はろーわーるど
僕は何処にでも居る普通の(少し訂正は必要だが)本当にごく普通の凡人だった。
普通にいじめに彩られた灰色の小学校時代を過ごし、それに反する様に楽しい中学生をして、時にはぶられながら高校生時代を過ごした。
そして、まあ。色々あって
今では病院通いのヒキニートである。仕事はしてるけど。
まあ、そんな普通だった僕にも転機が訪れた。あるいは、出会ってしまったと言うべきなのか。
病院帰りの散歩中に河川敷に座り込んでぼうっとしてた時にソレは現れた。
【縺ゅ↑縺溘?繧上◆縺励′縺ソ縺医k縺ョ?】
艷やかに粘液っぽいものが滴る透明な触手の塊。言い表すならイソギンチャクの怪物あたりだろう。
「うーん、何言ってるのか分からないなぁ」
ソレの声(多分鳴き声とは違う)は頭の中に響いてくるし、まるで常に耳元で金属が削られてるみたいだ。
【?滂シ滂シ溘∩縺医※繧九?縺ュ?滂シ】
「ん、聞こえてる聞こえてる。意味はわかんないけど。出来ればもうちょっと音量落としてくれない?」
【縺翫→縺ョ繧翫g縺?∈繧峨☆】
「・・・通じてんのかなこれ」
【繧上°繧】
「肯定なのか否定なのか分かんねー」
でも、コミュニケーションを取ろうとしてるっていうのはわかった。
「よし。取り敢えず・・・はじめまして、触手さん。僕は布袋プリンスって言います。あ、本名ね。僕この名前好きじゃないから、呼ぶならホテプって呼んでね」
【縺ッ縺倥a縺セ縺励※?溘?縺輔@縺カ繧奇シ】
「・・・やっぱわかんないや」
【縺サ縺ヲ縺キ縲√h縺カ】
よく見てみる、が。うねうねテカテカな触手塊のまま。顔は無く、手足の区分があるかも不明。
手詰まりかなこれは。
よし、帰るか。
「じゃあ、僕帰るから」
【縺、縺?※縺】
「・・・今もしかしてついて来るって言った?」
【縺ゅ◆繧】
わさわさとソレが動く。なんか喜びっぽく感じる気がする。怒りじゃないと良いんだけど。
・・・てかこいつって何食うんだろ。
【縺ェ繧薙〒繧】
「うん?もしかして心とか読める感じ?」
【縺薙≧縺ヲ縺――・・・こ う て い】
「あ、そうなんだ。現実は小説よりも奇なりっていうけど本当だったんだなぁ」
河川敷から登ってソレと一緒に帰路に着く。やっぱついて来るんだ。
「てか喋れるの?」
【縺ッ縺。繧?≧縲√≠繧上○縺―――かちょういき、せまい】
「あー成程。なんかごめん」
【よ、い】
「おお、凄い」
それにしてもゆっくり目に歩いてるけど、どうやって移動しているのだろうか。
【あし、とじゅつ】
「術?魔術とかそういう?」
【こうてい】
「へぇー」
そんな雑談をしながら歩くが道ですれ違う人たちには見えてない様だ。幽霊とか妖怪みたいな才能がないと見えない、みたいなシステムなのだろうか。
【ひてい】
「違うの?」
【こうてい、ひと、みえない、してる、さいのう、ちがう、ぎしきつかう、みえる、しぬ】
「ほー。じゃあ僕は?」
【ぎしきない、しなない、ふしぎ】
「不思議に不思議って言われるって微妙な気分だなぁ」
と言うわけで質問タイム。
隣を移動するソレに疑問を投げ掛けて行く。聞くとしたら性別があるのかとか名前かな。
「性別とかあるの?」
【あ、る、めす】
「へえ。じゃあ名前は?」
【ない】
「ふうん?」
【にんげん、けいようしがたいもの、いう、それ、しつれい、かなり、かなり】
「え、ごめん」
【ゆるす】
「ありがとう。じゃあ、お詫びと言ってはなんだけどなんか考えよっか」
【か、ん、き!!】
「うわうるさっ?!なんか荒ぶってるんだけど?!」
【――・・・謝ざい、私、なまえ、無し、ほか、名前、あり】
「へぇ。それは大変だね」
【ほてぷ、名前、嫌い、言う、何故】
「ん、普通じゃないから」
【普通】
「そう。キラキラネームってやつさ」
【きらきら、難しい】
「純日本人なんだけどなあ僕・・・あ、思いついた」
【良い、良い、良い】
「そう?じゃあ君の名前はシエルだ」
触手が透明だから空を英語でスカイ、じゃ微妙だからフランス語でシエル。我ながら安直な名前だと思う。けど。
【良い、良い、シエル、歓喜】
「なら良かった」
【ホテプ、感謝】
「どういたしまして」
彼女――シエル本人(?)が喜んでるなら上々だろう。
【ホテプ、よろしく】
「うん、よろしくシエル」
―――これは、そんな僕と彼女の物語だ。
【もの、ろーぐ?】
「うん、そう」
▶Tips:改名について
この世界では諸事情により改名が認められていない。結婚等による名字変更は例外として、生まれた時の名前を変えることは出来ない。