失恋した元神童は実質バトルファ●ク世界でまたやらかす 作:信頼できる語り手
「コキーユちゃ~ん。この世界も大分様変わりしたと思わな~い?」
マダム・グユが右手でフライパンを振りながら、左手で鍋の灰汁を掬う。左右の腕で危なげなくマルチタスクができるのは、2人分の魂が詰まった特異な体質故か。
妾は曲芸でも鑑賞する心持ちで主の料理ショーを眺める。
「そうじゃな。余熱芯の動向を注視しておった妾も、まさか【グロスナッジ】がここまで世界規模の文化になるとは思わなんだ」
「お~、それそれ~。あ~しが言いたいのはそこじゃんね~」
グユは料理の手を止めないまま両足で交互に卵をリフティングし、ボウルの縁を掠らせるようにして蹴り上げた。割れた黄身と白身はボウルにとろりと落ち、殻だけが三角コーナーに吸い込まれる。
……先ほどの考察は撤回しよう。別に体質とか関係なく、グユを構成している2人の運動センスが異常なだけだった。怪物の親も怪物である。
「グロスナッジの影響範囲って、どんどん拡大してってるんだよね~。元々は『ラルヴァンダド盆地』を覆うくらいの規模だったのに、今では世界の半分近くに芯ちゃんの『俺ルール』が適用されちゃって~」
「ふむ。それは、つまり……」
妾は発言の意図を迅速に汲み取った。先天的に感情の薄い妾だからこそ、他者の感情を正確に洞察できる。
「いえ~す。芯ちゃんの【特権】はまだまだ成長し続けてる、って事~。我が息子は成長期だよ~」
「……合点が行った。其方が以前から言うておる『余熱芯を満足させないと世界が滅ぶ』とはそういう意味じゃったか」
「そ~。あの子が満ち足りるまで、世界の変質は加速していくわけ~。ドカ鬱~」
恐ろしい話だ。芯は現時点でさえ自身の能力をコントロールしきれていないのだ。この調子で力の源が膨らんでいけば、常人の想像を越えた問題が起きるに違いない。
「コキーユちゃんには非常時のストッパーみたいな役割を期待してるよ~。君の幻術は芯ちゃんにも効くみたいだし、暴走したあの子をリラックスさせられるでしょ~?」
「乱用はできんがな」
幻術は他者の五感に偽りの情報を送り込む。その術は対人戦において凶悪な威力を発揮するが、代わりにコストも重い。
「幻術使いに妥協は許されぬ。常に99.99%の先の完璧を目指さなくてはならん。……僅かな違和感によって術が解けてしまうからのう」
想像力に秀でた官能者を騙すのであれば、細部まで作り込まなくては駄目だ。激しく動くと整合性が破綻する程度の浅い幻では、誰も虜にできない。
色、音、匂い、味、質感。全てにこだわる。妾の得意とする『無感情な客観視』により、どんな人間がどの角度から見ても納得する1皿を。
「噛めば噛むほどに現実との境が曖昧になる。それが妾の【
緊急時の時間稼ぎも良いが……別に、妾が余熱芯を倒してしまっても構わんのじゃろう?
「は~い、余熱家のスペシャリテできたよ~。全ての食材に感謝を込めて、おあがりよ~」
「もぐもぐ……。うむ、不味い」
「嘘~!?」
「其方は砂糖を入れすぎなのじゃ。あと、火を通しすぎて焦げておる。じゃから、料理は妾に任せておけと言うたのに」
「あ~しが食戟で負けるなんて~……。仕方ない、この店はコキーユちゃんに譲るよ~」
賃貸住宅を勝手に譲るでない、阿呆。
「はぁ、はぁ……何ですか、この迷路みたいな道ぃ……。正解のない脱出ゲームとか、最悪の苦行じゃないですかぁ……!」
「この鳥の大群……全部、幻? 斬っても斬ってもキリがない」
ひぃひぃと息を切らしながら同じ場所をグルグル回る凸権9段『レヴァニー・ラフポール』と、空中に向かって攻撃を繰り返す凹権9段『キュンメロ・ストリッパー』。
まるでVRゲームで遊んでいる人間のようなシュールさに反して、本人達は至って真剣だ。
