記憶のない僕と、みんなが知ってる俺   作:からあげマヨネーズ

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第11話 昔の俺と身体に残る力

何もない広場で、長身の女性と中背の男が剣を交えている。

 

戦いは終始、長身の女性が押しているように見えた。

 

男は女性の一瞬の隙を突き、その懐へと潜り込む。

 

「なかなかいい動きです! ですが――!」

 

女性は男の刃を防ぐと、そのまま蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐっ……!」

 

後ろへと蹴り飛ばされた男は、すぐに体勢を立て直す。

 

そしてもう一度切り込もうとした――その瞬間。

 

「ま、まいりました……」

 

男の首筋には、すでに女性の刃が突きつけられていた。

 

悔しそうに顔をしかめながら、男は両手を上げる。

 

「あー! くそっ! 負けたー! もっかい! もっかいやろう!」

 

「今日はこのあたりにしておきましょう。あなたも病み上がりですし、あまり根を詰めすぎるのもおすすめしませんよ」

 

「でも、早く二人に追いつかないと!」

 

女性は不思議そうに首を傾げる。

 

「どうして、そんなに強くなりたいんですか?」

 

そう聞かれて、俺は少し照れながら口を開いた。

 

「だって、強くなれば二人を守れるじゃん?」

 

そう言うと、長身の女性は顔をぱぁっと明るくした。

 

そして俺の頬を両手で挟み、そのままもにゅもにゅとこねくり回す。

 

「ほんと、あなたはかわいいですね!」

 

「かわいくない!! かっこいいって言えよ!」

 

「ふふっ。でも……そう言ってくれるのは、とっても嬉しいですよ」

 

女性は手を離すと、少しだけ寂しそうに笑った。

 

「私たちにそう言ってくれる人は、もうあまりいませんから」

 

「…………」

 

俺たちはしばらくの間、互いの顔を見つめる。

 

すると――。

 

「ちょっとちょっと、お二人さん! いい雰囲気になっちゃってますよー!」

 

突然、頭上から声が聞こえてきた。

 

見上げると、ピンク色の髪をなびかせた女性が空からふわりと降りてくる。

 

「とっても嬉しいことを言われてしまったので」

 

「なになに? なんて言ったの?」

 

ピンク髪の女性が興味津々といった様子で近づいてくる。

 

「なんでも、私たち二人を守れるくらい強くなってくれるみたいですよ?」

 

「お、おい!」

 

それを聞いたピンク髪の女性は、楽しそうに笑った。

 

「このままだと、そんなに強くなれるのは百年とか先かもね!」

 

「すぐ追いつくから待っとけよ!!」

 

二人が笑う。

 

つられるように、俺も笑った。

 

三人の笑い声が、何もない広場に響いていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

僕は目を覚ます。

 

「……また変な夢見たな」

 

ベッドの上で身体を伸ばした、その瞬間――。

 

いったぁぁぁぁい!!!!

 

僕の叫び声が『Random Play』に響き渡った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「もぉ~! ○○、大丈夫? はい、湿布貼ったよ!」

 

リンが僕の背中に湿布を貼ってくれる。

 

「リン、ありがとう……!」

 

身体中が痛い。

 

昨日の修行のせいだ。

 

「それで○○、雅さんとの修行はどうだったんだい?」

 

アキラに聞かれ、僕は昨日のことを思い出す。

 

「ほんと聞いてよ! あの人、ニコニコしながら竹刀で殴ってくるのやばくない?」

 

「何とか避けられるようになったと思ったら、『修行のレベルを上げる』なんて言われてさ!」

 

僕は雅さんの真似をしながら、二人に説明する。

 

「あはは! 似てる~!」

 

「でも、それ以外にも収穫があってさ!」

 

「なになに?」

 

リンが興味津々といった様子で顔を近づけてくる。

 

「僕、昔から意外と戦えたっぽい!!」

 

そう言うと、二人は『何を言ってるんだこいつ』とでも言いたげな顔をした。

 

「……何その反応」

 

「いや、まぁ……だってねぇ」

 

「僕たちは君が戦えることは知っているからね」

 

「僕は知らないんだけど……!」

 

「仕方ないでしょ。覚えてないんだから」

 

「それはそうだけどさぁ……」

 

僕が肩を落とすと、リンがくすくすと笑う。

 

