失恋した元神童は実質バトルファ●ク世界でまたやらかす 作:信頼できる語り手
人気投票の結果と入力速度を考慮したフエラ回。
あの凸権最段が美味しくなって新登場!
どうも、減量を終えた余熱芯っす。久々に初対面の人達と会うので体型を仕上げていきたい。
「師匠、脱ぐと凄い……。どう鍛えたらそんな細マッチョになるの……?」
「鍛えた事はないんで、体質と才能っすね。んー、最近太った分は戻せたか……?」
体重が増えたのはパイタンさんが作る止められない止まらない料理が原因だろう。とは言っても、彼女はちゃんと栄養バランスも考慮しているので、そこまで極端な変化はなかった。
乙歯女さんの振り付けと演奏に合わせて適当に
「パーティーに参加するだけで気合い入れすぎじゃない? どうせ【Sの落胤】に関して探りを入れるだけなのに」
あの……ごめん、乙歯女さん。君が試着中のドレスのせいで、何も頭に入ってこない。フエラ胸の谷間が……! 情熱を秘めた肉体が……!!
「お、乙歯女さん……ちょ、ちょっと、その格好は攻めすぎじゃないっすか!?」
おっぱいぷるんぷるん!!(直球)
「あら、駄目なの?」
「だ、駄目っす! 大勢の前でそんな……! キュンメロもそうだそうだと言ってます!!」
「どうでも良い」
キュンメロ・ストリッパーはそっけなく言い放ち、激辛塩鮭の載った白米を撮影する作業に戻る。ネットリテラシーのネットリの部分みたいな女に、全肯定ハムスター役を求めた俺が馬鹿だったっす。
「でも、私は地味なドレスで行く。芸能関係者が多く集まるパーティーだから、着飾ると私の可愛さにキュンときた人にスカウトされてしまうかもしれない。そうなったら困る」
人里に降りてきた野生児が、赤い前髪の上でハートマークを作る。ああ、確かにお前はキュンだな。でも、ただのキュンじゃねぇぞ……!
「貴方はもう少し身嗜みに気を遣った方が良いわよ、キュンメロ。というか、せめてお風呂はしっかり入りなさい。旅行の前日もシャワーだけで雑に済ませたでしょ? 石鹸が減ってなかったもの」
「……石鹸なんてなくたって良い。フエラは几帳面すぎ。私がほぐしてあげる。えいえい」
キュンメロが乙歯女さんの巨乳を揉み上げる。こ、このメスガキ……! 末っ子属性を利用して好き放題しやがって……!
「こら、やめなさい」
「おお、意外と弾力がある。上向きロケット」
上向きロケット、了解。キュンメロ、お前こそが本物の勇者だ。俺が黄都二十九官なら六合上覧に推薦してる。
2人きりの『えっ、2泊!?』チャンスに割り込んできた時は物理的にエグゾドライブさせてやろうかと思ったが、なかなか素晴らしい仕事をしてくれるじゃないか。
「ポロリ」
「!?」
「なんて、嘘。……師匠、騙された?」
前言撤回。やっぱり、メスガキは定期的に分からせないと駄目だ。処す? 処す?(勇者刑)
「それにしても、師匠が極東まで来るとは思わなかった。フットワークが軽い」
「今はちょうど休暇期間なんすよ」
「師匠に休暇とかあったんだ。冥護窮理ってあの雑魚アフロくらいしか予備戦力ないのに」
「おい、アフロ隊長を悪く言われる筋合いはねぇぞ……! 俺が過密スケジュールを組まないように、あの人達がいつも頑張ってくれてんすよ……!」
「ん、師匠が365日守ってた方が確実」
アイツ1人で良いんじゃないか理論やめろ。前々から思ってたけど、何でネットに染まった連中は最強キャラを無休で働かせる事を前提に置くんだよ。
むしろ、エース格こそ絶対に無理させちゃ駄目だろ。俺が過労で倒れたら終わりだぞ。こういうところからヒトツヒトツ意識改革していくのが、健全な組織のあるべき姿だ。
「あ、ちなみに、俺の方はどうっすか? タキシードなんて久々に着たんで、自信が……」
襟元を弄りながら女性陣の意見を求める。
「似合ってるわよ。地味すぎず浮きすぎず上品で。ファッションに疎い余熱にしては悪くないチョイスじゃない」
「いやー、実は以前アルナルトスからプレゼントされた服なんすよね。やっと役に立つ日が……」
「全然似合ってないわ。今すぐ脱ぎなさい」
「え゛!?」
乙歯女さんが具象化したクラゲの触手が、俺のタキシードをグイグイと剥ぎ取ろうとしてきた。
「ちょ、鼠径部! 鼠径部見えちゃうって!」
「だから、何よ。見せなさい」
「見せなさい!?」
どうして巨乳美人のポロリを期待してた俺が、逆にボロンさせられそうになってんだよ!? これが因果応報ってヤツか……!!
