のませて魔王様!!〜魔王様の配下募集には、最強変態乙女が来るらしい〜   作:メクスィィィー

11 / 11
9滴目 血族面接①

◆ アルガ・ヴァンドの襲撃から数日後。

 

「アグランス様ぁぁああ!!」

 

 従者の小鬼(ゴブリン)が、顔を青白くして──もとい、顔面はずっと不気味な緑なのだが──俺の部屋に駆けこんできた。

 

「どうしたのだ」

 

 それまでベッドでゴロゴロしていたから、ベッドから起き上がって、「少し耽っていた」と言わんよう、慌てて服のシワを直しながら小鬼(ゴブリン)に問いた。

 

「……この世の、世の!! ありとあらゆる種族たちが押し寄せてきてます!!」

 

「は、はぁ?!」

 

 最悪……というには、実感が湧かなすぎた。

 今、魔王城の門の前に、詩民(エルフ)やら鈍豚(オーク)やら小鬼(ゴブリン)やらが行列を成してるってのか……?

 

 いやいやいや、別に。俺魔王だし。みんなからしたら、世界征服果たしてるし怖いだろ。そんなやつの血を欲しがる奴なんていないって~……。

 

「総数……およそ3000!!」

 

 終わった。帰っていい?

 ──ここ俺の部屋か。じゃあ帰んなくてもいいか。

 

「ど、どういたしましょう……?!」

 

「うぅむ。俺の血族は? 暇してるやつは?」

 

「……どうでしょうか。恐らく、ルミィナ様の禁忌の地(ガリオローデオ)の視察はじきに終わるかと……」

 

 よ、よし!! ルミィナは手が空きそうなのだな……!

 まだ、なんとかなりそうだ……。

 

「ほ、他は?」

 

「ほかですか……ナイトスレイン様は恐らく手が空いているものかと」

 

「竜がこの事態に駆けつけてどうするのだ」

 

「彼の竜の焔吐(ブレス)で全員焼き払ってしまうなど?」

 

「──ありだ」

 

 嘘です。そんなことしたら余計に面倒なことになります。

 

「で、では! 招集をかけましょうか」

 

「待て。三度も魔王城の壁を壊されてたまるか」

 

 血族会議……アルガ・ヴァンド襲撃……つづく候補者殺到の助っ人……。無理だ。これ以上は魔王城が持たん。

 

「はっ」

 

 ……ふぅ。変な汗かいたな……。

 

「で、ではどう対応いたしましょう?」

 

 小鬼(ゴブリン)は目を大きく見開き、汗ばんだ身体を震わしている。

 俺の部屋の扉に手をかけたまま、小さくうずくまっていた。

 

 ──先から考えていたが……これだと現実的じゃなさすぎるな……。

 いや、やるか? 「面白そう」だと、そう思えるならば、暇つぶしになるし。

 

「今すぐ机と椅子を用意しろ」

 

「……は、はぁ?」

 

 半ば諦めからだったが、俺は鋭い笑みを浮かべた。

 

「──面接の時間だ」

 

◆ 魔王城、城門前。

 

 数多の種族たちが、彼方へ列を成して並び尽くす。

 その行列は、魔王城付近の枯れ木ばかりの薄れた森まで続いていた。

 

「開門だ!! 門を開けてケロ!!」

 

「はやく!! 魔王様は?!」

 

「俺が血族になるんだよぉおお!!」

 

 次々に声を上げる行列の先頭たち。

 人型の獣族から、鈍豚(オーク)まで、様々並んでいた。

 

「フン……大人しくしていれば良いものを……」

 

 先頭から数メートルほど離れた、城壁の影。腕を組み、先頭の連中を嘲笑する人狼(ウェアウルフ)がいた。

 

「どうせ、魔王アグランスの血族へと成るのはこの俺だ……。お前らがどれだけほざこうが、『負け犬』の遠吠えなのだよ……」

 

 目を伏せ、薄ら笑いを浮かべる人狼(ウェアウルフ)。

 拳に巻かれた包帯と、口を開いた時に伺える鋭い牙。

 

