「危なっ!」

 

再び姿が消える。

 

「くそっ……!」

 

カナタが警戒する。

 

炎角が言う。

 

「焦るな。相手の位置ではなく、動きを読め」

 

「動きを……」

 

カナタは周囲を見る。

 

砂。

 

足跡。

 

風。

 

わずかな音。

 

「……そこだ!」

 

カナタが銃を撃つ。

 

「!」

 

カヨコが姿を現し、弾丸をかわす。

 

「……気づいた?」

 

「なんとか!」

 

カナタは銃を構える。

 

「お前もハンターなのか?」

 

「そうみたいね」

 

「そうみたいって……」

 

「私はただ、依頼を受けてるだけ」

 

カヨコは淡々と答える。

 

「アビドスを手に入れる。それが今回の仕事よ」

 

「学校を……?」

 

カナタの表情が変わる。

 

「そんなことさせるか!」

 

「それなら、止めてみて」

 

カヨコが再び姿を消す。

 

---

 

「社長!」

 

ハルカが叫んだ。

 

「時間です!」

 

「……え?」

 

アルが振り返る。

 

「契約時間、終了です!」

 

傭兵たちが一斉に時計を確認する。

 

「本当だ!」

 

「そろそろ帰らないと!」

 

「延長料金は?」

 

「契約には入ってません!」

 

「じゃあ帰ります!」

 

「ちょっと待ってぇぇぇ!?」

 

アルが叫ぶ。

 

傭兵たちは次々と武器をしまい始めた。

 

「お疲れ様でしたー!」

 

「またお願いします!」

 

「ありがとうございました!」

 

「こちらこそ!」

 

次々と帰っていく。

 

「いやいやいや!」

 

アルが慌てる。

 

「まだ戦闘中よ!?」

 

「契約時間外なので」

 

「そんなぁ!」

 

ムツキが笑う。

 

「アルちゃん、日雇いなんだから仕方ないよ~」

 

「仕方なくないわよ!」

 

カヨコも忍角の力を解除する。

 

「……これ以上は不利」

 

「カヨコ!?」

 

「撤退する」

 

「でも!」

 

「私たちだけでは人数差が逆転してる」

 

カヨコは冷静に戦場を見る。

 

「今日はここまで」

 

「……くっ!」

 

アルは悔しそうに拳を握る。

 

「覚えてなさい、アビドス!」

 

「それ、依頼相手に言う台詞じゃないよ~?」

 

「うるさいわね!」

 

便利屋68はその場から撤退していった。

 

---

 

戦いが終わった。

 

「……逃げた」

 

セリカが呆然と呟く。

 

「なんだったのよ、あいつら……」

 

「昨日ラーメン食べてた人たち」

 

カナタが答える。

 

「それは分かってるわよ!」

 

セリカが怒鳴る。

 

「だから余計に腹が立つの!」

 

「ラーメンを大盛りにしてあげたのに、次の日には学校を奪いに来るなんて……!」

 

「セリカちゃん、それは確かに怒っていいと思うよ~」

 

ホシノが苦笑する。

 

先生も便利屋68が去っていった方向を見る。

 

「でも、あの子たち……」

 

「先生?」

 

「ただの便利屋じゃないかもしれない」

 

カナタも頷いた。

 

「俺もそう思う」

 

腰にあるオメガホーンへ手を置く。

 

「エゴルギアを持ってる奴がいた」

 

炎角も静かに答える。

 

「そして、あの者たちは角獣の力を知っている」

 

「それだけじゃない」

 

カナタが遠くを見る。

 

「学校を奪う依頼……」

 

アビドスが抱える莫大な借金。

 

そして、今回の襲撃。

 

「……誰かが、アビドスを狙ってる」

 

炎角が頷く。

 

「そして、その者は角獣の力にも目を付けている」

 

カナタは拳を握った。

 

「絶対に渡さない」

 

その頃。

 

撤退した便利屋68。

 

「はぁ……」

 

アルは肩を落としていた。

 

「まさか、あんなに強いなんて……」

 

「先生がいたのも大きかったね」

 

カヨコが言う。

 

「でも――」

 

ムツキが楽しそうに笑う。

 

「面白い子がいたよね」

 

「……ああ」

 

カヨコも思い出す。

 

オメガホーンを持った少年。

 

そして、その隣にいた炎角。

 

「次に会った時は、あの子についても調べる必要がありそう」

 

「え?」

 

アルが振り返る。

 

「何か分かったの?」

 

「まだ何も」

 

カヨコは静かに答える。

 

「ただ……」

 

その視線の先には、遠く離れたアビドス。

 

「普通の生徒じゃないと思う」

 

そして、カヨコは依頼書をもう一度確認する。

 

アビドス高等学校の確保。

 

そして――角獣関連遺物の回収。

 

「……この依頼、思っていたより面倒かもしれないわね」

 

こうして――。

 

アビドスと便利屋68。

 

そして、カナタと炎角。

 

二つの勢力の間に、新たな因縁が生まれた。

 

だが、彼女たちはまだ知らない。

 

今回の依頼が、アビドスだけではなく――。

 

角獣そのものを巡る戦いへ繋がっていくことを。

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