Q.幼馴染み達を殺し合わせないためには A.死ぬほど頑張る 作:寒色系
タツナ・ガレット
タイムリミット残り二年
嵐の中で二人の少女が相対している。一人は赤髪を後ろに一つに結んだ少女ニーロ、彼女は空から降り注ぐ無数の雷撃を避けながら。こちらに杖を振るっている美しい銀色の髪を靡かせる少女ケシアに近づいていく。
ニーロは人間とは思えないような速度でケシアに近づいていく、しかし、ケシアに近づくにつれて雷撃はその数を増やしていく。ニーロは次第にその雷撃を避けきれなくなっていく。彼女のきれいな肌に雷撃が突き刺さっていく。だが彼女は決して速度を緩めない。大の大人であっても耐えきれないような痛みに耐えながら突き進む。これ以上誰かを傷つけさせないため、これ以上罪を背負ってしまう前に、自分の大切な物をこれ以上失わないために。
(これ以上、タツナが守りたかったものを壊させない……! たとえ、全てを失っても……!)
ケシアは反対に冷静にニーロに雷撃を浴びせる。ニーロは自身と共に世界を作る道を拒んだ。こんな世界のために、この耐え難い苦痛に耐えながら向かってくる。自身を殺すために、もう誰もケシアに誰かを傷つけさせないために、だがケシアはもう止まれない。何人も殺した。何百人という人の大切な物を奪った。全ては新しい世界のために、またあの温かな日常を取り戻すために。
「新しい世界でまたいっしょに、三人で暮らそうね。ニーロ」
ケシアはもう目の前まで近づいていたニーロを見るその身体中に火傷の後を負いながらここまで近づいてきた。本来ならここまで魔法使いと勝負になることすらおかしいのだ。しかしさすがに食らいすぎたのか一瞬動きが鈍った。そこにケシアは今までとは比較にならない雷撃を浴びせた。その一際大きい雷撃をニーロは避けようとしたが避けきることが出来ず下半身がその雷撃に飲まれる。
「あ、あぁ」
ニーロの下半身は真っ黒に焼け焦げ、足の先から炭化し始めていた。ニーロは今までとは比較にならない痛みに呻くことしか出来ない。そして、下半身が動かなくなり、這いつくばっているニーロにケシアは近づく。
レシアは倒れているニーロの腕を掴む。するとレシアは……………………
「…………夢か」
俺は机に突っ伏していた身体を起こす。どうやら手帳を書いている途中で寝落ちしてしまったようだ。
外を見るともう空が明るくなり始めていた。
「はぁ……もう何回目だこの夢見るの……もうそろそろいい夢見れてもいいと思うんだが」
俺は虚空に向かい愚痴をこぼす、未来を見て以降、俺は眠る度にニーロとケシアの殺し合っている夢を見せられる。この悪夢を見るせいで俺の睡眠時間は五時間ほど減っている。まぁ今日のような早起きしなくてはならないときは助かるが。
「さて、今日は確か、レシア達と遊ぶ約束だったな」
俺は机に広がっている本を片付けながら今日は何をして過ごそうか考えていた。そのように上の空だったからだろう。本を一冊地面に落としてしまった。
「やべ、これ借り物だから雑に扱っちゃダメなんだよなぁ……気をつけ、よ」
そこで俺はあることに気づいた。俺は急いで本の貸し出し日を見る
。そこには
“タツナ・ガレット貸し出し期間二週間”
急いで俺は今日の日付を見る。
「今日で……ちょうど……二週間…………」
俺はしばらくその場で固まってしまった。
「ということで始めるぞ、この重大な危機を乗り越えるための会議を」
「おー!」
俺は今人生で最も危機的な場面を迎えている。この危機を脱するためには人が足りないと考え、今うちにニーロを召集した。
「まず今回起きてしまった事を説明する。準備はいいか、ニーロ」
「準備万端ー! っていうかすごく壮大に話してるけど、返却日忘れて、私たちと遊ぶ約束しただけでしょ」
