あと今回は短めです
新エリー都 ヤヌス区
六分街『Random Play』
僕は自分の部屋で机の上に置いてある日記を見つめていた
日記の最後に書いてあった名前
『妖怪』
「……やっぱりなんか引っかかるんだよな」
昨日この名前を見た時、急に頭が痛くなった
何か知ってる気がする
でも何も思い出せない
「……うーん」
もう一度思い出そうとすると――
ズキッ
「いたっ……!」
頭の奥に痛みが走る
「ダメだ……やっぱり思い出せない」
僕は日記を閉じる
前の僕だったらここで一人で考え続けてたのかもしれない
でも――
『今度は一人で抱え込まないでね』
リンと約束した
「……二人に聞いてみるか」
僕は日記を持って部屋を出た
――――――――――――――――――――――――――――――
「妖怪?」
「うん」
店のカウンターでリンとアキラに日記を見せる
「昔の僕が最後に受けた依頼の依頼人らしいんだけど……」
リンが日記を覗き込む
「妖怪って……あの妖怪?」
「僕に聞かれてもわかんないよ!」
「それもそっか」
「それで、この名前を見た時にさ」
少し言うか迷ったけどそのまま話す
「急に頭が痛くなったんだ」
「えっ!?」
リンが僕の顔を覗き込んでくる
「今は!?今も痛いの!?」
「今は大丈夫!」
「ほんと!?」
「ほんとほんと!」
リンはまだ疑うような目で僕を見る
「でも……なんかこの名前を知ってるような気がするんだよ」
「思い出せそうなの?」
「うーん……」
僕は少し考える
「そこまでは……」
無理に思い出そうとすると頭が痛くなるだけだった
「○○」
「ん?」
アキラが日記を手に取る
「この日記を書いた日付は分かるかい?」
「えーっと……」
ページを見る
「書いてあるよ」
「なら、その頃の記録を調べれば何か分かるかもしれない」
「あっ!」
確かに!
「昔の僕が何か依頼を受けてたなら、何かしら記録が残ってるかも!」
「そういうことだね」
「さすがお兄ちゃん!」
「よし!調べよう!」
――――――――――――――――――――――――――――――
「ない……」
「ないねぇ……」
「ないな……」
僕たちは端末と睨めっこしていた
昔の僕が日記を書いた日
その前後の記録を調べていたけど――
「なんでこんなに何もないの!?」
椅子にもたれかかる
「依頼を受けた記録くらい残っててもいいじゃん!」
「一部消えているみたいだね」
アキラが画面を見ながら言う
「消えてる?」
「ああ、この辺りから急に記録が少なくなっている」
僕も画面を覗き込む
日記を書いた日まではある程度記録が残っている
でも――
『妖怪』の依頼を受けた日
そこから先がほとんど残っていない
「……ここから?」
僕は机に置いてある日記を見る
日記もここで終わっている
記録もここからほとんどない
「偶然……なのかな」
「どうだろうね」
アキラも難しい顔をしている
リンは日記をパラパラとめくっていた
「ん……?」
「どうしたの?」
「いや……これ」
リンがあるページで手を止める
僕も横から見る
そこには僕には覚えのない出来事が色々書いてある
リンと出かけたこと
アキラと店番したこと
瞬光たちと過ごしたこと
そして――
『もうすぐあいつらの誕生日だし、何かプレゼントでも買おうかな』
「…………」
リンが何も言わずその文字を見つめている
「リン?」
「……ううん、なんでもない」
そう言って笑う
でもいつもの笑顔とは少し違う気がした
僕はもう一度日記を見る
記憶がおかしくなっていた
昨日のことすら思い出せない時もあった
それでも昔の僕は仕事をして
みんなのことを考えていた
「……昔の僕ってさ」
「ん?」
「めちゃくちゃ無茶してない?」
「今さら!?」
「即答!?」
リンが呆れたように僕を見る
「無茶して、何でも一人で抱え込んで、大丈夫って言って」
「うっ……」
「それで最終的に全部忘れちゃったんだからね!」
「……返す言葉もございません」
昔の僕の話なのになぜか僕が怒られてる
「まぁ……」
僕は日記を見ながら小さく笑う
「僕も人のこと言えないか」
「そうだよ!」
「そこも即答!?」
僕とリンがそんなやり取りをしていると――
「○○」
アキラに呼ばれる
「なに?」
「一つだけ見つけた」
「ほんと!?」
僕とリンがアキラのところに集まる
画面には一つの記録が表示されていた
「これは……?」
「昔の君が最後に残した移動記録だ」
「最後……」
僕はその場所を見る
日記に『妖怪』と書かれた日
昔の僕はここに向かっている
そして――
その先の記録はない
「……ここに行けば」
「何か分かるかもしれないね」
僕は画面を見つめる
『妖怪』
昔の僕が最後に受けた依頼
そのあと何があったのか
どうして日記も記録もそこで途切れているのか
そして――
どうして僕は全部忘れたのか
「○○」
リンが僕を見る
「……行くの?」
「うん」
僕は頷く
「昔の僕に何があったのか」
「ちゃんと知りたい」
画面に表示された場所を見ながら僕はそう答えた
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