「フエラ。師匠を脱がせるなら、私も加勢する」
「キュンメロ、お前もか……!」
凹権9段コンビとの死闘が、今始まる……!!
◆
「ええ、私の時給は53万です。ですが、勿論、フルタイムで働く気はありませんから、ご心配なく……」
異様に若々しい見た目のオッサンが、実用性皆無の派手な伊達眼鏡をクイッと押さえた。俺は延々と続く自慢話を如何にして切り上げるべきか、真剣に悩む。
(どんだけ自分語りするんすかね、この若作りオシャレ眼鏡。帰りてぇ……!)
何故、俺がこんな無駄な長話に付き合っているのか。それについては、オッサンの肩書きを聞けば全て納得して貰えると思う。
彼の名前は『
そして、俺の初恋泥棒『指ノ宮
「私は貴方を高く評価しているんですよ、マロウさん。
「それは光栄だな」
適当な相槌を打ちながら、彼の連れてきた私兵の質を推測してみた。
左横に立つデカブツは官能力からして4段ってとこか。他は
まあ、俺を刺激したくなくて主力を置いてきた可能性も充分あるが。
「おや、彼らが気になりますか?」
振座が俺の視線に言及する。戦力を測っている事を見抜かれた……わけではない。彼の言葉は私兵ではなく、その間に立つ癖の強そうな美男美女の事を指している。
「どうですか、あの子達は? 凸権最段にお目見えするという事で、同行者は我が社でもトップクラスの人気を誇るタレントから厳選しました。凡百の芸能人と異なり、自ら光り輝く真のスター達。貴方も多少は知っているのでは?」
ふむ……あの女の子は動画投稿サイトで見た事があるな。ゲーム実況のリアクションが面白いとかで海外でもバズってた。
お、向こうのイケメンは鬼気迫る悪役演技で一時期話題になってた俳優か。他もCMや歌番組で見た事がある顔ばっかりだ。
「……娘がいると聞いたが、芸能界には入れなかったんだな」
「よくご存じで。確かに、娘は『いました』。恥ずかしながら、あれは酷い失敗作でしたね」
あ゛? お前今、不鰓ちゃんの事を失敗作って言ったか?(半ギレ)
「人には生まれ持った器がある。彼女はスターになれる人材ではありませんでした」
「……振座様、そろそろ……」
そこで、振座の側近が控え目に進言する。
「ああ、これは失敬。グロスナッジの開発者と対面できた感動で、目的を忘れるところでしたよ。……では、本題に入りましょう」
彼は声量を抑えてその単語を口にした。
「貴方が情報を欲している【Sの落胤】の1つ……【深淵の
「嘴……」
「はい。あれは管楽器の部品……いわゆるマウスピースにあたるパーツでしてね。黒く塗られた鳥の嘴に似た外観から、そのように呼ばれています」
「吹くと何か起きるのか?」
「さあ、私に訊かれましても。噂の【S文書】の筆者であれば何か分かるかもしれませんが……」
俺にも分からん(無能)。
楽器……楽器かぁ……。そう言えば、不鰓ちゃんへの誕生日プレゼント用に最強の楽器を創ろうとした事があったような……?
うろ覚えだけど、失恋後に結局使わなかった没アイデアを【S文書】に書いた気がする。うっ……あの頃の記憶に紐付いて、トラウマも呼び起こされる……!
アグレッシブベースライナーばりに冷静沈着な仮面の裏側で、俺は悲しい過去と向き合っていた。何度思い出しても辛い、辛すぎる。うぉぉ、願わくばこの手に幸福をぉぉぉ!!
「せっかくですから、実物を見ていかれますか? ちょうど、これからパーティーの余興に……」
「ふ、振座様……っ! 大変です!!」
「何ですか、騒がしい。私は特別ゲストの相手で忙しいのです。用件は手短に……」
「【深淵の嘴】が……盗まれました……っ!!」
振座の頬が怒りでヒクヒクと痙攣していた。
「初めてですよ……この私をここまで虚仮にしたお馬鹿さん達は……!」
「ミセス・メドレー」
俺が声をかけると、フェイスベールを被った乙歯女さんが答える。
「あの女性と、あの男性と……それから、アレとアレ。音がおかしいわ。多分、犯人の一味ね」
「そうか。さて、指ノ宮代表。……どうする?」
どの道ろくな奴じゃねぇんだ! 捕まえ次第ボコるぞ!