そう、今回起きた出来事はいわゆるダブルブッキングというものである。片方の約束を忘れ、同じ日に約束をしてしまうというもの。
「そうだ、これは俺が返却日を忘れてしまい、起きてしまった悲劇だ」
「悲劇って……別にそれほどじゃなくない? 普通にケシアには謝って、明日とかにすればいいだけじゃない?」
「あぁ……それが最も正解に近い選択肢だろう……だが今回ばかりはそれは出来ない」
「なんで?」
「なぜなら今回の約束は普段交わしているものより重いからだ」
その事にニーロは頭に疑問符を浮かべる。そう、なぜ俺はここまで躍起になって約束を果たそうとしているのかそれには一つの訳がある。それはあの日の約束は普段と違いケシアから提示されたものがあるからだ。あの時ケシアはこういった。
『言質とったからね』
「つまり、ケシアは今回の約束を反故にされると何らかの罰が俺に課されるからだ。それも重めのものと言っている」
「なるほどねぇ……」
「それに俺個人としてはケシアとした約束を事情はどうであれ反故にはしたくないというのもある」
二年後にはもう俺はいないかもしれない。だから、出来るだけケシアとニーロの要望には答えてやりたい。だから今回の約束も反故にはしたくないのだ。
俺が説明を理解したのか唖然としていたニーロが口を動かす。
それと今朝見た夢の事もあり、何が要求されるのか分からないというのもある。
「…………じゃあケシアの約束を優先して、別の日に返却すればいいじゃん……借りてる人には謝れば?」
「それも無理だ」
「なんで!?」
「それには大きな問題がある」
この借りている本の返却を遅らせればいい。遅れてしまった分はしっかり謝ればいいとニーロは言った。正直俺もそうしたいが。それは出来ない理由がある。
「これはこのトレチア村から一番近くにある町トロメリアの図書館から借りている。そこには様々な分野の本が置かれており、本を探すならここ以上はないといえるほどの大図書館のものだ」
「私はあんまり興味はないけどとりあえずすごいところなんだね」
「あぁ、俺も初めて行った時は驚いた。この世にあるすべての本があると思ったぐらいだ」
あの図書館は百年以上はあるらしいからそりゃあいろんな本があると思った。
「それにやってくる人も多くてほとんどの席はいつも埋まってた」
「そんなに人がくるくらいに人気の場所なんだ。…………ならなんでそんなに返却日にこだわるの? 人が多いなら返却日を遅れちゃう人だって一人か二人いるでしょ?」
「そう、それほどまでに大きい図書館だ、遅れる人間はいる。なんなら俺が初めて行った日にもいた」
「ならいいじゃん。前例があるんだから」
「そうだ、前例があるんだ、遅れたやつには」
「じゃあもうそれでいいじゃん」
「…………違う」
「違うって何が」
「前例があるんだ、本の返却日を遅れたやつそいつが目の前で…………」
「め、目の前でなにがあったの!?」
俺は意を決して言う。
「埋められたんだよ……」
それを聞いてニーロは青ざめる。
「埋められるって……それってまさか!?」
「天井に埋められたんだ」
俺が放った一言にニーロの青ざめた顔は急速に血の気を取り戻していった。続けて俺が話す。
「返却日を遅れたやつが目の前で天井までぶん投げられて、天井に空いてた穴に埋められたんだよ……」
「それは確かに遅れれないね……はぁ……びっくりした。ややこしいこと言わないでよ」
まぁ他にも返却日を遅れて、司書さんに嫌われて、本の貸し出しがされなくなると手帳を作れないというのもある。
ある程度の状況の説明が出来たところで、話を振り出しに戻す。
「ということでどうやればケシアの約束を果たしつつ、返却できるかをニーロと俺で考えようということだ」
「なるほど……じゃあはい!」
「はい、ニーロ」
「図書館への返却を私に任せるってのは?」
