Q.幼馴染み達を殺し合わせないためには A.死ぬほど頑張る 作:寒色系
睡眠 四時間
勉強 三時間
剣術の訓練 七時間
ニーロとケシア 五時間
??? 五時間
「うわぁ、あそこがトロメリア……村と全然違う……!」
俺達は村から歩いて、四時間ほどの道を歩き、ついにトロメリアについた。ニーロは初めての村の外にテンションが上がりに上がっている。そんなニーロを横目に、俺は背中に乗っている。ケシアに話しかける。
「どうだケシア。初めての村の外……ならびに初めての町は?」
「ふ、ふふ……ここまで頑張ったんだ……それに見合う町であってもらわないと困る……」
ケシアは村から出て二時間ほどでぶっ倒れたため、俺が背負ってきた。ケシアはこれまで俺の背中で眠っていたが、ニーロの声で目が覚めたのだろう。俺ゆっくりと屈んでケシアをおろした。
ケシアはあまりテンションが上がっていないように見えるが、おそらく目が覚めたばかりだからだろう。その証拠に目が覚めてきたのか目の前の町を見ると、口にはしないもののその目を大きく見開き、目を輝かせていた。
「さて、トロメリアについたが、ニーロには事前に伝えたが、忘れないように、もう一度確認する」
俺は二人に再度確認をする。ケシアは何の事かわかっていなかったため何の事か分からなかったようだ。ニーロはもうわかったと言っているが、ニーロには口酸っぱく伝えて置かなければ破ってしまう可能性があるからだ。
「今から、トロメリアに入るが、三つ注意をしておく」
「注意?」
「そう、ケシア達が初めての村の外を楽しむための注意事項だ。よく聞いておいてくれ」
俺が真剣に話しているのだと感じとったケシアは俺の言葉に耳を傾ける。
「まず一つ、基本的に二人固まって動け。比較的平和な町だが、良くない輩もいる。二人で動いて、路地などの暗い場所には入らないこと」
ケシアは心に刻むように聞く。ニーロは何回も聞かされたので、飽き飽きといったような様子で聞いていた。ここに来るまでに五回はこの話をしているためそのような態度になってもしょうがないと思い、続けて言う。
「二つ目、ギルドには近づくな」
「ギルド?」
「この街にある冒険者登録をしたり、魔物の素材を買い取ってくれる場所だ。その場所自体は特に危険ではないんだが……」
「ないけど?」
「……まぁ、そこにいるやつが問題なんだが、町の中央にあるギルドに近づきさえしなければ大丈夫だ」
「?」
ケシアの頭に疑問符が浮かぶが、とりあえずギルドに近づかなければ良いということが伝わればいい。そして俺はこれを破りそうなやつにさらに強く注意する。
「ニーロ。何回も言うが、絶対にギルドに行くなよ」
「わかったって……そう何回も言わなくても行かないよ」
「こう何回も言ってなければ行くかもしれないから言ってるんだ」
ニーロは勇者に憧れているが、それと同様に冒険者という存在にも憧れている。だからこそその象徴であるギルドに行きたいんだろうが、少なくとも今は行かせるわけにはいけない。ニーロは道中でも何回も言われたため、うんざりしているようだ。
「そして最後に、町の中で俺の話はするな、俺の名前も出すな」
「……え」
ケシアは予想だにしていなかった言葉にびっくりして固まったが、すぐに頭をふり、俺に質問する。
「なんで町の注意事項でタツナがでてくるの?」
「なぜ俺の名前を出しちゃいけないのかというと、それは……」
「それは?」
「俺はこの町で少しばかり有名人になってるからだ」
「有名人?」
俺の言葉に疑問を持っているようだが。続けて言う。
「なんで有名なのかは言えないが、とりあえず分かっておいてほしいのがその影響で俺の名前を出すと人が集まってきて町の観光も出来なくなる。だから町の中では俺の名前を出さない方がいい」
「なるほど……わかった」
ケシアは俺の説明に納得したようで、それ以上この事について聞いてくることはなかった。その事に俺は心の中で、ホッと一息をつく。
(ケシアが町の方に意識を向けてて良かった。これ以上話すとボロがでる、ニーロと違い、ケシアはそのようなボロを見逃さない。確実に全部吐くまで詰められるからな)
そう、俺はこの話を深掘りされたくはない。なぜなら。
(俺は確かにこの町の有名人だ。ただし……)
俺は二人に気付かれないように小さくため息をつく。
(この町の冒険者を卑怯な手で下したという悪い方で有名だからだ)
だからこそ、二人の口から俺の名前が出ると、初めての外で楽しみにしている二人が町で遠巻きにされるかも知れない。初めての外の思い出をそんなものにはしたくない。だからこそ。ここまで言っている。
「それじゃ二人とも、好きに町を見てきな。俺も本を返したらすぐに戻るから気をつけて行けよ」
「わかった! 本返したらすぐに来てよ! じゃあケシア。早く行こ!」
ニーロはもう我慢できないと町に向かって走っていく。あの姿を見るとまだまだニーロも12の子どもとよく分かる。するとニーロの隣にたっていたケシアが俺に近づいてくる。すると。
「タツナ、耳近づけて」
「なんだ? 早く行かないとニーロに置いてかれるぞ?」
「いいから」
俺は何をしようとしてるか分からないが、とりあえず耳を自分と一回りも違う体に近づける。ケシアは俺に耳打ちをした。
「ありがとう、ここまで運んでくれて。ニーロと一緒に待ってるからね」
「…………」
そう言うとケシアはニーロに追い付こうと走っていく。まぁケシアの身体能力で追い付くことはないだろうが、その背中はどんどん小さくなっていく。その背中を見届けて、俺もゆっくりと町に入っていく。注意事項を守れるのかという一抹の不安はあるが、それよりも何より楽しんでくれるのが一番かと思う。
「ま、さすがに二人を子ども扱いしすぎか。二人とも俺より年上だしな。今度謝っとくか」
夕暮れに染まった町を三人が歩く、一人は腰に大きな剣を携えた赤髪少女ニーロ。彼女は隣を歩く二人に話しかける。
「いや~、まさか町中であんな堂々と誘拐されそうになるとは思わなくて油断してたよ。助けに来てくれなかったらケシアは連れていかれちゃってたかも。本当にありがとね!」
「僕も、改めて言わせてもらう。あなたがいなければ大変な事になっていた。本当にありがとう」
ニーロの隣にいた、自身の身の丈以上の杖を持つ、ショートカットの銀髪を指でいじりながらケシアは礼を言う。顔が赤いのはおそらく恥ずかしいのだろう。ここまでなら村にいた頃にもよくあった光景だ。しかし一つだけいつもと違うところがあるとすればそれは……
「いやいや、自分なんか足元に矢を突きつけただけっすから。本当に気にしないでいいっす」
二人から礼を言われている相手。それはオレンジの髪を首あたりまで伸ばし、背中に弓を背負った少女。しかしその少女を俺は知っている。
(なんでこんなことに……)
そこにいるのは俺が言った、ギルドに行ってはならない理由である少女。レカム・スミンの姿があった。
現在の強さ
魔法無しの場合
タツナ>ニーロ>ケシア
魔法ありの場合
ケシア≧タツナ>ニーロ