そんな話をしながら、僕は無意識に胸元へ手を伸ばしていた。

 

「……○○?」

 

「ん?」

 

「また胸触ってる」

 

リンに言われ、自分の手を見る。

 

「あ……」

 

昨日の修行が終わったあと。

 

一瞬だけ、胸の奥がズキッと痛んだ。

 

雅さんにも言われた。

 

今度は、一人で抱え込むなと。

 

それに――リンとも約束した。

 

「……そういえばさ」

 

「うん?」

 

「昨日、修行が終わったあとに……一瞬だけ胸が痛くなったんだ」

 

リンの表情が変わる。

 

「えっ?」

 

アキラも少し眉を寄せた。

 

「それ、本当かい?」

 

「うん。でも、すぐ治ったよ」

 

「すぐ治ったからって!」

 

「わ、分かってる! だから今ちゃんと話してるじゃん!」

 

「むぅ……」

 

リンが頬を膨らませる。

 

けれど、少しすると小さく息を吐いた。

 

「……うん。ちゃんと話してくれたのは偉い」

 

「子供扱いしてない?」

 

「してないしてない」

 

絶対してる。

 

「でも……胸が痛くなったのは、昨日だけなのかい?」

 

アキラに聞かれ、僕は考える。

 

「昨日だけ……」

 

昨日だけだよ、と言いかけて口を止めた。

 

「……そういえば、この前」

 

「この前?」

 

「妄想エンジェルのみんなと秘密基地に行くために、ホロウに入ったんだ」

 

二人が僕の話に耳を傾ける。

 

「その時、ちなっちゃんが怪我しちゃってさ。僕にもよく分からないんだけど……ちなっちゃんの傷を治せたんだ」

 

「傷を……?」

 

「うん。それで、そのあと胸がすごくバクバクして……」

 

「…………」

 

「ちょっと息苦しくもなった」

 

リンの顔から、さっきまでの軽い雰囲気が消えた。

 

「なんでそれ今まで言わなかったの!?」

 

「ご、ごめん!」

 

「この前約束したばっかりでしょ!」

 

「だから今言ってるんだって!」

 

「そういう問題じゃなーい!」

 

「ごめんなさい!」

 

反射的に頭を下げる。

 

そんな僕を見ながら、アキラは何かを考え込んでいた。

 

「回復の力を使った時と、雅さんとの修行のあと……」

 

「アキラ?」

 

「お兄ちゃん?」

 

僕とリンがアキラを見る。

 

「どちらも、身体に大きな負担がかかったあとだね」

 

「…………」

 

そう言われて、僕も黙り込む。

 

回復能力。

 

修行。

 

全然違うことだと思っていた。

 

でも、どちらも終わったあとに胸がおかしくなっている。

 

「……どうなんだろう?」

 

「まだ二回だけだからね。これだけで断定はできないよ」

 

アキラがそう言う。

 

リンは心配そうに僕を見つめていた。

 

僕は自分の胸元へ視線を落とす。

 

そして、今朝見た夢を思い出した。

 

剣を握っていた、昔の自分。

 

雅さんとの修行で、身体が勝手に動いたこと。

 

知らないはずなのに使えた、不思議な力。

 

もし、どちらも昔の僕が持っていたものなのだとしたら――。

 

「……昔の僕も」

 

「○○?」

 

僕はゆっくりと顔を上げた。

 

「ねぇ、二人とも。昔の僕も、この力を使ってた?」

 

部屋が静かになる。

 

「お兄ちゃん……」

 

「リン……」

 

二人は顔を見合わせる。

 

そして小さく頷くと、僕の方へ向き直った。

 

「……使っていたよ」

 

アキラが静かに答える。

 

「でも、それを使ったあとの○○は、いつも辛そうだった」

 

リンも不安そうに僕を見る。

 

「だからね、○○」

 

「その力は……無闇に使わないでほしいの」

 

アキラも続ける。

 

「君が苦しそうにしている姿は、もう見たくないから」

 

「…………」

 

二人の表情を見ていると、軽く返事をすることなんてできなかった。

 

僕はただ、静かに頷くことしかできなかった。

 




今回少し短いですすいません!
追記 1,2,3話のユーザー読了状況が悪すぎたので改稿してます!

感想等お待ちしてます!
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