「いい案だが、図書館への返却は本人じゃないと受け取られないんだ。なんでかというと、借りた人に扮して図書館に危険な魔導書を蔵書する可能性があるからだ」
「じゃあ、今から急いでトロメリアまで走って昼までにトレチアに戻ってきて遊ぶとか」
「確かに両方を出来るが、現実的ではない。トレチアから一番近いとは行ったが、そもそもこのトレチア村自体が他の町とかなり遠い位置にある。トロメリアが一番近いのは全部が遠いなかで一番直線距離が短いからだ」
「じゃあ次は……」
この後も様々な案がでたがそのどれもが現実的ではなかったり、どちらかしか達成出来ないものばかりだった。
会議が始まって30分が経過したがいい案は出なかった。
「タツナ。もう素直にケシアに謝ろうよ」
「しかし……」
「ケシアだって無理させてまで遊びたくないと思うよ」
ニーロに謝るようにいわれるが、まだ自分の中ではまだ結論が出ない。手帳を作るにはあの図書館の本は必須だ、世界中の本があるとされるあの図書館じゃなきゃ、手帳を完成させれない。だが、だからといってケシアとの約束も反故にはしたくない。その二つが鬩ぎ合いどうしようと思考に沈んでいった。
その時、俺に電流が走った。
「そっか。二つを別々に考えなきゃいいんだ」
「ふんふんふ~ん♪」
僕はベットの上で上機嫌に鼻唄を唄う。今の僕はとても気分がいい。なぜなら今日は僕が待ちに待った日だから。
「さぁ、タツナはどっちを選ぶかな?」
そう、僕は今日タツナは本の返却日であることを知ってる。僕はたまにタツナの部屋に侵入している。
最近は部屋に込もって本を読んだり、深夜に剣を持って村をでてるから。全然構ってくれなくなった。だから構ってもらえるようにタツナの部屋にイタズラをしようと思って、たまに忍び込んでる。
そこにあったカレンダーの予定を見て、特段気にしなかったが、それが変わったのが昨日のタツナの発言だ。
『…………明日は三人で遊ぶか!』
この声が聞こえた瞬間僕の脳裏にはカレンダーの日付が流れてきた。これは使えると考えた。ニーロが返却日に関して口にしようとしたために食いぎみに間に入った。そして絶対に遊ぶという言質をとり、それを破ったらペナルティがあると伝えた。
この時点で僕の勝ちは確定した。僕の約束を守ってくれるならどんなことより僕の事を大事にしてくれてるって分かるし、逆に約束を反故にしたら実質タツナに対する何でも命令権がもらえる。
そして今は昼過ぎなのに僕の家に来ないということはおそらくトロメリアに本を返しに行っている。
「はぁ~、タツナにどんな命令しようかなぁ~1日ずっといっしょにいてもらおうかなぁ~。それとも」
そんな風に何をさせようか考えていると、玄関の方からノックの音がする。
「ん? 誰だろう?」
今日は訪れるのはタツナ達以外にはいないはずだけど。そうして、扉を開けるとそこにいたのは。
「よう。ケシア遊びにきたよ」
そこにいたのは僕より二つも違うとは思えないほどの身長を持ち、金髪の綺麗な髪に、いつの間にか入っていた赤と銀のメッシュを入れた男。僕の幼馴染み。タツナ・ガレットがそこにはいた。
「えっ!? タツナ!? トロメリアに行ったんじゃないの!?」
「いや今日はケシアと遊ぼうと思ってな、ニーロも来てるぞ」
「遊びにきたよ! ケシア!」
タツナが遊びにきたことに驚いていると、その後ろからもう一人の
幼馴染みこちらも僕と比べると同い年と思えないほど身長が高く、赤い髪を後ろに一つにまとめた快活な少女、ニーロがいた。
混乱する僕を置いてタツナは話し始める。
「早速で悪いが今日の遊びは俺が決めていいか?」
「えっ!? い、いやぁ別にいいけど」
「そうか、じゃあ、ケシア、今から俺らと……」
「トロメリアに行くぞ」
現在の身長
タツナ・ガレット 147cm
ニーロ・セン 158cm
ケシア・ロッカス 141cm