(疲弊した精神は更なる深い幻に囚われる。其方らは最終的に『相討ち』で散って貰う予定じゃが……精々、妾のシナリオに抗ってみよ)
妾はヘリコプターの窓から彼女達を見下ろす。
「こんな場所で待機するのも暇ですね、ボス」
パイロットが呑気に呟いた。彼の目には異常のない風景が映っているし、彼の耳にはロングコート達の雑談が聴こえている。
(妾が幻術で的を外してやらなかったら、このヘリは炎上していたのじゃがな。グロスナッジの影響で死にはせんにしても……まあ、知らぬが仏よ。其方はただ、妾の誘導に従って操縦しておれば良い)
万事順調。キュンメロに術をかけるのは苦労したが、実力の低いロングコートを先に支配下に置く事で間接的に心の中へと滑り込めた。
(警戒心の欠如。一瞬の油断が強者を敗者に転落させる。情報屋なぞしておる割りには脇が甘かったのう、キュンメロ・ストリッパー)
妾は違う。最後の最後まで気を抜かない。
「……仕上げじゃ。ろくに戦えもせず負けたとあってはスッキリせんじゃろうからのう」
指先をパチンと鳴らす。
「──とっておきの『強敵』を用意してやろう」
◆
「ひぎぃ……もう無理ぃ……! もう1歩も動けませぇん……。マロウ様ぁ……助けてぇ……」
レヴァニー・ラフポールは弱音を吐きながら『orz』の姿勢で項垂れる。
(さぁて、本当にどうしましょうかねぇ……。拙も幻覚系の毒はよく使いますけどぉ……)
だから、余計にうんざりしていた。
幻術の攻略は違和感や矛盾点を発見する事から始まる。雨なのに髪が濡れてないとか、何もない場所で物にぶつかるとか。
(要するに、ゲームのデバッグ作業ですぅ。幻術が『錯覚』である以上は必ず現実との齟齬が出ますからぁ)
……の、はずなのだが。
(でも、それは『並の使い手』の場合なんですよぉ。今回の敵は絶対にそのレベルじゃないしぃ)
雪が降り始める。山脈なのだから珍しい事でもないが、タイミング的に幻の可能性が高い。しかし、ラフポールが掌で受け止めた雪は、重さも冷たさも本物の雪にしか思えなかった。
試しに毒で自分自身の神経を遮断し、ノイズとなる感覚を除去してみたが、結果は変わらない。
「触覚まで緻密に再現されたら、どうやって対抗しろって言うんですかぁ……。どわぁ(笑)。美麗なグラフィックと没入体験(笑)」
これはとても危険な状況である。
本来、幻術はそこまでコスパの良い官能力ではない。だが、相手を術中に嵌められれば一気に燃費が向上する。
幻に説得力を感じてしまった敵自身の思考が、自身にかけられた幻術の強度を高めてしまうからだ。考えれば考えれるほど術中に嵌まっていく。それが幻術使いの厄介さ。
ラフポールは根本的な部分で論理的思考が捨てられない人間だ。幻術に穴がない以上、彼女には『ここからここまでが虚構』と根拠のない断定はできない。
(この状況で下手に動くとキュンメロ様と同士討ちさせられそうですぅ。いや、同士じゃないですけどぉ)
「こんなまともな事を考えてる時点で敵の狙い通りなんでしょうねぇ。術から抜け出すには幻術使いの思考を上回るか、それとも予想だにしない手を打つかぁ……。うぉ(笑)。ダルいて(笑)」
吹雪が激しさを増す。視界が悪い。ラフポールの肩から生えた植物が足元の積雪を払った。
「でもまあ、あちら様も何でもありじゃないっぽいですねぇ」
先程から様々な試練に襲われているが、幻の実在感を崩すような『突拍子もない嘘』は出てこない。簡単に言うと『最強無敵ロボの幻を召喚してラフポールを一捻り』なんて無理のあるゴリ押しはできないわけだ。
そして、現実の延長線上で起き得る事象に限定されていれば、凸権9段である彼女が敗北する場面は自分でも想像しにくい。
「幻術使い様が想像力に乏しくて助かりましたぁ。この精度の幻術にかかった状態で脳が『負けた』と認識するのは危険ですか、ら……。……ぁ?」
ラフポールの独り言が止まる。
「えっとぉ……これ、幻覚ですよねぇ……?」