「……! トーリアさん、やっておしまいなさい……!!」
「了解、ボス」
ガタイのデカい側近が肉食獣のように走り出す。迫る脅威に気付いた犯人達が逃走を始めた。振座は拳を握り締める。
「くっ……近くにいる2人はともかく、入り口付近の2人は間に合いませんか……!」
……と、思うじゃん?(槍使い語録)
「凹権【
「がっ……!?」
空間が歪み、犯人達が会場内に引き戻された。たまたま入り口近くでモグモグタイムしていた少女が、ステーキを噛みながら俺にピースサインを向ける。
「やっちゃえ、バーサーカー」
何でや! 半神関係ないやろ!
内心でツッコミつつ、俺は既に犯人達の前まで回り込んでいた。キュンメロやマダム・グユに比べたら、欠伸が出るほど動きが遅い。
「槍を抜くまでもないな」
まずは足を蹴って機動力を殺す。うおおお、カーフキック、カーフキック、カーフキック! 暴力万歳!!
「一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろう」
俺は暗黒微笑を浮かべて、拳を振り上げた。
◆
やっちゃったZE☆
「あのね、余熱。気絶させちゃったら尋問できないじゃない。馬鹿なの?」
パーティー終了後、ホテルの1室で反省会が開かれている。主に反省するのは俺だ。
「余熱が倒した内の1人が指示役で、他のメンバーは何も知らない闇バイトらしいし……」
「足を潰した時点で引き渡せば良かったのに。師匠はいつも、格好付けると失敗する」
そうだ、キュンメロ。お前の言ってる事は全て正しい。官能力によって犯人の足をガクガクにさせた時点で、追撃は必要なかった。
それはそうと、野生児にマジレスされると本格的に落ち込んでしまう。もう……引退したい。嘆きの亡霊くらい引退したい。
「で、結局【深淵の嘴】は諦めてラルヴァンダド盆地に帰るの? 犯人達がお金目当てなら、いずれ闇市場に出品されるかもしれないわよ?」
「そこなんすよねぇ……。俺の最優先は黒歴史ノートによる被害を出させない事なんで、危険な代物じゃなければ諦めても良いんすけど……」
「でも、あのゴミ箱女と同じ文書から作られた存在でしょ? 安全だとは思えないわ」
論理的な主張ではないが、気持ちは分かる。アルナルトスは『僕なりの愛だよ』みたいな事を言っていたが、客観的に見てアイツは超危険人物だ。
「キュンメロ。どうにかならないっすか?」
「んー」
キュンメロはタタタッと端末を操作する。俺も調べ物は苦手じゃないが、秘密に対する嗅覚では彼女に軍配が上がる。
「あ、あった」
「マジっすか!?」
「マジ。とある動画配信サイトで行われる予定のバラエティ企画。これの優勝景品が【深淵の嘴】になってる。……ちなみに、企画者は特定できなかった」
「犯人の手がかりを得る為にも、参加した方が良さそうね」
「ん、エントリーは今からでもできる。じゃあ、師匠。マロウと余熱芯、どっちで参加する?」
俺はふと数年前の事件を思い出した。
有名税と言うべきか、マロウの名が知れ渡ると二次創作的な妄想をされる機会が増える。特に素顔不明の生きる伝説というミステリアス要素がウケたようで、ネットには多数の夢小説や怪文書が転がっていた。
その中でも謎の人気を得たジャンルが、母国の変態創作者が考案したマロウ萌えキャラ化である。あの国は病気なんだ……(ヤブ医者)。
無から生み出された美少女マロウ概念は熱狂的な支持を獲得し、一時期は『もう適当な理由付けて自分の癖を満たしたいだけだろ』って感じのイラストが大量に目に入ったものだった。
そう言えば、緑髪にツインテールの……今思い返すと若干マダム・グユに似た妄想図がバズった時もあったな。何でノーヒントで正解に掠ってんだよ。怖いよ。
そこまででも充分カオスだったが、世界各地にいる強火マロウ原理主義者の一部が抗議した事で、美少女マロウを巡る話題は大きな炎上に発展した。
まあ、流石に美少女マロウが一大ジャンルとして確立されたのはやりすぎだったと思う。しかし、俺としてはようやく世界大戦を阻止した直後に、そんなくだらない理由で争いが勃発して欲しくない。
というわけで、正式にマロウという『キャラクター』に関する諸々の二次創作を許可し、ガイドラインも公表した。人生でもトップクラスで無駄な時間だったな……。
そうした取り組みの結果として、数ヵ月後の同人誌即売会では『マロウ様が貴方を優しく許してくれる本』が売り上げ1位を記録した。どういう事なの……。内容が気になりすぎて1冊買っちゃったよ。
