星の泉の残照 —The Last Line of Defense—   作:モッチー7

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第7話:オレンジオーシャンの決闘 —The Test of Worth—

夕日が海を燃やすように赤く染める、オレンジオーシャンの断崖。

激しい波飛沫が岩肌を叩くその場所で、孤高の騎士メタナイトは、一本の宝剣を地面に突き立て、静かにその時を待っていた。

彼の足元、その影の奥深くには、かつてデデデ大王から託された「スターロッドの第六の破片」が厳重に封印されている。

「……来たか」

仮面の奥の瞳が、一筋の光を捉えた。

トコトコと軽い足音を響かせながら、ピンクの丸い少年――カービィが崖の上に姿を現す。これまでにウィスピーウッズやクラッコといった並み居る猛者たちをねじ伏せ、五つの破片を集めてここまで辿り着いたのだ。その瞳には、かつての暢気さはなく、使命感に満ちた鋭い光が宿っていた。

カービィはメタナイトを見つめ、いつものようにぽよっと手を差し出した。

「スターロッドの破片を、返して」と、無言で訴えている。

だが、メタナイトは無言で首を振ると、紺色のマントを翻し、地面の剣を指し示した。

「カービィ。その剣を取れ」

重々しい声が響く。

「お前が『夢の泉を取り戻す』という目的のために、この国を巡ってきたことは知っている。だが、何も知らぬまま進むお前の正義が、世界を永劫の闇に突き落とすとしたら……お前はその重荷を背負う覚悟があるか?」

カービィは不思議そうに首を傾げた。

メタナイトが何を言っているのか、彼には理解できなかった。デデデ大王が我が儘でロッドを奪い、世界から夢を奪った。だからそれを取り戻す。カービィの論理はそれほどまでに純粋で、シンプルだった。

「……やはり、伝わらぬか。デデデがどれほどの覚悟でその泥を被ったのか、お前は知る由もないな」

メタナイトは小さく息を吐いた。

数日前、ボロボロになりながら自分に破片を託しに来た巨躯の王の姿が脳裏をよぎる。

『お前なら、簡単に奪われん価値がある』――デデデはそう言った。あの頑固な王が、初めて他者を頼ったのだ。それは、この破片が破られ、ロッドが一つに戻った時、夢の泉の底から「真の災厄(ナイトメア)」が目を覚ますという恐怖の裏返しでもあった。

メタナイトは、デデデの誓いを守る義務がある。ナイトメアの復活を阻止しなければならない。

しかし同時に、目の前の「純粋なる光」の可能性を試したいという衝動も、彼の騎士道精神の中に燻っていた。

「もし、お前が仕組まれた偽りの正義ではなく、真に世界を救う『星の戦士』であるならば……この私を、お前の力でねじ伏せてみせろ。それができぬなら、この破片は渡せない。悪夢と戦う資格なき者は、ここで私が切り捨てる!」

メタナイトは腰の宝剣ギャラクシアを引き抜いた。

まばゆい金色、そして禍々しくも神聖な闘気が、夕暮れの海風を切り裂く。

カービィは、メタナイトの纏う空気が、これまでの戦いとは一線を画す「本物の殺気」であることを見抜いた。彼は覚悟を決めたように、地面に突き立てられた剣へと近づき、その柄を短い手でしっかりと握りしめた。

ジャキィィィン……!

カービィの身体が光に包まれ、頭上に鋭い帽子が出現する。ソードカービィの誕生だ。

「……往くぞ、カービィ!」

メタナイトが地を蹴った。マントが翼へと変化し、超高速の突進がカービィを襲う。

カービィは鋭い反応でそれを迎え撃ち、二つの刃が激しく衝突した。

キィィィィン!!!

金属音が響き渡り、火花が夜を迎えつつあるオレンジ色の世界を散らす。

メタナイトの猛攻は苛烈を極めた。上空からの急降下突き、下からの斬り上げ、そして大気を引き裂く竜巻の術。どれか一撃でも直撃すれば、肉体が両断されかねない命がけの演武。

しかし、カービィは退かなかった。

大王の仕掛けた過酷な旅を生き抜いてきたカービィの剣技は、メタナイトの予想を遥かに超えて洗練されていた。一撃を弾き、隙を突き、騎士の鉄壁の防御をじわじわと切り崩していく。

(素晴らしい、カービィ……! お前はただの無垢な子供ではない。文字通り、暗闇を切り裂く星の輝きそのものだ……!)

刃を交わす中で、メタナイトの心から迷いが消えていく。

デデデ大王が命を賭して守り抜こうとした、このプププランドの光。その光を次の世代へと繋ぐために、自分は今、最高の「壁」としてここに立っている。

そして、最後の交錯。

カービィの一閃が、メタナイトの剣を弾き飛ばし、その勢いのまま、彼の銀色の仮面へと炸裂した。

パリィィィン……!

美しい音が響き、仮面が真っ二つに割れて地面に落ちる。

露わになったのは、驚愕に目を見開いた、しかしどこか満足げな、騎士の真の素顔だった。

メタナイトは静かに剣を納め、割れた仮面を拾い上げると、カービィに背を向けた。

「……見事だ、カービィ。お前の強さ、確かに認めた」

マントで身を包みながら、メタナイトは最後に、崖の端に置かれた「第六の破片」を指し示した。

「それを持っていくがいい。そして……夢の泉へ向かえ。そこには、お前を待つ最後の王(デデデ)がいる。奴を倒し、ロッドを戻した後に訪れる『真の闇』……お前なら、それを打ち破れると信じている」

メタナイトはそのまま、夕闇に溶けるようにして姿を消した。

残されたカービィは、手に入れた第六の破片を掲げ、夜が始まったオレンジオーシャンの海を見つめていた。その背中には、もう一人の守護者であるメタナイトの想いが、静かに、しかし確かに受け継がれていた。

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