「勿論、幻覚だとも。だけど、それがどうしたんだい? レヴァニー・ラフポール君」
とても聞き覚えのある声がした。金髪、糸目、軍服。その人物が放つ威圧感は官能者の中でも突出している。
「僕は本物と遜色のない虚像さ。つまり、君は今から『ダンプスター・アルナルトス』と戦わなくてはならない。ああ、勿論……全ては幻覚だから、周囲への配慮は必要ないよ」
「……少なくとも、その自信過剰でいけ好かない上から目線は本物そっくりですぅ」
ラフポールは内心で舌打ちした。もう幻術破りに意識を割く余裕はない。何せ、目の前にはあのマロウにすら手を届かせた『完全武装状態のアルナルトス』がいるのだ。
しかも、周囲の環境は幻術使いの支配下に置かれている。圧倒的不利。
「凸権【
「ちょ、これは流石にヤバ(笑)……」
◆
キュンメロ・ストリッパーは……馬鹿である。基本的に物事を深く考えていない。
それは欠点でもあるが、長所でもあった。彼女は先代から課された地獄の修行を何の葛藤を抱く事もなく乗り越え、ストリッパー家の秘伝技術を何の疑問もなく吸収した。
多くの指導者が『技術は幼少期に叩き込むべきだ』と言う。複雑な思考が形成されてからでは、愚直な作業の反復に疑問を持ってしまうからだ。
褒められるだけでモチベーションが回復し、飴を与えられるだけで持続する。そんなシンプルな子供の思考回路こそが、最も『努力』に適した状態なのだ、と。
だとすれば、キュンメロは『文化の継承者』として最高の器と言えるだろう。
「……! 分かった! 私が方角を間違えたのも、きっと幻術のせい……!」
何故なら、子供並みの思考回路だから。余熱芯は彼女の事を『終身名誉メスガキ』と称した。
ただし、キュンメロ自身の頭がどれだけ弱かろうと、その血に刻まれた才能と磨き抜かれた技術に偽りはなく……彼女の体はしばしば条件反射的に最適解を導き出す。
「えい、えい、やー」
気の抜けた掛け声と共に剣を振るった。幻の敵に対してではない。冴え渡る剣閃は本当に何もない虚空を切り裂く。
すなわち、演武。
それは幻術使い『コキーユ・パイタン』にとって絶妙に嫌な一手だった。
(くっ……五感への干渉が途切れそうじゃ……! 妾の幻術を無視して自分の世界に入り込むつもりか……!)
正気ではない、とコキーユは驚愕する。自身の感覚情報を完全に無視するなど、意識してできる事ではない。
事実、キュンメロは意識していなかった。彼女はただ子供のように、今やっている事に全力で没頭しているだけに過ぎない。
(このままでは負担が……!)
幻術を操作しているのは、あくまでコキーユ1人。気紛れな高速演武に合わせて景色を調整するのは地味に神経を削る作業だった。
そもそも、コキーユが幻術使いとして優れている点は意識を誘導する技術である。相手にペースを握られて後手に回るのは想定外だ。
コキーユはどれほど賢い人間が相手でも思考パターンを読んで先回りする自信があった。だが、キュンメロの行動は……。
(読めん……! 此奴、何を考えておる?)
(早く師匠に会いたい。急がないとヨネチウム不足で骨が弱くなってしまう。あ……蝶々)
合理性の塊であるコキーユに、その場の感情と反射のみで行動するキュンメロを理解できるわけがない。
(……面倒じゃな)
コキーユは頭を切り替える。
(其方が思考を放棄するというのなら、こちらも幻の整合性を気にせんで良かろう。あまりスマートではないが……五感を滅茶苦茶に狂わせて動きを封じてやる)
やはり9段は一筋縄ではいかない。万が一にも余熱芯やフエラが視察に来たら困る。惜しいが、今回は動きを止めた隙に撤退しよう。
コキーユは感情を交えずに、努めて冷静な判断を下す。
(……む?)
そこでふと、眼下のキュンメロに違和感を覚えた。……何かがおかしい。
(あの娘……何処を見ておる?)