ごほん……思考が脱線しすぎたな。ともかく、マロウという名にはそれだけの影響力があるのだ。軽々しく使うわけにはいかない。
「余熱芯、で参加するっす」
消えた天才の事なんて、もう誰も覚えてないだろう。本名で良いや。
「あたしはどうしようかしら?」
「バラエティ企画の性質上、ハンドルネームや偽名での参加も認められてる」
「それなら『乙歯女』で」
こうして、俺達は怪しげな企画にエントリーしたのだった。
◆
「血の繋がりとは不思議ですね。今の姿は初めて見るのに、フェイスベールで顔を隠していても一目で娘だと確信できました」
振座が持ち上げた空のワイングラスに、女執事が赤ワインを注ぐ。
「愚かな娘です。昔から何1つ、私の言う事に従わない。私がプロデュースした輝かしい栄光の道にも興味を示さず、大衆ウケしない時代遅れな曲の演奏に傾倒する」
「そんな憎まれ口を叩きながらも、お嬢様が元気そうで安心したのではありませんの? 戻ってきてくれ、と言ってみては如何?」
「まさか。私の『フィンガーズ・パレス』に失敗作の居場所はありませんよ。本物のスターだけを集めて、世界一の芸能プロダクションを完成させる。それが私の野望です」
振座がワインに口を付けずに立ち上がった。
「久し振りに愚娘を見たせいで、酒を飲む気が失せましたね。クーポンさん、代わりに飲んでおいてください」
「そうやって『毎日』理由を付けてお酒を飲まなくなった事も、お嬢様とは無関係だと?」
「……。事業が拡大して飲酒のリスクを考えるようになっただけです」
「わざわざ、管楽器演奏者以外には無価値の【深淵の嘴】を落札したのは?」
「観賞用ですよ」
クーポンはワインを一息に飲み干す。彼女は酒豪だった。
「ふぅ……似た者親娘ですわね、貴方達は。頑固なところがそっくり。振座様も『あの少年』くらい素直になれば、お嬢様と分かり合えるのではなくて?」
「あの少年……消えた天才『余熱芯』ですか。世界中で目撃証言はあるようですが、もう彼が表舞台に出てくる事はないでしょう」
振座は窓を開け、夜空を見上げる。都会の空に輝く星はエリートだ。並みの輝きでは地上の光に掻き消されてしまう。
だが、『優れている事』と『幸せ』はイコールではない。果たして、一等星である事は幸福なのだろうか。
「──天才は壊れやすい」
振座は記憶の中の妻の顔を思い出していた。
◆
「ふぁ……。朝からガサガサうるさいと思ったら……何食ってんすか、キュンメロ」
「白米、バターの塊、ソーセージ、リブロース、ラーメン……」
油分が多すぎる。脂肪料理で飯を食うな。
「太るぞ」
「大丈夫。何も食べない日もあるから、バランスは取れてる」
「それはバランスとは言わねぇ」
極端なんだよ、お前は。食べられる時に食い貯める様は、完全に野生動物だ。コイツ、餌がなくなったら冬眠とかするんじゃなかろうか。
「それに、朝は多めに食べた方が健康に良いって巻き藁の皆が言ってた」
「限度があるっす」
ネット知識を鵜呑みにしては駄目、駄目!
「余熱……おはよ……。あの子、来てない?」
俺が蠱毒のグルメにドン引きしてると、乙歯女さんがフラフラと部屋に入ってくる。低血圧気味なのか、普段よりもふにゃっとした雰囲気が可愛らしい。
「ああ、駄目……。やっぱり眠いわ……」
無人のベッドにぽすっと倒れ込む乙歯女さん。パジャマが捲れて、色々と際どい艷姿。
「お、乙歯女さん!?」
「ごめんなさい……。朝、弱いの……。10分後に起こして、クーポン……」
誰だよ、クーポン。余熱芯と1文字しか合ってねぇよ。
「落ち着く匂い……♡」
あーっ! 困ります、お客様!! そんなに体を擦り付けられたら、後でそのベッドで寝る時に絶対意識しちゃうっす!!
「おはよう、フエラ。起きて。カンカンカンカン。朝。凄い朝。外明るい。カンカンカンカンカン」
「……キュン、メロ……? あ、ちょっと……」
何故か朝から元気一杯なメスガキが、乙歯女さんを強引に洗面所へと引っ張っていく。押しに弱いフエラ、蕩れ。
「……さて、俺は二度寝でもしますかね……」
いやいや、別に疚しい気持ちはないっす、お奉行様……! この手が悪いのだ……! この手が勝手に……!!
「顔を洗ったら目が覚めたわ。……? 余熱、何で今宙返りしたの……?」
「き、気のせいじゃないっすか? 最初からここに座ってたっすよ、俺は!!」
「??? そう、なのね……?」
今回の件から俺が得るべき教訓は、『乙歯女さんは寝起きでも滅茶苦茶良い香りがする』という事だった。有意義すぎる。
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