「──お待たせいたしました!!」

 

 けたたましい金属音。小鬼(ゴブリン)の声が響いて、門の扉が開かれる。

 

「さぁさ!! 皆様中へ!!」

 

 小鬼(ゴブリン)が汗を額に浮かべながら、中へと招き入れる。

 

「おお、ついに魔王様に見えれるケロね!」

 

 一番先頭にいた人型の蛙が嬉々として小鬼(ゴブリン)の後を追った。

 

「フン……待たせよって」

 

 蛙の後方に成された列──そこに割って入る人狼(ウェアウルフ)。

 

「ちょっと! わっちが先ニャ!」

 

 前の列に入られた人猫(キャティ)が声をあげる。

 

「……フン」

 

 人狼(ウェアウルフ)は鼻で笑い、そのまま前の列に並んで歩いて行った。

 

◆ 一次面接会場

 

「……それでは、Aグループの一番、どうぞ」

 

 魔王城の一室。並べられた机には、三体の魔族が並んでいた。左から、骸死(スケルトン)、小鬼(ゴブリン)、魔粘液(スライム)──ポヨンたそがいた。

 

「し、失礼するケロ」

 

 先頭の列にいた蛙が扉を開く。

 

「──不採用ですな」

 

 震えるポヨンたそ。

 

「不採用ですね」

 

 眼鏡をかけ直す小鬼(ゴブリン)。

 

「ワイトもそう思います」

 

 骨を鳴らす骸死(スケルトン)。

 

「……け、ケロ?! どうしてだケロ!!」

 

 扉前に立ったまま、動揺する蛙。

 

「ノックは常識ですぞ。」

 

「語尾にケロをつけないこと。」

 

「ワイトもそう思います。」

 

 一連を聞いて肩を落とし、背を向けて帰る蛙。

 

「……失礼します」

 

 開かれた扉から、人狼(ウェアウルフ)が入った。並んだ椅子の一番奥の左に立つ。

 

 続けて入る獣族達。

 人狼(ウェアウルフ)の隣には人猫(キャティ)が二匹。一番最後に入ったのは、人鰐(リザードマン)だった。

 

「どうぞ」

 

「「「「失礼します」」」」

 

 全員口を揃えて、椅子に腰掛ける。

 

「まず第一に。何故アグランス様の血族になりたいのですか? 人鰐(リザード)から答えて貰いましょう」

 

 小鬼(ゴブリン)が尋ねた。

 

「は、はい! 俺様はアグランス様の強大な力──世界征服するほどのそれに魅入られ、俺様も血族に加わりたいと考えたのです」

 

「あなたが血族に加わってできることは?」

 

「……えっと、お、泳ぎが上手なので、泳げます。泳ぎ方なら教えられますよ」

 

「──それは頼もしいですな。はて、魔粘液(スライム)にも泳ぎ方を教えて貰えないでしょうか」

 

 ポヨンたそが震え、笑いながらそう聞いた。

 

「そ、それは……」

 

「……血族になったとて、何も出来ないではないですか。不採用です」

 

 小鬼(ゴブリン)が呆れたように呟く。

 

「は、はい……」

 

◆ 魔王室

 

「アグランス様ッ……!!」

 

 扉を勢いよく開いたのは、息切れしたルミィナだった。

 

「あぁ、帰ってきたのか。どうしたのだルミィナ」

 

「──どうしたじゃありませんよ!! な、なんですか!? 魔王城に大量に魔族達が押しかけていますけど!!」

 

「面接中だ、文句を言うな」

 

 俺だって文句言いたい。

 

「は、はぁ?!」

 

 困惑した表情のルミィナ。

 

「め、面接なんて……。面接官は誰が担当するのですか!!」

 

「ポヨンたそ。ゴブ男、骨小僧。

 そうだルミィナ──二次面接を頼む」

 

「……こんなことなら帰って来なきゃ良かったです」

 

 目を見開いたルミィナは、そのまま目を伏せて大きくため息を吐いた。

 

 ──魔王による面接はまだまだ続く。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。