「凹権【
ヘリコプターがぐらりと揺れる。
「──ん。幻術使い、見付けた」
その得意げな声と一振りでヘリを両断する斬撃は、コキーユの頭上から降ってきた。
◆
「何故、妾の居場所が分かった!? それも、ここまで正確に……!!」
そんなコキーユの疑問が聴こえたわけではないが、地上ではラフポールがドヤ顔を披露していた。
「別に幻術を破る必要はないんですぅ。居場所さえ特定できれば、幻術使い様なんてただの雑魚ですからぁ」
ラフポールにも、キュンメロにも、未だに幻術は効果を発揮している。幻術使いの動揺に呼応して一時停止しているが、ダンプスター・アルナルトスの幻影も健在だ。
「拙がもし貴方様の立場だったら、2つの幻術を使うと思いますぅ。1つ目は拙達を攻撃する幻ぃ。2つ目は自分自身を隠す幻ぃ」
コキーユを含めたヘリコプターの気配は、ラフポール達の五感ではさっぱり知覚できていない。上から重ねるように幻術による偽情報を貼り付けているのだ。
「凄いですよねぇ。この辺の何処かに隠れているとは思えないくらい、風も木の葉も鳥の鳴き声も虫の羽音も幻で再現されてますしぃ。完全な迷彩ですぅ」
だから、発想を変える。幻を直接暴くのは諦めた。ラフポールが狙ったのは『術者本人すら気付かない現実側の変化』によって、間接的に幻を炙り出す事。
彼女にはそれができる。
「毒ってぇ……対人攻撃にだけ効果のあるモノじゃないんですよぉ? むしろ、普段の生活でよく見かけるのはこっちじゃないですかぁ? 人体にはほとんど無害な……殺・虫・剤ぃ♡」
官能力は人間に快楽を与えるが、それ以外のモノには現実と同じ殺傷効果を及ぼす。
「虫って何処にでもいますからねぇ。拙は虫刺されとか嫌なので、いつでも万能殺虫剤を精製できるようにしてるんですぅ」
セーラー服のボタンを外して、胸の谷間に咲いた花をチョンチョンとつつく。
「拙はずっとこの花から殺虫剤を撒きまくってましたぁ。すると、あら不思議ぃ。虫が生き残ってる場所があるじゃないですかぁ?」
幻で作った虫は死なない。至極、当たり前の理屈である。
「……まぁ、目視では確認できませんけどぉ。ただ、世の中には『生命の気配』なんてモノを感じ取れる野生児もいるんですよぉ。そんな人間にとっては違和感バリバリなんじゃないですかねぇ?」
ラフポールは幻術を自力で突破できないと悟った瞬間から、近くにいるはずのキュンメロに希望を託していた。
「幻覚の扱いはそちらが上ですがぁ……頭の回転は拙が上でしたねぇ(笑)」
ヘリコプターが今度こそ本当に墜落し、一帯の幻術が解除される。
「お帰りなさぁい、脳筋様ぁ」
「ナイスアシスト、頭でっかち」
ラフポールとキュンメロはハイタッチした。窮地での共闘によって、2人の間には不思議な友情が芽生え……。
「じゃあ……戦りますかぁ? 貴方様みたいな猛獣害獣淫獣女がマロウ様の寵愛を受けようとか、マジあり得ないですぅ。身の程を弁えて野良犬の子供でも孕んでてくださぁい(笑)」
「ん、やっと肩が温まってきたところ。師匠に気に入られてる雌は全員ボコって、私の強さをアピールする。弱肉強食が野生の掟だから、師匠のハーレムにヒョロガリ女の席はない」
「「……」」
なかった。現実は非情である。
◆
「ただいま、じゃ」
「おかえりっす。……って、どうしたんすか、パイタンさん!? 元気ないっすよ!? ラフポールに何かされたなら、今すぐ頭の上に隕石を落とし……」
俺は慌ててパイタンさんに駆け寄る。……やっぱりね。はい、アイツはいつかやると思ってたっす(ワイドショー加工声)。
「いや、違う違う。高いところの物を取ろうとしたら脚立が倒れてのう。グロスナッジのおかげで怪我はないが、少しテンションが下がっておるのじゃ」
「本当っすか? それだけで、そんなに顔色悪くなるんすかね?」
「同じ事が30回あったのじゃ」
挑戦しすぎだろ。トンパかよ。
「身長の高い者は羨ましいのう……」
「そうだ、牛乳! 牛乳飲みましょうよ、パイタンさん! 小さいって事は大きくなれるって事! 後は伸び代しかないっす! こっからっす!」
「それは暗に胸も小さいと言うておるのか?」
「あ、何言っても逆効果なフェイズだ」
あれかな。生理ってヤツかな。童貞だからよく知らんけど……。何かこう、女性ホルモンがズコーッとなって、女子汁ブシャーで、月が綺麗ですね……ってなるアレだろ、多分。
乙歯女さんにもそういう時が……いや、あんまりないかも。24時間365日、絶好調で下ネタばっかり言ってる。おもしれー女。
ラフポールもどうなんだろう。常に情緒不安定な構ってちゃんだから、時期による違いが分からない。全部同じじゃないですか!!
キュンメロは……何か自分から生理周期を告白してきた事があって怖かった。それを知って俺にどうしろと……?
