日本橋で蒼海の世紀クロニクルを購入してつい書いてしまった。

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蒼海の日本

 

 

         あの時―――

 

 

 

 江戸時代末期(幕末)の慶応三年十一月十五日夜、近江屋にて歴史に残る事件が発生する。「ドスン」と一階で妙な物音がした。

 

「ほたえな!!」

 

 坂本龍馬はそう叫ぶ。しかし、その叫びは龍馬自らの居場所を示してしまった。妙な物音は元力士の山田藤吉が後ろから刺客に一太刀で斬られて倒れた音であった。

 刺客達は二階に駆け上がり、襖を勢いよく開けた。襖の先には刺客達の標的であった坂本龍馬と中岡慎太郎が談笑していた。

 

「―――!?」

 

 刺客は坂本の額に斬りつけた。しかしその傷は浅く致命傷にはならなかった。

 

「こなくそぉ!!」

 

 別の刺客が坂本に更なる傷を負わせようと斬りつくようとする。坂本は咄嗟に右手を懐に入れ込んだ。

 

「さ、坂本ォ!!」

 

 刺客の刀の切っ先が坂本に迫った瞬間、中岡は思わず叫ぶのであった。

 

 

 

 

 

         あの瞬間―――

 

 

 

 

 

 

 襲撃があって数時間後の夜明け前、一人の海援隊士が急報を受けて近江屋に駆け込んできた。海援隊士――陸奥陽之助は階段で転びながらも駆け上がり襖を開けた。

 

「さ、坂本さん!!」

 

 そしてその光景を見てへなへなと腰が抜けたように膝から床につけた。

 

「ちゃちゃ。いやぁたまるかたまるか」

 

 襖を開けた先の部屋には童から額の傷の手当てを受けていた坂本龍馬が陸奥の様子を見ながら笑っていた。右手には高杉晋作から譲り受けたS&Wモデル2アーミー33口径6連発を持っていた。

 

「間違えて撃ち殺すとこじゃったきに陸奥!!」

「坂本さん、よくぞ御無事で!!」

「ちゃちゃ。高杉君のくれたこいつにまた助けられたぜよ」

 

 坂本は「寺田屋で落とさなくてよかったぜよ」と笑って陸奥にS&Wモデル2アーミー33口径6連発を見せる。坂本の隣にいた中岡慎太郎は溜め息を吐いた。

 

「しかし坂本、先刻は君が斬られたかと肝が冷えたぞ」

 

 坂本は襲撃時、懐に仕込んでいたS&Wモデル2アーミー33口径6連発で刺客の刀の切っ先の軌道を咄嗟に変えた。刺客はそのまま態勢を崩して倒れ、中岡が倒れた刺客に止めを刺した。

 出鼻を挫かれた刺客達だったが、更に坂本に斬り掛かろうとした。しかし坂本はS&Wモデル2アーミー33口径6連発を刺客に向けて放ち一人に重傷を負わせた。そこで刺客達は暗殺失敗を悟り、逃げていくのであった。

 中岡は直ぐに助けを呼び、事なきを得たのである。

 

「いやさ中岡……わしゃあまだ死ねんきに」

 

 坂本は部屋に射し込んでくる朝日に視線を向けた。

 

「……世界の海を見るまでは!!」

 

 そしてこの男の暗殺未遂事件より――物語は始まる――

 

 

 

 

 

 時は1904年(明治三七年)、才谷美紀少尉はハワイ諸島オアフ島の自宅に父である坂本龍馬と共にいた。

 

「この戦いは――大博打じゃけしからん」

「お父様、御言葉ですが博打でない戦など存在しません。その博打に勝つためにこそ我等海援隊があるのでは?」

 

 美紀は少尉になったばかりだった。その美紀の言葉に龍馬はチラリと視線を向ける。

 

「まだ若いのぅ美紀」

 

 龍馬の言葉に美紀はムッと表情を変えるが、龍馬はそれに目もくれずに口を開いた。

 

「博打に勝ちなどは存在しない。博打で儲けたけりゃ胴元になるか、賭場の横で商売するんが一番ぜよ……が、事ここに至っては負けても勝っても……如何にして賭場から足抜けするかがじゃ。ま、それは儂等爺供の領分じゃ。この戦(ばくち)のありのままを物見して来い――美紀」

 

 美紀はその言葉を元に日本を訪れた。

 

 

 

    開戦前夜、それは勝てる筈のない戦いだった。先の戦で清からもぎ取った半島に大国ロシアが狙いをつけてきた。

 

 

 

 そして1904年二月八日、火蓋は旅順港にいたロシア旅順艦隊に対する日本海軍駆逐艦の奇襲攻撃(旅順口攻撃)からに始まった。同日、仁川に日本軍が上陸した。

 二月十日、日本政府からロシア政府への宣戦布告がなされた。二月二三日には日本と大韓帝国の間で日本軍の補給線の確保を目的とした日韓議定書が締結される。これにより半島内での補給線を確保する事に成功する。

 一方海では制海権を巡る戦いが行われた。八月十日の黄海海戦、同月十四日の蔚山沖海戦が勃発。

 そして陸では……。

 

「進めェ!!」

『ウワアァァァァァ!!』

 

 乃木希典率いる第三軍が旅順攻略戦を繰り広げた。しかし日本陸軍は近代戦の洗礼を受ける事になった。

 

「たった一日で……一個師団分の兵が――死んだのか……!?」

 

 明けて1905年一月二日、黒溝台会戦が勃発。ロシアグリッペンベルグ大将の第二軍が中央突破しようとした。戦線が崩壊しようとした寸前、危機を救ったのは海援隊が持ち込んだ十.五サンチ加濃砲だった。

 

「腹が減っては戦が出来ぬ。弾が無ければ戦にならぬ……か」

 

 以後、日本陸軍は徹底して兵站・補給と火力の重要性を重視するようになる。痛み分けの黒溝台会戦後、恐れていた事態が現実となる。

 朝鮮王高宗をはじめとする新露派がロシア軍と内通、ウラジオから元山方面へロシア軍侵入の可能性が増大。日本軍第三軍は遼東半島に、その他の軍は元山―平壌の線までの撤退を余儀なくされる。

 これにより陸の戦線は膠着した。大日本帝国の命運は――決したかに思えた。

 

「何じゃ俊輔、おまんらしくもない」

「坂本さん……日本は……日本はおしまいです!!」

「何を言うがじゃ。寧ろ土俵が整ったと言うべきじゃが!!」

「坂本さん何を……」

「俊輔、儂等の――丁半博打はこれからじゃき」

 

 美紀は移動してきた一人の少尉と共に戦艦三笠に乗り込んだ。

 

「才谷美紀少尉です」

「三宅長慶少尉です。才谷少尉……坂本龍馬の娘と言った方がええかの?」

「……何故それを……」

「情報通の奴が教えてくれての。まぁ仲良くやろうや」

「……そうね」

 

 

 

 二人の出会いは日本の何を変えるのか、それはまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

――後書きという名の舞台裏――

 

 

 日本橋で蒼海の世紀クロニクルを購入して思い付いたネタでした。単行本派なんですが美紀ちゃん好きなんで思わず購入しましたがかなり良かったです。

 

 

 




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