「ヨネツ卿」
「な、何すか……?」
「妾は疲れたから寝る。ホルミスダス山脈に関する報告はフエラ卿に伝えた故、仔細は彼女に確認してくれるかの?」
「あ、ああ……ザックリした事は俺の耳にも届いてるっすよ。キュンメロと例の幻術使いが現れたとか。災難だったっすね」
キュンメロは近接戦闘なら9段でも最強。そして、空間系の凹権によって無理矢理に距離を詰めてくるヤベー奴だ。
今回は結局、ラフポールに追い返されたみたいっすけど。正面からの肉弾戦特化だから、毒攻撃が刺さりまくるんだよな。
余談だが、あの2人が喧嘩してる間に幻術使いはまたもや逃げおおせたらしい。大した逃げ足だ。本能的に長寿タイプ。
まあ、これに懲りたら暫く大人しくしてる事っすね。それでも文句があるなら、いつでも喧嘩上等っすよ。
「パイタンさん、おやすみっす」
「……応。また明日、じゃの」
◆
「師匠!」
童貞を殺す感じのロングスカートを履いた女が、とててっと走ってくる。俺の領地に土足で入り、冥護窮理の部下を1人気絶させてくれた凶悪犯だ。
「凸権【
俺は許そう。だが、コイツが許すかな!
「凹権【
俺達の官能力が空間をズタズタに崩壊させて、庭にクレーターを作る。室内じゃなくてマジで良かった。
「い、いきなり雄としての強さを見せ付けてくるなんて……♡ 師匠のエッチ……♡」
「やめろ。お前の台詞は乙歯女さんの下ネタと違って、何か生々しい響きがあるんだよ」
どうにも背筋がゾワゾワするというか。一言で表すと、捕食されそうなふいんき(←何故か変換できない)がある。
「師匠、私に何か訊きたい事、ないの?」
「あ、そうだ。【Sの落胤】について、何か知ってる事は無いっすか?」
「デジャヴ……」
……? 何だよ、その反応。
「落胤……? 交尾したんだ……私以外の奴と……」
「腹パンすんぞ、コラ」
「師匠がそういうプレイで興奮するなら……♡ 痣ができないように気を付けて殴って……♡」
「待て。俺が悪かったから、自分から服を捲るのは勘弁してくれっす。謎の罪悪感が……」
あと、腹筋凄いな。別にムキムキマッチョってわけじゃないけど、とても絞り込まれている。不摂生で痩せてるだけのラフポールとは大違いだ。
「ふぅ……」
何すか、その『別選択肢の回収を終えたギャルゲプレイヤー』みたいな微満足顔は。
「勿論、私は裏社会とも繋がりがあるから、【Sの落胤】については情報を握ってる。【アルナ計画】以外、で良い?」
「っす。とりあえず、アルナルトスはもう暴れる気がなさそうなんで」
タブンネ……。こんな事言っといて、また反逆キメてきたらどうしよう。流石にそこまでイカれた奴じゃないと信じたいが。アルナ、信じてるからな……。
「じゃあ、これ。選んで」
「抽選箱……? 何で情報屋がランダム性を取り入れてんすか」
「10連だと最低保証でレア情報確定」
「ガチャじゃねぇか」
コイツ、ノリだけで生きてやがる……。こんな人間が世界中の要人の秘密を握ってるとか、もう殺すしかなくなっちゃってない……?
「何が出るかな」
「ええい、やってやろうじゃねえかよ、この野郎! 半端ないとこ見せてやるよ、お前!!」
出るまで回す! 出るまで回す! 10連、いっけー!
「……いっぱい出た」
キュンメロが箱から出てきた球を開ける。
「おお、ウルトラレア」
「よく分からんけど、幸先良いっす!!」
彼女は俺の目をじっと見て、勿体ぶるように溜めに溜めた。おい、『結果はCMの後』とか言わないだろうな。
「師匠の初恋の相手は今、想い人の職場に部下として就職してる。おめでとう」
「ゴミ情報じゃねぇか! 【Sの落胤】関係ねぇし! 闇鍋ガチャやめろ!!」
唐突なBSSに脳が破壊される。訴訟。
「ぇ……あの……嘘だよな……?」
「私は真実しか暴露しない。あと、【Sの落胤】にも関わる話」
「そ、そっすか……。悪ぃ……やっぱ辛ぇわ……。続き聴くの明日で良い?」
「そう言うと思って、お泊まりセットも持ってきた。慰めてあげるから、一緒に寝よう」
「か、確信犯……!?」
自分で傷付けてから優しくする、見事なDV仕草であった。
幻術恋人体験シナリオが読みたいヒロインは?
-
【循環吹奏】乙歯女・A・フエラ
-
【無機戦役】ダンプスター・アルナルトス
-
【退廃淫酒】レヴァニー・ラフポール
-
【偏狭横断】キュンメロ・ストリッパー